あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(8)未熟な親修復は極めて困難 子どものために里親を

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(9)無条件の愛生まれてよかったとあの子が思えるように <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(7)性的虐待「時間かけともに悩む」 支援の入り口に立った
心理療法の一つ、箱庭療法。言葉にならない子どもの内面を探る。
 訳あってわが子を里子や養子に出す人がいる。おなかを痛めた子どもを手放す苦しみや葛藤(かっとう)。決断に至るまで何を思うのだろう。
 春先、兵庫県内の児童相談所(児相)の一室で、職員の蓮田さん(57)は女性と向かい合っていた。女性の家族にかかわってもう7年になる。
 「あなたのしんどさは分かる。でも、子どもたちを振り回してきたことも事実。子どもには子どもの人生がある」
 優しい口調とは裏腹に蓮田さんの表情は厳しかった。


 女性は駆け落ち同然で結婚した。長男を授かったが、生活費を渡さない夫は暴力を振るい、働きに出ることも許さない。5歳の長男を連れて離婚した。
 母子での生活が落ち着きかけると、決まって別れた夫のもとへ戻ってしまう。その後はまた暴力と家出。それを繰り返すうち、次男を身ごもった女性は身動きがとれなくなった。
 「生活が落ち着くまで次男を施設で預かって」
 女性から電話を受けた後、蓮田さんらが家を訪れた。風呂のない1DKのアパートで、小学3年の長男、3歳の次男と暮らしていた。
 最初、3カ月を予定していた預かり期間は半年に延びた。1年を超えたころ長男も施設へ。その後、生まれた長女も半年で乳児院に入った。
 当初、蓮田さんらは、母子生活支援施設に入り生活を立て直すことを勧めた。しかし、3人の子どもに愛着はあっても、流されやすい性格で生活がすぐに行き詰まってしまう。元夫を完全に断ち切れない「弱さ」も克服できなかった。
 「今、再統合は難しい」と判断した蓮田さんは、折を見て女性に里親のことを話した。子どもに家庭のぬくもりを味わってほしい。安心して甘えられる存在を作ってやりたい。そのための里親委託には実親の同意が必要だ。
 「親は私や。里親なんかに子どもは渡さない」
 女性は頑として首を縦に振らなかった。
 離れた時間が長引くに連れ、長男に“異変”が生じていた。中学生になると、施設職員や面会に来た女性、きょうだいに暴力を振るうことが目立って増えた。「もう甘える時期は終わってしもうてん」とこぼしたかと思えば、同情されると逆上する。
 次男や長女は長男を恐れるばかり。施設に預けた負い目からか、母親は長男の言いなりだ。この家族の修復は極めて難しい。児相はそう判断した。


 「下の子もいつか爆発するかもしれない」「里親に預けても親子じゃなくなるわけじゃない。面会もできる」
 蓮田さんの話を女性は黙って聞いていた。透明なものがぽたぽたテーブルをぬらした。
 「今まであなたにうそついたことないよね?」
 女性はうなずいて「わかりました」と小さく答えた。
 年下の長女の養育里親を探すことになった。長男と次男は月2日ずつ別々にアパートに呼んで、親子水入らずの時間を持つことも決まった。しばらくして、新聞の里親探しの欄に長女の笑顔の写真が載った。
 どんなに親が未熟でも、見限ることはまずない。反抗しつつも親に愛されたいと願う。それは多くの子どもに共通する。
 だから児相の職員は子どもの支えになってくれる大人を、肩の力を抜ける場所を与えたいと奔走する。
 「すてきな里親と出会ってほしい。それが追い詰められた母親の気持ちを、ほぐすことにもつながると思うんです」

=文中仮名=
(坂口紘美)

2009/06/02



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