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[Ⅶ-11]<家族問題。親殺傷・ひきこもり。性同一性障害>新聞事件簿。どう向合う

<ダイヤモンド・オンライン>「ひきこもり」するオトナたち④ 「自立できない=恥」という価値観は本当に正しいか 引きこもりに“負い目”を感じさせる日本社会の病理 

 
 <ダイヤモンド・オンライン>「ひきこもり」するオトナたち⑤ 余命半年宣告でも引きこもりの家族救済に奔走  “親たちのカリスマ”死去に想う「1つの時代の終焉」 <ダイヤモンド・オンライン>「ひきこもり」するオトナたち③ 地域から孤立する当事者と家族の“救世主”!? 国が行う新たな「引きこもり支援」の可能性
2011.3.3

社会から離脱して、引きこもる人たちの中に「負い目ポイント」というものがある。
「負い目ポイント」は、人によって多少の違いはあるものの、主に「履歴」だったり、「社会経験」だったりする。一旦、社会を離脱した人たちが、なかなか復帰できなくなるのも、こうした負い目ポイントを本人ではなくて、社会がつくりだしていることに原因がある。

休めば「なぜ働かないのか」と責められる 結果ですべてを判断する世間への疑問
「他人から評価される“いい所”は、いつも結果で判断されるんです。でも、“いい所”って、本当に結果だけなんでしょうか?」
 現在も「引きこもり」状態の生活を続けていて、「発達障害」と診断されたという御堂諦さん(年齢非公開)から、先日、そんな話を聞く機会があった。
 御堂さんは、高校卒業後の時点で、人間関係に疲れていた。将来が信じられない。しばらく休ませてほしかった。
「なぜ働かないのか?」と責められる。でも、学校を卒業した後の進路を思い浮かべたとき、会社員として仕事をしている自分が想像つかなかった。
 高校卒業後、都内の専門学校に毎日通いながら、大学の教育学部の通信制課程で学んだ。通信制課程は、大学版サポート校のようなシステムだったという。
 学校では、詰め込み的なカリキュラムが行われ、友人とのメールのやり取りも、レポートや試験に関することばかり。新聞を読むような余裕がなかった。
 当時、大学の総長がある事件で逮捕されて退学騒動が起きた。その少し後、御堂さんは、潰瘍性大腸炎を発症。大学を退学する。
 当時、記憶にあるのは、『らき★すたエンディングテーマ集~ある日のカラオケボックス~』というCDを購入したこと。また、『月刊ニュータイプ』というアニメ雑誌の付録で、この作品を舞台にした埼玉県鷲宮町(現在の久喜市)の鷲宮神社が話題になっていたことくらいだ。この模様を取材した、フジテレビ系の『NONFIX』というドキュメンタリー番組『オタクと町が燃えた夏』が放送されたのを観た。


「つらければ、いつでも休める」 自分のペースで続けることが大きな自信に
 引きこもる人たちの背景は、様々だ。結果的に、受診したところ、精神疾患と診断されるケースも少なくない。
 御堂さんの場合、潰瘍性大腸炎になってしまい、「仕事をしよう」と思うだけでつらくなってしまうため、普通の仕事をすることが難しいという。そこで、いまは無償ボランティアとして、週に1~2回、学校現場やネットの世界などで活動している。
「学校といっても、先生は無理」という御堂さんは、あくまでボランティアのため、交通費も給食費も自己負担で活動。「つらかったら、いつでも休んで構いませんよ」といわれている。気にしないで、自分で決められるから、続けられる。
 お金にはならないけれど、教育現場に携わることで、本人にとっては大きな自信につながっているという。周囲に理解があれば、こうした活動に入る道もあるのだ。
 学校などの文化は好きだった。しかし、「基準が、他人とは少しだけ違っていた」と、御堂さんはいう。

「生活面で自立」できていれば偉いのか? 引きこもりを追いつめる周囲の価値観
 生活面で自立ができていない人たちに、よく出てくる問いかけが、「あなたが働いていないせいで、親が困っていますよ」というプレッシャーだ。
「収入を得ていることだけが偉いのか?」
 と、御堂さんは疑問を投げかける。
 “復帰”した社会が、本人の望んだ世界観でなければ、また元に戻ってしまうに違いない。
 “社会復帰”というと、既定の路線からズレているから、戻らなければいけないという意味を含んでおり、“復帰”といった時点で、復帰する前のことはマイナスに捉えられる。だから、プラスに戻らなければいけないし、その間の過去は隠さなければいけないというようにも聞こえる。
「大事なのは、一般の人たちが言っていることが、果たして、引きこもりの人たちの望んでいることなのか、ということです」


 世の中の世界観を知りたがっている人たちがいる一方で、いまの社会は窮屈だから、「まったりしましょう」といわれて、救われる人たちもいる。まったりしたい、と思っている人たちに、社会に復帰するのがいいんだと押して行ってしまうと、本人の世界観とズレてしまう可能性もあるという。
 せっかくすばらしい世界観を持っているのに、外に発言することなく、自分の趣味だけで終わらせてしまう。ウラ言葉みたいなところで固まっているから、世間から「ヘンな人」と見られる。
「本人がどう思っているのか」に寄り添うことが、「本人がどう生きたいのか」という思いにつながっていく。社会的にいいかどうかの評価と、本人が満足する生き方かどうかは違う。
 そういう基準の違う人たちの持っているモノは何なのか。そういうことを皆が知る機会をつくっていくことも、必要なのかもしれない。
「引きこもり」でしかできないこともある。何もしていなかったといっていたとしても、他の人たちが仕事をしているとき、ひたすらその時間を考えに使っていた人たちだ。この間に形成される世界観もある。ムダという意見はまったく当たらない。
「本人のクオリティ・プライオリティ(質の向上)を考えたら、まず見てみて、後で仕事のことを考えてもいい。結果的に、学校で活動していたことが、仕事につながることもあるんです」(御堂さん)

「負い目ポイント」に悩む人たちが 働く希望を見いだせる日は来るか
 日本の正規雇用への道は、硬直化している。だから、「負い目ポイント」に悩む人たちにとっては、「働く」イメージにつながる希望の道筋が見えにくい。
「引きこもり」の心性を抱える人たちが、一歩を踏み出す勇気も必要だろう。しかし、その前に、政府が雇用システムのあり方を抜本的に見直す対策を検討するなど、社会のほうにも変革を求めるべきなのではないか。社会の流れが変われば、「引きこもり」の概念も変わってくることだろう。
 日本人は全能感が好き。あらゆる面で他人より優れていないと、安心できない傾向がある。でも、どんなにまっすぐな線を描こうと思っても、人間なのだから、どこかに歪みが起きてしまうものだ。
 実は、万能なものなどあまりない。そういうことを皆が少しずつ気づいて、理解してくれるだけでも、「負い目ポイント」なんて気にすることもなくなり、もっと生きやすい社会になるのかもしれない。



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