あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-18]<児童福祉・行政・司法、介護、育児>新聞事件簿。母子を取巻く環境

<神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編 (1)集団生活甘えたい、独占したい…。抑えた思いが時にあふれ出す

 
 <神戸新聞>ずっと家族がほしかった 児童養護施設編(2)ルール「願望」と「わがまま」。その狭間で子も職員も悩む <毎日新聞>小学生連続殺傷:14年経てもなお悲しみ…父が手記 神戸
 「習字がじょうずになりたい」「みんなが元気にくらせますように」…。短冊に込めた願いはさまざま
 その児童養護施設を初めて訪ねたのは、七夕から一週間を過ぎた先月半ば。グループホームの玄関先に立てられたササには、いくつもの短冊が風に揺れていた。
 〈ケーキやさんになりたい〉
 幼稚園児の茜(あかね)ちゃん(6つ)の将来の夢だ。
 玄関前のベンチに腰掛けた記者のひざに茜ちゃんはちょこんと座り、「姉さん」と甘えてきた。「本当のお願いはほかにあるの」。耳元でそっとささやいた。
 「ママがおばあちゃんになっても、ずっと元気でいられますように」
 この施設にはさまざまな事情で親と離れた三歳から大学生までの約六十人が暮らす。
 少しでも家庭の雰囲気に近づけようと、六つのグループホームに分かれ集団生活を送る。6LDKタイプのグループホームには、茜ちゃんら幼稚園児から中学三年までの女子十人。四人の担当職員が交代で暮らす。
 茜ちゃんは生後間もなくここに来た。父親の顔は知らない。母親に思いっきり甘えた経験はほとんどないという。
 「おうちに帰ると、お風呂に一緒に入って歯磨きすんねんで」
 たまに面会に来るというママを何度も自慢した。


 施設の子どもたちは、初対面の相手にもべったり甘える。特定の大人から常に愛情を注がれることが難しい環境がそうさせるという。
 もちろん職員は精いっぱいの愛情で子どもに接している。それでも大勢を世話しなければならない現状では、一人一人にかけられる時間は限られる。
 本当はもっと甘えたい、構ってもらいたい、独占したい。子どもはそれをじっとがまんする。内に込めた葛藤(かっとう)が、ふとしたはずみにあらわになる。
 茜ちゃんと同じ幼稚園の華ちゃん、記者の三人で園庭に出ようとしたときだ。靴を履くのに手間取る華ちゃんを待てず、茜ちゃんは記者の手を引っ張る。「待って」の声も意に介さない。華ちゃんの感情が爆発した。
 「茜ちゃんの姉さんやないやろ」
 五歳とは思えない鋭い目でこっちをにらみつけている。「ごめんね」と駆け寄ると、けろっとした様子で「姉さん、行こう」と腕にしがみついてきた。


 未婚の出産ゆえの育児放棄、離婚に伴う養育困難、障害と生活困窮…。子どもたちが背負う荷物はあまりに重い。
 面会が途絶えていても、手紙に返事が来なくても、幼い子ほど親を慕い信じている。いい子にしていれば必ず迎えに来てくれる、と。
 それでも心の奥底にある不安や喪失感は隠せない。また見放されるのではないか、もう見放されたくない。職員の言動にみんなが過敏になっている。
 取材二日目の晩ご飯。中学一年の真紀ちゃんが、テーブル中央のグラタンを取ってほしいと職員に話しかけた。ほかの子どもの声にかき消され気付かない。何度か言い直したが、職員は幼い子の面倒に追われてすぐにできない。
 「なんで真紀の話だけ無視するん」。突然そばにいた中学生が声を荒らげた。びっくりするような大声だった。
 大家族ならよくある光景なのかもしれない。それとは明らかに違う必死さが声ににじんでいた。真紀ちゃんは泣きそうな顔をしていた。
 皆が寝静まった午後十時、静かになったリビングで職員が繰り返し話した。
 「どの子にも公平であること。そして一人一人を大切にすること」


 梅雨明けのころから児童養護施設に通い詰めた。にぎやかな集団生活の中で、時折見せるささくれだった言葉や振る舞いに何度も息をのんだ。大人の身勝手や社会の矛盾を背負わされた子どもたちの姿を伝えたい。そして家族について考えたい。

=文中仮名=
この連載は、坂口紘美が担当します

2008/08/12



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