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[Ⅶ-11]<家族問題。親殺傷・ひきこもり。性同一性障害>新聞事件簿。どう向合う

<ダイヤモンド・オンライン>「ひきこもり」するオトナたち② 引きこもりの社会復帰を阻んでいるのは誰か 「エントリーシート」と「ハローワーク」の高い壁

 
 <ダイヤモンド・オンライン>「ひきこもり」するオトナたち③ 地域から孤立する当事者と家族の“救世主”!? 国が行う新たな「引きこもり支援」の可能性 <ダイヤモンド・オンライン>「ひきこもり」するオトナたち① 引きこもりは本当に「裕福な家庭の子」の甘えか NHK『クローズアップ現代』出演で知った偏見の根深さ
外に出るきっかけを 天変地異に求めてしまうほどの孤独
2011.2.17

 真っ暗な部屋の中で、テレビのブラウン管からは、「たったいま、飛行機が墜落した模様です」などと、キャスターの上ずった声の映像が流れてくる。
 2001年9月11日。アメリカ同時多発テロ事件の第一報を伝えるニュースだ。
 30代の高木明雄さん(仮名)は、当時、都内のアパートで1人暮らし。その日の夜10時過ぎ、何気なく報道番組を見ていて、突然、CNNのニュースが流れ始めたときのシーンを鮮明に覚えている。しかし、その前後の記憶が、なぜかない。
 テレビでは、当初の事故報道から、現地駐在ジャーナリストが「テロの情報が入った」と伝え、2機目がビルに衝突。そして、ビルの崩壊へと延々と続いていく。そんな映像を、高木さんはただ茫然と眺めていた。
「自分の関係のないところで、歴史がつくられているなあ」
 時代が動いている傍らで、引きこもってテレビを見ている自分がいる。高木さんには当時、この大きな事件が、まるで映画のように感じられた。
「あの頃は、自分からはどうにも動くことができなくて。自然災害などの外の要因をどこかで待っていました。アパートが火事になればいいのに…とか」
 天変地異があれば、外に出られるような気がしていた。
「失われた10年」が続く中で、21世紀に入り、世の中がテロなどのぼんやりした社会不安へと向かっていく。そんな時代のどこかに展望を見いだせそうだった一方で、それらも自分につながる話には思えなかった。
 その頃の高木さんは、誰とも関わりを持っていなかったからだ。

「うつ」へと追い込んだ 多忙な日々と超就職氷河期
 高木さんが最初に体調を崩したのは、ちょうど9・11事件の起こった2001年、大学を卒業する直前頃のことだ。そんな状態のときに、超就職氷河期も重なり、就職活動が思うように行かなかったのがきっかけとなり、引きこもるようになったという。
 学生時代は大変だった。都内にある大学のゼミに入ると、いろいろな役目が自分に回されてきて、それらを「できます」といって、すべて引き受けていた。しかも、新たな役目が次々にできてしまう。


 多数の学生たちのなかでうまく立ち回れず、押し切られてしまったのだ。平均睡眠時間は1日2時間。そんな多忙な状態が、2年ほど続いた。
 こうして業務がひと区切り終わると、3日間、70時間くらい寝続けた。目覚めたとき、「あれ、曜日がおかしいな…」と思った。
 アパートのポストには、新聞がたくさん溜まっている。週明けだと思っていたのに、天気は週末の予定を伝えていた。
 休むつもりはなかった。ただ、身体中が重たくて、痛かった。
 近くのクリニックの内科に診てもらったが、何も悪いところはない。そんなだるさを抱えたまま、就職活動をした。
 企業が、学生を事前にふるいにかけるための「エントリーシート」を導入するなど、採用試験が複雑になりつつあった時代。高木さんは、エントリーシートを書く過程で行う「自己分析」を前にして、「自分には何もない」「アピールすることなどない」と感じたという。
 高木さんは、就職面接の会話のやりとりを覚えていられなかった。エントリーシートの文章も、2~3行書くのに1日中かかる。スケジュールもバッティングして、思うような活動ができなかった。
 就職活動につまずいた高木さんは、進路を大学院への進学に切り換えた。そして、大学院の受験には失敗したものの、ある研究室から「まだ進路が決まっていないのなら、うちの研究室で受け入れます」という連絡があった。
 そこで、きちんと身体を治しておこうと思い、初めて精神科の病院に行ってみた。すると「うつ」と診断され、通院を開始する。しかし、薬を飲んでも、状態はなかなか良くならなかった。
 結局、高木さんは進学をあきらめざるを得なくなり、地方の実家に戻ることになる。その間、様々な精神科で受診したものの、状況は一向に改善しなかった。

引きこもりからの脱出を導いた ある医師との出会い
 4~5年くらいは、地元のクリニックにだけ通っていた。ずっと家には居づらいので、夕方近く、図書館には出かけた。
 とくに図書館へ行く目的があったわけではない。他に行くところがなく、本の背表紙を見ているだけで、何となく落ち着いた。
 朝、起きたときからずっと考えて、何時間でも過ごすクセがあった。ぷらぷらと散歩したりもしたが、散歩しようと思うまでに時間がかかった。


 頭の中では行こうと思っているのに、身体が動かない。「もう夕方だから、行かなければ…」という感じだ。
 そんなとき、現在通っている病院の精神科を紹介された。
「君はうつ病の薬を飲んでも良くならない。強迫性の傾向が強いから、そちらの薬を飲んでみよう」
 医師からいわれた薬に変えたところ、「こんな感じに頭がスッキリするのか」と思うくらい、見違えるように変わった。朝、起きたときからずっと考えて過ごす傾向も、減ったように思える。
 いまの病院でのカウンセリングや、当事者の集まる集団認知行動療法なども、社会性を養うのに役立っているようだという。精神科や心療内科などで診てもらっても、そこに必ずしも「引きこもり」のメカニズムに精通した医師がいるとは限らない。

ひょんなことから新聞配達のバイトとパソコン講師に 社会復帰は“行きあたりばったり”がいい
 高木さんは、1年くらい前から、新聞配達のバイトの仕事を続けている。
 始めるきっかけは、ひょんなことだ。前任者の配達人が病気で亡くなった。そこで、新聞配達の専売所の人が「誰かできる人はいないか?」と探していると、たまたま知り合いだった高木さんの家族が「うちに何もしていないのがいるから、配達できる」と話を進めてしまったのだという。
 高木さんは、新聞配達の専売所からの電話で「仕事があるんだけど、明日からやらないか?」と誘われて、「私、できます」と答えてしまった。あっというまに雇用が決まった感じだ。
 このように、高木さんは自ら動き出したわけではない。ただ、彼の動き出せるところが、たまたま社会とマッチングしたのだろう。高木さんも、「とくに抵抗感はなかった」と話す。
 新聞を配る先は、地方の数十軒という限られたエリアで、朝刊のみ。最初は1時間くらいかかったが、いまは30分ほどで仕事をこなせるようになった。
 ピンポイントで「やってくれないか?」と役割を求められ、最初は時間を気にせずに、少しずつ覚えていけるような仕事であれば、社会につながっていくことができるのかもしれない。
 高木さんは半年ほど前から、朝の新聞配達に加え、パソコン教室でも、平日の朝から夕方頃まで、講師として働き続けている。


 これもまた、教室に通っている人から「誰か講師はいないか?」と紹介され、巡りめぐって回ってきた仕事だ。電話で「パソコン教室を見に行かない?」といわれ、見学に行ったら、「明日から来て!」といわれた。
 かつて、ハローワークへ行くと、「あなたみたいな経歴では就職なんてできませんよ」と説教された。それからは、求人票をみても「自分にできることは何も無い」「志望動機なんてない」と思い、行かなくなったという。
「主体性がないんです。仕事に就けたのも、動き出さなければという、それなりのドクターからのプレッシャーがあって、始めただけかもしれません。治療の結果を出さなければ、と思ったんです」
 ハローワークへ行くのも、「エントリーシート」のような履歴書を書くのも敷居が高い。「そこで、自分がダメになる」と、高木さんはいう。
「ピンポイントで吊りあげる方法があると動き出しやすいのではないでしょうか。なかなか自らは動けないし、ピンポイントでも動けない人は、まだそういう状態ではないのかもしれません」
 とりあえず、きっかけがあればそれに乗っかってみる。わけがわからなくても働いてみる。そして、ちょうどいいくらいに疲れているほうがいい。

「1人立ち」するためには 自己分析もハローワークの説教も必要ない
「まだ身体が慣れていない。体力的にも精神的にも、もっと余裕ができたらいいなと思う」
 そうこぼす高木さんだが、生活はだいぶ様変わりして、家でゴロゴロすることもなくなったという。
 ただ、生活設計ができるほどの余裕はない。いつまでパソコン教室が続くのかもわからず、「行きあたりばったりの人生だ」と高木さんはいう。
 一度レールを外れると、ハードルが高くて、レールに戻りにくい社会。そんな中で、時代から置き去りにされ、孤立した状況から「1人立ち」を模索する人たちに、「エントリーシートのための自己分析」も「ハローワークの説教」も、何の意味があるのだろう。




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