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[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(5)届かなかった思い日記に書かれた「反省」 信じていたのに…

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(6)学習生きる自信つけるため 小さなことでもマル <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(4)一時保護所よく生きてこれたな そう思う子どもがいる
子どもたちが寝静まった午前0時半。異常がないか、職員が巡回していた
 交換日記帳と呼ばれるノートがある。一時保護所の子どもが内省を深められるよう、小学生以上に入所理由や短所を書かせ、職員が感想や質問を記す。
  〈明日も一日がんばりたいです〉
  一月十日、その文を最後に、ある男子中学生と職員のやり取りは断ち切られた。


  男子中学生が一時保護所に来たのは昨年の冬休み。金髪にピアス、まゆをそり落としていた。
  精神的に不安定な母親が入退院を繰り返し、幼いころから自宅と親せきの家を行き来した。甘えたい気持ちを押し殺し、手のかからない素直な子を通してきたが、数カ月前から家出を繰り返した。乱れた生活を立て直すため、一時保護所へ入った。
  男性指導員の須本さん(22)が頭にバリカンを入れた。強がってはいてもあどけない横顔。「背伸びしてるんやろな」。
  二、三行で止まってしまう子どももいる中、中学生は毎日、これまでの経緯や反省の言葉を整った字でびっしりつづった。
  「根は素直。思春期によくある一過性ですぐ家に帰れるだろう」。須本さんを含め、職員は皆そう思っていた。
  入所三日目、中学生は一時保護所を抜け出した。いわゆる「トンコ」だ。
  警察に保護願を出し、担当の児童福祉司が母親に謝罪した。仲間といるところを見つかって、一時保護所に戻されたのは一週間後。しゅんとした様子の中学生はその日こうつづった。
  〈とてもめいわくやしんぱいをかけたと思いました。しかし、もうこのようなことは、自分のしょうらいや友達と会えなくなることを気づいたのでがんばります〉
  それは本心でなかったのだろうか。十日後、夜になり職員の目が届きにくくなったのを見計らったかのように、再び姿を消した。須本さんの夜勤の日だった。
  最初のトンコから戻った翌日、「またする」と同室の中学生に話していたという。後でそれを聞いた須本さんは全身の力が抜けるような思いがした。一カ月後、友達の家にいることがわかったが、その間に万引をしていた。一時保護所に戻ることなく、家庭裁判所へ送致された。


  職員の熱意が子ども一人一人に届くわけではない。それでも、限られた時間の中、職員は最善を尽くしている。立ち直った子どもからの手紙で近況が伝えられるといった「仕事冥利(みょうり)」を味わうこともあれば、誘惑に負けてしまう子どもにどうすることもできないこともある。今回の男子中学生のように。
  無力感や腹立たしさ、自責の念…。二度裏切られても、須本さんは保護されるまで中学生の身を案じていた。
  最後に交わした会話が忘れられない。夕食後、布団カバーを抱えて須本さんが大部屋に入った時、中学生はベッドに寝そべって漫画を読んでいた。「カバー替えてな」。「わかりました」。部屋を出て数分後、警報が鳴った。
  前日、交換日記帳に中学生はこう書いていた。
  〈僕のかこでの足りないところは悪いことを悪いとわかっておきながらしてしまうことです〉

=文中仮名
(坂口紘美)

2009/05/26



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