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[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった(8)命をつなぐ子どもたちに幸せを

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった ステップファミリー編(1)ひとつ屋根の下一人で育てる苦労より、継父母の苦労を選ぶ <神戸新聞>ずっと家族がほしかった(7)手作り新聞近況知らせ深まる仲
ある里親の家。里子を迎え入れるとき、里親夫妻はスヌーピーのマグカップを買った
 乳児院や児童養護施設で何人の子どもたちに出会っただろう。
  生んだ親と暮らせない子どもたちに里親を探す長期連載「あなたの愛の手を」を担当して二年がたつ。未婚の出産や経済的困窮、親の暴力、育児放棄…。熊本市の慈恵病院が設置した「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)のように、親が子どもを手放す現実は兵庫県でも変わりはない。
  出自を知らない無邪気な乳幼児の笑顔に触れた帰り道、いつも考えるのは、子どもたちの幸せや未来だった。それが里親たちを訪ね歩くきっかけになった。


  「奉仕の精神に満ちあふれた人」。社会はこんな里親像を描くだろうが、実際は違う。里子の成長に一喜一憂し、ときには腹を立て、思春期には思い悩む。ごく普通の人たちだ。
  「いっそこの里子と心中してしまおうか。いや、ほかの里子のためにもそれはできない。その繰り返し」
  取材中、経験豊富なベテラン里親が、声を詰まらせたことがあった。高校生の里子に殴られ、生傷が絶えなかった。憎たらしいと思ったが、心から憎むことはできなかった。実父から虐待されていた里子の手首に、リストカットの傷あとがいくつもあったからだ。
  「血がつながっていないから、かっとうを感じるんでしょうか」
  子育ての楽しさと苦労は、恐らく実子も里子も変わらないだろう。ただ、里子たちは皆喪失感を抱えている。受け止めるには重すぎる過去がある子もいる。何度裏切られても、里親は彼らを信じていた。
  里子を支えるのは、里親だけではなかった。里親の親せきが家族の一員として里子に接する家庭があった。気負いもてらいもないごく自然な振る舞い。「血のつながりがなくても家族になれる」。一家の取材からそう教えられた。


  「赤ちゃんポスト」には、一年間で十七人の子どもが預けられた。うち八人は親の身元が分からないという。
  「匿名で赤ちゃんポストに預けるのはやめてほしい」
  取材で出会った男性は言った。生後まもなく、神社の境内に置き去りにされた彼は親の顔はもちろん、名前すら知らない。
  子どもは遅かれ早かれ“出自探し”をする。だから親は、子どもとの唯一の接点である病院には、せめて名前だけでも告げてほしいと願う。
  「自分はだれから生まれたのか、いつか考える日が来る。命のつながりを実感することで、自信を持って生きていける。社会は助けられた命のその後に思いを寄せてほしい」
  自分は何者なのか、ずっと苦しんできた男性の言葉は重かった。
  十七人のうち、兵庫県内の施設に引き取られた子もいる。
  私たちの社会はどんな「愛の手」を差し伸べることができるのか。「生まれてきてよかった」と誰もが思えるために。「赤ちゃんポスト」は熊本だけの問題ではない。

(坂口紘美)
=おわり=

2008/06/02



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