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[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(6)学習生きる自信つけるため 小さなことでもマル

 
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「楽しく学べるように」。色紙に俳句を書かせるなど、職員は授業に工夫を凝らす
 児童相談所(児相)内にある一時保護所。昼休みが終わったのだろうか。子どもたちのざわめきが、学習棟に伝わってきた。午後の学習時間の始まりだ。
 中学生クラスの数学を受け持つ児童指導員(22)が、手作りの百ます計算プリントを配る。問題を解くとともに、指定された数字の升目を塗りつぶすと、プリントに「利」の漢字が浮かび上がった。
 「これなら楽しくできると思って」
 外出が原則的に禁じられるため、保護された子どもたちは登校することができない。復帰後授業についていけるよう、この一時保護所では午前と午後の計三時間、学習の時間を設けている。
 二人いる学習指導員は教員OB。小学生クラスの授業と中学生の英語以外は、代わりに児童指導員や保育士が教える。教科書やドリル、手作りプリントは使い古しだ。
 人材難や予算不足などで、午前中しか学習時間を設けられない一時保護所も多い。


 小学生クラスを何度かのぞいた。
 「なあ、これどうやるん」
 算数のプリントを前に難しそうな顔の男子生徒が、記者のひじをつついてきた。登校していないが、今春から中学一年。勉強がかなり遅れており、学習時間では小学生クラスのままだ。
 三けたの引き算の筆算問題。繰り下がりがのみ込めないようだ。「隣の位から借りて」。指を折りながら一の位から計算。答えに赤丸を付けると、笑顔とVサインが返ってきた。
 生徒の腕には、深い傷あとがある。精神的に不安定な母親から切りつけられたという。幼いころに両親は離婚。小学二年のとき、再婚し妹が生まれた。寝込むことが多い母、仕事で帰りが遅い継父。妹の面倒をみるうち、学校に通えない日が増え、勉強についていけなくなった。自分に自信を持てず、何をしても長続きしない。「どうせ無理」が口癖になっている。
 「家庭環境が不登校を引き起こすケースは多いんです」
 元中学校長の学習指導員(62)は言う。家庭が不安定で勉強が手に付かない。クラスメートとの差は埋めようがないくらい広がっていく。
 「子ども自身もコンプレックスを感じている。だからここで一つでもできることを増やしてやりたい」
 休憩時間にさっきの生徒と雑談していると、こんなことを言い出した。
 「家にいたときな、『一週間以内に殺す』って僕あてに脅迫文が毎日、届いたんや。家族や学校の先生や警察に話したけど聞いてくれなかった」
 事実かどうか分からない。ただ表情からは大人への強い不信感が感じ取れた。
 「誰も助けてくれない。先生がもし、僕の立場だったらどうする?」
 真っすぐ見据えられ、記者は何も言えなかった。


 生徒は一カ月間で九九を習得した。同じころ、児相は児童養護施設への入所を決定した。
 一時保護所を出る前日、学習指導員は九九を書いた単語帳を贈った。「これ施設に持って行ってええ?」。生徒はとても気に入った様子だった。
 多分、これから生きていく上で、多くのハンディがあるだろう。だからこそ、そのとき支えになるものを持っていてほしい。学習指導員だけでなく職員皆に重なる思いだ。
 「ここではどんな小さなことでもマルをあげるんです。生きる自信をつけるために」

(坂口紘美)

2009/05/28



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