あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編(3)ある虐待それでも家に帰りたい。かなわぬ望み、体が悲鳴

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編(4)親子の糸壁に張った携帯の番号 いつかお父さんが迎えに来る <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編(2)ルール「願望」と「わがまま」。その狭間で子も職員も悩む
 「モンタはぼくの友達」。枕と布団を作り、毎晩一緒に眠る
 児童養護施設に通い始めて三日目、小柄な少年に出会った。小学四年の拓君。四年前にここに来て、二つ下の弟も敷地内の別のグループホームで暮らしている。
  「姉さん、闘いごっこしよう」と胸に飛び込んでくる弟に比べ、拓君は人前では取り澄ましたような態度。記者に知らん顔をする。でもそれは本当の拓君ではない。二人になるとくっついて離れない。
  晩ご飯の後、拓君の部屋で「お化け屋敷ごっこ」をして遊んでいたときだ。「目を開けちゃだめだよ」と言った後、お化け役の拓君は記者の胸を指でつついて、顔をうずめてきた。
  愛情不足から拓君は母性へのあこがれが人一倍強い。女性職員や実習に来た女子学生の胸に手を伸ばすこともある。「照れと女性への恐怖心から、ストレートに甘えられない」。職員はそうみている。
  兄弟が幼い頃、両親は離婚。二人は父親に育てられることになった。父の再婚相手にも子どもがおり、その後、赤ちゃんが生まれた。
  育児に追われる継母は血のつながりのない兄弟のしつけに悩んだ。親の顔色を見て振る舞う弟と違い、拓君は甘えや要求をぶつけた。その振る舞いがときに扱いにくい子どもとして映ったようだった。
  しつけのつもりが次第に暴力へエスカレートした。継母は拓君をベランダに連れ出して繰り返し殴り、けった。
  父親は悩んだ末、二人を施設に預けた。拓君が幼稚園の年長組のときだ。


  拓君は食が細く、年齢の割に小柄だ。自分の気持ちを言葉にするのが下手で、年上の子や職員に強い口調でしかられると、体が硬直してしまう。虐待を受けた子どもによくみられる傾向だ。
  それでも家に帰りたい。そしてお母さんにぎゅっと抱きしめてほしい。かなわぬ望みに、小さな体が悲鳴を上げる。
  一学期の終業式の前日。施設の電話が鳴った。拓君が学校で吐いてしまったのだという。
  「今月もあかんかったか」。迎えに行く職員はつぶやいた。
  拓君には吐き癖がある。昨年は月の最初の月曜日になると、決まったように吐いていた。今年に入り、少しおさまりかけたが、今でも月に一度はこんな日がある。
  昨年、グループホームに同い年の子が二人いた。その子たちが親の話をしきりにするせいか、拓君は昨年、「四年生になったら家に帰る」とよく話していた。「四年生」はいつからか「五年生」に変わった。親との関係は不安定で、一時帰宅もままならない。


  拓君は夜、いつもなかなか寝つけない。そんなとき必ず、「モンタ」と呼ぶテナガザルのぬいぐるみに話しかける。
  「ぼく眠くないよ。どうしたらいい」
  二人部屋の相手の男児の机やベッドは、家族が贈ったおもちゃでにぎやかだ。ぬいぐるみは、私物の少ない拓君を気遣い、職員が渡したものだった。
  拓君はずっと自分の中のしんどい気持ちと闘っている。悲しい現実だが、職員は見守るしかできない。

=文中仮名=
(坂口紘美)

2008/08/14



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