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[Ⅶ-22] 継続情報<震災・地震/火山/氾濫>ストレスとトラウマ、命と心を守る

<毎日新聞>東日本大震災:被災者の心のケア 精神科医・中井久夫さんに聞く

 
 <毎日新聞>東日本大震災:被災者をケア 津波で親失った函館の看護師 <毎日新聞>東日本大震災:寄り添う支援 宮城でも 兵庫の女性警官ら
 東日本大震災でつらい思いをしている人々に、私たちはどのように接すればいいのか。また、何ができるのか。1995年の阪神大震災の際、被災者の心のケアに当たった精神科医の中井久夫さん(77)に話を聞いた。【手塚さや香】

◇無力さ感じずに、今は力蓄える時
 かつてない地震と津波の被害に直面し、多くの人は被災した人たちにかける言葉を失っているかもしれない。「おかわいそうに」といった言い方は、言われた方はみじめに感じ、自尊心が損なわれる。自尊心は病気の治療においても災害時においても、絶対に必要で大事にしなくてはならないものだ。
 「がんばれ」と言うのも、どうだろう。「がんばれ」は英語で「Do your best」と訳されたりするが、言われた方は「今もベストを尽くしているのに」と感じないだろうか。「幸運をお祈りします」といったニュアンスを感じる「Good Luck」という言葉が一番いいかもしれない。それをどのように自分の言葉にするか悩み、工夫して伝えようとすることに意味があるし、その思いは伝わるだろう。大切なのは表面的な言葉の表現ではない。
 大災害や大きな事件・事故に伴って起こる症状を表す医学用語「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」を新聞やテレビでよく見聞きするが、わが国では16年前の阪神大震災を機に広く知られるようになった。不眠や悪夢を見るなどの症状が長い期間続く。阪神大震災の時は医療従事者もそのような症例を診察した経験がなく、被災者も自分たちの心の中で処理すべき問題だと思って、口に出すことを避けてきた部分もあるだろう。それゆえか、さまざまな心身症状の中で最も遅く症状が現れてきた。
 PTSDは、被災者が「自分たちの存在が忘れられていく」と感じることと深い関係がある。阪神大震災時には、誰かがそばに「いてくれる」ことがいかにありがたいことかを、被災者となった私自身が再認識した。だから、被災者のそばに「いること」こそが最大の安心を与える、と折に触れて言ってきた。
 自衛隊など特別な訓練を受けている人たちの忍耐力は別にして、自らも被災しながら救援に当たっている人やボランティアの場合、水だけで頑張れるのは1日、食べ物でも冷えたものだとせいぜい3日くらいだ。加えて、温かい食事をとれないでいると、新しい発想で物事に対処したり、臨機応変に対応することが、次第に困難になってくる。それが2週間もすると、毎日が同じことの繰り返しになり、体調を崩す人が増えてくるようになる。
 阪神大震災の際も、このくらいの時期に風邪をひいて倒れる医師が多かった。しかし、当時はこの時期に九州の大学から救援が来てくれたことで、士気を立て直すことができた。その次は40~50日以内にやるべきことをやってしまわないと、人間のスタミナはそれ以上なかなか続かないものだ。
 ボランティアで被災地に入る人たちは、たとえ大々的に活動する機会がなかったとしても、存在することに意味があるのだと思ってほしい。一方で、阪神大震災では土地勘のない神戸に地図も持たずにきたボランティアが大勢いて混乱した。被災状況を調査するための各種機関や報道陣も押し寄せる中で、地元住民が案内役を務めなくてはならなくなり、救援や復興の妨げになった。
 このたびの大震災は国民的な一致が得られるチャンスだと言ったら、不謹慎であろうか。しかし、精神科医による治療でも言えることなのだが、悲観的な予言は事態の悪化をもたらすことにしかならない。私たちは今、全国民が等しく被災者であるという認識に立ちながら、それでも少し楽観的になろう。被災者に対して何もできないのだ、と無力感を抱くことはない。日本が立ち直るには時間がかかる。今、自分は力を蓄える時だと考えよう。何度も言うが、私たちは被災者のことを忘れてはならない。歴史に終わりはない。今は試練の時だ。

◇なかい・ひさお
 精神科医。奈良県出身。神戸大教授だった95年、全国から駆けつけた精神科医や看護師のコーディネートに当たり、同年発足した「兵庫県こころのケアセンター」の運営に尽力。2004~07年、センター長を務めた。毎日出版文化賞を受賞した『家族の深淵』(みすず書房)など、著書・訳書多数。



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