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[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった ステップファミリー編 (2)母の代理切り刻まれた顔写真 初めて寂しさに触れた

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった ステップファミリー編(3)理想像夫婦は主将とマネジャー 子どもは親を見て育つ <神戸新聞>ずっと家族がほしかった ステップファミリー編(1)ひとつ屋根の下一人で育てる苦労より、継父母の苦労を選ぶ
家族団らん。思春期を迎え、最近は同性の継子同士でいることが増えた
 「分け隔てなく四人の子を育てよう」
  九年前、二人の子どもを連れ、栗田洋一さん(44)と和子さん(44)は再婚した。
  和子さんが気になっていたのは、洋一さんが前の配偶者との間にもうけた長男だった。留守がちだった実母との関係が希薄で、再婚前から和子さんに甘えた。「早く信頼関係を築かなければ」。気持ちばかりが急(せ)いた。
  和子さんになじもうと、小学二年の長男も必死だった。同居直後から「お母さん」と呼び、苦手な野菜も残さず食べた。
  程なく、和子さんの連れ子の次男との間で軋轢(あつれき)が生じた。和子さんの前では従順な長男は、夫妻の目を盗んで、ベーゴマを一学年下の次男にぶつけたり、ゲームソフトを取り上げたりしていた。
  二、三カ月もたつころ、和子さんの子育ては行き詰まった。「四人分け隔てなく」。頭でそう言い聞かせても、遠慮からか継子の長男や長女には強い態度で臨めない。長男を叱(しか)ることができず、次男は二人きりになると「お母さんはあの子らばかりかばう」と泣いた。
  和子さんが気軽に用事を頼めるのは決まって次男や次女。継子の長男や長女が悪いことをしても小言程度で済ませ、次男次女のように頭をごつんとやってまでしかることはない。微妙な愛情の差を子どもたちも肌で感じていた。


  同居から半年ほどした二〇〇〇年四月、“事件”が起きた。
  和子さんの裁縫箱に張られた次男の赤ちゃんのころの顔写真が、カッターナイフで切られていた。「死ね」の字が読み取れた。初めて長男を真剣に叱ったが、頑(がん)として認めない。
  「人を傷つけてうそをつくような子、私はようみれん。考え直したい」
  和子さんは洋一さんに感情をぶちまけた。洋一さんにただされた長男は、泣きながら認めたが、理由を最後まで言わなかった。べそをかく様子から、和子さんは長男の寂しさに触れたような気がした。
  「正直に言ってくれてありがとう」。心は静まり、穏やかな声で諭すことができた。


  「肉親と他人の違いはどうしてもある。ならば母親の代理として彼らにできることをしよう」
  継子の子育てに悩んでいた和子さんは“事件”以降、現実を受け入れた。そのころ、新しい命を授かったことが分かった。〇一年一月、夫妻に三男が生まれた。
  赤ちゃんを囲む輪が生まれ、おむつ交換の度に子どもたちが大騒ぎするようになった。ぎくしゃくすることが多かったきょうだいの距離が幾分縮まった。「やっと普通に近づけたかな」という安堵(あんど)感。いざとなったら、また自分の子だけで暮らそう。心の片隅に抱いていた思いは吹っ切れた。
  再婚した夫婦の間に生まれた子どもは「セメントベビー」と呼ばれる。ゆっくりと、でもしっかりと家族や夫婦の絆(きずな)を固めるからだ。
  その後、三女が生まれ育児に追われる毎日、和子さんはもう長男や長女をしかることにためらいはない。思春期の長女はまだ隠し事が多いが、以前ほどは気にならない。
  「子どもが大人になっていつか『あー、お父さんとお母さん頑張ってたな』と分かってもらえたらいい。みんなが今、この八人の集まりを『家族』と思っている。それで十分」

(坂口紘美)

2008/12/26



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