あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(7)性的虐待「時間かけともに悩む」 支援の入り口に立った

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(8)未熟な親修復は極めて困難 子どものために里親を <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(6)学習生きる自信つけるため 小さなことでもマル
子どもたちに貸し出された運動靴。一時保護所を出る日、きれいに洗ってから返却する
 家族から受けた性的虐待。
 取材している県内のこの児童相談所(児相)では年間数件だが、非行や家庭内暴力の背景に性的虐待があるケースもあり、実際はもっと多いとみられる。
 家庭という密室。表面化しにくい上、子どもが受けた傷の深さは想像を絶する。児相の職員はより慎重な対応を迫られる。
 度重なる家出と深夜徘徊(はいかい)で保護された女子高校生がいた。児相の調査で、兄から性的な虐待を受けていた疑いが出てきた。普段活発でおしゃべりな高校生は、兄の話題になると口ごもる。「何かある」。職員は確信した。
 内に秘めた問題が大きいほど当事者は口を閉ざす。無理やり聞き出すことは絶対にしない。職員の踏み込み方次第で、今まで築いてきた信頼関係があっけなく崩れてしまう。
 両親から聞き取りしたが、真相は分からない。高校生からもはっきりとしたことはつかめない。ただ「家に帰りたい」と繰り返す。
 施設入所か、自宅に帰すべきか。職員の判断は割れた。「大事を取るべきだ」。「事実を確認できないまま施設に入れるのは時期尚早。幼児と違い意思表示できる年齢だ」。結論は後者に傾いていった。


 性的虐待というあまりに重い課題にどう向き合ったらいいのだろう。
 「言葉にならないサインを見逃さず、時間をかけてともに悩み考えるしかない」
 今春、8年ぶりに児相に赴任した係長の遠阪さん(50)は言う。
 10年前、遠阪さんはある母子家庭の男子中学生を担当した。シンナーを吸い、バイクの窃盗を繰り返す。母親はわが子の非行に、どう接していいか分からなくなっていた。
 児童自立支援施設に入所することが決まったが、遠阪さんは違和感があった。近所に住むという叔父の存在だ。一時保護所の中学生に面会に来たことがあった。「怒ると怖いけど好き」と話していた中学生は一瞬表情がこわばり、視線をそらした。
 はたで聞いていても、中学生と叔父の会話に不自然さはなかった。その後、遠阪さんが叔父に関する質問をしても、通り一遍の言葉しか返ってこなかった。
 “本心”が聞けたのは、それから2年後。中学生は卒業後、家には戻らず、住み込みで働くことを決めていた。施設のベンチで遠阪さんと並んで座り、進路について話すうち、幼いころから叔父の性暴力に悩んでいたことを打ち明けた。「しんどかったなあ。無理して帰ることないで」。そう言って遠阪さんは中学生の肩を抱いた。
 安心できる場所がある、受け止めてくれる人がいる…。忌まわしい記憶を吐き出すには、それを補って余りある支えが必要だ。時間という薬が効くこともある。
 「話したところで過去は変わらない。でも、大きな荷物を一つ下ろすことで、楽になれたと信じたい」


 4月初旬、3カ月近くを一時保護所で過ごした女子高校生が自宅に帰った。退所の日、「お世話になりました」と笑顔であいさつする高校生を、職員たちは見送った。
 児相に来る子どもたちの中には、職員がおよびもつかない遍歴を経ている10代が少なくない。あの高校生は勘のいい子だけに、虐待を認めたら家には帰れないと察したのかもしれない。葛藤(かっとう)の末に家に帰ることを望んだのだろう。推測だが、遠阪さんはそう思う。
 通学する高校にも事情を伝えている。定期的に児相に通うことになっている。
 「孤独だった以前とは違う。支援の入り口に立ったと私は思います」

=文中仮名=
(坂口紘美)

2009/06/01



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