あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

DV被害支援室poco a poco 庄司薫のコラム

暴力のある家庭で暮らす子どもへの代償。傷つく心、失う心、何をすり込まれ、学ばされるのか③

 
 暴力のある家庭で暮らす子どもへの代償。傷つく心、失う心、何をすり込まれ、学ばされるのか④ 暴力のある家庭で暮らす子どもへの代償。傷つく心、失う心、何をすり込まれ、学ばされるか①
 DV加害者の「オレはやっている。だから、お前たちも~をしろ」といった取り引きには応じてはいけない。これまでのように加害者の「やりぁいいんだろ!」とか、「俺はやるぞ。みていろ」と子どもの前で大見得を切っても、やることはない。ことばだけであっても、悪びれる様子など微塵もない。まるで何もなかったかのようである。たとえ、やりはじめたとしても3日と持たない。「今まで、やったことがないことを3日頑張った」とか、「1週間やったからいいか」とは決して思ってはいけないのである。また、「やるといったじゃない」などと指摘するものなら、「誰に口をきいているんだ! テメーは俺にケンカを売るのか!」と怒鳴りはじめる。
 こうしたことが何度か繰り返されると、この人には、「いっても無駄だ」「いっても何も変わらない」と口を閉ざしてしまう。
 父親のそういう自分勝手でいい加減なところ、そのときの気分でいうことがコロコロ変わることを、さらに、母親がそういう父親に何もいわなくなっていることを、子どもは冷静に視ている。一方で、常に何が本当なのかわからず、混乱している。しかし、子どもが親のもとで生きる(生活する)ために身につけていってしまう“術”は、「父親の機嫌を損ねず」、「喜ぶことは何か」にだけ神経を集中することであると思い知らされてきた。怖い思いをしたくないし、親の庇護下を維持していくために(ご飯を食べさせてもらうために)必要なことだから捨て去っていくしかないのである。しかし、母親からみるとその姿は、子どもは「父親に懐いている」、「パパのことが好き」と映ってしまう。この“勘違い”が、DV環境から逃れるタイミングを母親から奪い取ってしまうことが少なくない。
 ところが、怖いから父親に媚びている子どもも、成長し、思春期が近づくと「私には怒るけれど、パパはやらないじゃない」「対面ばかり気にして、外ではいい顔をして、家では何なの!」といった不条理な思いを強くする。日々、父親から「お前らは黙ってろ!」「ここ(家)にいたいなら俺に従え!」という支配的で恐怖のメッセージを受け続けている。だから、反発心を怖くて表現できない、ことばにできずにいるだけである。その反動が、母親への不信感をいうかたちで不満を露わにしていく。
 とはいっても、日々、「お前らは黙っていろ!」「この家にいたいなら、俺に従え!」という支配的な恐怖のメッセージを受け続けているから、反発心を怖くて表現できない。ことばにだすことができずに、その悔しさを心の奥に溜め込んでいく。子どもは、そのことばにだすことができない不甲斐なさに傷つき、失望感を積み重ねていく。その度に傷つき、自分を責め、惨めな気持ちになることは、幼児期、思春期前の子どもにとってはいたたまれない、心が張り裂けそうな辛いことである。
だから、そう思う心を持たないようにしていく。無理やり「人として感じる心を消し去ろう」とするのである。その方が、楽に生きられると本能的に知っている(実は、脳幹にシステム化されている)。同時に、感じる心を消し去ろうとして養育期を過ごすと、そこと連動している大脳の働きも止めてしまう。
 つまり、合理的思考を司る「脳皮質」、記憶と感情の中枢の「海馬」にダメージを与えるのである。感情の中心である「扁桃体」にも重大な影響を与える。脳の化学物質分泌の影響は、ストレスを調節するホルモンの「コルチゾン」や重要な神経伝達物質の「エピネフィリン」、「ドーパミン」、「セロトニン」等に変化が生じ、バランスに問題が生じると障害が起きる。支配のための暴力、DVや虐待はセロトニンのレベルを下げ、鬱や衝動的攻撃の原因になるのである。
 私が薦める毎日20~40分の丹田呼吸法は、セラトニンの分泌が促されることが最新の脳医学で解明されている。他に、衝動的攻撃行動の要因には、低血糖状態によるアドレナリンの大量分泌の影響も併せて考えられる。
 思春期を持って、さまざまな問題行動が表面化してくるのは、心を失う前、心を壊し去る前の最後の抵抗を必死に試みようとするからである。暴力というウイルスと必死に闘って高熱をだしたり、時にうなされさりしている状態だと思ったらいい。ウイルスに心を支配されてしまうと、ウイルスと同じ生きる道を選ぶしかなくなる。生まれてからずっと知らず知らずにウイルスに侵され続け、傷んで、死にかけようとしている心は、ウイルスを除いた場所で、時間をかけてゆっくりとケアしてあげなければならない。その決断ができるのは、母親であるあなただけである。
 親の暴力を見て暮らしてきた。それは、(精神的)虐待というマイナス(-)の経験に対して、プラス(+)の経験を子どもにさせることが何よりの大切なのである。第三者が、カウンセラーが、「悲しい体験をしたね。私もとても悲しい」と共感のことばを投げかけるだけでも、衝撃を受けた脳の回復に役立つ。加害者の父親と離れる引越しをすることで、脳と体の神経伝達物質のバランスを変化させることもわかっている。
 虐待を受けてきた子どもたちの扁桃体は、気持ちを抑えられない問題行動として「助けて」というシグナルを出し続けている。SSRIのような抗うつ剤を用いずに、数ヶ月、時に数年かけて脳を安定させることができたら、記憶処理を向上させることができる。
 脳の安定に要する期間は、虐待を受けた期間、生育年齢、傷んだ脳の損傷状態等のさまざまな要因によってひとりひとり違う。虐待を徹底的に取り締まるアメリカでさえ、虐待児童の10%以下の子どもしか適切な治療を受けられていない。急速な脳の発達は3歳くらいまでに終わるが、脳は大人になっても変化しつづけることが証明されている。とはいっても、虐待を受けてから治療を受けるまで時間が経つに従い、神経経路の修復は難しくなる。虐待を受けて大人になった人の脳は、壊れたコンピュータのハードドライブのように虫食い状態になっていると、最近アメリカの論文で報告された。
 暴力の中で育った被虐待者が、DV加害者になる。その加害者の壊れた心がおりなすサディスティックな暴力のやり口は、もはや病的に異常であるといわざるをえない。虫食い状態に蝕まれた脳の仕業なのである。惨く、哀しいことであるが、これもまた事実である。
 児童福祉施設に入っている子どもたちの3/4に行動的、学習的問題が生じていることも明らかになっている。
 しかし、この脳の変化が必ずしも不可逆的でないこともわかっている。適切な介護、精神的治療を施すことで、子どもたちの脳の回路および心理発達を正常に戻せる可能性のあることもわかっている。傷ついた心を癒やすのは、十分な無償の愛を感じさせる場所の提供が必要不可欠な路であることも先駆的な治療を行っている機関の報告からも立証されている。


2011.4/1
2012.4/28 改訂
2013.4/24 ブログ再構成・再編集にともない掲載場所を移動
2013.5/14 加筆・修正

※ DVの本質は、本来対等であるはずの男女(夫婦間、交際者間)の関係に、上下の関係、支配と従属の関係を成り立たせるためにパワー(力)を行使することですから、”関係性”で理解する必要があるわけです。つまり、「上にたとう(支配しよう)とする者」と「下におかれる(支配され、従属させられる)者」という”関係性”であることから、①カテゴリー[Ⅲ-2]「Ⅰ-3.DVは、夫婦の関係、親子の関係になにをもたらすか(1)-(6)」、②「Ⅲ-2」「Ⅰ-4-(2)デートDVから結婚に至る経緯」に目を通していただければ、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(配偶者暴力防止法、いわゆるDV防止法)」第二条の三にもとづいて作成される「都道府県(市町含む)基本計画」の中で「対象とする暴力として、身体的暴力、性(的)暴力、精神的暴力、経済的暴力がある」との記載が意味するものについて理解を深めていただけると思います。
 そのうえで、本記事のテーマ、相反する拒絶と受容のことばやふるまいを繰り返されることにより思考混乱をおこし、暴力の恐怖により機嫌を損ねないように意に添うようにふるまうなど、暴力に順応することで生活を続けざるをえなくなった、つまり、暴力のある環境で生活を続けること=マインドコントロール下におかれてきたのかを理解していただくには、加害者特性の理解、つまり、DV加害者がどのようにふるまうのかを理解すること、その支配するための暴力により、被害者はどのような“負”の思考パターンに陥っていくことになるのかを理解することが大切です。
 そこで、③カテゴリー[Ⅲ-6]「Ⅳ-24.DV加害者に共通する行動特性」に目を通していただき、その中で説明している「感受性訓練に似通った言動パターン」を頭に入れて、④カテゴリー「Ⅲ-2」「Ⅰ-5.被害者心理。暴力で支配、マインドコントロールされるということ」に目を通していただくことによって、“人との関係性”のいう捉え方でDVを認識することがいかに重要なことなのかを理解していただけると思います。
 また、生活を共にしていた交際相手(元を含む)、あるいは、配偶者からの暴力から逃れるために女性センターや警察を通して施設への一時保護を求めたリ、地方裁判所に保護命令の発令を申立てたりすることについては、⑤カテゴリー「Ⅲ-6」「Ⅳ-21.一時保護の決定、保護命令の発令。「身を守る」という選択」で、さらに、⑥「婚姻破綻の原因はDVにある」として、家庭裁判所に離婚(夫婦関係調整)調停を申立てるときには、「Ⅳ.「婚姻破綻の原因はDVにある」ときの離婚(21-26)」において、DV事件特有の問題、そして、それに準じた考え方の重要性などを理解していただけると思います。
 加えて、暴力のある家庭環境で子どもを育てることは、面前DVとして、「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」では“精神的虐待”とみなされることから、暴力のある家庭環境で育ち、再び、交際相手や配偶者から暴力を受けることになった被害者も併せて、⑦「Ⅲ-2」「Ⅰ-1.虐待の発見。DV家庭における子ども」、「Ⅲ-4」「Ⅱ.暴力のある家庭で暮らす、育つということ(6-12)」において、子どもへの心身への影響についての理解を深めていただければと思います。
 なお、「DV被害支援室poco a poco」では、DV被害者支援として、ア)女性および母子への暴力・DVへの相談、イ)「婚姻破綻の原因はDVにある」とする離婚調停に向けての支援、ウ)暴力(「暴力のある家庭環境で育った」を含む)で傷ついた心のケアをおこなっています。最初に、カテゴリーⅠ「はじめに」に目を通していただければと思います。




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