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[Ⅶ-22] 継続情報<震災・地震/火山/氾濫>ストレスとトラウマ、命と心を守る

<ニューズウィーク日本版 >3.11大震災 犠牲者の尊厳を守れ(1/2)

 
 <時事通信>校庭の放射線量低減を試験=土を上下入れ替え―福島 <ニューズウィーク日本版>3.11大震災 犠牲者の尊厳を守れ(2/2)
4月28日(木)17時11分配信

「3.11大震災 犠牲者の尊厳を守れ」(ニューズウィーク日本版4月13日号掲載)
 つい数週間前まで生徒の元気な声がこだましていた岩手県陸前高田市の米崎中学校体育館に、次々と被災者の遺体が運び込まれる。安置所となった体育館に並べられた遺体の多くは、死後硬直のせいで亡くなったそのときの姿のままだ。
 小さな軽トラックの荷台に30体ほどの遺体が積み上げられ、運ばれてきたこともあった。逃げ込んだ避難所が津波にのみ込まれ、折り重なるようにして亡くなっていたという。
 ここは本当に日本なのか──毛布にくるまれた遺体が次々と軽トラックから降ろされ、体育館の床に並べられる様子を目の当たりにして、千葉大学大学院医学研究院で法医学を専門にする歯科医師の斎藤久子は、心の中でつぶやいた。
 東日本を襲った大津波による被害の全容がまだ判然としない3月12日、歯科法医学の専門家である斎藤はほかの医師らと共に、千葉県警の車で岩手県に向かった。一晩をかけて盛岡市にある岩手県警本部に入り、休む間もなく米崎中学校へ。斎藤が現地入りしたのは、次々と収容される被災者の遺体を歯科医師として検死するためだ。
 盛岡市中心部の岩手県警本部から現地に向かう車の外には、転がる車や瓦礫の山、ガソリンスタンドに並ぶ車の列といった、津波被害の大きさを感じさせる風景が広がっていく。テレビで生々しい津波被害の様子を見る前に被災地に向かい、実際の被害がどこまでか把握していなかった斎藤は、目の前の光景に唖然とするばかりだった。

■身元確認作業の切り札
 3月11日に発生した東日本大震災から3週間余りがたった。メディアの報道は、福島第一原発事故と放射能漏れに関する内容や、被災地での避難生活の様子が中心だ。
 確かに犠牲者や行方不明者数も毎日発表されている。ただ彼らは単なる統計上の数字として片付けられるべきではない。そして、行方がいまだに分からない家族を必死で捜し続ける被災者のため、死者の身元確認に尽力している人たちがいることも忘れるべきではない。
 歯科医師たちもその一員だ。未曾有の災害に直面した彼らは、今も懸命に遺体の身元確認作業を続けている。犠牲者の迅速な身元判明は、遺族が気持ちの整理をする助けになるだけではなく、犠牲者自身の尊厳を守ることにもつながるはずだ。
 警察庁によれば、今回の大震災による死者数は4月3日現在で1万2020人に上っている。被害の大きかった岩手県、宮城県、福島県で身元が分からない遺体の数は約2300体だ。ただ同時点でまだ1万5512人が行方不明になっていることを考えれば、身元不明の遺体が今後も増えることは間違いない。
 現地で検視作業に参加した警察関係者の1人は「損傷が激しく見た目で判別できない遺体や、所持品がなく特定できない遺体も多い」と言う。「今後は海からだけでなく、瓦礫の下からも遺体が発見されるだろう。時間の経過で腐敗も進み、身元確認はさらに難しくなる」
 そうした状況で期待されるのが歯による身元確認だ。自然災害では、歯科医師が身元特定に大きな力を発揮する。
 その可能性は過去の例を見ても明らかだ。04年に発生したスマトラ沖大地震の津波では、インド洋沿岸諸国で約30万人の死者・行方不明者が出たが、タイのプーケットで津波に巻き込まれた犠牲者約3600人のうち54%は歯科的所見によって身元が明らかになった。津波以外でも、01年の9・11同時多発テロでは被害者の35%、09年2月に発生したオーストラリアの山火事では犠牲者の62%が歯科医師によって身元確認された。
 東日本大震災から3日が過ぎた米崎中学校体育館では、ブルーシートに包まれ検死を待つ遺体が床に並べられていた。それほど広くない体育館は、運び込まれた遺体を安置する場所と、検死や歯科的な所見を行う場所が卓球台で仕切られている。検死が終わった数十体の遺体は白いビニールシートに入れられ、身元判別の手掛かりである所持品や衣服が入った透明な袋と共に横たえられていた。
 白いシートは顔の部分が開けられている。時折「身元確認が入られます」という関係者の声とともに、行方不明者を捜す家族の一団が安置所を訪れた。床に並んだ遺体の顔を順番に見ていくのだ。
 卓球台の仕切りを挟んだ向こうから、家族の亡きがらを見つけた遺族のおえつが響いてくる。「その声を聞くのは本当につらかった」と斎藤は言う。身元が判明した遺体は、体育館のステージ上に並べられていった。
 検視を行う警官はまず所持品を調べ、免許証などが残っていれば写真の顔と照らし合わせて身元を確認する。ただ斎藤によれば、損傷があまりに激しく、免許証の写真で遺体の顔を確認できないケースもある。遺体はその後、医師による検死に回され、死体検案書が作られる。
 歯科法医学者である斎藤が受け持つのは、遺体の歯科所見の作成だ。体育館にある長テーブル2台を検死台代わりにして、死後硬直した遺体の口を丁寧に開口器で開け、中を水や歯ブラシを使って洗浄する。布でよく拭いてから、歯の治療痕などを表に書き込んでいき、口腔内や義歯の写真を撮る。生前の治療記録と照らし合わせて身元を確認するためだ。
 中には口の中が泥だらけだったり、口を開けたことで胃の内容物や薄い血の混じった体液があふれて出てくる遺体もあった。雪が降り続く極寒の岩手で、ひたすら遺体の口を開け続けるのはつらい作業だ。
 斎藤は宿泊地の遠野市から毎日30分かけて米崎中学校の体育館に通った。電気が復旧していない米崎町で作業できるのは、日が落ちる夕方6時頃まで。それでも斎藤は4日間で112体の歯科所見を作成した。

以下「3.11大震災 犠牲者の尊厳を守れ」(2/2)へ続く。

(ニューズウィーク日本版4月13日号掲載)



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