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[Ⅶ-22] 継続情報<震災・地震/火山/氾濫>ストレスとトラウマ、命と心を守る

<ダイヤモンドオンライン>石巻市内での3日間の医療支援でわかったこと 被災地に入ったボランティア医師の奮闘日誌⑥  

 
 ことばは心の足音、心が発する音も”音” <ニューズウィーク日本版>人と人は「対等」であれば「つながる」ことができるのではないか? 冷泉彰彦(作家・ジャーナリスト)
裴 英洙 [神奈川県災害医療チーム(JMAT)ヘルスケアクリニック厚木 医師]

 3月11日に発生した東日本大震災。多数の死傷者が出て、壊滅的な打撃を受けた被災地・石巻の赤十字病院へ、日本医師会が派遣する災害医療チーム「JMAT」(ジェイマット)の一員として派遣された30代医師の現場レポートを、可能な限りリアルタイムに更新していく。最終回の今回は、これまでの活動を総括して、被災地で医療支援を考えている医療従事者に向けたメッセージをおくる。

被災地で実際に活動してわかったこと
 我々、ヘルスケアクリニック厚木の3人のチームは、日本医師会が派遣する災害医療チーム「JMAT」の一員として、神奈川県医師会から宮城県石巻市に派遣された。
 3月23日(水)の夜に神奈川県を出発し、石巻市内で3日間の医療支援を行った。ほんのわずかな期間ではあったが、被災地で実際に活動してわかったことは多い。
 緊急連載・最終回の本稿では、被災地で医療支援を考えている医療従事者に向けて、メッセージをまとめたい。

急性期から慢性期に変わる被災地
 被災前、石巻赤十字病院は、2次救急・3次救急の拠点病院として機能していた。
 わかりやすく言えば、体の具合が悪いと感じた人はまず地域にある“町のお医者さん”に行き、そこでの治療が難しい場合に石巻赤十字病院が治療していたわけだ。
 つまり同病院は本来、脳神経外科や心臓血管外科、放射線治療科などの専門科を抱えて、より高度な治療技術が求められる疾患に対応していた。
 だが被災後は、包括的にすべての治療を受け入れざるを得ないため、本来の専門領域である「高次医療」を十分に提供できていない。

 そのため同病院では、津波の被害からいち早く立ち直った“町のお医者さん”である地元開業医や病院と連携し、症状の軽い患者の治療を担当するよう呼びかけている。
 1次救急を“町のお医者さん”に任せて、2次救急や3次救急に対応できるようにするためだ。
 また、今回の大震災は津波による被害が大きい。
 そのため阪神・淡路大震災のように切り傷や骨折など、外科系領域の患者はそれほど多くない。がれきの山から救い出した被災者にその場で心肺蘇生や救命措置を施さなければならないような急性期医療のニーズは減り、慢性期疾患を抱えた患者を治療する段階へと移行しつつあるのだ。これらの状況を踏まえ、これから災害地で医療活動をしようと考えているチームに向けて、次の3点の情報を伝えたい。

災害医療① 情報収集の重要性
 身分証などを持っていない避難所の被災者たちにも、処方した薬を間違いないように届けなくてはならない。
 また、第3回の連載でも書いたように、すべての被災者が避難所にいるわけではなく、半壊した住宅の2階で生活を送る被災者もいる。
 石巻赤十字病院はおろか、災害対策本部や行政でも、まだそれらの情報を十分に把握していないのが現状だ。
 そのため被災地では、被災者たちの情報収集に最も力を入れている。調査シートを用意して、現地の情報を体系的に収集して管理しようとしているが、完璧に機能しているわけではない。そのため我々のような災害医療チームには、治療とともに医療に関わる情報収集が求められている。

 だが我々医療者は情報収集の専門家ではないため、有益な情報を伝達できない場面もある。たとえばある特定の被災地で起こった状況をすべての被災地で発生しているように伝えたり、自分の専門領域に偏って報告することも考えられる。あるいは「阪神・淡路大震災時の被災者よりひどい」などと抽象的な表現を使うため、十分に被災地の状況が把握できずにいる可能性もある。
 状況が刻一刻と変化するため、定型のヒアリングシートを作ってもすぐに陳腐化してしまうことが懸念される。
 情報収集を効率化するには、バランスのとれた災害医療チーム編成が求められる。
 たとえば、患者へのヒアリング能力の高い看護師をチームに加えるとか、情報整理がうまい事務員をメンバーに入れることで、正確でタイムリーな情報収集が可能になるのではないか。チームリーダーである医師の指揮のもと、医療に必要な情報が集まるとメリットは大きい。

災害医療② 慢性期対応チームの結成
 石巻赤十字病院では、被災地において適切なタイミングで薬が届けられなかったり、衛生面が悪化していることを受けて、今後は慢性疾患の患者が増えると予想している。
 また、被災後2週間以上が経過し、避難生活への疲労から「心のケア」も必要になってくるとみているようだ。
 これらに対応するには、慢性疾患の治療に詳しい医師や、公衆衛生に詳しい専門家、保健師、カウンセラーなどの医療人材が必要になってくると思われる。これから災害医療支援を検討しているチームは、チームメンバーに留意し、これらの専門家を加えるとより被災地のニーズに合った医療支援ができると考える。

災害医療③ 役割別チーム医療
 石巻市では、基幹病院としては唯一石巻赤十字病院だけが、大きく被災しなかった。そのため災害対策本部も同病院に設置され、実質的に石巻市における医療の中心として機能している。
 だが、未曽有の災害で情報が錯綜していることに加え、全国各地から大勢の災害医療チームが入れ替わり石巻市に応援に来ることから、すべての医療ボランティアや災害医療チームに対してきめ細かく役割分担を振り分けるのが難しい状況だ。
 もしかすると、ある災害医療チームが被災地に行ったところ、すでに現地の医療ボランティアが治療していたり、同じ患者を2度診察する事態になりかねない。こうなっては、せっかくの医療支援が十分に機能しなくなる。
 ガバナンスが効いた医療体制を築くには、各々の災害医療チームが石巻赤十字病院など中枢機能を持つ災害医療対策本部に、こまめに指示を仰ぐ必要がある。また、チーム別に役割を分けるのもいいだろう。患者の情報収集に特化したチームや、感染症予防の指導に特化したチームがあってもいい。
 さらに、医療以外の専門家の力も借りたいところだ。
 第3回の連載でも書いたように、薬を効率よく被災者に届けるにはロジスティクスの専門家が必要だ。
 マスコミの一部が被災者一人ひとりの情報を集めて記録してくれるのも助かる。情報システムの専門家が、被災者の仮住所の情報を一覧できる仕組みを作ってくれれば、現場の情報の混乱が少しは落ち着くだろう。医療分野以外からの専門家の力を借りながら、被災者を支援する医療体制ができれば理想的だ。

十二分に頑張っている彼らに、「頑張れ」とエールを送ることはやめよう
 我々のような災害医療チームはともかく、もともと石巻赤十字病院で働いている医療者たちは、家族が津波の被害者になりながらも、不眠不休に近い状態で治療に取り組んでいる。
 また、同病院に届いた医療物資の量を見ると、日本中の人たちと企業から、精いっぱいの支援が届いていることに、日本の底力を感じた。
 そして、治療を受けているにもかかわらず、我々医療者の健康を気遣い「遠くまでわざわざありがとう」と何度も頭を下げる被災者のやさしさと力強さには、胸がいっぱいになった。
 すでに十二分に頑張っている彼らに「頑張れ」とエールを送ることはやめよう。
 これからも自分ができることにプロとして全力で取り組むことで、日本の医療に貢献していくと誓い、この連載を結びたい。


行動メモの代わり「持ち物メモ」
(役に立ったもの、あれば良かったもの)
・底が分厚くて丈のある長靴(ガレキの中を歩くのでサイズの合ったもの)
・長靴の泥落し用ブラシ
・デジタルカメラ(メモを書きとめる手間が惜しい)
・大きめのリュックサック(ポケットが多いもの)
・ポケットの多い上着
・ボイスレコーダー(患者との面談内容メモのため)
・シャチハタ印(避難所用カルテ用)
・火を使わなくても食べられる食料(お湯を使うものは面倒)

被災者への支援物資として喜ばれるもの
・分厚いウェットティッシュ(ノンアルコール・清拭用)
・湯たんぽ(お湯が沸かせる場合)
・トランプやカルタ(子ども用)
・耳栓やアイマスク(被災者の安眠用)



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