あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編(9)ホーム実の親にはかなわないけど、離れても気持ちは通じ合う

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編(10)大人になるいくつも資格を取った 「人に頼らず生きていく」 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編(8)ルーツ「怖かった」「会いたいなあ」 小さな胸に正と負の感情
七人家族だけに洗濯ものを干すのも一仕事。だれかが作ったてるてる坊主が風にゆれていた。
 児童養護施設のすぐ近くにファミリーグループホームと呼ばれる分園型施設がある。住宅街の一角の一軒家。職員が小学生、高校生と共同生活をしている。
 職員が入れ替わるグループホームに比べ、一緒に暮らすことで子どもに密接にかかわれるという利点がある。施設にありがちな細かい規則もなく、環境もより家庭に近い。四六時中子どもと向き合う分、負担は小さくないが、職員の熱意に応えて二〇〇二年に始めた。
 「大きな施設ではできんことや」
 園長に勧められホームを訪ねた。五人の子どもから母親のように慕われる道子さん(43)がいた。


 道子さんは短大を卒業後、施設に就職した。
 朝六時半に起床。礼拝堂での祈りから一日が始まった。掃除、食事、片づけ、児童の送り出し…。六十人が集団生活する大舎制は、あまりに慌ただしく、日課をこなすだけで精いっぱい。「一人一人を大切にしたい」という理想と現実のジレンマに陥った。
 二〇〇一年、家庭的な雰囲気を重視したグループホームへ、施設の形態は大きく変わったが、一グループには約十人の子どもがいる。担当する子どもを四人の職員で取り決めているが、交代勤務のため継続的なかかわりは難しい。道子さんは施設の限界を感じていた。
 「わずかでも、その子の人生に影響を与えられるような養護をしたい。その子の人生を請け負う覚悟で付き合いたい」
 結婚後、ファミリーグループホームの開設を園長に頼み、認められた。


 ホームの和室で小学生の女子二人に挟まれて道子さん夫妻は眠る。
 四年前から暮らす児童は最初、川の字に敷かれた布団に大喜びした。両親から虐待を受けた彼女は家族が並んで寝ることが夢だった。道子さんとつないだ手を離さなかった。
 二十四時間三百六十五日、いつも一緒にいるので本当の家族のような気がする。
 「お母さんに会いたいなあ」といった何気ない子どもの言葉にふっと寂しくなる。そのときは自分の立ち位置を確認する。「この子たちの家族を含め、支えていこう」。
 そう思えるようになったのは、ホーム開設時から三年間、暮らした男児との日々からだ。
 気持ちの表現が下手で、心を許せる大人か見極める「試し行動」が激しかった。しかると、机の下に隠れ夕食にも出てこない。一時間以上、泣き叫ぶこともよくあったが、根気よく付き合った。次第に心を開き、夫妻を親のように慕った。
 家庭復帰が決まって男児がホームを去る日、夫妻は涙が止まらなかった。どんなに頑張っても実の親にはかなわない。心にぽっかり穴があいた。
 家に帰った後も、男児は家族と一緒に夫妻を訪ねてきた。両親、きょうだいと暮らし、元気そうだ。両親の子育ての相談に乗ることもあった。
 小学校の運動会や音楽会が近づくと、招待状が届く。道子さんはバレンタインデーにはチョコレートを送る。
 ホームを始めた当初は、してあげることばかり考えていたが、実は子どもたちから多くを受け取っていた。
 「離れていても気持ちは通じ合う。子どもたちが巣立った後も帰ってこられる場所であり続けたい。それが家族だと思う」

=文中仮名
(坂口紘美)

2008/08/21



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