あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(4)一時保護所よく生きてこれたな そう思う子どもがいる

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(5)届かなかった思い日記に書かれた「反省」 信じていたのに… <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(3)感情移入「たたく前に連絡を」 父親に携帯番号教えた
鉛筆の先で手首を傷つけた子どもがいた。文房具は厳しく管理している。
 家庭復帰か施設入所か、処遇決定までの間、子どもが一カ月程度暮らす一時保護所。桜が散るころの一週間、記者は通い詰めた。
 二段ベッドがいくつも並んだ大部屋や食堂などが入った居住棟と学習棟から成る。グラウンドはドッジボールがやっとできるほど。親にカミソリで切りつけられた小学生、母親が重病のためやむなく預けられた幼児、親に暴力を振るう中学生…。取材した時期、二歳から十七歳まで十三人が保育士や学習指導員、看護師らと集団生活を送っていた。


 午前八時四十五分。夜勤明けの職員から日勤へ引き継ぎが始まった。
 「夜、上半身裸で部屋を走るので注意しました」「好きな男性指導員とほかの女子が話していたのに腹を立てています」…。職員が一人一人の行動を報告する。
 「入所してもう二カ月か。ストレスもたまるよなあ」。裸で走る男児の行動に児童指導員の加藤さん(30)はつぶやいた。
 ささいな点に至るまで行動や性格を観察する。人の揚げ足ばかり取る、気持ちの切り替えができないといった言動から、親子関係が壊れた理由や修復のヒントをさぐる。
 九時十五分、子どもたちがグラウンドに並んだ。日課のラジオ体操だ。終わった後は体育。この日は縄跳び。二重跳びで回数を競った。
  加藤さんは三年前、児童養護施設から異動した。「最初は驚きの連続だった」という。
 養護施設は親の経済的な問題や虐待などの背景がある子どもが大半だが、一時保護所は違う。非行、不登校、虐待。抱えた問題も性格も何もかも異なる子どもが、頻繁に入れ替わるため、厳しいルールが必要だ。
 学習室での理科の授業、加藤さんは筆箱を子どもに渡した。中には、名前シールが張られた鉛筆と消しゴムが人数分だけ。終了後は折れた芯まで回収し、プリントは破れがないか確認する。
 「子ども同士が連絡先を交換しないためです」
 いぶかる記者に加藤さんが教えてくれた。以前、非行で入所していた少年が電話番号を交換し、退所後ぐるになって警察沙汰(ざた)を起こしたことがあったという。
 午後三時半、おやつの手作りプリンを食べた後、子どもたちはトイレや階段、大部屋に散った。掃除は一日二回。食堂だけはさらに毎食後、ぞうきんがけをする。成果が目に見えるとともに達成感を得られ、自信にもなるからだ。築二十二年の居住棟の廊下は、顔が映るほど磨き上げられている。
 「職員は口うるさいし、自由はない。さぞいやがるだろうなと思っていたら、子どもらが結構居心地よさそうなのには驚いた」
 夕食は豆腐ハンバーグ。女子中学生が言った。「豆腐ハンバーグって自分で作れるんや」。別のテーブルの男子中学生は「明日は焼き肉。家では食べられへんし、絶対お代わりする」と無邪気に笑った。
 日に三度食べられる。毎日お風呂に入る。口やかましいが、世話を焼く大人がいる。
 記者がごく当たり前と思っていたことに、一時保護所の子どもたちは飢えていた。これまでずっと。
 「よく生きてこれたなと思う子もいます。ここでちょっと休ませて、次の行き先を見つけてやりたいんです」

=文中仮名=
(坂口紘美)

2009/05/25



もくじ   3kaku_s_L.png   [Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境
FC2 Blog Ranking
*Edit
   
  • 【<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(5)届かなかった思い日記に書かれた「反省」 信じていたのに…】へ
  • 【<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(3)感情移入「たたく前に連絡を」 父親に携帯番号教えた】へ