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[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(9)無条件の愛生まれてよかったとあの子が思えるように

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(10)守れなかった命彼らはすべてに絶望し未来を閉じてしまった <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(8)未熟な親修復は極めて困難 子どものために里親を
新聞の里親探し欄に掲載された子どもは48年で、のべ2000人を超える
 大型連休明けのその日、前日からの雨は上がっていた。乳児院を後にする3歳の女児。今日から里親との暮らしが始まる。
 見送る関係者の中に、兵庫県内の児童相談所(児相)の児童福祉司の中林さん(35)がいた。赴任して2年目。担当する子どもを里親に送り出すのは初めてだ。「やっと見つけてあげられた」。そう思うと、目頭が熱くなった。


 氷点下近くまで冷え込んだクリスマスイブの未明。遊戯場の女性トイレで、毛布にくるまれ泣いているところを見つかった。親に関する手がかりは一切ないため、父と母の欄が空白の戸籍が作られた。
 悲しい現実だが、命の誕生がすべて祝福されるわけではない。思わぬ妊娠に途方に暮れ、出産後に遺棄したり、産んだ後病院から姿を消したりする親がいる。今回の女児のようなケースでは、児相は特に里親委託を急ぐ。親代わりとなる特定の大人の存在が、子どもの支えになるためだ。
 里親探しに取り組む民間団体の家庭養護促進協会と連携。生後2カ月のとき、新聞の里親探しの欄に載ったが、結果は思わしくなかった。1年後にもう一度紹介したところ、県外に住む30代夫妻から連絡があった。
 選考から子どもとの面会まで、協会は十分すぎるほど時間をかける。
 一時的な感情ではないのか、子どもへの期待が高すぎないか、里親を志す人の覚悟を確かめる。これ以上、大人の都合で子どもを傷つけてはいけない。家庭養護促進協会の推薦を経た上で、児相が里親候補者として最終決定する。
 中林さんは、初めて夫妻と交わした会話が忘れられない。女児の気がかりな点を、説明したときのことだ。
 女児は、初対面の人や初めて訪れる場所に慣れるまで一日近くかかる。潔癖すぎるきらいがあり、砂場の砂に触れない。
 「将来、育てづらさを感じるかもしれない。そういうことも考えて、もう一度、話し合ってほしい」
 ここで受け入れることを断念する人もいる。しかし、目の前の夫妻は違った。
 「実の子でも障害の有無や性格は選べないはずです。すべてを受け入れるつもりです」
 その言葉に気負いはなかった。
 乳児院に夫妻が出掛けたのは、半月後。おみやげは、ウサギのぬいぐるみとお気に入りの菓子。緊張したのか、面会中顔を上げられず、女児は帰り際に手を振るのがやっとだった。


 里親が現れたからかどうかは分からない。だが、女児に明らかな変化が見え始めた。
 何事にも積極的になり、いつの間にか砂に触れることも平気になった。
 「無条件に愛し、受け入れてくれる里親との出会いが、生まれてすぐ親に手放された子どもにとって救いになる」
 いつか生い立ちを知る日が来る。自分を捨てた実親を憎むかもしれない。育ててくれた里親や乳児院の職員は何ができるだろう。血縁はなくても本気で向き合い、抱きしめることはできる。
 「里親が一人で背負い込まないように、支援に終わりはありません。生まれてきてよかったとあの子が思えるように」
 手をつなぎ児相を後にする3人の背中が見えなくなるまで、中林さんは見送った。

=文中仮名=
(坂口紘美)

2009/06/04



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