あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(2)親子分離「これでよかったのか」 決意信じて支えていく

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(3)感情移入「たたく前に連絡を」 父親に携帯番号教えた <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(1)24時間体制判断に迷ったときは 子どもの幸せを最優先
藤原さんの手帳。150件の虐待事案が一目で分かるよう整理されている
 兵庫県内の児童相談所(児相)で虐待を担当する藤原さん(38)は、一月下旬、児童自立支援施設に向かう男子中学生を見送った。
 中学生と向き合った期間は丸二年。家を閉め出され「育児放棄」とみなされた最初のケースから数え、一時保護所の入所は四回に及んだ。
 母親は精神的に不安定。お互いに過度に依存する母子関係で、ささいなことから親子は衝突、その度家出を繰り返した。
 「もう私には見られません」「このままでは子どもに何するか分からない」。母親から電話がある度、藤原さんら職員は家に走った。
 いったん施設に入れ、親子が問題を克服した後、再統合を。藤原さんは比較的早い段階からそう考えていたが、結論を急がなかった。
 「毎回子どもは『家に帰りたい』、親は『もう少し頑張る』と言い張るが、問題の本質に気付いていない。無理やり離してもうまくいかない」
 母親自身が児相の介入を求めており、深刻な事態は考えにくい。そう判断した。


 児相の支援は、在宅指導と施設入所に大別される。前者は再発リスクに応じ、親族や保育所などが見守る継続観察、児相が定期的に面接する継続指導、行政処分で通所させる児童福祉司指導の三区分。後者は親子分離、いわゆる入所施設措置だ。マニュアルに加え、長年の経験を踏まえ合議制で判断する。この児相は年間、約三百件の児童虐待に対応し、八割は在宅指導だ。
 最悪の事態を考えると、親子分離が最善かもしれない。それでも、安易に答えを出さないよう、藤原さんは自分をいましめている。
 「子どもを最優先にしつつも、分離だけが僕らの仕事じゃない。その先が大事なんです」
 介入を拒んでいた親が家庭訪問に応じたり、時間通りに面接に来たり、心を開いてくれる。ささいでも、そんな家族の変化から好転の兆しを感じ取る。職員も人の子だ。「家に帰りたい」と泣く子どもと「今度こそ」と懇願する親を前にすると、まず信じる方にかけたくなる。
 「はたから見たら『何でこんな家に帰すんだ』と思うかもしれない。でも、親族や地域の支えで何とか暮らしていけるなら、子どもを親といさせてやりたい」
 それでも、在宅指導の判断にはためらう。最終決定に当たる援助会議では「その判断は甘い」「何かあったらどうする」と同僚や上司らから突き上げられる。
 親と交わした約束が果たされなかったことは数多い。自分の見通しの甘さを痛感した苦いケースもある。


 昨年十二月下旬、中学生はこぶしで母親を殴った。
 「家に帰っても、同じことの繰り返しや」。藤原さんとの面談中、中学生が発した言葉は以前と違い、決意が感じられた。
 「他人を受け入れず、暴力を振るうのがおまえの弱さや。一年間いろんな子と生活して克服しよう」。うつむいていた中学生は、しばらくして顔を上げた。「分かった。おれ頑張るわ」
 児童自立支援施設に向かう日、児相の職員にあいさつする中学生の目は潤んでいた。母親も来ていた。職員から「頑張れよ」「すぐ会いに行くからな」と声が上がった。
 「本当に良かったのか、すぐには答えは出ない。あの親子の決意を信じて、これからも支えていくだけです」

=文中仮名=
(坂口紘美)

2009/05/19



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