あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-2]<DV(離婚後のストーカー行為含)>新聞事件簿。身近な女性を救おう!

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 家庭内暴力編(1)悲しい夢「私が夫を救わねば…」 何度も自分を責めた

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 家庭内暴力編(2)トラウマ長男との生活で学んだ 不安も不満も伝える <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(11)取材を終えて苦しむ家族支えるため私たちができることは
 久しぶりに会う夫は、声以外、以前とまるきり違った。「おれ、整形手術して外見も中身も変わった。やり直そう」。手を合わせ必死で許しを請う。
 「しょうがないなあ」。苦笑いしたところで、冬美さん(46)は目が覚めた。阪神間の住宅街にあるアパート。隣で小学3年の長男が寝息を立てていた。クリスマスまで数日となった昨年12月の早朝だ。
 夫と離婚したのは4年前、原因は暴力だった。何時間も怒鳴られ、のど元をたたかれた。
 「笑っちゃうでしょ。散々ひどい目に遭ったのに、今でも嫌いになれない。ときどき夢に出てくるんです」
 冗談めかした口調とは裏腹に、冬美さんの瞳は悲しげな色をしていた。


 出会いはインターネットのチャット。知性あふれる勤務医の夫は大人の男性だった。いつも相手の顔色ばかり見ていた冬美さんは、初めて自然体で振る舞えた。2年間の交際を経て35歳で結婚。間もなく身ごもった。
 おなかが目立ち始めたころ、職場の人間関係に悩む夫は病院を辞めてしまう。その夜「皆がおれをばかにしているんだ」と声を震わせ、15年以上前の出来事を口にした。
 幼いころから親の期待を一身に背負わされ、「東大以外は大学じゃない」と父親からいつも責められたこと。ストレスなどから統合失調症を発症。医師になったが、学歴をなじる父親を殴り大けがさせたこと。初めて聞く話だった。「これから幸せになろう」。冬美さんは夫の肩を抱いた。
 長男の誕生後、冬美さんが育児にかかりきりになっているころ、夫の心は変調を来していた。
 取り込んだ洗濯物をソファに置いたまま、冬美さんが授乳していると、露骨に不機嫌になった。「おれのご飯はまだか」。いらだちは次第に怒りに変わり、冬美さんを何時間も問いつめた。半面、怒鳴り声に長男が泣き出すと、慌てて抱き上げ「ごめんな」とあやした。夜、冬美さんの布団に潜り込んできて、これ以上ないくらい強く優しく抱きしめた。
 冬美さんは何度も保健所に相談した。「深刻にならず、もっと広い心を持って」。通りいっぺんの答えが返ってくるだけだった。実家と疎遠の冬美さんも夫も頼る先がない。2003年春、冬美さんは夫を説得し、精神科クリニックを受診した。統合失調症が進んでいた。
 「幻聴による被害妄想から暴力を振るってしまう患者もいる。奥さんが支えてあげて」。医師はいつもそう言った。


 「病気さえ治れば前のように幸せになれるはず」。そんな思いをよそに、病状は一進一退を繰り返した。手が着けられないほど暴れるため警察を呼んだこともあった。「妻でありながら夫を救えない」。泣いて自分を責めた。
 04年夏。冬美さんはマンションのベランダ手すりの上によじ登った。地上12階。遮るものは何もない。ただならぬ気配を察したのか、寝かせたはずの3歳の長男が後ろにいた。
 「お母さんがいなくなったら、どうやって生きていけばいいの」
 息子の涙声にわれに返った。


 配偶者や恋人への暴力(DV)。警察へのDV被害届や相談は2009年、2万5千件に上った。なぜ、愛する人を傷つけてしまうのか。家族から受けた暴力の傷は癒えるのか。被害者と加害者の叫びを伝えたい。=文中仮名=

(この連載は坂口紘美が担当します)

2010/01/25



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