あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

DV被害支援室poco a poco 庄司薫のコラム

暴力のある家庭で暮らす子どもへの代償。傷つく心、失う心、何をすり込まれ、学ばされるのか⑤

 
 DVから逃れる。被害者に襲いかかるいい知れぬ不安感に苛まれ、やっぱり私は怖いというあなたへ③ DV加害者の歪んだ心..モンスターはこう考える②
-性暴力- 深刻な心の傷を残す、身勝手な欲求

 母親が父親から暴力を振るわれているのを頻繁に目撃する子どものストレスは、ベトナム戦争や湾岸戦争から生還してきた兵士のストレスに匹敵するといわれている。胎児から33ヶ月の影響が一番大きく、脳のダメージは計り知れない。
 児童養護施設に保護された子どもたちの多くに、ADHD(注意欠陥、多動性障害)やLD(学習障害)、軽い知的障害がみられる。児童養護施設に暮す子どもたちの2/3は、親から虐待を受けている。一方で、子どもたちの影響の多くは、直ぐには現れないことから発見が遅れ、治療が難しくなることも少なくない。知能障害を除いて、顕著に見られるのは、思春期以降、自我が芽生えてきてからである。頭痛や複数、関節痛、湿疹などの身体的症状から、うつ症状、情緒不安定などの精神的な症状と変化して現れる。思春期・成長期を経て、情緒不安定や人とどうかかわっていいのかわからず、対人関係が上手くいかず、トラブルを抱え込みやすい。そのことが、不登校、家出、非行や過食・拒食、リストカット、アルコール・薬物依存の原因となる。しかも、大人になってからもC-PTSD(複雑性心的外傷後ストレス障害)や不安障害などの後遺症、心理的症状に悩まれ続けるのである。学校で、職場で、人間関係に悩み、問題行動を起こして、職を転々とする人たちも少なくない。
 女性受刑者の70%以上が18歳までに性的虐待(性暴力)を受けているというレポートがある。うち30%はレイプ、20%が近親姦(相互合意の意味を含める「相」の文字は省かれている)などの深刻なものとなっている。半数近くが小学6年までに受け、小学校入学前から繰り返されているケースも少なくない。「解離性障害」「解離性同一性障害(多重人格)」は、幼児期や思春期に性的虐待(性暴力)を受けた被害女性の後遺症として発病することが多い。被害女性の多くは、自殺願望、自傷行為、対人恐怖、摂食障害、うつ病、ひきこもり、アルコール・薬物依存などで苦しんでいる。
 また、セックス嫌悪に悩みながら、一方で、心も身も深く傷つけられるような男性に強く惹きつけられ、「自分は穢れている」と自己評価を下げてしまう。しかも、相手のいいなりになり、自分を犠牲にしてまで相手の快楽に応える振る舞いをしてしまう女性も少なくない。
 父親から逃れることのできない母親を軽視する子どもたちも多いし、母親が自分を守ってくれなかったと憎むようになる子どもは少なくない。家庭内暴力で母親に攻撃が向くのは、DVに限らず、父親の価値観を押しつけられ、「自分を生きられない悲鳴」、親にとって都合のいい“従順ないい子”を演じたくない」という“助けてメッセージ”を母親に無視され続けた怒りと憤りをぶつけるからである。
 DV加害者である夫から逃れた後に待っているのが、子どもからの暴力に怯えながらの生活を強いられることさえおきる。DV被害がいかに罪深い、いかに残虐なことを表している。「子どものため」と、せめて学校を卒業するまで我慢しよう、片親でさびしい思いをさせたくないと歯を食いしばって耐えてきたことが最悪の結果を生んでいってしまうのである。悲劇でしかない。
 子どもが親から受ける支配のための暴力(虐待)によって、自分の身の危険を感じたり、自分がいいたいことがいえなかったり、したいことがどういうことかわからなくなっていたら、その子には親はいなかったと考えていいと思う。
 子どもはどのように自分がふるまったら、両親の緊張が解けるのか、機嫌をそこねないようにできるか、いろいろ心を砕くようになっている。親にとって都合のいい“従順ないい子”を演じなくてはいけない。子どもにとっての“緊張”は、「がまんすること」、「がんばること」、「あきらめること」、子どもらしい「無邪気らしさを失う」ことを意味する。
 心の傷が、また緊張をつくっていく。酷い傷ほど記憶から消していかないと生きていくのが辛くなる。だから、身体や心を緊張させることで、その記憶がでてこないようにしていくのである。緊張してギュッと身を固めて、身体のセンサーが鈍感になれば、痛みを痛みとして感じずにいることができる。と同時に、生き生きと感情を表す心が働かなくなってしまう。「感じないこと」は、人が生きることを苦しくするのである。無邪気に子どもとしてふるまうことができない。大人、親の心配を自分の中に取り込んでしまって、父親と母親の仲介役になったり、まるで保護者の役割を担い、続けることになる。そして、身動きが取れなくなっていく。
 「がまん」は、身体を緊張させ、甘えることを知らない身体にしてしまう。しっかり心をヨロイで固めて、自分の辛い感情がでてこないようになっていく。だから、あまり辛いことも、哀しいことも心や身体に響かないようになってしまう。
 大人になって、親になっての怒りは、子どものときの傷に触れた瞬間にでてくることがある。自分の中の甘えたいという気持ちが残ったままだと、親になったとき、甘える子どもに激しく嫉妬するようになる。甘えられなかった人が、甘えを補うには、先ず夫婦からである。ここに、大きな罠があるのである。DV加害者は、「甘えたい」「寂しい」「認められたい」といった心の穴を埋めたいという危うさ(心の隙)の匂いを嗅ぎわけ、ことば巧みに近づいてくるのである。
 性的いたずら(性的虐待・性暴力)を小さいときにされた、触られたその傷をしっかりケアしないと、人を愛することができなくなってしまう。思春期を前にした女の子が、「太るのを気にし過ぎる」「大人になるのを嫌がる」としたら要注意である。太る、大きくなることは、大人になる、女になることを意味する。だから、「女になることの否定」、「自己存在そのものを否定」する“メッセージ”の可能性が高いからである。女になることを否定する行いは、父親との健全なかかわり方が損なわれていたことを示すものである。また、女性ホルモンの過剰分泌によって、年齢に見合わない大人っぽさ(女っぽさ)が醸しだされていたり、過激な性的発言が見られるようになるのもサインのひとつである。
 親や兄弟姉妹の暴力的な関係や性的いたずらは性暴力であり、深刻な長期的な影響をもたらす。本来、発育段階で人とのかかわり合いや問題解決について学ぶ練習になるはずが、間違った人間関係の基礎をつくっていってしまうのである。いたずらされた瞬間から、自分を大切に思えなくなる。「自分は取るに足りない価値のないもの」、「穢れたもの」、「人を愛せないもの」との“幻想”に囚われていくのである。性暴力(性虐待)を受けた人は、口を揃えたように「私は恋愛ができない。恋愛しても何時も上手く行かなくなる」と話す。
 親の顔色ひとつで、パッと動ける子どもは、一見いい子に見えるが、子どもとしての喜びはなく、親を喜ばすことが喜びになっているに過ぎない。自分を生きるということが、どういうことかわからない子になってしまっているのである。親の期待に応えることに必死な子どもは、親の支配下に入ってしまっている。それが、ことばであっても支配のための暴力による恐怖で従うしかない場合の「親にとって都合のいい従順ないい子」は、さらなる悲劇を生んでいってしまう。
 子どもが不登校になったり、過食や拒食をするのは、もう親のために生きるのではなく、自分のために生きたいという心のメッセージである。親のために生きるのではなくて、自分のために生きたいと心と身体の悲鳴なのである。「インナーチャイルド(内なる子ども)の声」である。どの人も、どの人の口をついてでてくることばは、「本当に無邪気に素直に甘えたかった」である。
 小さいときに「がまん」をさせられた人の中には、自分の中に怒りがたまっているし、同時に、子どもとして生きられなかった恨みがたまっている。


2011.4/2
2012.4/28 改訂
2013.4/24 ブログ再構成・再編集にともない掲載場所を移動
2013.5/14 加筆・修正

※ DVの本質は、本来対等であるはずの男女(夫婦間、交際者間)の関係に、上下の関係、支配と従属の関係を成り立たせるためにパワー(力)を行使することですから、”関係性”で理解する必要があるわけです。つまり、「上にたとう(支配しよう)とする者」と「下におかれる(支配され、従属させられる)者」という”関係性”であることから、①カテゴリー[Ⅲ-2]「Ⅰ-3.DVは、夫婦の関係、親子の関係になにをもたらすか(1)-(6)」、②「Ⅲ-2」「Ⅰ-4-(2)デートDVから結婚に至る経緯」に目を通していただければ、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(配偶者暴力防止法、いわゆるDV防止法)」第二条の三にもとづいて作成される「都道府県(市町含む)基本計画」の中で「対象とする暴力として、身体的暴力、性(的)暴力、精神的暴力、経済的暴力がある」との記載が意味するものについて理解を深めていただけると思います。
 そのうえで、本記事のテーマ、相反する拒絶と受容のことばやふるまいを繰り返されることにより思考混乱をおこし、暴力の恐怖により機嫌を損ねないように意に添うようにふるまうなど、暴力に順応することで生活を続けざるをえなくなった、つまり、暴力のある環境で生活を続けること=マインドコントロール下におかれてきたのかを理解していただくには、加害者特性の理解、つまり、DV加害者がどのようにふるまうのかを理解すること、その支配するための暴力により、被害者はどのような“負”の思考パターンに陥っていくことになるのかを理解することが大切です。
 そこで、③カテゴリー[Ⅲ-6]「Ⅳ-24.DV加害者に共通する行動特性」に目を通していただき、その中で説明している「感受性訓練に似通った言動パターン」を頭に入れて、④カテゴリー「Ⅲ-2」「Ⅰ-5.被害者心理。暴力で支配、マインドコントロールされるということ」に目を通していただくことによって、“人との関係性”のいう捉え方でDVを認識することがいかに重要なことなのかを理解していただけると思います。
 また、生活を共にしていた交際相手(元を含む)、あるいは、配偶者からの暴力から逃れるために女性センターや警察を通して施設への一時保護を求めたリ、地方裁判所に保護命令の発令を申立てたりすることについては、⑤カテゴリー「Ⅲ-6」「Ⅳ-21.一時保護の決定、保護命令の発令。「身を守る」という選択」で、さらに、⑥「婚姻破綻の原因はDVにある」として、家庭裁判所に離婚(夫婦関係調整)調停を申立てるときには、「Ⅳ.「婚姻破綻の原因はDVにある」ときの離婚(21-26)」において、DV事件特有の問題、そして、それに準じた考え方の重要性などを理解していただけると思います。
 加えて、暴力のある家庭環境で子どもを育てることは、面前DVとして、「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」では“精神的虐待”とみなされることから、暴力のある家庭環境で育ち、再び、交際相手や配偶者から暴力を受けることになった被害者も併せて、⑦「Ⅲ-2」「Ⅰ-1.虐待の発見。DV家庭における子ども」、「Ⅲ-4」「Ⅱ.暴力のある家庭で暮らす、育つということ(6-12)」において、子どもへの心身への影響についての理解を深めていただければと思います。
 なお、「DV被害支援室poco a poco」では、DV被害者支援として、ア)女性および母子への暴力・DVへの相談、イ)「婚姻破綻の原因はDVにある」とする離婚調停に向けての支援、ウ)暴力(「暴力のある家庭環境で育った」を含む)で傷ついた心のケアをおこなっています。最初に、カテゴリーⅠ「はじめに」に目を通していただければと思います。




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うえさん。コメントを拝見しました。 

重い十字架を背負わされてしまって、辛くて、苦しくて、やるせないでしょう‥。
 つたないカウンセリングの経験から、「底なしの甘えさせて欲しい感情」を埋めることは、残念なことだけどできないと思います。そして、「その感情をどこに向けたらいいのか」ですが、同じ悩みを、生き難さを抱えている方々が、「親に受け入れてもらいたい」「親から守られたい」、「親から守られた心地よさを味わいたい」の<やり直し>に心の魂が躍起になると、思春期以降、年上の異性に代わりの親を求めていっていまうことが少なくありません。
 それは、中高生の援助交際であり、妻子がいる人しか好きになれなかったり、出会い系で優しいことばを投げかけられると「私のことをわかってくれる」とのめり込んでいったり・・。しかし、その関係で、心の寂しさを埋めることはできないばかりか、満たされない虚しさが募り、さらに、寂しいが深くなってしまいます。それでも、関係を断ち切ることできなくなると、必死に気を惹いて自分のことをみてもらおうと躍起になったり、嫌われたくない一心で求められることに従おうとするあまりに心身の健康を損なってしまったり、そういった負のスパイラルに陥っていっている方は少なくありません。
 そして、他人を信じられない、そして、自分も信じられなくなってた、自分の存在そのものの意味がわからなくなると、自傷行為や過食、拒食(摂食障害)といった”命”につながる部分を傷めつけてしまう人も少なくありません。この傾向が酷くなると、薬物に依存して、心の魂を売り飛ばしてしまうことさえあります。
 こういった強烈な刺激をいくら求めても、あなたのいう「底なしの甘えさせて欲しい感情」を埋めることはできずに、「わたしはひとりぼっち、誰も私のことをわかってくれる人はいない」と<孤独感が増す>ばかりです。
 こういったことは、暴力のある中で育ったことによって、二人称(あなたが、あなたは)を獲得できずに、一人称(私が、私は)のままの対人関係、コミュニケーションの取り方のまま大人になってしまうこともひとつの要素です。「私の心は小学生にころから止まったまま」と書かれていますから、もしかして、こういった要素を抱えているのかも知れませんね。

 いま、あなたが何歳なのかわかりませんから、どの段階を経ているのかわかりませんが、AC(アダルトチルドレン)専門のカウンセリングを受けるなど、第三者の協力をえながら、時間をかけて、なにがあなたの身にふりかかってきたのか、正しい理解することが何より必要ではないでしょうか。
 あなたと両親との関係を、どういった<ことば>が家庭内で使われてきたのかを見直し、その結果として、暴力のある家庭、DV環境で身につけられなかった対人関係のあり方、コミュニケーションのとり方学び直して、あなたの心の中での<落としどころ>となる距離感、立ち居地を”手探りの中で”見つけていくことしかできないと思います。
 それは、手探りの作業であって、手にできない、見えない不確かな不安感との戦いの長い長い道のりです。苦しくなって、”周期的に”<逃げだしたくなる>、<消えてしまいたくなる>ことを繰り返しながら、専門の第三者と時間をかけて、その人をなんとか信じて、二人三脚で一歩一歩身につけていって欲しいと切に思います。

 もし、あなたが、私と話をしてみたいというときは、poco_a_poco_marine_s@yahoo.co.jp の方に、メールをいただければと思います。

2011.7/8
poco a poco 庄司薫

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