あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(11)取材を終えて苦しむ家族支えるため私たちができることは

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 家庭内暴力編(1)悲しい夢「私が夫を救わねば…」 何度も自分を責めた <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(10)守れなかった命彼らはすべてに絶望し未来を閉じてしまった
 18年間、児童相談所に勤務し、この春定年を迎えた女性がいた。「あっという間でした」と涙ぐんだ
 児童相談所(児相)に、社会はどんな像を結ぶだろう。児童虐待が大きく報じられる今、虐待問題に対応する役所というイメージだろうか。
 併設する一時保護所を含め、児相に約2カ月通う中で何度も思い知らされた。子どもを愛しながら苦しむ人がこんなにも多いのか、と。
 虐待問題ばかりがクローズアップされるが、それだけが家族を取り巻く問題ではない。非行や障害など、壊れかけた家族には、さまざまな負の要素が絡み合い、容易に解けない。一つ一つほぐすのが児相の仕事だった。


 子どもの非行に悩むシングルマザーがいた。
 彼女自身、親から身体的な虐待を受けたという。愛された記憶がないため、子どもへの接し方が分からない。しかった後は落ち込み、つらかった幼少期の記憶に何度も襲われた。母子2人の生活は経済的にも行き詰まり、事実上の育児放棄に。施設入所させたものの、子ども自身もわがままが言えず甘えることもできない。寂しさや怒りはやがて無断外泊や万引という非行となって現れた。
 「加害者が実は被害者だったりする。目の前の家族だけを見て判断できない」とベテランの児童福祉司は言った。
 児相は相談を受理すると、3世代ほどさかのぼった家系図を作りながら、支援を得られそうな親族を探す。児相を頼る家族の場合、その人数が少ないのが特徴という。
 さまざまなケースを聞かされ、記者は繰り返し尋ねた。わが子になぜ暴力を振るうのか、なぜ非行に。家族なのになぜ。
 「知ったところでどれほど意味がありますか」。児童福祉司の口調はどこまでも冷静だった。
 原因が分かれば、解決するはず。一見正しいようだが、現実には分かっても取り除くことは難しく、苦しむ家族に直接の力にはなれない。原因を追究することと助けを求める家族を支援することは別。家庭調査や子どもの発達検査などで、児相が徹底した状況把握をするのは、現状で最善の支援策を探るためだ。
 「何より児相に求められるのはスピードと判断力。原因を並べ立ててどうなるのか」
 児相にすがる家族はそれくらい追いつめられていた。


 児相が介入すれば難問がすべて解決するわけではない。記者が取材した職員は皆、懸命に支援していたが、すべての家族を救えるわけではない。
 職員から聞いた話が心にひっかかっている。
 昨年夏、夜11時ごろに通報があった。「毎日、この時間に近くの家から子どもが泣き叫ぶ声がする」。職員が事情を聴くうち、通報した人とその家は二十年来のつきあいがあることが分かったが、通報者はかかわりを拒み「児相の仕事やろ」と言った。職員が確かめたところ、お風呂をいやがる子どもが泣いていただけだった。


 この児相には年間約5000件の相談が寄せられる。言い換えれば、身近に助けを求められない家族がこれだけいる。声すら上げられない人もいるはずだ。
 非行少年や障害のある子が、問題を起こしたとき、周囲は親に厳しい目を向ける。それがいっそう家族を苦しめていないだろうか。発達障害児を育てる親を支援するある職員は「社会全体がもう少し温かい目で家族を見守れるといいのだけど」とこぼしていた。
 「児相は特効薬を持ち合わせていない。助け合って生きていく当たり前のことを、当たり前にできる環境をつくろうとしているだけです」
 ほんのわずかでも関心を持つことで、私たちはよき隣人になれないだろうか。苦しむ家族の支えとなるために。

(坂口紘美)
=おわり=

2009/06/11



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