あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅲ-4]Ⅱ.児童虐待と面前DVの影響。暴力のある家庭で暮らす、育つということ

15.慢性反復的トラウマの種類(児童虐待の分類)と発達の傷害

 
 16.暴力のある家庭で育った子ども。発達段階**で見られる傾向 14.トラウマと脳
*新版3訂編集中(2017.12.17)

日本語では「虐待」と表現されていますが、英語では「Abuse and Neglect」といい、この2つの概念は異なるものです。
Abuseは、abnormalとusuallyからきていて、「普通ではない、程度がひどい」という意味で、加えて、drug abuseという使い方もされています。
「drug abuse」が、薬物を使い、自分の快楽を得るのと同じように、子どもを使って、自分の快楽を得ることがchild abuseです。
例えば、イライラして子どもを殴るのは、身体的な虐待です。
子どもを使って自分の性的な満足を得るのは、性虐待です。
寂しくなったら子どもをかまって、自分が他のことに熱中すると放ったらかしたり、子どもがいなくなると寂しいから手放そうとしないけれども、面倒くさいと食事をつらなかったりするのは、ネグレクトです。
つまり、自分本位で子どもをふり回してしまうのが、「乱用(濫用)型の虐待」です。
表れ方は、身体的虐待だったり、心理的虐待だったり、ネグレクトだったり、性的虐待だったり異なるものの、共通しているのは、親が自分の気持ちや都合で子どもをふり回してしまうことで、それが、ひとつの虐待の本質です。
このような親から育てられた子どもは、
親にルールはなく、気分や感情や都合によって言動が変わることから、子どもは、大人の顔色を見て態度を変えるようになります。
子どもが、親に「自分はこうしたい」と自分の意見をいったり、親に「この前、こういったのに。」と文句をいったりすると、「なに生意気なこといっているんだ!」と叩かれてしまいます。
こうした状況が続くと、子どもは、親の気分や顔色を瞬時に見極め、痛い思いをしないように、自分の気分や態度を親の状態に合わせて変えていく(暴力のある環境に順応する)ことを学び、身につけていきます。
そのため、こうした親の下で育つ子どもは、「一貫した自分」や「自分の本当の気持ち」を持つことができず、気分がコロコロ変わったり、大泣きしたかと思ったら、なにごともなかったかのようにケロッとしたりする人物と成長し、やがて、大人になると親と同じことを繰り返すようになります。
もうひとつは、「支配型の虐待」です。
ここで、問題になるのが、「しつけ」です。
「しつけ」とは、「子どもが自分の力で自分の行動や感情をコントロールできるように育てる」ことです。
しかし、「支配型の虐待」では、親が、すべてを決めます。
親が決めて、子どもに押しつけるのです。
その押しつけ方のひとつが、暴力です。
親のいうことをきかないと叩くなど、親の力や権力で、子どもを支配(コントロール)するのが身体的虐待です。
ことばで脅すなど、子どもに恐怖心を与え、心をコントロールするのが精神的(心理的)虐待です。
この精神的虐待には、「あなたのためにこうした方がいい。あなたはこの方が幸せよ。」といい、親の価値観、希望や期待にもとづくレールに従わせようとする“愛情”を押しつけることが含まれます。
親が心配のあまり、子どもに過剰に干渉することが、子どもが、自分で考え、判断することを奪ってしまいます。
子どもは無気力になり、指示がなければなにもできなくなっていきます。
 一方で、グズれば、直ぐに欲しい物が得られ、自分でやり遂げた達成感を味わうことなく育ってきた子どもは、がまんをすることができず、直ぐにキレてしまいやすくなります。
子どもが、自分で考えて、自分の判断で行動する営みは、「試行錯誤」の連続です。
子どもは、自分でやってみて失敗したり、自分でやると間違えたり、遅かったり、穢かったり、危なかったりすることを通じて、学び、工夫しながら、技能を身につけ、磨いていきます。
親が、「こうしたらいいよ。」と最適解を教えるのは、安全で、速く、成功が保障されています。
子どもは、まだ知識や経験が足りないことから、それを親が教えていくことは必要です。
しかし、それを親が押しつけるのか、子どもが自分で考え、選び、親はそれを見守り、支えていくのかは、まったく異なるものです。
 多くの人が、「支配型の虐待」の後遺症で苦しんでいます。


(1) ネグレクト(放置)
病気の子どもの放置、タバコの喫煙やアルコールの飲酒などに関して親がなにも注意せず、子どもたちに必要な道徳的教育を施さないのは、ネグレクトにあたります。
A) 身体的ネグレクト..身体的ケアの拒否や遅れ、放置、家からの追放、他の親権問題、不適切な監護、その他
B) 教育的ネグレクト..長期の怠学を許可する、学校には行かせない、子どもに必要な特殊教育を受けさせない
C) 情緒的ネグレクト..子どもにとって必要なケアを与えない、長期で著明な夫婦ケンカを目撃させる、子どもの薬物やアルコール乱用を放置する。

<ネグレクトによる発達の障害>
精神的な放置の結果、愛着の絆を親と結べずに「反応性愛着障害(RAD)」になります。
養育者との相関関係で調整できるはずの脳幹の機能が不調で、自癒能力(泣きだしても自分から泣きやむなど)が発達せず、大脳の共感能力が未発達であることから、対人関係づくりに障害がでてきます。
扁桃体の過剰興奮で緊張ホルモンの分泌が抑えらせず、自制がきかず多動になりやすくなります。
脳の発達を遅らせるだけでなく、身体の発達まで遅らせます。
問題は、反応性愛着障害ではなく、ADHDなどと誤った診断をされることも少なくないことです。
① 発達への影響
 ・愛着関係の欠乏、歪み
 ・基本的信頼の欠乏
 ・受容されている感覚の欠乏
 ・万能感の欠乏
 ・発達刺激の欠乏
 ・構造*の欠陥、歪み
*構造..認知機能は、入ってくる情報を感覚的、物質的な分析をおこなう「浅い」水準から、抽象的、意味的、連想的な「深い」水準へと階層的に構造化されています。情報を深く処理するほど記憶痕跡が強固になり、忘れ難くなります。
② 精神的な影響(精神症状)
・精神活動の低下..精神発達の遅れ、感情の極端な抑制、抑うつ
 ・自己の主体性の障害..易興奮性*、極端な頑固さ、多動、衝動性、暴力、自傷行為
*易興奮性..ちょっとしたことで、興奮しやすい状態。また、血中カルシウム濃度の低下(低Ca2)が、易興奮性をひきおこすこともわかっています。
 ・刺激防御能力の障害..自己治癒能力の低下、易刺激性*
*易刺激性..ちょっとの刺激によって興奮しやすいことです。
爆発性、易刺激性はいわゆる「気が短い(自他を問わず、あらゆる人のあらゆる行為に対して、直ぐに腹を立てる)」ことと違い、それまで穏やかな心理状態であった人が、相手のほんのひとこと、ちょっとの刺激によって突然興奮しはじめることです。
 ・満足感の障害..過食、早食い、隠れ食い、盗み、万引きなど
 ・他者関係能力の障害..無差別的愛着、希求と回避の混在、共感性の低下

-事例188(虐待5・ネグレクト1、児童相談所の保護2)-
児童相談所がネグレクトの改善の見込みがないと判断した母子家庭は、母親と小学生4年生の長男、同1年生の次男の3人家族でした。
母親Oは、昼夜かけもちで働いていました。Oは、子どもたちが生活しているアパートの部屋に朝きて、長男Rにお金をわたしたり、買ってきた弁当をわたしたりしたあと、仕事に行きました。
近隣住民の話によると、「Oには、パチンコに行くための多額の借金があり、夜は男のところに行っていて、朝帰ってくる以外は、家にいたことがない。」ということでした。
 2人の子どもは、小学校を休みがちで、しかも、食事も十分でなかったことから、小学校の学級担任が家に迎えに行き、給食で食事を保障している状態でした。
 夏休み中も、交代勤務で誰かが出勤していることから、2人には、「学校にでておいで。」といい、なにか手伝いをさせ、そのお返しとして食事をだしていました。
しかし、年末年始の正月休みの6日間は、教職員の誰も小学校には出勤しないことから、その間、子どもたちが食事をすることができず、死んでしまうのではないかと心配しました。
そこで、11月に入ると、児童相談所に入ってもらい、母親Oと面会を重ねました。しかし、状況が改善されることがなかったことから、児童相談所は、2人の子どもが生活している家への立ち入り調査を実施し、一時保護を決定しました。
立ち入り調査を実施したときの家の中は、ゴミ捨て場状態でした。
その中で、2人の子どもは、「寒い。おなかすいた。」、「お母さん帰ってこないかな。」となどと話し、寒いけれども、母親に「子どもだけだから、火を使ってはダメ」とのルールを守り、寝るときは猫を抱きながら、ずっと母親の帰りを待っていました。

こうした家庭環境の中にいる子どもたちは、無力感にうちひしがれています。
「努力したら、なんとかなる」「頑張ったら、ほめてもらえる」と“自分が生きていることには意味がある”と思うことができないのです。
死んでも誰にもわからず、自分が頑張って生きていることを誰も喜んでくれないという世界観の中で生活しています。
なにをしても、誰も助けてくれることはなく、「寒い、おなか減った。お母さん帰ってこないかな」と口にしても、なにもおこらず、なにも変わらない日々が続くわけですから、無力感にうちひしがれるだけでなく、心の底から絶望的になっていきます。
身体的虐待は、命が危険にさらされますが、ネグレクトは、人の心の屋台骨を壊す、心を蝕んでいきます。
 「アビューズ(虐待)」は、暴力により痛い思いをしたり、心が傷ついたりする中でも、直接親との接触がある、“負”の接触であっても、親子のかかわりが存在しています。
しかし、「ネグレクト」は、親とのかかわりが希薄です。
“負”の接触さえありません。
そのため、子どもの生きる力を枯渇させてしまうことから、長期的に深刻な影響を残します。
子どもは、思春期前の小学校3-4年生までは頑張ります。
お兄ちゃんやお姉ちゃんが、かいがいしく弟や妹の世話をしています。通学している小学校でも、「よく頑張るよな。」とほめられます。
しかし、思春期入り、中学校に進級する前の小学校5-6年生になると、磁石に惹きつけられるように非行グループに入ったり、ひきこもったりするようになります。
 女の子は、性非行に走る傾向が高く、交際相手から勧められて覚醒剤に手を染めることも少なくありません。
 こうした子どもたちに、「そんなことをしていたら、いずれ死んでしまうと。」と話しても、生きている意味を感じることができない家庭環境で育ってきているので、「死んでしまうよ。」ということばは、心には響きません。
 なぜなら、死んだような毎日を過ごしてきたからです。
暴走族の仲間とバイクを走らせ、風を感じられる“いま”だけが、生きていることを実感でき、仲間とシンナーを吸ってバカはしゃぎしたり、覚醒剤をやってハイテンションになっていたりできる“いま”だけが楽しく、生きていると感じられ、リストカットで血が流れでたり、過食し嘔吐する苦しんだりする瞬間に、“いまここに私がいる”と実感できるのです。
いままで親や大人に放ったからしにされていた女の子が、自分が子どものころの父親と同じ年代の男性に、一瞬でも優しいことばをかけられ、自分を必要とされていることを実感できるのが、援助交際(売春行為)です。
お金がもらえ、服を買ってもらえるからということではなく、声をかけられることそのものが、自分を必要としてくれる、つまり、生きている意味を感じられるのです。
しかも、自分の話を聴いてくれます。
相手をしてもらえることで、渇望感を埋めようとする(承認欲求を満たす)行為が、非行に走るモチベーション(動機)になっているのです。
こうした子どもが、親になったとき、ちょっとでも金に余裕があると、パチンコに使ったり、仲間を集めて大判ふるまいをしたりして使い果たしてしまいます。
借金を返したり、子どもの教育のために預金をしたりするなど、計画的に使うことができず、あればあるだけ使ってしまうのです。
 また、小さいころから「努力すると、なんとかなる」ということが、実体験として身についていないので、家の中はぐちゃぐちゃです。
多額の借金があり、借金とりが家に押しかけ、玄関前で、「金を返せ!」と大声で怒鳴られます。
近所の人や学校園の教職員から「ちゃんと子どもを見たらどうなの?!」と注意されたり、「親らしくしなさい!」と叱責されたりするのは、鬱陶しく、腹立たしくて仕方がありません。
そのため、かかわりたくない思いが募ります。
嫌われたくない思いが強いときには、その場限りの口約束をしてしまうものの、行動に移す術を持ち合せていないので、結果として、「口だけ」「うそつき」という烙印を押され、信用されなくなり、孤立していきます。
ここには、「親は、自分が生きることで精一杯で、子どもどころではない」という現実があります。
幼児期から圧倒的な現実に押しつぶされ、自分が努力したら、なんとかなるとか、少しずつ片づけていったら最後は到達するとか、頑張ったら認められるということを学び、身につけていません。
それだけでなく、「自分だって同じ思いをしてきたのだから、子どもだってできるはずだ。」「私の親はもっと厳しかった。誰も助けてくれないのにやれたのだから、この子もできるはず。」と認識しているので、自分が変わらなければならないという概念は存在していません。
ここに、ネグレクトの世代間連鎖の深刻な問題があります。

(心理的(情緒的)ネグレクト)
子どもにご飯はつくるけど、会話が全然ないような子どもへの愛情が安定していないことがあります。
こうした環境下の子どもは、一見、自分のことを愛してくれているのかなという気持ちを持ちながら、一方で、なにか違うと確信することができずにいます。
ニコニコ笑いながら、一方で、突き放す冷たさを持ち合せるなど、親の“相反する受容と拒絶のメッセージ(バブルバインド)”により、子どもは混乱していることになります。
一見普通の家庭に見え、経済的にも困窮していません。両親も揃い、愛情があるように見えるけれども、子どもに対する顔の表情と態度が異なり、「でも私、この子、嫌いなんです。」と語る親に育てられています。
本当は、子どものことが嫌いだけれども、親の義務として子育てをしています。
誕生日には祝ってくれて、なにかあったときには、声をかけてくれる親を、子どもは、「自分のことを愛してくれているのだろうな」という気持ちを持ちながら、親の態度を冷たいと感じています。
「お祝いよ」といっているけれども、表情が全然うれしそうじゃないし、母の日にプレゼントしても、妹のときにはうれしそうに受けとるのに、自分のときにはなんか素っ気なく感じます。
友だちに話すと、「お前の気のせいだよ。いい親じゃない。」といわわれるけど、心の底からそう思うことができないし、気持ちが満たされません。
衣食住は十分あるし、親としての義務は果しているものの、子どもへの愛情表現につながっていない親がいます。
「Ⅱ-16-(3)-①子どもの心身症」でとりあげている心身症を発症する子どもたち、「Ⅱ-17.思春期・青年期の訪れとともに」でとりあげている不登校・ひきこもりになる子どもたちの中には、子育ては義務でしかなく、気持ちのこもった愛情表現が存在しない、つまり、「心理的(情緒的)ネグレクト」が存在している家庭環境で育てられている子どもたちが少なくないのです。
 しかし問題は、子どもが心身の不調を訴えても、親は、その原因が親自身にあるとは思っていませんし、子ども本人が心身の不調の原因が、親子関係にあると思っていないことから、発見することが難しいということです。


(2) 身体的虐待**
** 「身体的虐待」の判断(診断)基準については、「Ⅴ-33-(2)身体的虐待を疑う」「同-(3)虐待による熱傷の所見」で詳しく説明しています。
身体的虐待は、性的虐待を除くすべての直接的な身体への暴行、暴力をさします。
食事を与えない、押入れに入れ放置するなどの“罰”は、身体的虐待となります。また、他者による暴力から子どもを守らなかった場合も、身体的虐待になります。
「外傷の残る」暴行として、打撲傷、痣(内出血)、骨折、頭部外傷、刺激、火傷などがあげられ、「生命に危険のある」暴行は、首を絞める、布団蒸しにする、溺れさせる、逆さ釣りにする、毒物を飲ませる、食事を与えない、冬に戸外に絞めだす、一室に拘禁する、などです。
英オックスフォード大学のシーナ・ファゼルの率いる研究チームは、25歳までに、遊びやスポーツ、交通事故などによる転倒、そして、暴力(虐待含)などによる傷害事件による外傷性脳損傷を1回以上受けた経験のあるスウェーデンの子どもおよび若者のグループと損傷を受けていないそれぞれのきょうだい(10万人を対象)との比較を行い、41歳を上限とする成人期に至るまで追跡調査しています。
その追跡調査の結果、「若年期に脳振とうなどの外傷性脳損傷を受けた人は、損傷を受けていないきょうだいに比べて、長期に及ぶ心理的・社会的問題に悩まされる恐れがある。」、「外傷性脳損傷により、早死に、精神科への入院、精神科への外来通院、障害年金や生活保護の受給、低学歴などの将来的なリスクが一貫して予測されることが判明した。」、「損傷の程度と再発の頻度が高いほど、また、最初に損傷を受けたときの年齢が低いほど、この影響は強くなる傾向がみられた。」と報告しています。

<身体的虐待による発達の障害>
叩く、蹴るなどの肉体的な仕置きは、親にとっては“しつけ”のつもりであっても、子どもにとっては慢性反復的トラウマとなる暴力でしかありません。
大人は体も大きく力も強い、子どもはとても立ち向かえないので、無力感と恐怖から激怒を感じ、怖ろしい記憶を海馬がそのまま長期記憶として、特に右脳の側頭葉に保持(記憶)されます。
家庭でぶたれたり、叩かれたりした子どもが、園や学校で暴力をふるうのは「トラウマの再演(PTSD症状の再演)」の可能性があるので、注意が必要です。
海馬が十分に発達していない幼児期の場合は、恐怖、激怒、不安感を大脳辺緑系の視床や扁桃体、脳幹で覚えていて、暴力をふるってしまいます。
蓄えられた暴力の記憶が、青少年非行の最大の原因といわれ、幼児・児童期に「愛着障害」、思春期に「行為障害」として表れ、状態がひどいときには、青年期に、「反社会的人格障害(サイコパス)*-19」と進展していきます。
不満があるとがまんすることができずに敵意を示したり、暴力的になったりします。
人を人としてではなく、モノとしか見ることができず、自分のためなら他人のことなどお構いなし、平気で危害を加えてしまうのです。
その無謀で、残虐な行為は、戦時下、紛争下では“英雄”になったりしますが、平和時には“危険な殺人者”になりかねないのです*-20。
自己中心的で無思慮な衝動性、反社会的な犯罪性、虚言癖(嘘つき)、他者への共感の欠如、反省や良心の不足などが特徴です。
子どものトラウマに対する特徴的な反応で、なにごとも自分が悪いと思い込むというものがあります。
自己尊重、自己肯定があってはじめて、人は自分に自信をもって毎日の生活上の問題に挑戦できるようになります。
ところが、愛着の対象者から身体的虐待を受けると、子どもはその人に直接怒りをぶつけることができず、他の子どもやきょうだいにぶつけるか、自分にぶつけてケガをすることが多くなります。
同時に、自分は大切にされる資格がないと思い込み、自己尊重、自己肯定が育ちません。
身体的虐待を毎日のように受け続けると、子どもは無気力なうつ状態になったり、自分が自分でないような解離症状をおこしたりします。
「自己」という境界線をいつも他人から犯されているので、自分と他人という境界線がなく、思春期後期から青年期以降、暴力の加害者か、被害者になりやすくなります。
反対に、自分と他人の間に強固な壁をつくって、人を信用せず、自分の考えや感情を人と共有できなくなります。
*-19 「反社会性人格障害(サイコパス)」については、「Ⅰ-6-(3)サイコパス(精神病質、反社会性人格障害)」、「Ⅱ-21-(11)-⑤反社会性人格障害」で詳しく説明しています。
*-20 「人を人としてではなくモノとしか見ることができず、危険な殺人者になった」事件は、「Ⅱ-20-(6)性的サディズムと人格障害などが結びついた誘拐監禁・殺害事件」においてとり扱い、詳しく説明しています。
a) 発達への影響
 ・外傷体験
 ・信頼感の低下
 ・罪悪感による自尊感情の欠乏
 ・愛情と暴力の混同
 ・暴力による解決方法の学習
b) 精神的な影響(症状)
 ・外傷による障害..記憶の問題(記憶の侵入、記憶の抑圧など)、生理的防御(睡眠妨害、過度の警戒、易刺激性など)、心理的防御(精神活動の低下、抑圧、孤立化、二分化など)
 ・虐待者への同一化..自傷行為、自殺願望、幻聴
 ・自己調整能力の低下(ネグレストを参照)
 ・抑うつ感情..楽しむ能力の低下、学習能力の低下
 ・無力感
 ・行為への障害..弱いものへの暴力、反社会的行為


(3) 精神的(心理的・情緒的)虐待
親や養育者によって加えられた行為により、極端な心理的外傷を受けた子どもは、不安・脅え、うつ状態、凍りつくような無感動や無反応、強い攻撃性、習慣異常等の日常生活に支障をきたす精神状態に陥ることになります。
精神的虐待は子どもの情緒的な発達を阻害し、心理的に傷つけ、人間性や存在価値を否定するような言動をさします。
直接的な加害意図がなく、無意識的におこなわれることも多い虐待です。
 子どもの養育にあたる親の意識の低さが、さまざまな面で子どもを心理的に虐待します*-21。
*-21 子どもの養育に対して意識が低いのは、親だけではなく、子どもにかかわる保健師、医師、看護師、保育士、教師などコミュニティすべての大人の意識の低さが、今日の児童虐待・DV、いじめや差別を容認していると自覚することが大切です。
精神的(心理的)虐待は、次のように7分類されます。
① 無視(ibnonring):子どもにとって必要な心理的な刺激や反応を与えない
② 拒否(rejecting):子どもを心理的に拒否し、その価値を否定する..「嫌ならでて行け!」は“拒否”にあたる
③ 孤立させる(isola tig):家族の内外で子どもと他者の関係を断ち切る..「妹(弟、姉、兄)がいなかったら・・」と意図的にいうなど、兄弟姉妹同士の遺恨をあおり、対立させるのは“孤立”にあたる
④ 恐怖を与える(terrorizing):子どもを脅すなどして恐怖を与える
⑤ 腐敗させる(corrupting):万引きを手伝わせるなど、反社会的行為の強要などで子どもを腐敗させる
⑥ ことばの暴力(verbell assultinng):子どもの自尊心を傷つけることばを使う
⑦ 過度の圧迫(overpresuring):子どもに過度の発達を押しつける(早く大人になることを求める)

<精神的虐待による発達の障害>
親が子どもの達成感を認め、支援することは、子どもの知的、心的、肉体的発達を助長します。
反対に、子どもの達成感を奪う、なにをしてもほめない、いやみをいう、からかう、子どもの顔や肉体の特徴をあざ笑うなどは、子どもの自尊心を大きく傷つけることから、うつ症状をおこしたり、リストカットやOD(過剰服薬)といった自傷行為をしたり、過食嘔吐や拒食(摂食障害)の原因となっています。
直接痛い目にあわなくても、子どもの心の傷として長く影響を及ぼすのが、その父親が母親に暴力をふるっているのを目撃したり、怒鳴り声や悲鳴などを毎日のように聞いたりするなど、暴力のある家庭環境で暮らすということです。
重要なことは、子どもの脳に慢性的にCRFを増やし、うつやC-PTSD症状をおこす原因となるのは、子どもが暴力のある家庭環境で暮らしていることだけでなく、学校園などでいじめを受けた子どもに対して、教職員が適切な対応を怠り、いじめ被害を慢性化させることも原因となるということです。
a) 発達の影響
 ・自己否定感
 ・心的外傷体験
 ・信頼感の欠乏
 ・善悪の混乱
b) 精神的影響(精神症状)
 ・自尊感情の障害..抑うつ、自己破壊行動、学習の問題
 ・自己感の発達障害(ネグレスト参照)
 ・他者関係の障害..孤立傾向、他者への希求と回避
 ・心的外傷による障害(身体的虐待を参照)
 ・自己調整能力の障害(ネグレストを参照)


(4) 性的虐待(性暴力)
子どもが生活する「家」で、「誰よりも保護してくれるはずの親や養育者」から性的虐待を加えられることによる子どもの恐怖と混乱ははかり知れません。
性的虐待とは、ある年齢までの間に当事者が成人ないし年上の他人(親や近親者を含む)にされた性的な行為で、当事者がその行為を強制されたもの、望まないもの、嫌悪感を抱き、怖いと感じた場合をいいます。
その行為には、接触的なものと、非接触的なものとがあります。
接触的なものには、当事者に身体への性器の侵入を伴うもの(ペニスの挿入や接触、当事者の性器を加害者の口、性器などの体孔に導くもの、など)と、当事者の胸、性器周辺、肛門への愛撫が含まれます。
非接触的なものには、露出的行為、児童ポルノグラフティに巻き込むこと、性的行為に当事者を巻き込む(性行為を目撃させる、性行為を聞かせる)ことなどが含まれます。
どうような部位であれ、挨拶、スキンシップ、マッサージと称していようが、子どもの体に「自分の性的な興奮を目的」として触れば、性的虐待です。
子どもの体に触れずとも、「自分の性的な興奮を目的」として、自分の体を見せたり、子どもの面前で性的行為をしたり、行為の最中の声や音を聞かせたりするのも性的虐待です。
子どもの性的行為を強要したり、手伝わしたりするのも性的虐待です。
「性的な興奮を目的」として、子どもの裸や水着でポーズをとらせて写真を撮ったりするのも性的虐待となります。
風呂の着替えを覗いたり、服を着ないことを強要したり、子どもに向かって性的なことばを口にすればそれもすべて性的虐待です。
アダルト雑誌やビデオを見せる、両親の性生活を見せる、両親の性生活や不倫の愚痴を聞かせることなども性的虐待に含まれます。

ジュディス・L.ハーマンが示す児童期の性的虐待の基準は、以下のようになります。

<児童期性的虐待基準(ジュディス・L.ハーマン著「父-娘 近親姦**」抜粋)>
**「近親姦」という表記ですが、相互行為の意味が含まれる「相」の文字は省かれます。
重度   内  容
A ・膣、口腔、肛門内への挿入、クリニングス、アナリングスなどの既遂ないし未遂 強制的である場合もない場合も含む
B ・性器への愛撫、擬似性行、手指挿入などの既遂 強制的である場合もない場合も含む
  ・母をレイプしているところを見せつける
C ・臀部、もも、脚あるいは他の身体的部位への意図的な性的タッチ、衣服の上からの胸、性器への接吻の既遂ないし未遂 強制的である場合もない場合も含む
  ・入浴中に娘を覗く、視姦、性器を見せる
D ・卑猥なことばをかける
  ・トイレのドアを開けるなど、接触を含まないセクシュアリティに侵入する行為
E ・性的虐待の可能性(回想不能)

<性的虐待による発達の障害>
性的な虐待ほど、人の魂を破壊する虐待はありません。
子どもの魂に、焼け爛れるような消えない刻印を背負わせるものはありません。
穢れのない、普通の子どもには戻れないと嘆き、自分を呪いながら生きていかなければならない苦痛を抱えさせます。
自分が親から受けたのは性的虐待ではなく、単なる自分の受け止め方が歪んでいるのだと自分を責めながら苦しんでいる被害者は少なくありません。
家庭という神聖な壁の中でおこる愛着の対象者(父親、母親、祖父、祖母、兄、姉、近い親戚)などからの性的虐待は、加害者から「逃げたい」という気持ちと、「愛されたい」という気持ちが重なり合って、子どもにとってもっとも混乱させられるできごとになります。
特に、愛着の対象者である加害者に、「お前が可愛いから(大切だから)するんだよ。」とか、「これは2人だけの秘密なんだから、誰にも話してはいけないよ。」などといわれることで、子どもは“秘密を守る責任”と“秘密を持つ罪悪感”に挟まれ、助けを求めることもできず、大変な孤立感、孤独感を味わうことになります。
さらに、子どもが幾らかでもその行為に気持ちよさ(快感)を感じていると、子どもの魂はこれ以上ないほどのダメージを負うことになります。
反応している自分はなんて罪深いのだろうと、自分を呪います。
性的な行為に気持ちよさ(快感)を感じてしまっても、子どもには罪はありません。
殴られれば痛さを感じたり、かさぶたをはがすのがなんだか痛気持ちよかったりするのと同じように、人は触れられれば一定の感覚が呼び覚まされます。
それは、生物としてあたり前の反応であって、罪ではありません。
「Ⅳ-31.DV加害者プログラム。「ケアリングダッド」を実施するうえの原則」の冒頭で、『性的虐待を行った父親は、「ケアリングダッド」に入ることはできない。』とし、その理由を、『性的虐待をしたときには、父親としてのかかわりを見直す以前に、性犯罪者としての処遇を受ける必要があるから』と記しているとおり、性的虐待をする存在こそを責められ、罰せられるべきであって、幼い被害者に責任転嫁しようとする卑劣ないいぐさを決して許してはならないのです。
思春期の自殺、自傷行為(リストカット、OD(過剰服薬)など)、過食・拒食症(摂食障害)、解離性障害、解離性同一性障害(多重人格)の最大の原因が、子ども時代の性的虐待です。
虐待のないときの「昼間の私」と虐待を受けている「夜の私」が解離し、統合した「自我」の確立を妨げることになります。
しっかりと足が地についているという現実感が乏しく(視床の機能低下)、「ふわふわと目的もなく漂っている感じ」に包まれています。
愛着の対象者を拒みきれず、自己防衛の方法を習得しなかったことと、初潮が早まるなど、女性ホルモンを他の女性の5倍も多く分泌することから早く大人びてしまうことから、変質者につきまとわれたり、痴漢にあったり、セクシャルハラスメントなどの被害者になったりするリスクが高くなります。
ここに、虐待被害者として、アタッチメント獲得を損なっていることを起因とする自己と他の境界線の分離ができていない状態が重なり、思春期後期から青年期以降、自尊心をくすぐられたり、自己肯定されたりする優しく甘いことばに誘されてレイプされたり、交際相手や友人・知人からデートレイプされたりするなど、2次被害ともいえる性暴力被害を受けるリスクが高くなります。
ここにも、被害女性に問題(原因)があるのではなく、幼児期に性的虐待をおこなった加害者こそ、被害女性に2次被害を招いた真の加害者ということになります。
また、性的虐待は子どもにとって、受入れられることのできないほど嫌な思い出であるため、記憶の奥にしまい込んで、一見なにもなかったかのように生活を続けていくこともあります。
これは、解離症状のひとつです。
実際にデートや結婚などで、急に記憶が復活し、PTSDの症状がでてくることがあります。
そして、性的虐待の治療が遅れると、自我の統合の未発達や罪悪感、嫌悪感からくる自殺、自傷行為が見られ、境界性人格障害(ボーダーライン(Borderline Personality Disorder;BDO))」、解離性障害、解離性同一性障害(多重人格)を発症するリスクが高くなります。
ボーダーラインは、「Ⅰ-6-(2)ボーダーライン(境界性人格障害)」で詳しく説明しているとおり、不安的な自己-他者のイメージ、感情・思考の制御の障害、衝動的な自己破壊行為などの特徴があります。
「見捨てられ不安」が常につきまとうため、繰り返し寂しさや怒り、むなしさ、絶望感、孤立感、自暴自棄感情に襲われます。
それは、まるで泣き叫ぶ赤ちゃんと見間違うばかりの状態です。
いったん相手を信頼できると思い込むと、見捨てられないようにひたすらしがみつこうとします。
相手が困り果て、避けようとすると、一転して激しい怒りをぶつけたり、引き止めるために自殺しようとしたりします。
また、性的虐待の加害者になる人たちは、男性が圧倒的に多く、一方で、必ずといっていいほど幼児期に性的虐待を受けています。
早期の性的虐待で、脳幹の奥にある性欲や快感の場所が異常に発達しています。
そのため、被害者から加害者に転向し、家庭内の性的虐待が世襲されていってしまうことになります。
そして、早期の性的虐待により、脳幹の奥にある性欲や快感の場所が異常に発達してしまうことが、マスターベーションを止められなくなったり、ゆきずりの相手とのセックス衝動を止めることができなくなったり、薬などを使った強烈な快感刺激を求めたセックスに溺れてしまうことになったりするセックス依存症を発症させることになります。
強烈な快感刺激を求めることが、性的倒錯(パラフィリア)としての性的嗜好、性的サディズムやマゾヒズムを生みだすことになります*-22。
*-22 「性的倒錯(パラフィリア)としての性的嗜好」、「性的サディズムやマゾヒズム」については、「Ⅱ-20.パラフィリア(性的倒錯・性嗜好障害)」において詳しく説明しています。
a) 発達への影響
 ・外傷体験
 ・愛情と性の混同
 ・受容できない現実
 ・秘密を守る負担
 ・「穢い」という自己認識
 ・身体への過度の関心
b) 精神的影響(精神症状)
 ・外傷による障害(身体的虐待を参照)
 ・抑うつ(身体的虐待を参照)
 ・自尊感情の低下..(自分を)穢いと思う、無力と思う
 ・ファンタジー傾向..白昼夢、虚言
 ・身体化障害..過食・拒食など
・性行動の障害..過度の性行動、性的誘惑、性的関係への過度の不安、異性への希求と回避


** ①-a)DV・デートDV・性被害に関する相談、-b)家庭裁判所への「婚姻破綻の原因はDVにある」とする離婚調停の申立て、地方裁判所への保護命令の申立て、警察への被害届の提出に向けての支援依頼、②DV被害の状況をまとめるためのWord文書フォーマット(DV・夫の暴力、子への虐待チェック・ワークシート;「Ⅲ-3.暴力の影響を「事例」で学ぶ。(Ⅰ)添付資料:ワークシート」の中の「DV・夫の暴力、子への虐待チェック・ワークシート」)の送付依頼、③カテゴリー〔Ⅲ1-9〕掲載『暴力の影響を「事例」で学ぶ。虐待とDVの早期発見・支援。母と子どもが暴力から脱するための手引き(3部5章42節)*』のPDFファイル送付依頼については、カテゴリー〔Ⅰ-I〕の中の「<DV・性暴力被害相談。メール・電話、面談>..問合せ・相談、サポートの依頼。最初に確認ください。http://629143marine.blog118.fc2.com/blog-entry-501.html」をご確認いただければと思います。


2016.3/4 ブログ再編成(第3次改訂)に伴い、主記事として掲載
2017.4/24 「第2章(Ⅱ(8-15))」の「改訂2版」を差し替え掲載



もくじ   3kaku_s_L.png   [Ⅲ-4]Ⅱ.児童虐待と面前DVの影響。暴力のある家庭で暮らす、育つということ
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