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[Ⅶ-22] 継続情報<震災・地震/火山/氾濫>ストレスとトラウマ、命と心を守る

震災ストレス反応の多義性を今知る‐自分を知ろうチェックリストの多次元的解析から‐

 
 <産経新聞>「死にものぐるいで上に行け」津波被害の大川小 「あの日」教員は叫んだ <週刊朝日>【被災地から】トラウマ女子大生いたのに! わいせつ犯釈放した地検の罪
○笠松由紀 1 (非会員)、狩野裕2 (非会員)、山田冨美雄3、島井哲志4
(1 大阪大学人間科学研究科、2 大阪大学基礎工学部、3 大阪人間科学大学、4 神戸女学院大学)

key words:ストレス反応、震災時の経験、経時データ目的

1995年1月17 日に発生した阪神大震災は人々の心にさまざまな影響を与えた。特に心身ともに発展途上にある子どもたちにどのようなストレスを与えたのかを把握することは、心のケアという観点からも重要なことである。そのため、震災から3年間にわたり、子どもたちを対象として「自分を知ろうチェックリスト」と題した質問紙調査が山田ら(1995)によって実施された。本研究では、この調査結果をもとに、震災時に子どもたちが体験した出来事がその後の震災ストレスにどのような影響を与えているのかを検討した。特に(1)震災時の経験が各調査時点の震災ストレスに与える影響、(2)震災時の経験が震災ストレスの経時変化に与える影響、(3)震災1年後に強いストレスを感じている可能性がある子どもの特定の3 点に焦点をあて検討した。

方法
 分析対象となるのは、震度7を記録した兵庫県西宮市の2つの小学校に在籍する1年生から6年生までの児童(男407名、女359名)、及び震度4 を記録した大阪府の小学校に在籍する児童(男280名、女289名)である。本研究では、震災から2ヵ月後、半年後、1年後に実施された3 回分の調査結果を用いた。これは、子どもの成長要因がストレスに与える影響を減じるためである。震災時の経験として、恐怖体験、孤独体験、喪失体験をとりあげる。恐怖体験は「部屋の家具が倒れた」「停電になってしばらく真っ暗だった」など客観的事実に即した7項目、孤独体験は「部屋に一人でいた」「自分ひとりで逃げた」などを含む3項目、喪失体験は「大切にしていたモノをなくした」「家が壊れて住めなくなった」の2項目である。このうち、恐怖体験と孤独体験については、あてはまると回答した項目数を、喪失体験ではその有無を独立変数とした。従属変数には、震災ストレス反応の3つの側面である「不安」「うつ」「混乱」の各尺度得点を用いた。なお、震災時の経験は震災半年後の調査で追加された質問項目である。

結果、及び考察
1.震災時の経験が、各時点の震災ストレスに与える影響子どもたちが震災時に体験した出来事が、調査が実施され
た各時点のストレス反応に与える影響を検討するために、構造方程式モデリングを適用した。その結果、恐怖体験は不安に強い影響を与えていることが確認されたが、混乱、うつに与える影響は小さかった。また、喪失体験は不安、混乱、うつのすべてに3 時点とも有意に影響を与えており、震災時の喪失体験が子どものストレスに与える影響は大きいといえる。
 一方、孤独体験がストレス反応に与える影響はほとんど見られなかった。これは、地震発生時刻が早朝であり、孤独体験のある子どもが少なかったことに起因するものと考えられる。性差に注目すると、不安、うつではすべての時点で女子のストレス得点が有意に高かったが、混乱では、1時点目は男子の方が高く2時点目以降は性差が見られなかった。学年では、不安、混乱において中学年が他の学年よりも有意に高く、児童の発達時期によって受けるストレスの大きさが異なる可能性が示された。

2.震災時の経験が、震災ストレスの経時変化に与える影響子どもたちが震災時に体験した出来事が、ストレス反応の経時変化に与える影響について検討した。震災ストレスデータには様々な経時変化をする個体が混在しているため、本研究ではMixture Modelingを適用した。その結果、恐怖体験数が多い場合は震災後1 年間継続して高いストレスを感じやすいことがわかった。この傾向は不安とうつでは女子が、混乱では男子が強く、また、男女とも喪失体験があるほうが強くなる。さらに、喪失体験がある場合は、震災2ヵ月後のストレス得点が低くても時間とともにストレス得点が高くなる可能性があることが示された。
 各ストレス反応の特徴として、不安は震災直後に現れやすく、時間の経過とともに減少しやすいといえる。うつはその症状が現れにくいものの、恐怖体験数が多く喪失体験がある場合には、震災後半年が経過してから症状が現れる危険性がある。一方、混乱は震災時の経験によらず時間とともにストレスが増加する危険性が高いことが示された。これは、震災後の慣れない生活環境などが子どものストレスに影響を与えている可能性を示していると考えられる。

3.震災1年後のストレス高群の予測
 震災 2ヵ月後に得られた各ストレス得点及び震災時の経験から、震災1年後に高いストレス得点を示す個体を予測した。CARTによる分析結果から、震災2ヶ月後のストレス得点が高い場合は、1 年後でも高いストレスを示すことがわかった。また、不安と混乱では、震災2ヵ月後の各ストレス得点が低くても、恐怖体験数が多い場合や喪失体験がある場合には1年後のストレス得点が高くなりやすいことがわかった。一方、うつでは、震災2ヵ月後のうつ得点が低くても、男子は混乱得点、女子は不安得点が高ければ1 年後にうつ得点が高くなりやすいことがわかった。ここから、男子では混乱、女子では不安が時間の経過とともにうつ症状へと変化していく可能性が示唆された。

結語
 震災ストレスは経時変化のパターンが多様であり、性別や震災ストレス反応の側面(不安・混乱・うつ)によって、その要因が異なることが示された。確かに、震災ストレスを受ける大きさは子どもの特性によっても異なるものである。しかし、震災時の経験や震災2 ヵ月後のストレスデータを用いることで、震災による強いストレスを感じる子どもを早期に特定するための一つの指標を得ることができた。本研究で得られた知見が、今後災害児童の心のケア活動を行う際に役立てば幸いである。

(KASAMATSU Yuki, KANO Yutaka,YAMADA Fumio,SHIMAI Tetsushi)



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