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[Ⅶ-22] 継続情報<震災・地震/火山/氾濫>ストレスとトラウマ、命と心を守る

<ダイヤモンド・オンライン>“心の復興”をせき止めるPTSDは防げるか 今こそ求められる被災者への適切な心のケア―中谷三保子・帝京平成大学教授に聞く

 
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 東北地方に甚大な被害を与えた東日本大震災の復旧や復興が少しずつ進み始めた今、それと同時に被災者の“心の復興”が大きな課題となっている。発生から16年が経過した阪神淡路大震災の被災者のなかには、今もPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされる人が少なくないといい、災害後の被災者の心のケアは非常に重要だ。では、被害が甚大で広範囲にわたる今回の震災において、被災者の“心の復興”を実現させるには何が大切なのだろうか。阪神淡路大震災の際にも被災者の心のケアを行った帝京平成大学健康メディカル学部 学部長の中谷三保子教授に、今、そしてこれから求められる適切な心のケアについて話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

「怖い」気持ちはみんなが抱く感情
“異常ではない”と伝えることが心の安定に
―震災から1ヵ月以上が経過した今、被災者にはどのような心理的反応や症状が起きていると考えられるでしょうか。
 まず、被災したといっても、お一人おひとりで感じ方は違います。年齢にもよりますし、被災された場所や内容(地震、津波、原発問題)、経験(過去に地震を経験したかなど)によっても異なります。ですから、災害といってもそこにまつわる人との関係性、経験、どれだけ命に関わる体験をしたかが大きく影響するため、一言ではみなさんが今どういう症状だとは言えません。各々の方に伺わなければ分かりませんし、「怖い」の意味合いや度合いも人それぞれでしょう。
 以上の点は覚えておいていただきたいのですが、そのうえで、「被災」していること、「怖い」という気持ちはみなさんに共通しています。1ヵ月が過ぎた今の被災者の方の状況としては、恐怖や不安から逃れて元気になりたいと思っていても、精神的に疲弊している状況が予測されます。小さな子どもならば赤ちゃん返りをしたり、大人では誰かに依存して人との関係性を求めたり、不安で眠れなくなったり、あるいは逆にがんばりすぎてしまうという反応がみられるかもしれません。
 ただし、それはみなさんに起きている自然な反応で、異常ではありません。そして、異常ではないと知ることが重要です。異常だと思うことで、パニックになってしまう恐れもありますから、周りの方はその反応は自然なものだと伝えてあげてください。少しかもしれませんが、それも心の安定につながります。


「笑い」や「楽しい体験」が心を癒す
うつ的な症状が現れれば“二段階の専門的なケア”を
―こうした不安を抱えた方には、具体的にどのようなケアが必要ですか。
 不安や恐怖心を継続させず、生命力を活性化させるためには、リラックスできる場や笑える場を提供することが重要です。
 避難所で生活をしている方々は、気持ち的にも足や身体を伸ばせない状況にあります。ですからリラクゼーションができて、身体の緊張をほぐすような笑いや楽しい経験、例えば音楽を聴く、絵画を見る、木々などの自然に触れ合うことが大事になります。そうしたことを通して、人は癒されていくのです。
 子どもの場合は、一緒に外に出て遊ぶとよいでしょう。子どもが避難所で走り回ると、「元気でいい」と思う方は多いでしょうが、なかには「うるさい」と思う方もいらっしゃいます。そうした点には配慮しながら、成長段階にある子どもが萎縮してしまわないためにも、できれば外に連れ出して、安全なところで遊び、身体を自由に動かすことでリラックスさせることが大切です。
 ただ、避難所などでの生活が長期化すればするほど、身体はもちろんのこと、精神的な病気も引き起こしやすくなります。否定感が表れてマイナス志向になり、うつ的な症状が見られるようになれば、とても危険です。そうなれば、専門的なケアが必要です。
 まず、ケアの第一段階としては、その方がどんな体験をしたかはもちろんのこと、今までどんな生活をして体調はどうだったのかを知る必要があります。それを知らずに「こうだろう」と予測のもとにアプローチすると、傷つけてしまう恐れもあります。そうならないためにも相手の状況を知るアセスメント、見立てが大切です。
 相手の方の状況を理解したら、今どんなことで苦しんでいるのか、そしてその内容が妥当かどうかを知る必要があります。例えば「自分はひとりぼっちだ」、「誰も助けてくれない」という誤った認識や考え方をする“認知のゆがみ”があったり、「あのときこうしていれば、誰かを助けられたかもしれない」、「自分はダメな人間だ」という“心のしこり”ができているかもしれません。

 これらは元気になるためのサイクルをせき止めてしまいます。そうした気持ちを抱いてしまうのはわかりますが、元気になってもらうためには、心を苦しめている“認知のゆがみ”と“心のしこり”を取り除くことが大事です。そのための方策が第二段階のケアになります。
 第二段階のケアでは、少し積極的に介入していきます。まず、どこで元気になるための流れが滞っているのかを知るために、安心して話してもらえるリラックスできる場を提供し、その方の問題点を積極的に知っていきます。そして「そうですか」などと話を聞くだけではなく、例えば「助かってはいけない」と考えている人であれば、積極的にその方の命が尊いものであることを伝え、がんばろうと思っていただけるようにケアをしてください。
 ただし、その積極的なケアは臨床心理士などの専門家でないと難しいので、その点には注意をしてください。


阪神大震災から16年の今なお苦しむ人も
“心の復興”をせき止めるPTSDを防ぐ方法
―災害が長期化するなかで不安視されるのが、精神的に不安定な状態やフラッシュバック、関心の喪失などの症状を伴う精神疾患、PTSD(心的外傷後ストレス障害)です。被災者の方が今回の震災をきっかけにしたPTSDに苦しまないため、今の時期はどのようなケアをすべきでしょうか。
 私たちがPTSDと呼び始めるのは、災害から1ヵ月から3ヵ月ほどが経過しても精神的に不安定な状況を脱することができない場合を指し、なかには半年~1年が経過したのちに症状が現れる方もいらっしゃいます。
 具体的には、うつ状態になる、悪夢を見る、フラッシュバックが起こる、回避行動を起こすようになる、怒りを感じやすくなるなどといった症状が考えられます。
 すでにPTSDの症状が見られる方の場合には、専門家によるカウンセリングが必要ですが、今はまだ自然に治っていく治癒力がある時期なので、あと1ヵ月ほどは様子をみて、やみくもに専門家が介入しない方がよいかもしれません。なぜなら、「PTSDの予防」として早期介入し、目的を持たずにカウンセリングをしてしまうと、カウンセリングを受ける側は、反対に辛くなってしまう可能性もあるからです。

 現段階として行うべきことは、その方が元気になるためのサポートをすることです。どの時期に何をするかも大事ですが、その方の求めているものを提供してください。PTSDを発症していても、そのための治療が必ずしもよいとは限りません。辛い思いや必要なことを共に分かることが大切で、それだけでも癒されるはずです。


―「兵庫県こころのケアセンター」の調査によると、阪神淡路大震災から16年が過ぎた今でも、家族を失った方の半数以上が、PTSDに苦しんでいると言われています。長期化させないためにはどうすればよいのでしょうか。
 お1人おひとりの生きてきた経験、健康状態、感性、知識によって異なるので、全ての方にあてはまるとはいえませんが、PTSDは自分が体験したことを整理できておらず、心が被災したままで安定していないために長期化しているとも考えられます。
 人は人の中で癒され、元気になっていきます。災害を通して自分が経験をしたこと、罪悪感を覚えたこと、自分に対して否定感を持ったことなど負の遺産を持ち続けると、なかなかそこから解放されません。ですから、同じような年齢の人たちと「場」を持つのは大事なことです。被災地でもその土地の方たちが、世代ごとに炊き出しなどをしながら支えあい、自然に癒されています。そうした人との関係性で癒されることが十分でなかった方のなかには、後遺症が残っている人もいますので、ぜひ関係性を大事にしてください。
 もちろんPTSDの治療は、手遅れになってしまうということはありません。そのときそのときにケアしていけば治癒することはできます。ただ、気づいたときにその都度していかないと慢性化して、体調までも悪化してしまいます。体調を維持するためにも根本である心の問題から治さなければなりません。
 また、アフターケアも大切です。元気になったとしても、1回や2回は同じような場面をみたときなどに恐怖が蘇り、心の整理ができているつもりでも再び精神的な不安が起きてしまうこともあります。ただし、すぐにきちんとしたケアをすれば元気になります。その際に、決して1人で悶々としないでください。それではなかなか癒えません。一緒に被災をした友達や近所の人に話す、あるいは専門的なところにいくなどサポートしてくれる人や場所が重要です。


話を聞いても、心に踏み込まないこと
具体的な支援活動が心のケアになる
―これからボランティアなどで被災地に入り、被災者と触れ合う方も多くなるかと思います。その際に気をつけるべきことはどのような点でしょうか。
 まず、ずかずかと人の心に踏み込まないことです。被災者の方と寄り添って、一緒に笑ったり、楽しいことをするのは大事ですが、無理やりに話を聞きだそうとしてはいけません。きっと話したくないこともあるはずです。
 もちろん被災者の方が話し始めたらしっかり聞いていただきたいですが、その際、こちらから意見やアドバイスをすることは控えた方がよいでしょう。「こうしたほうがいい」、「気にしないで」と言いたくなったとしても、意見を言われただけで「自分は弱いのかな」と逆に傷つくことがあるからです。良いアドバイスの場合もありますが、リスクもありますよね。ですから、「辛かったんですね」と返して、その方の立場に立って理解することが大切です。
 また、被災された方々は、ボランティアの方に対して、せっかく来てくださったからありがたいと思わなければならないと気遣って、逆に疲れてしまうことがあります。ですから話を聞くことも大事ですが、できれば具体的な活動をしていただく方がいいかもしれません。阪神淡路大震災や中越地震のときは、食事の買い物や雪下ろしをする、道をつくる、瓦礫を片付けるなどの活動をしながら話をすることが、被災者の心のケアにつながっていました。
 言葉をかけるだけがケアではありません。「その人がいてくれてよかった」と被災者の方の支えとなるよう、共にいてくださることが“心のケア”として大事だと思います。


なかたに・みほこ/臨床心理学博士。帝京平成大学健康メディカル学部 学部長。阪神淡路大震災などの災害後に多くの被災者のメンタルケアに携わる。



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