あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった ステップファミリー編(5)揺れる境界線「だってパパ傷つくもん」 本当のこと言えなかった

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった ステップファミリー編(6)継母の苦悩比べられる重荷、嫉妬。 再び選んだ離婚の道 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった ステップファミリー編(4)子どもの幸せ「何で離婚したん!」 娘が初めて声を荒らげた
長女は寛さんのために「もみもみクラブ」を作った。使用済みの肩たたき券が何枚もあった
 「何で離婚したん!」
 小学二年の長女の叫びが、法子さん(31)の胸に突き刺さった。二〇〇七年八月、離婚した夫のマンションからの帰り道だった。
 法子さんの心も折れそうだった。数日前、新しい恋人ができたことを元夫から告げられていた。「離婚して二年以上。これからはお互いの幸せを考えよう」と電話で切り出された。「もうおまえたちのことを一番には考えられへん」。未練などないのに、このせりふがこたえた。
 高校時代からの友人寛さん(31)に、不安な胸の内を明かした。女友達に相談しても同情されるだけ。男性から活を入れてほしかった。「そんな弱気でどうする」。ぶっきらぼうだが、温かい言葉に励まされた。たびたび相談するうち、子どもが好きな寛さんは、長女とバドミントンをしたり絵を描いたりして遊ぶようになった。長女は寛さんをニックネームで呼び、気がつくと食卓を囲み、川の字で寝るようになっていた。
 法子さんの提案でその年の冬、寛さんは法子さんのマンションに引っ越した。


 寛さんを受け入れたように見えた長女だったが、本心は違った。遊びに来たクラスメートが、寛さんを父親と勘違いすると、即座に「ママの友達」と否定した。一年が過ぎるころ、友達の前や日記帳の中では「お父さん」と呼ぶようになった。クラスメートにも人気の寛さんが、友達と楽しそうにしていると、長女が焼きもちを焼くこともあった。
 今年五月、ゴールデンウイークが明け、別れた夫の両親が長女を送ってきた。離婚しても祖父母と孫であることに変わりはないと週一回、法子さんは長女を祖父母の家に泊まりに行かせている。「聞いたよ。いい人だね」と法子さんは祖母に耳打ちされた。祖父母の家で長女は、寛さんとドッジボールをして遊んだこと、イラストを描いてもらったことをうれしそうに話したという。
 もちろん、実父を慕う気持ちがなくなったわけではない。
 祖父母の家に遊びに行ったとき、偶然実父が居合わせたことがあった。「まだママと二人で暮らしてるん?」と尋ねられた長女は、寛さんのことを口に出せなかった。「だって本当のこと言ったら、パパ傷つくもん。どう答えようかめっちゃ緊張した」。そのときの様子を話す長女の顔は真剣そのものだった。


 長女にとっての「お父さん」はどちらなのだろうか。
 「寛さんがお父さんになったらどう?」と法子さんが尋ねたことがある。「えー」と困ったように首をひねり、そのうち泣きそうな顔になった。寛さんをお父さんと認めたら、パパはどうなるの。長女の顔にはそう書いてあった。
 戸籍上、親や祖父母でなくなっても、長女にとっては血のつながった親や祖父母だ。法子さんは気兼ねなく会える今の関係を続けたいと思っている。寛さんと同居して間もないころ、「離婚したのになぜ会わせるのか」と不満そうな寛さんを必死に説得したのも、そのためだ。
 それでも不安は消えない。いつまでそんな関係が成り立つのか。再婚すれば、寛さんは父親として長女に向き合わねばならない。「パパ」の面影を引きずる長女をどう思うだろう。祖父母も気兼ねするのではないか。
 家族の人数を聞かれた長女は九人と答えたことがある。そこには、寛さんも別れた夫もその両親も入っていた。
 「娘を大事に思っている人は多ければ多いほどいい。でも、家族の境目があいまいになるのも不安なんです」
 法子さんの心は揺れている。

=文中仮名=
(坂口紘美)

2008/12/31



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