あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅶ-22] 継続情報<震災・地震/火山/氾濫>ストレスとトラウマ、命と心を守る

<ニューズウィーク日本版>3.11大震災 犠牲者の尊厳を守れ(2/2)

 
 <ニューズウィーク日本版 >3.11大震災 犠牲者の尊厳を守れ(1/2) <産経新聞>惨事ストレス限界 長引く遺体捜索、自衛官らPTSD懸念
4月28日(木)17時18分配信

■DNA鑑定は完璧でない
 大災害で多数の死者が出たような場合、身元の確認はそう簡単にはいかない。目視では判別できない遺体も多いからだ。そうしたとき、身元確認に使われるのは指紋、DNA鑑定、歯科所見の3つだが、まずひどく損傷したり、腐敗の進んだ遺体から指紋を採取するのは難しい。
 DNA鑑定も完璧ではない。家族全員が死亡するケースもある津波のような災害では、家族であることは識別できても、例えば遺体が姉なのか妹なのかまでは特定できないからだ。遺体の家族がみな行方不明なら、身元はまず分からない。
 こうした問題を克服するのが歯による身元確認だ。スマトラ沖大地震の際、タイのプーケットで身元確認作業に参加したパラケルスス医科大学(オーストリア)の歯科医師ペーター・シューラー・ガツバーグは「特に津波のような災害では、歯による身元特定はDNA鑑定よりも有効で信頼性があり、迅速だった」と語っている。もちろんこうした方法を組み合わせることも効果的だ。
 両親が陸前高田市で行方不明になった東京在住の男性は、警察から2人とも遺体で発見されたという報告を受けた。父親は見た目で判別が可能だったが、母親は顔の損傷が激しく、とても本人だとは思えなかった。警察からはホクロの位置や身長で確認したと言われたが、男性はどうしても納得できずにいる。
 見た目だけの判別に頼れば、こうしたケースは後を絶たないだろう。まず歯科のカルテを探し、それがなければDNA鑑定を行う。そうすることで人違いを大幅に減らすことができる。
 斎藤は「生前の治療を記録した歯科のカルテとDNA鑑定用に残した歯が1本あれば、身元判明の確度はかなり高くなる。年齢なども判断できる」と言う。「特に今回のように被害者の多い災害では、歯の採取も考慮されるべきだろう」
 天災は待ってはくれない。しかも今回の大震災は死者数があまりに多く、迅速な検死が求められている。それでも現行の日本の法制度では、死体から歯などを取る行為は死体損壊罪に当たる可能性がある。
 そんな状況の中、今回は一般の歯科医師たちも被災地での身元確認作業に参加している。普段は町で歯科医院を開業しているような医師たちだ。岩手県ではこれまで延べ282人の歯科医師が派遣され、福島県からも130人以上が参加している。このほか警察からの要請を受け、全国から150人の歯科医師が被災地に入った。
 岩手県盛岡市で歯科医院を開業する菊月圭吾は、診療中に地震に見舞われた。普段から警察歯科医として事件や事故の遺体確認作業に協力している菊月は、地震の翌朝8時に岩手県歯科医師会に設置された対策本部に加わった。8人の歯科医師が6カ所の災害現場に派遣されることになり、菊月も被害の大きかった宮古市に向かった。
 遺体安置所になっていた宮古勤労青少年体育センターに向かいながら、菊月は自分がそれほど緊張していないことに気が付いた。遺体が運び込まれていた体育センターに足を踏み入れてからも、それは変わらない。
 岩手県は過去に何度か津波の被害を経験している。岩手県歯科医師会には災害マニュアルがあり、大規模災害を想定した実地訓練もこれまで6回行っていた。検死で歯科所見を作成する間、菊月が冷静に作業を続けられたのはそういう背景があったからかもしれない。
 それでも行方不明者の家族が安置所を訪れて家族を発見したときの、センター内に響き渡るおえつと叫び声は忘れられない。そんな中でも、身元確認のために歯科所見の作成だけは粛々と続けなければならなかった。
 菊月は1日だけで30体の遺体の歯科所見を作成した。今では専用の検死用エプロンが使われているが、震災直後は白衣とマスクと手袋だけの作業だった。3月末現在で、岩手県全体では県内の死者3326人のうち、身元の分からない1596体の歯科所見が作られた。
 岩手県歯科医師会は地震の後、盛岡市近辺の歯科医師約150人を対象に歯科法医学などについての緊急講習会を行った。今後、この集会に参加した歯科医師も身元確認作業に派遣されることになる。

■「カルテ喪失」に備えよ
 身元確認に歯科所見がどれだけ役立つかを物語るこんな出来事があった。ある歯科医師の親族が津波で行方不明になった。家族が本人と思われる遺体を発見したが、その歯科医師は親族の歯科治療を担当していたため、遺体の歯を見て別人だとはっきり判別できた。
 知的障害のある遺族が遺体の顔を判別できないケースもあった。ただこの遺族はかかりつけの歯科医院を覚えていたので、すぐに生前の治療記録と照合して本人だと判明した。
 もちろん歯科所見による身元確認にも限界はある。例えば今回の大震災では、歯科医院も被災したために生前の治療記録を記したカルテが見つからないケースもあった。
 対応策として考えられるのは、カルテのデータベース化だ。「カルテをデジタル化し、国や県が管理するための用意はある」と、日本歯科医師会常務理事の柳川忠広は言う。「ただ一元管理には個人情報などの問題もある。法整備が必要だ」
 歯科所見による身元判別をさらに有効にするため、デジタル化は早急に進めるべきだろう。今では一般的になった警察歯科医制度は、85年に起きた御巣鷹山の日航機事故をきっかけにして、日本各地の歯科医師会に設置の動きが広がった。そのおかげで、日本国内で発生した事件や事故の被害者の身元判別がどれほどしやすくなったことか。
「今回の震災を教訓として、日本はこの分野で徹底して準備を進め、世界から認められるような姿勢を示すべきだ。亡くなった人のためにも」と、歯科法医学者の斎藤は言う。
 明日を信じていた大勢の人たちが突然、大津波に襲われて命を奪われた。その一人一人についてきちんと身元を特定し、墓標の下に埋葬することは被災者の尊厳、そして日本人の尊厳を守ることになるはずだ。




もくじ   3kaku_s_L.png   [Ⅶ-22] 継続情報<震災・地震/火山/氾濫>ストレスとトラウマ、命と心を守る
FC2 Blog Ranking
*Edit
   
  • 【<ニューズウィーク日本版 >3.11大震災 犠牲者の尊厳を守れ(1/2)】へ
  • 【<産経新聞>惨事ストレス限界 長引く遺体捜索、自衛官らPTSD懸念】へ