あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(10)守れなかった命彼らはすべてに絶望し未来を閉じてしまった

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(11)取材を終えて苦しむ家族支えるため私たちができることは <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(9)無条件の愛生まれてよかったとあの子が思えるように
一時保護所のフリールーム。机の上に作りかけのジグソーパズルがあった
 立ち直ることを信じ子どもに向き合う児童相談所(児相)の職員にとって、永遠に答えの出ない宿題がある。子どもの死による「相談終結」がそれだ。
  児童福祉司の林田さん(42)は2年前、ある男子中学生を担当した。家出を繰り返し、金髪にピアスという外見とは裏腹に、素顔はさみしがり屋だった。
  林田さんとの面接は度々すっぽかされた。それでも1年も付き合うと「学校にも家にも居場所がない」とこぼすようになった。登校に向け担任教師らと話し合っていたさなか、「家出した」と母親から電話があった。林田さんらが心当たりを探したが見つからない。数日後、警察から事故の連絡があった。
  未明、ミニバイクを走らせトラックと衝突。病院に運ばれたが手の施しようがなかったという。
  現場は、中学生との雑談で1度だけ聞かされたたまり場の公園近くだった。友達に会いに行ったのか、その帰りだったのか。
  「もう会えない。悔しい」
  林田さんは、そう言って押し黙った。記者の問いかけに答えはなかった。


  胸がつかえるような話を係長の遠阪さん(50)からも聞いた。
  家族に暴力を振るう少女がいた。手を焼いたが、遠阪さんとの面談は楽しみにしているように見えた。夜遅く児相に電話をかけてきたことがあった。残業していた遠阪さんが電話の向こうの異変に気付き、真っ暗な公園にいる少女を見つけた。会話をすることもなく、朝まで過ごした。だれでもいいから、そばにいてほしかったのかもしれない。彼女は20歳を迎える前に命を落とした。
  担当したある少年は中学卒業後、トラブルに巻き込まれ刺殺された。遠阪さんが真っ先に思い出したのは、中学生であることを偽り、工事現場で働いているところを見つかったときの決まり悪そうな顔だった。
  非行問題を担当した7年間。10代のうちに未来を閉ざしてしまった子どもたちが、10人はいるだろうか。
  学校で暴れ、盗んだバイクで暴走する。事故を起こして入院しても仲間を呼んで騒ぐ。居場所を自らつぶしながら、彼ら自身どうすることもできない。
  「家族、学校、社会すべてに絶望している彼らに一筋でも光を与えてあげたい」。絞り出すような声だった。


  春先の児相は、恋人や子どもを連れた“元非行少年少女”の訪問が相次ぐ。近況を伝え、職員を手こずらせた当時を頭をかいて振り返る。教師と教え子にも似た不思議な光景だった。
  児相に来る子どもたちに職員は何ができるのだろう。
  「大人になるまでの時間稼ぎ」と遠阪さんは話した。問題を起こせば駆け付けてしかり、弱い部分もありのまま受け止める。見放された彼らのために、親になり、教師になり、口うるさい世話焼きになる。そして、社会に出る練習を積ませる。
  「言っていることは厳しいけど、味方かもしれない」。職員の印象を尋ねたとき、一時保護所の女子高生は話していた。
  林田さんの隣には、金髪のいかつい風ぼうの20代男性がいた。暮らしぶりは大変そうだが、生きる自信がみなぎっていた。「こいつと結婚しようと思ってるんや」と隣の女性を紹介した。
  「おめでとう」
  胸がいっぱいになった林田さんはそれ以上言えなかった。

=文中仮名
(坂口紘実)

2009/06/09



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