あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

DV被害支援室poco a poco 庄司薫のコラム

暴力のある家庭で暮らす子どもへの代償。傷つく心、失う心、何をすり込まれ、学ばされるのか②

 
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 子どもは、親が話している内容ではなくて、父親が母親に対して怒鳴り散らしている顔つきや声のトーンが心(脳に映像として)に刻み込まれていく。
 「メラビアンの法則」がある。人は、話の内容は7%程度しか覚えていないというものである。38%は容姿、55%がその人のそのときの雰囲気、話し方の状況によるというものである。人の記憶は、怒っている、哀しそうだ、嫌っている、楽しそうだ、嬉しそうだ、喜んでくれた、好いてくれているが優先されるのである。暴力のある家庭環境に暮している子どもたちが親の絵を描くとき、目を吊りあげた顔、恐怖に怯えている顔、悲しそうに泣いている顔しか書けない。そして、DV被害者の方に「殴られたときの状況、シュチュエーション、琴線にふれたことはなんだったのかを話していただけますか?」となげかけても、「覚えていないんです」と返ってくることが多い。
 DV被害者の小学校高学年になる子どもが、「パパがママを殴り、髪をつかみ引きずっていて、そのあと、「土下座して謝れ!」とパパが怒鳴っていた。そして、ママが土下座して「許してください」といっていたことが、何度も何度も思いだされる。思いだすとドキドキしてきて、震えが止まらなくなる」と被害者である母親に話した。ところが、娘からその話を聞かされた被害者は、数年前の出来事である土下座したことを覚えていなかった。その半年前、被害者が実家に帰省したとき、その被害者自身も同じ体験をしている。子どものとき目にした「父親(子どもからみて祖父)が何か怒鳴りながら、母親(子どもからみて祖母)を張り倒し、顔を何度も床に押しつけていたことが忘れられない」と母親(祖母)に話すと、母親(祖母)はそのこと自体を覚えていなかったのである。
 殴られた本人が覚えていない恐怖のできごとを、子どもたちは映像としてしっかり記憶している。そして、子どもたちが心の中で叫んでいる思いは、「ママはどうして逃げないで一緒にいるの?」「暴力が怖くて怯えて暮らしている私をどうして助けてくれないの?」ということである。その「どうして?」という思いをずっと心の奥にため込んでいく。そして、思いださないように記憶に重い蓋をする。
 と同時に、暴力に耐える母親を見て、「女の子は、男の暴力からは絶対に逃れられない。辛くても、耐えて我慢していくしかない」ということを、「男の子は、母親(女)は父親(男)の暴力に太刀打ちできない。どんなに酷いことをされても逃げないし、別れない」ということを学び、価値観としてすり込んでいってしまうのである。暴力によってなりたっている夫婦関係を見て育つことによって、安心すること、信じること、思いやることがどういうことなのか体験できないまま成長していく。その結果、思春期に入っていくにつれ、友人とのかかわり方に悩み、苦しんでいく。その苦しみに秘められた怒りは、「俺(私)が生きにくい。対人関係で苦しむのはお前(母親)のせいだ!」と家庭内で暴れるようになっていくのである。もしくは、「わたしが生きている証を実感する」ために、過食・拒食やリストカットを繰り返していくことになる。
 あなたが逃れることを決意し、子どもたちに真正面から向き合い、父親からの暴力に立ちふさがるようになっていく(DV加害者の父親からは、反抗しやがって!になる)と、子どもたちには、「母親が自分を守ってくれようとしている」といった思いは伝わっていくのである。しかし、このときそれまで我慢を強いられてきた反動が一気にでる。“これまで”の体験から、いつまで続くのかを“試す”のである。母親が本当に私を守ってくれるのかを“試す”のである。しかも、「これでもか」というくらいわがままな行いを突きつけ、トラブルをひきおこし、困らすのである。それは、DV被害で心が傷ついてきたあなたにとって、やるせなく、辛く、耐えられないことである。
 しかし、母親として子どもの矢面にたちつつ、子どもと向き合いながら、また、母親との関係を必死に修復しようとしていると信じ続けなければならない。子どもは自分の試しに逃げず、真正面から向き合う姿勢、自分のことを信じ続ける母親の姿勢から、人を信じることを学び直すのである。
ただし、状況は直ぐには変わらない。変わるには長い年月が必要となる。子どもは産まれてからずっと、母親が侮蔑されて耐えている姿を見続けてきた。しかも、「自分たちも叩かれ、怒鳴られているのに、母親には守ってもらえなかった」とずっと思ってきたのである。だから、直ぐに180度対応が変わることはない。しかし、確実に変わっていく力があることを信じるしかないのある。
 そうした中、兄弟姉妹間で喧嘩が絶えないのは、まったく別の問題である。ひとつは、叱られ、怒鳴られたくないと父親の顔色を伺って生活している過緊張からくるストレスから発生しているものである。そして、既に、暴力(からかう、ひやかす、はやしたてるを含む)のやり方、父親のやり方を自身の体験の中から学習し、すり込んでいることを意味しているのである。
だから、日々の言動や態度と母親であるあなたへの思いは別にある。
 日々、子どもの心は父親からの支配のための暴力で傷つき、壊れていく。だから、子どもを助けてあげよう。あなたの心と一緒に子どもたちの心もケアしてあげよう。それができるのは、母親のあなただけなのである。


2011.4/1
2012.4/28 改訂
2013.4/24 ブログ再構成・再編集にともない掲載場所を移動
2013.5/14 加筆・修正

※ DVの本質は、本来対等であるはずの男女(夫婦間、交際者間)の関係に、上下の関係、支配と従属の関係を成り立たせるためにパワー(力)を行使することですから、”関係性”で理解する必要があるわけです。つまり、「上にたとう(支配しよう)とする者」と「下におかれる(支配され、従属させられる)者」という”関係性”であることから、①カテゴリー[Ⅲ-2]「Ⅰ-3.DVは、夫婦の関係、親子の関係になにをもたらすか(1)-(6)」、②「Ⅲ-2」「Ⅰ-4-(2)デートDVから結婚に至る経緯」に目を通していただければ、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(配偶者暴力防止法、いわゆるDV防止法)」第二条の三にもとづいて作成される「都道府県(市町含む)基本計画」の中で「対象とする暴力として、身体的暴力、性(的)暴力、精神的暴力、経済的暴力がある」との記載が意味するものについて理解を深めていただけると思います。
 そのうえで、本記事のテーマ、相反する拒絶と受容のことばやふるまいを繰り返されることにより思考混乱をおこし、暴力の恐怖により機嫌を損ねないように意に添うようにふるまうなど、暴力に順応することで生活を続けざるをえなくなった、つまり、暴力のある環境で生活を続けること=マインドコントロール下におかれてきたのかを理解していただくには、加害者特性の理解、つまり、DV加害者がどのようにふるまうのかを理解すること、その支配するための暴力により、被害者はどのような“負”の思考パターンに陥っていくことになるのかを理解することが大切です。
 そこで、③カテゴリー[Ⅲ-6]「Ⅳ-24.DV加害者に共通する行動特性」に目を通していただき、その中で説明している「感受性訓練に似通った言動パターン」を頭に入れて、④カテゴリー「Ⅲ-2」「Ⅰ-5.被害者心理。暴力で支配、マインドコントロールされるということ」に目を通していただくことによって、“人との関係性”のいう捉え方でDVを認識することがいかに重要なことなのかを理解していただけると思います。
 また、生活を共にしていた交際相手(元を含む)、あるいは、配偶者からの暴力から逃れるために女性センターや警察を通して施設への一時保護を求めたリ、地方裁判所に保護命令の発令を申立てたりすることについては、⑤カテゴリー「Ⅲ-6」「Ⅳ-21.一時保護の決定、保護命令の発令。「身を守る」という選択」で、さらに、⑥「婚姻破綻の原因はDVにある」として、家庭裁判所に離婚(夫婦関係調整)調停を申立てるときには、「Ⅳ.「婚姻破綻の原因はDVにある」ときの離婚(21-26)」において、DV事件特有の問題、そして、それに準じた考え方の重要性などを理解していただけると思います。
 加えて、暴力のある家庭環境で子どもを育てることは、面前DVとして、「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」では“精神的虐待”とみなされることから、暴力のある家庭環境で育ち、再び、交際相手や配偶者から暴力を受けることになった被害者も併せて、⑦「Ⅲ-2」「Ⅰ-1.虐待の発見。DV家庭における子ども」、「Ⅲ-4」「Ⅱ.暴力のある家庭で暮らす、育つということ(6-12)」において、子どもへの心身への影響についての理解を深めていただければと思います。
 なお、「DV被害支援室poco a poco」では、DV被害者支援として、ア)女性および母子への暴力・DVへの相談、イ)「婚姻破綻の原因はDVにある」とする離婚調停に向けての支援、ウ)暴力(「暴力のある家庭環境で育った」を含む)で傷ついた心のケアをおこなっています。最初に、カテゴリーⅠ「はじめに」に目を通していただければと思います。




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