あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編(2)ルール「願望」と「わがまま」。その狭間で子も職員も悩む

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編(3)ある虐待それでも家に帰りたい。かなわぬ望み、体が悲鳴 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編 (1)集団生活甘えたい、独占したい…。抑えた思いが時にあふれ出す
 「甘えん坊ですねえ」。職員が言うと「違うもん」。でも顔はとってもうれしそう
 うつむいた茜(あかね)ちゃん(6つ)は、今にも泣き出しそうだった。
 児童養護施設のグループホームで暮らす茜ちゃんら三人は示し合わせ、引き出しにあったおやつのクッキーを盗み食いしてしまったのだ。
 「勝手におやつを食べるのは泥棒と一緒。泥棒してもいいん?」。職員の若い女性の口調はどこまでも厳しかった。
 しかられるのは何度目だろう。その度に茜ちゃんは「もうしません」と泣いて誓うのだが、反省は長続きしない。友達に誘われると、どうしてもいやと言えない。自分の意見を強く押し通せない性格もあるのだろう。
 グループホームには、茜ちゃんら幼稚園児から中学生までの女子十人が暮らす。集団生活では、わがままは許されない。携帯電話を持てるのは高校生以上。そんなルールもある。
 「ルールを破ったり、悪いことをしたら当然しかる。甘やかせるだけでは社会に出てからその子が苦労する」
 茜ちゃんだけでなく、どの子も家庭が大変なことはわかっている。それでも、それだからこそ乗り越えてほしい。職員は皆、ここを巣立った後を考えている。


 夕暮れ、中学二年の沙耶さん(14)がグループホームをそっと出た。手にした紙袋には浴衣と帯。向かった先は、近くの園長宅だった。
 数日前、沙耶さんは職員に相談をした。学校の友達から、神社の夏祭りに誘われている、と。行きたいと顔に書いてあった。
 グループホームで最年長の沙耶さんは優しい性格で気配りができる。でも、ほかの子どものことを考えると、一人で遊びに行かせるのはどうか。職員は園長の判断を仰いだ。しばらく考えて園長は外出を許した。
 「浴衣を持たせてうちに来させなさい。妻が着せます。もちろんほかの子には内緒で」
 施設の女子が使っている、濃い緑にアサガオが涼やかな浴衣に身を包んだ沙耶さんは、園長の車に送られていった。午後九時、沙耶さんは神社近くの待ち合わせ場所に上機嫌で戻ってきた。
 車中、冗舌だった沙耶さんは施設が近づくと、黙り込んでやがてつぶやいた。
 「こんなわがままばっかり言っていいんかな」
 隠れるように出掛けた自分をとがめる気持ちとみんなへの気兼ねだろうか。「気にせんでいい」とだけ園長は言った。
 できるだけ願いをかなえてやりたい。でも一人をかわいがると、どんなささいなことであっても、ほかの児童を傷つけてしまう。その狭間(はざま)で職員は思い悩み、子ども自身もそれを十分すぎるほど分かっている。


 夏休み。親元に一時帰宅する子ども、里親のもとに向かう子ども、そして施設で過ごす子。立場がいや応なく分かれてしまうこの時期、職員はいつも以上に気を遣う。
 夏休み初日の七月十九日、航太ちゃん(6つ)を週末里親が迎えに来る日だった。園庭で遊んでいた航太君は職員に小声で呼び止められた。事務所に行くと里親の男性が待っていた。
 「楽しんできてね」。施設を出てからも職員は手を振った。途中で気付いた二人は何度も応えてくれた。航太ちゃんは笑顔だった。

=文中仮名=
(坂口紘美)

2008/08/13



もくじ   3kaku_s_L.png   [Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境
FC2 Blog Ranking
*Edit
   
  • 【<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編(3)ある虐待それでも家に帰りたい。かなわぬ望み、体が悲鳴】へ
  • 【<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編 (1)集団生活甘えたい、独占したい…。抑えた思いが時にあふれ出す】へ