あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(1)24時間体制判断に迷ったときは 子どもの幸せを最優先

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童相談所編(2)親子分離「これでよかったのか」 決意信じて支えていく <神戸新聞>ずっと家族がほしかった ステップファミリー編(11)取材を終えて葛藤なき家庭はない 涙を秘め生きている
家庭や地域から寄せられる相談や情報。一件一件がファイルにまとめられている
イルミネーションが街を彩る十二月下旬、兵庫県内の児童相談所(児相)の電話が鳴った。夜七時を過ぎていた。
 「虐待が疑われる女児がいます」
 保育所からだった。一歳一カ月。地域の診療所で腕に不自然な骨折が確認され、今から総合病院に連れて行くという。
 児相では虐待担当の三人の男性職員が残業していた。女児の地域を受け持つ児童福祉司の藤原さん(38)はすぐさま副所長の携帯電話を鳴らした。
 さまざまな状況を想定した家庭介入の判断基準がある。当事者が意思表示できない幼児で不自然な骨折というこの場合は緊急性がかなり高い。
 「即時保護を」。副所長と結論を出し、三人は公用車で病院に急いだ。
 病院には母親と未就学の長女が待っていた。診察の結果、足や胸にも骨折の跡が見つかった。虐待の可能性が極めて高いが、母親は「分からない」と言い張り要領を得ない。
 「一歳の子が何カ所も骨を折るなんて、普通は考えられへんよね。うちでしばらく預からせてもらいますね」
 藤原さんが諭すように話す。重傷の次女は入院、念のため長女は一時保護所で預かることにした。母親を帰し、職員が朝まで次女に付き添うことになった。
 児相内の一時保護所で待機していた女性職員は、パジャマに着替えさせる際、長女の体に素早く目を通した。あざや目立った傷はなかった。
 藤原さんが病院から児相に戻ったのは、十一時過ぎ。まだ仕事は終わらない。所長に提出する報告書作成や翌日からの対応の検討…。家路に就いたのは、日付が変わった二時だった。
 「親にはきっと事情がある。それでも判断に迷ったときは子どもの幸せを最優先する」
 児相職員としてさまざまな親子と出会った十一年、いつも自分に言い聞かせている言葉を、藤原さんはつぶやいた。


 この児相には年間五千件もの相談が寄せられる。虐待だけではない。非行や障害に絡む問題も多い。
 火曜と金曜に藤原さんら責任者十五人が集まって、家庭や地域から寄せられた相談について対応を協議する。受理会議と呼ばれる打ち合わせに記者は同席した。
 養育放棄らしい事例が報告された。幼い兄弟が「おやつちょうだい」と近所を訪ね回っているという。職員が近く家庭訪問することになった。
 親に暴力を振るう高校生、援助交際していた児童養護施設の十代、多動で友達と衝突することが多い四歳児。この日はスムーズに進み、一時間で二十件の対応が決まった。
 「感情移入しすぎると、仕事にならない。割り切ることも大事」
 藤原さんの茶色の革の手帳には、過去一年間に受理した約百五十の虐待事案が書き込まれている。四人の部下がいるが、指示するのは自分。早朝深夜、休日の呼び出しも当たり前だ。
 子どもが一時保護された後、「今から手首切る」と児相に電話してきた母親。立ち入り調査に対し「近所の目もあるのに」と怒鳴り込んできた祖父母。何よりやるせないのは、子どもに暴力を振るいながら「言うことを聞かない子どもの方が悪い」と言い放つ親に接したときだ。
 「それでも子どもは『家に帰りたい』と泣くんです。やりきれないです」


 増え続ける児童虐待、非行、養育困難。崩壊しかかった家族に児童相談所は何ができるだろう。親子の分離と修復。忙殺される職員の目に映った家族の今を伝えたい。

=文中仮名=
(この連載は、坂口紘美が担当します)

2009/05/18



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