あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編(4)親子の糸壁に張った携帯の番号 いつかお父さんが迎えに来る

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編(5)再統合初詣での湊川神社で祈った「一緒に暮らせますように」 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編(3)ある虐待それでも家に帰りたい。かなわぬ望み、体が悲鳴
子どもとおっちゃんは仲良しだ。髪を切る間、学校のこと、家庭のことと話題は尽きない
 七月二十一日の「海の日」。うだるような暑さの礼拝堂の中で、はさみの音が軽やかに響いていた。
 月に一度の「散髪の日」には、ボランティアの理容師の男性(69)が児童養護施設にやってくる。伸びた髪をすっきりそろえてもらい、もらったあめをほおばる小学二年の良君は上機嫌だった。
 「夏休みはお父さんが迎えにくんねん。来年はもうおっちゃんにも会われへんなあ」
 良君と兄の拓君は継母から暴力を受けた。継母の育児不安が原因だった。二人を案じた父親は悩んだ末に施設に預けた。
 それから四年。継母の実子とその後生まれた赤ちゃんはずっと家で暮らしている。たまに連絡してくる父親は兄弟に「もうすぐ帰れるよ」と約束しているらしいが、それが難しいことを職員は知っている。


 二人は父親が大好きだ。上手に甘えられない拓君はその分、面会を心待ちにしている。
 いざ会うと、拓君は弟に遠慮してか、なかなか父親のそばに行けない。「大きくなったんですよ。お父さんに抱っこして確かめてもらったら」。見かねた職員がこんな助け船を出すこともある。
 実の子を施設に預けた罪悪感に父親はずっと苦しんでいる。一緒に暮らしたいと願っている。でも、やっと落ち着いた今の生活に二人が戻れば、継母はまた情緒不安に陥り、今度こそ家庭が崩壊するかもしれない。板挟みになった父親に、職員が強い態度で出ることは逆効果でしかなく、遠のきがちな面会を途絶えさせかねない。
 「私たちがするべきことは、子どもと父親をしっかりつなぎとめておくことです」と職員は話した。
 離れた時間が長くなるほど、親も子もその生活に慣れてしまい、家庭復帰のハードルが高くなる。最初のうちは「早く引き取りたい」と頻繁に面会に来た親が三年もたつと「育てる自信がない」「ここで育てられる方が幸せだ」と態度を翻す。壊れてしまった家庭を職員はいやというほど見てきた。


 一学期の授業参観日の前夜、拓君が突然「お父さんに電話したい」と言い出した。こんなことは初めてだった。
 「お父さん? あした授業参観があるんやけど来てくれる?」
 顔を紅潮させ、受話器を握りしめる拓君。五分ほど話した後、職員が代わった。「いきなりでびっくりしました」。そう話す父親の声も心なしか弾んでいた。授業参観は職員が代わりに出席したが、拓君は弟のいないところで父親と話をできたことを喜でいた。
 父親の携帯電話の番号をメモした紙を、拓君は大切にしている。ベッドサイドに張っていたこともあった。
 「もうぼく、お父さんの番号覚えてるで」と自慢する。電話する職員の指先を目で追い掛け「ほら、ぼくの覚えているのと一緒や」と笑う。
 職員は拓君が連絡を待ちこがれていることを、父親に伝えている。切れそうになる親子の糸をつなぎ止めるために。
 夏休みの間に、父親は拓君と良君を連れて外出する約束をしている。日にちはまだ決まっていない。
 一度離れてしまった家族は元通りにならないのだろうか。
 「修復は確かに難しく、時間がかかる。でも親子の強い思いと多くの人の支えがあれば家族になれるんです」
 そう言って園長はある高校生を記者に紹介した。

=文中仮名=
(坂口紘美)

2008/08/15



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