あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅲ-1]暴力の影響を「事例」で学ぶ。虐待とDVの早期発見・支援。母と子どもが暴力から脱するための手引き

暴力の影響を「事例」で学ぶ。DVの早期発見・支援。母と子どもが暴力から脱するための手引き

 
 -目 次- IES-R(改訂出来事インパクト尺度)
* 現在、この「手引き」は、第3次改訂の編集をおこなっています。編集終了後、差し替えていきます。

あいさつ

『暴力の影響を「事例」で学ぶ。DVの早期発見・支援。母と子どもが暴力から脱するための手引き』は、行動科学にもとづく組織・人材コンサルティングに携わってきた経営コンサルタントとしての20年間の経験(組織内のパワーハラスメント・セクシャルハラスメント対策を含む)と、「DV被害支援室poco a poco*-1」として、DV被害者支援に携わってきた10年間(平成28年6月現在)の経験をナレッジ(知識・経験・事例・ノウハウなど付加価値のある情報)としてまとめたものです。
行動科学では、「行動の原理や法則を導きだすことで、行動の予測と制御が可能になる」と考えます。
行動の“見かけ”ではなくて、環境に及ぼす効果、環境が行動に及ぼす効果、つまり、“機能”に注目することによって、環境をどのように変えれば行動の頻度が変化するのかがわかり、望ましい行動を増やしたり、望ましくない行動を減らしたりする方法を考えることができるとするものです。
「DV被害支援室poco a poco」は、「ひとりでも多くの子どもたちが、家庭内で、DVを目撃する(面前DV被害=精神的虐待被害)などの暴力で傷つかないようにしたい」との考えのもと、暴力のある関係性を断ち切り、生活の再構築を望んでいる被害女性(主に暴力で傷ついた母子)に対するサポート(支援)をおこなっています。
そのひとつが、DV被害を立証するために、警察に傷害事件としての捜査を求めたり、地方裁判所に保護命令の発令を求めたり、女性センターに一時保護の決定を求めたり、離婚調停や裁判で「婚姻破綻の原因はDVにある」と離婚を求めたり、暴力被害により精神的苦痛を被ったとして損害賠償金(慰謝料)の請求したりするうえで欠かせない「現在に至る事実経過(DV被害事実の報告書)」をとりまとめることです。
DV被害を立証するために重視していることは、第一に、暴力に順応するために身につけてしまった考え方の癖(認知の歪み)の修正を踏まえること、第二に、被害者の示すトラウマ(心的外傷)反応が、いまこのときの暴力行動にもたらされた直接的な被害に反応を示しているのか、それとも、いまこのときのトラウマ反応であっても、生い立ち(成育環境)が背景にあり、そのトラウマ反応を複雑にさせているのかを見極める*-2ことを通じて、暴力で傷ついたケアを進めていくことです。
暴力に順応するために身につけてしまった考え方の癖は、暴力の状況を正確に伝えるための事実認識に支障を生じさせ、トラウマ反応の見極めは、暴力に支配された関係を断ち切ったあとの暴力で傷ついた心のケア、つまり、パニック症状やうつ症状を伴うPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状の改善に大きく影響を及ぼすことになります。
  したがって、この「手引き」を通して伝えたいことが、「DVを目撃して暮らしている子どもが、DVの最大の被害者である」こと、「DVの目撃は精神的虐待に該当し、子どもの脳の発達に大きなダメージを与え、将来にわたり心身の健康を損なうことになる」ことです。
被害者の心理特性、加害者の行動特性を理解するうえでも、この「子どもがDVを目撃して育つ(面前DV被害下で暮らす)*-3」ことを問題視することが重要であると考えています。
なぜなら、「人の脳は、生まれ育った環境(胎児期を含む)でつくられる」という事実に立つと、“生い立ち”=生まれ育った家庭環境で暴力を受けてきたトラウマ(心的外傷)にフォーカスすることが重要であるからです。
また、「DV被害支援室poco a poco」では、「あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?(http://629143marine.blog118.fc2.com/)」というサイトを通じて、「いま必要な情報を、ひとりでも多く、情報を必要としている人に届けたい」との思いで、DVと密接な関係にある虐待、性暴力、そして、これらの暴力による後遺症としての心の問題にかかわる情報を提供しています。
  これらのテーマに対する「情報」を「いま、必要としている」のは、①配偶者や交際相手から受けている暴力が、DVに該当するものなのかを確認したいと思っている当事者やその関係者、②配偶者や交際相手からの凄惨な暴行から逃れる(一時保護の決定により、一時保護施設に入居し、その後、新たな生活をするなど)には、どうしたらいいのかわからず、情報を得たいと思っている当事者やその関係者、③婚姻破綻の原因はDV(子どもへの虐待を含む)にあるとして離婚調停に向けて動きはじめたものの、第三者にDV被害を理解してもらえず、理不尽な思いをし、なんとか状況を打開したいと切迫した状況にある当事者、④被害女性から相談を受けて、関連情報を集めている親族や友人、職場の上司や同僚、児童の学級担任や教職員、⑤児童・生徒の家庭でDVや虐待があり、児童や保護者への対応方法(緊急一時保護の決定などを受けての転入出、トラウマ反応としての問題行動を表している児童への対応を含む)などの情報を必要としている教職員、⑥DV被害者や虐待被害者、または、その家族と接したり、診察したりする機会が多い福祉関連職に就いている公務員、医師や歯科医、看護師、関連職員など、そして、⑦暴力のある家庭環境で育ち、人との距離感がわからずに強い不安を感じ、葛藤に悩み、苦しむなど生き難さを抱えている人などです。
必要とする情報の用途はそれぞれですが、共通しているのは、その多くが、いま切迫した状況にある中で情報を必要としていることです。
 そうしたさまざまなニーズに対応することを考え、『暴力の影響を「事例」で学ぶ。DVの早期発見・支援。母と子どもが暴力から脱するための手引き(以下、「手引き」)』では、被害者や加害者の人物・行動特性、DV・虐待という暴力行為の事実認識、行政や学校、司法のDV事件や虐待事件への対応のあり方などについて、具体的な理解をしていただくために、3部6章38節(プロローグ4節を含む)で構成され、293の事例、50の判例、11の対応例を紹介しています。
*-1 DV被害支援室poco a pocoの事務局は、東京都23区内ですが、詳細な所在地(住所)については、緊急一時保護施設(行政や民間のシェルター)などと同様に“非公表です”。
なぜなら、DV加害者との接触を避け、相談をしている被害者とその援助をしている者(アボドケーター)に対する加害行為を防ぐ必要があるからです。
*-2 過去の生い立ちにトラウマ(心的外傷)となりうる暴力を体験してきた人たちに認められる共通した特性や傾向を抱えている人たちは、アダルトチルドレン(AC)、発達性トラウマ症候群、被虐待女性症候群(バタード・ウーマン・シンドローム)などの総称で呼ばれています。
*-3「面前DV」とは、子どもが、父親と母親の間(あるいは親の交際相手との間)の暴力を目撃したり、聞いたりすることで、「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」では、精神的虐待とみなされています。



(暴力描写や性的表現による「トラウマ反応」表出のリスク)
この「手引き」でとりあげている延べ293の事例の中では、女性や子どもに対する暴力の状況、凄惨な殺害状況について、トラウマになりうるような残虐な行為の表記は、必要最低限に留めています。
一方で、「Ⅱ-10-(5)性暴力被害と解離性障害」、「Ⅱ-11.パラフィリア(性的倒錯・性嗜好障害)」では、当該事項でとりあげる事例を含めて、性暴力被害の深刻な事態を軽視し、事実を歪めて認識することのないように、生々しい暴力の描写、性的な表現がされています。
そのため、女性の中には不快に思われたり、気分を害したりするかもしれません。
加えて、サバイバー(被虐待者やDV被害者)の方の中には、PTSDの主症状の侵入(フラッシュバックなど)によりトラウマを体験したその瞬間にひき戻されたり、離人症状や解離症状が現れて意識が切り離されてしまったり、パニックアタックによる過呼吸がひきおこされたり、動悸、ふるえ、吐き気に襲われたりする可能性が十分に考えられます。
そこで、サバイバーの方には、フラッシュバックによるパニック症(過呼吸)を予防するため、そして、自ら脳内物質セロトニンの分泌を促すことができるという観点から、心を調えることができる「吐いてから、吸う呼吸法」を身につけて欲しいと思います*-4。
*-4 パニック発作のひとつに過呼吸という症状がありますが、過呼吸をおこしている人に対して、「ゆっくり吸って」と呼吸を促すなげかけをすることが少なくありませんが、そのなげかけ方は間違いです。
なぜなら、呼吸の仕組みは、息を吐くと横隔膜の反射運動により息を吸うようにできているからです。
したがって、「吸ってから吐く」のではなく、「吐いてから吸う」ことを習慣化していくことが特に重要です。「吐いてから吸う呼吸法」については、「Ⅴ-34.DV被害者の抱える心の傷、回復にいたる6ステップ」の冒頭で、「丹田呼吸法。セロトニンを安定させる反復運動」詳しく説明しています。



(精神疾患や発達障害の診断名の表記について)
  この「手引き」では、虐待(面前DVを含む)被害の後遺症として、人格障害(パーソナリティ障害)、遅発性の発達障害(反応性愛直障害を含む)、解離性障害、統合失調症(精神分裂病)などの精神疾患を示す用語が使われています。
その精神疾患の診断基準や表記は、「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM;Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」、邦訳「精神疾患の分類と診断の手引」にもとづいています。
例えば、「発達障害」では、DSM-ⅢからDSM-Ⅳまでは、生得的・先天的な脳の成熟障害によって発生する広汎な領域に及ぶ発達上の問題や障害を「広汎性発達障害(PDD;Pervasive Developmental Disorder)」という概念で表してきましたが、最新のDSM-5では、広汎性発達障害(PDD)という概念の使用をやめ、レット障害を除いた発達障害はすべて「自閉症スペクトラム(ASD;Autism Spectrum Disorder)」という自閉性の連続体(スペクトラム)を仮定した診断名が使用されています。
この「DSM-5」については、平成26年5月28日、日本精神神経学会が「DSM-5 病名・用語翻訳ガイドライン」を作成しました。
改訂のポイントは、児童青年期の疾患では、病名に「障害」がつくと、児童や親に大きな衝撃を与えるという理由で、「障害」を「症」に変えることになったことです。
「言語障害」は「言語症」、「学習障害(LD)」は「学習症」に、不注意や多動性、衝動性が表れる「注意欠如多動性障害(ADHD)」は「注意欠如多動症」、「自閉スペクトラム障害」と捉えてきた対人関係などに問題が生じるアスペルガー障害や自閉性障害は、「自閉スペクトラム症」となりました。
そして、「反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害」と「脱抑制型対人交流障害/反応性愛着障害・脱抑制型」は、ともに「心的外傷およびストレス因関連症候群」になりました。
この他、突然強い不安感などに襲われ、動悸や身震いなどの発作を繰り返す「パニック障害」は「パニック症」、「アルコール依存症」は「アルコール症障害」、「拒食症」は、「神経性やせ症」に、そして、体の性と自ら感じる性が一致しない(生物学的な性別と自己意識が一致しない)「性同一性障害」は「性別違和」へと統一されました。
この「手引き」では、上記の「DSM-5」に則したガイドラインによる名称の変更以前の一般的に知られている名称、つまり、「自閉スペクトラム症」や「自閉スペクトラム障害」ではなく、アスペルガー症候群(AS)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などと表記しています。
この「手引き」内では、主に、「発達障害」「注意欠陥多動性障害(ADHD)」、「アスペルガー症候群(AS)」「双極性障害(躁うつ病)」「統合失調症(精神分裂病)」「(反応性)愛着障害」、それぞれの「人格障害(パーソナリティ障害)」、それぞれの「依存症」と表記しています。
ただし、裁判で実施されている精神鑑定による診断名は、裁判開催時にどの「DSM」が使用されたのかにより異なることから、この「手引き」では、裁判で用いられた診断名をそのまま記載しています。

** この「手引き」で重視している考え方は、「プロローグ-1.人の脳の機能は、生まれ育った環境に合うようにつくられる」などで詳述しているように、「人の脳は、胎児期を含めて、生まれ育った環境でつくられる」ことです。
  これまで、心が傷ついたといっても見えないと片づけられてきましたが、MRI画像診断などを使った研究により、被虐待体験者の脳の特定の部位に萎縮(器質的な損傷)が確認される(視覚化される)ようになり、その結果、「心の病(精神疾患など)の多くが、遺伝因子にもとづくものではなく、後天的な環境因子にもとづくものである」ことが裏づけられてきました。
  重要なことは、先に記しているとおり、「器質的障害」とは、「どこの器官が損傷を受けた結果、不具合が生じている状態に至っているかが特定できていること」を意味していることから、遺伝によるものだけでなく、「後天的な環境因子による損傷によるものも含まれる」ということです。
  つまり、この「手引き」で重視していることは、胎児期を含めた脳の発達を形成する環境が、器質的障害を招くリスクがあるということです。
  このことは、上記にあげた精神疾患(人格障害、一部の発達障害を含む)の多くは、後天的な環境因子による器質的な損傷(萎縮など)が発症要因となっているということを意味します*-5。
  したがって、この「手引き」では、胎児期の脳に与える暴力被害ストレスを後天的な環境因子と捉え、ADHDなどの発達障害の発症要因のひとつとしています。
  加えて、ADHDのAC(アダルトチルドレン*-6)など、「遅発性の発達障害」の発症については、“乳幼児期の睡眠障害”にも注視しています。
  「Ⅱ-12-(2)発達の遅れ」の中で述べているように、“乳幼児期の睡眠障害”としてみられる「日々繰り返される暴力などの大きな物音に神経が研ぎ澄まされ、神経が高ぶり(中途覚醒)、しばしば目が覚めてしまい睡眠が分断され(断眠:睡眠のコマ切れ状態)、睡眠欠乏になる」ことが、神経伝達物質をバランスよく分配することを損ない、ADHDなどの発達障害を発症させるひとつの要因となっているわけです。
  重要なことは、注意欠如、活動過剰、衝動的行動などの症状が、小児型ADHDよりも重く、不安神経症やうつ病、マリファナやアルコールの依存症などの罹患率が高く、交通事故や犯罪行動などの増加を伴う傾向がみられる「遅発型ADHD」などは、子どものPTSD(心的外傷後ストレス障害)の“2次障害”として示す傾向と酷似していることです。
つまり、PTSDの症状を呈するトラウマ(心的外傷)体験となった暴力のある家庭環境によってもたらされる「発達性トラウマ症候群」や「被虐待症候群」、「AC(アダルトチルドレン)」、「仮面うつ病(非定型うつ病、新型うつ病)*-7」の特性や傾向と酷似しているのです。
「Ⅱ-12-(11)自己正当型ADHDとAC」などで詳述しているとおり、「ADHDのAC」「自己正当型ADHDのAC」の“AC”とは、小児型ADHDであった子どもが、暴力のある家庭環境で育つという“2次障害”、つまり、遅発性の発達障害に分類されるものです。
この遅発性の発達障害の“障害の特性”に対する理解は、DV、パワーハラスメントやモラルハラスメント、体罰などをふるまいに及ぶ加害者の特性と絡む問題であることからとても重要な意味を持つものです。
つまり、父親から暴力を受ける母親のストレスは、胎児期の脳の器質的発達に影響を及ぼし、発達障害の発症原因となり、出生後の乳幼児期に暴力のある家庭環境で育つことも発達障害の発症原因となり、その後、暴力のある家庭環境で生活し続けることは、遅発性の発達障害などの精神疾患を発症させる原因となり、このことが、暴力の連鎖のひとつの要因となっているということです。
*-5 コロンビア大学のピーター・ベアマン教授は、「不妊治療で使われる医療技術の約80%を占める顕微授精(体外にとりだした卵子に顕微鏡を用いて極細のガラス針で人為的に1匹の精子を穿刺注入し、受精させてから子宮に戻す方法)に代表される生殖補助医療によって生まれた子は、そうでない子に比べ、自閉症スペクトラム障害であるリスクが2倍である」という研究結果を報告しています。
*-6.7 AC(アダルトチルドレン)、仮面うつ病(非定型うつ病、新型うつ病)については、「Ⅱ-15.ACという考え方と人格障害」の中で詳述しています。



(「事例で学ぶ」ということ)
  この「手引き」では、DVとはどのようなものか、子どもが暴力のある家庭環境で育つということはどういうことかを理解するうえで、以下の5点を重視し、繰り返し説明しています。
第一に、“DVの本質”は、「本来対等である夫婦の関係に、上下の関係、支配と従属の関係性を構築するためにパワー(力)を行使すること」という“関係性”で認識する必要があること、第二に、近しい者に対して暴力行為に及ぶ者には、自己愛と反社会性が高いサイコパス的*-8な特質を持つ者による支配性の高い暴力の他に、自己正当化型ADHDやアスペルガー症候群*-9などの「コミュニケーション・社会性の障害」による特性が、結果として、DVやハラスメントとなる暴力などがあり、その違いの見極めが、関係性を理解するうえで重要であること、第三に、児童虐待やDV問題を理解し、その問題に対応するうえで、人を支配するために暴力を使う者、障害の特性が暴力となる者の人物特性、行動特性を正確に把握することが必要であること、第四に、暴力(面前DV、過干渉・過保護、いき過ぎた教育(教育的虐待)を含む)のある家庭環境で育つことが、どのような考え方(価値観や思考習慣にもとづくモノサシ(判断基準))や行動習慣を身につけることになるのかを正確に知ること、第五に、慢性反復的(日常的)に暴力を受ける環境が、心身に及ぼす影響について軽視することなく、その後の人生に及ぼす影響について、慢性反復的(日常的)暴力被害で傷ついた心のケアのあり方を含めて、正確に理解することです。
*-8 「自己愛と反社会性が高い」人物の特性については、「Ⅱ-15-(10)人格障害(パーソナリティ障害)とは」で、「サイコパス」については、「Ⅰ-5-(5)-⑥サイコパス」で詳しく説明しています。
*-9 「自己正当化型ADHD」「アスペルガー症候群」については、「Ⅰ-5-(5)-⑤“障害の特性”が結果として暴力となる」、「Ⅱ-12-(11)自己正当化型ADHD・アスペルガー症候群とAC」で詳しく説明しています。

そして、この「手引き」では、292事例(うち25事例は分析研究、53事例は事件研究)のうち239事例で、a)DV(身体的暴力・性的暴力・精神的暴力(ことばの暴力)、社会的隔離、経済的暴力)、b)デートDV(リベンジポルノ・レイプを含む)、c)ストーカー行為、d)虐待(ネグレクト、身体的虐待、性的虐待、精神的虐待、面前DV(精神的虐待)、過干渉・過保護、いき過ぎた教育(教育的虐待)、カサンドラ症候群による虐待行為を含む)、e)レイプなどの性暴力、f)差別、g)貧困、h)マタニティハラスメントなどを受けた人たちの訴え、i)アルコールや薬物、ギャンブル依存者、j)戦地から帰還した兵士と家族の声(帰還兵のPTSDの症状)、そして、k)子どもたちが発するSOS(暴力被害のサイン)、l)児童相談所が一時保護をした母子に対する心理治療をとりあげ、暴力による支配とはどのようなものか、暴力を受けると人はどのような心理状態に陥るのか、加えて、DV離婚調停の現状などを詳細に説明しています。
特に、慢性反復的(日常的)に暴力被害を受け続ける被害者は、なぜ、暴力に支配された関係を断ち切れないのかについて、「Ⅰ-2-(6)被害者にみられる傾向」で、2つの事例(事例72、事例73)」をとりあげ、被害者に見られる特徴、傾向を、①“恋愛幻想”下でのデートDV、②別れる決意、恐怖のストーカー体験、③再び別れ話を切りだし、酷くなる暴力、③DV環境下で育ってきた子どもの状況、④快楽刺激とトラウマティック・ボンディング、⑤感覚鈍磨と誤認、⑥退行願望、⑦トラウマティック・ボンディングとできない理由づくり、⑧別れることの障壁、⑨思考混乱、考えるということ、⑩「見捨てられ不安」と無視・無反応、⑪暴力の世代間連鎖、低い暴力への障壁、⑫暴力から逃れたあと、「共依存」へのアプローチ、⑬加害者の生い立ちに共感、⑭暴力のある家庭環境で育ったことを起因とする精神的脆弱さ、⑮被害者の空虚感、渇望感を埋める加害者の夢と財として、まとめています。
さらに、凄惨な殺人事件をおこした加害者が、暴力のある家庭環境で育った被虐待者(面前DV、過干渉・過保護、いき過ぎた教育(教育的虐待)被害を含む)であることに着目し、53の事例(事件研究)をとりあげ、事件の全容、育った家庭環境、判決状況までを詳細に説明しています。
  「Ⅰ-6-(6)デートDVとストーカー殺人事件)」でとりあげる4事例は、桶川ストーカー殺人事件(事例88)、長崎ストーカー事件(事例89)、逗子ストーカー殺人事件(事例90)、三鷹ストーカー殺人事件(事例91)で、元配偶者や元交際相手に執拗なつきまとい行為の末に殺害された殺人事件です。
「Ⅱ-12-(15)回避的な意味を持つ子どもの「非行」」では、広島県16歳少女集団暴行死事件(事例157)、大阪2児餓死事件(事例158)の2事例、「Ⅱ-9-(16)「キレる17歳」、理由なき犯罪世代」では、栃木女性教師刺殺事件(事例159)、豊川主婦刺殺事件(事例160)、西鉄バスジャック事件(事例161)、岡山県金属バット母親殺害事件(事例162)、会津若松母親殺害事件(事例163)、八戸母子殺害放火事件(事例164)の6事例、「Ⅱ-9-(17)アタッチメントを損ない、抑圧がもたらした凄惨な殺害事件」において、東大浪人生父親殺害事件(事例165)、光市母子殺害事件(事例166)、音羽幼女殺害事件(事例167)、佐世保小6女児同級生殺害事件(事例168)、宇治学習塾小6女児殺害事件(事例169)、奈良自宅放火母子3人殺害事件(事例170)、秋葉原無差別殺傷事件(事例171)、柏市連続通り魔殺傷事件(事例172)、北海道南幌町母祖母殺害事件(事例173)の9事例、「Ⅱ-11-(2)フェティシズム」では、宝塚市窃盗・少女強姦事件(事例211)の1事例、「Ⅱ-11-(4)性的マゾヒズムと性的サディズム」において、京都連続強盗・強姦事件(事例212)の1事例、「Ⅱ-11-(6)小児性愛(ペドフィリア)」において、奈良小1女児誘拐殺人遺棄事件(事例213)、倉敷市女児監禁事件(事例214)の2事例、「Ⅱ-11-(9)性的サディズムと人格障害が結びついた誘拐監禁・殺害事件」において、新潟少女監禁事件(事例218)、北海道・東京連続少女監禁事件(事例219)、東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(事例220)、大分県一家6人殺傷事件(事例221)、大阪姉妹殺害事件(事例222)、自殺サイト連続殺人事件(事例223)、付属池田小児童殺傷事件(事例224)、神戸連続児童殺傷事件(事例225)、佐世保同級生殺害事件(事例226)、名古屋大生殺害事件(事例227)の9事例をとりあげています。
この34の事件をおこした加害者の生い立ちに共通しているのは、「暴力のある家庭環境、つまり、機能不全家庭で、親に支配され、抑圧されて育っている」ということです。
世間を驚愕させる凄惨な殺害事件の背景には、親の価値観を押しつけ、親の思い描いた、あるいは、親が達成することができなかった人生を歩むことを子どもに強い、期待通りの結果がえられなければ、罵倒したり体罰を加えたりする「いき過ぎた教育(教育的虐待)」、親こそが絶対的な存在であることを見せつけるための禁止と否定のメッセージが込められたことばによる「過干渉・過保護」という子どもの自主性を奪い、生きる力を奪う暴力(虐待行為)が存在していることです。
つまり、親の支配にもたらされた強烈な抑圧が、子どもの犯行の重要な動機となっているのです。
これらの事例を通して明らかなことは、暴力のある、機能不全家庭に暮らす子どもたちに対し、思春期(10歳-15歳)に達するまで、つまり、6-9歳までに早期発見・早期支援ができなかったとき、残念ながら、その後の学校や職場での教育や指導では、事件を防ぐことも、対応することもできないということです。
このことは、脳の発達と脳機能の獲得、つまり、「人の脳の機能は、生まれ育った環境に合うようにつくられる」という視点に立つことの重要性を示すものです。
例えば、「Ⅱ-9.脳と子どもの発達」の中で、「生後4ヶ月まで真っ暗なところに置かれ、視覚の回路が発達しなければ、目を開けていても一生見えなくなってしまう」と記述しているように、視覚を司る脳神経回路は、盛んに発達する時期(臨界期or感受期)を通り超すと発達が止まってしまいます。
「人の視力は6歳までには完成する(側頭葉にある画像を認識する視覚を司る部分がもっとも育つのは、脳神経回路が育つ生後4ヶ月までとされ、視覚は3ヶ月-2歳10ヶ月までがもっとも発育する)」とされることから、幼児期に発見し、適切な治療をおこなうことができなければ、その後の回復は期待できなくなります。
しかも、幼児が外斜視や遠視により、「はっきりと見えない状態が続くと、脳の神経回路が目から適切に刺激を受けることができず、脳の発育・発達にも影響し、発達障害と関係する」とされています。
なぜなら、視覚は五感の中で一番発達していて、情報の80%程度が目、つまり視覚からのものだからです。
また、狼に育てられたとされる少女が、ことばを司るブローカー野の機能が確定する9歳になる前に保護されたケースでは、現在、40歳代のその女性は、その後の教育により、片言ですが、人との会話ができるようになりました。
ただし、保護された女性は、35年以上の年月を経ても、出生後、養護者の下でことばを獲得してきた人たちのようには、ことばを使えるようにはならないのです。
英国貴族の男性が乳児期に飛行機事故で遭難し、ゴリラに育てられた映画「ターザン」では、成人となり、人間社会に戻ったその男性が、流暢なことばを話せるようになっていますが、それは、事実に反する架空の話に過ぎないのです。
重要なことは、なんらかの理由で獲得できなかった脳機能の回復には、脳の発達上、明確な“期限”があるということです。
したがって、凄惨な殺人事件をひき起こすなど、アタッチメントを損ない「愛着障害*-10」を起因とした人格に歪みが生じていることが背景にある者に対しては、「情緒障害児短期治療施設(情短施設)*-11」での治療や支援、または、「医療少年院*-12」の精神科医らによる長期の矯正教育と医療支援などでおこなわれる「育て直す特別なプログラム」などが実施されていますが、それは、絶対的なものではないわけですが、矯正機関として、唯一考えられる教育的な対応という意味で、重要なわけです。
このことは、暴力で傷つき、病んだ心に対する早期のケア・治療こそが必要で、学校で問題をおこした児童に対して、教育・指導で解決できると信じ込んでいると、判断を誤り、介入・援助のタイミングを逸してしまうことを教えてくれるものです。
この観点に立つことができれば、DV・ストーキング、性暴力加害者の“認知の歪み”にアプローチする「加害者更生プログラム」は、ある程度の効果が期待できる加害者と、効果は期待できない加害者に分けられることを認識することができます*-13。
そして、その加害者像についても、一部の自己愛性人格障害の特性のあるサイコパス(反社会性人格障害)など、成育環境を起因とする認知の歪み(考え方の癖)にもとづくものではなく、自己正当型ADHDやアスペルガー症候群、境界性人格障害による“障害の特性”が暴力になっていたり、双極性障害(躁うつ病)のⅠ型などの精神疾患の病相が暴力をもたらしていたりすることも少なくなく、単純に一括りで考えることができるものではないのです。
*-10 「愛着障害」については、「Ⅱ-12-(8)反応性愛着障害(RAD)」で詳しく説明しています。
*-11 児童福祉法では、心理(情緒)的、環境的に不適応を示すなど心理的問題を抱え日常生活の多岐にわたり支障をきたしている子どもたちに、医療的な観点から生活支援を基盤とした心理治療を中心に、学校教育との緊密な連携による総合的な治療・支援をおこなう施設を設けています(情緒障害児短期治療施設(情短施設))。
施設への入所(宿泊)・通所は児童相談所(長)が適当と認めた場合に「措置」として決定されます。
*-12「医療少年院」は、医療法上の病院に該当するもので、「第3種少年院」と呼ばれるものです。少年審判によって、「心身に著しい故障がある」と判断されたおおむね12歳以上26歳未満の者を収容し、治療と矯正教育を施す施設です。精神疾患のある未成年者を重点的に受け入れ、治療をおこなっています。
被収容者に対しては、平均して約1年間のプログラムが組まれ、専門医による治療と並行して、生活・職業指導といった教育が施されます。
*-13「加害者更生プログラム」については、「はじめに」の中の「DVの理解-3-⑥危険な「きっと、加害者更生プログラムを受ければ変わってくれる」との思い」、そして、「Ⅴ-38.DV加害者更生プログラム。「ケアリングダッド」を実施するうえでの原則」において詳しく説明しています。


  「DVを目撃して暮らしている子どもが、DVの最大の被害者である」との認識にもとづく、暴力のある家庭環境に対する介入、支援にあたって理解しておかなければならないことがあります。
それは、デートDVやDVの被害者は、なぜ暴力から逃れることができないのかを理解しなければならないということです。
そのためには、「人が暴力による恐怖下におかれたときにどのような反応(行動)を示すのか」といった“人類の特性”、つまり、脳の働きについて学ぶ必要があります。
  そこで、「Ⅰ-7.被害者心理。暴力でマインドコントロールされるということ」では、暴力による恐怖により心が縛られ、逃げる選択ができなくなるという心理状態、つまり、どのようにマインドコントロールされていくのかについて、「ストックホルム症候群」、「学習された無力感、囚人実験」、「ミルグラムのアイヒマン実験(服従実験)」などの理論と、ストックホルム銀行強盗人質事件、ペルー日本大使公邸占拠事件、伊予市17歳少女殺人事件(事例93)、堺市傷害致死・死体遺棄事件(事例94)、元看護師4人組保険金連続殺人事件(事例95)、尼崎連続変死事件(事例96)、北九州連続監禁事件(事例97)、東大阪リンチ殺人事件(事例98)、茨城県龍ヶ崎市女性放置死事件(事例99)、大阪府門真市17歳少女変死事件(事例100)を通じて、理解していただきたいと思います。
加えて、不安を煽り、弱みにつけ込み、人を騙していくカルトのやり口について、福島悪魔祓い事件(事例101)、青森全裸監禁事件(事例102)、聖神中央協会少女性的暴行事件(事例103)、摂理女性信者性的暴行事件(事例104)、明覚寺グループによる霊視商法事件(事例105)、豊田商事グループ詐欺事件(事例106)など、実際の事件と照らし合わせて説明しています。
また、被害者支援に携わる者にとって、「被害者心理」を理解するうえで重要なことは、「Ⅱ-9-(3)ツラさを体調不良で訴える」の「②子どもの心身症」の中で記しているとおり、暴力のある家庭環境で育ってきた被虐待者、DV被害者の中には、「暴力被害と体や心の不調を結びつけることを受け入れたくないと強い拒否反応を見せることがある」ということです。
そうしたケースでは、「私は、夫(親)にマインドコントロールなんかされていない。そんなに弱くはない。」と受け入れようとしない、もしくは、そうした指摘をする者に対して、懐疑的に捉え、拒絶してしまうこともあります。
この「手引き」でとりあげる293の事例、特に、事件研究の53事例の結果だけをみると、その凄惨さは特別なことと感じるかもしれません。
しかし、そこに至る状況やその時々の心情などは、暴力のある家庭環境で育ってきた人たちが、「その気持ちはわかる。私も同じような状況に苦しんだ。だけど、違うのは、私は一線を超えなかっただけだと思う。」と口にするように、決して特別なことではなく、共感できる部分が多々認められるものです。
そういった意味からも、「Ⅰ-7.被害者心理。暴力でマインドコントロールされるということ」で示す記述は、“人が暴力を受けるとどのような反応を示すのか”を理解するうえで、特に重要と考えています。

 「事例で学ぶ」ことによって、被害の実態(事実)を知ることで身近な問題と捉えることができ、加えて、「同じテーマであったとしても、どのような立ち位置でものごとを捉えるかにより、それぞれの認識はまったく異なる」、「対象者により、有効性の違い、効果の開きが生じる」、「平等な機会の提供と、等しい成果を見込めると期待することは次元が違う」など、広い視野でものごとを捉えたり、考えたりするうえで、“多角的な切り口(着眼点)”とすることができると思います。
  広い視野でものごとを捉え、考えるうえで、“多角的な切り口(着眼点)”を持つことは、暴力に支配された関係を断ち切りたいと思っている被害者はいうまでもなく、アボドケーターとして被害者支援に携わる者にとっても、被害者対応、加害者対応の判断をするうえで、重要な意味を持ちます。
なぜなら、当事者(被害者)の自己判断、そして、当事者に相談された家族、友人、職場の上司や同僚、アボドケーター(援助者)として適切な対応が求められる学校の教職員、行政機関の職員、医師、弁護士の助言が、当事者(被害者)の判断に大きな影響を及ぼすからです。
その“助言”が、暴力のある家庭環境下にあるという異常性を前提にせず、一般常識的な考え方、「親としての責任・義務」といった倫理・道徳観といった規範や、善悪の判断を持ち合せていない加害者に対して、「話し合えばきっとわかってくれる」といった根拠のない期待感にもとづくものであったとき、とり返しのつかない事態を招くことがあります。
慢性反復的(日常的)なデートDVやDV事件、復縁を求める執拗なストーカー事件、児童虐待事件における「とり返しのつかない事態」とは、いうまでもなく、「当事者が死亡する事態」のことを指します。
ここでいう「当事者」の中には、被害者だけでなく、被害者の親族や友人などが含まれます。
 そして、「当事者が死亡する事態」というだけに留まらず、「当事者が心身に大きなダメージを与え、将来にわたり心身の健康を損ない、ときに、障害を抱えて生活しなければならない事態」、「当事者が理不尽にも、これまで築いてきた(歩んできた)人生、つまり、家族や友人、仕事のキャリアなどを失い、身を隠して生活を余儀なくされる事態」もまた、当事者やその家族にとって、とり返しのつかない事態になります。
日本では、レイプなど性暴力*-14が“魂の殺人”と指摘されるような心の命を含めて、命を守ることに対するリスクマネジメントは、家族を含めた当事者、被害者支援に携わる人たちを含め、その認識は、まだまだ希薄です。
*-14 DV行為の「性(的)暴力」の中には、望まない性行為を強いられるレイプは、夫婦間においても強姦罪が成立する(最高裁判所判決で、「夫婦間での強姦罪の成立」を認定)ことを、ほとんどの人たちは認識していません。詳細は、「Ⅰ-3-(3)DVとは、どのような暴力をいうのか」の中の「②性暴力」で説明しています。

この「手引き」を通して、「DVを目撃して暮らしている子どもが、DVの最大の被害者である」という認識、「DVの目撃は精神的虐待に該当し、子どもの脳の発達に大きなダメージを与え、将来にわたり心身の健康を損なうことになる」という視点に立ち、児童虐待・面前DVなど、子どもが暴力のある家庭環境で暮らすことの影響を知り、学び、理解して欲しいことは、以下の6点です。
  第1に、子どもに対して、慢性反復的な危機的状況をもたらす虐待、面前DV、貧困、差別、いじめによる強烈なストレスは、脳の一部の発達を阻害し、脳自体の機能や神経構造に永続的にダメージを与えるということ、第2に、その永続的なダメージは、胎児期以降、脳の発達段階に準じてゆっくりと致命的なダメージを与えながら、思春期を前にした8-9歳で顕著な姿を現しはじめるということ、第3に、2歳10ヶ月までに脳の主要となる部分(90%)できあがり、3-5歳で「海馬」がダメージを受けることから、1日も早く、子どもの暴力(児童虐待・面前DV)を発見し支援につなげることが重要であること、第4に、就学するまで発見し支援につなげることができなかったとしても、小学校就学時の4歳-6歳、あるいは、顕著な姿を現しはじめた7-9歳のときに、少なくとも思春期間中(10-15歳)に子どもへの暴力(虐待・面前DV)を発見することができ、「Ⅱ-10-(3)慢性反復的トラウマがひきおこす7つの問題」の中でとりあげている事例138、「Ⅲ-25-(2)子どもへの心理的援助をどのようにおこなうか」の中でとりあげている事例271、事例272のように、その後の適切なかかわり次第では、9-10歳で境界性人格障害や解離性障害の発症原因となる「脳梁」、14-16歳で「前頭前野(感情や理性を司る)」のダメージを多少なりとも軽減させることができると信じること、第5に、脳の発達過程で獲得することができなかった脳機能を補う行動と学び、多くの時間をかけて習得させる覚悟を持つことです。
思春期前の8-9歳、思春期の10-15歳でのサポートで重要なことは、アタッチメントを損ない、「自己と他の境界線があいまいなまま」成長していることから、“人との適切な距離感”がわからない中で、「見捨てられ不安」といわれる「カラカラに乾いたスポンジのような渇望感と底なし沼のような寂しさを埋めようとする=親から得られなかったアタッチメントの獲得を大人の異性に求めてしまう地に足がついていない危うさを抱えている」ことから、a)暴力のある家から逃れるための「家出」が非行につながったり、b)非行がレイプ被害につながったり、覚醒剤などの薬物につながったり、c)その家出が、寝床を確保するための「宿カレ」からデートDV被害につながったり、d)望まない妊娠(10歳代の妊娠・出産を含む)につながったり、e)生活費を得るための援助交際につながったり、f)“わたしはここにいる”という存在を訴える(承認欲求を満たす)ためにリストカットやOD(大量服薬)、過食嘔吐などの自傷行為につながったり、g) 人との適切な距離感がわからず、人とのかかわり方に苦しみ、ひきこもりにつながったりするなどの2次被害を防ぐことと、2次被害に至っているときの対応のあり方です。
第6に、上記のような2次被害に発展してしまうことに加え、思春期後期-青年期は、解離性障害、不安障害(パニック障害)、適応障害、気分障害(うつ病など)、統合失調症(精神分裂病)、双極性障害(躁うつ病)、人格障害(パーソナリティ障害)の症状が顕著になってくることから、このとき、家庭内だけで解決しようと考えてはいけないということです。
重要なことは、世間体よりも、その子どもにしっかりフォーカスし、躊躇することなく第三者のサポートを受け、適切な治療を受けさせる決断をすることです。
当「手引き」が、いま切迫した状況にある方々にとって、なにかしらのお役にたてるなら幸いです。


平成25年11日12日
改訂新版:平成28年2月28日/新版2訂:同年10月10日/新版3訂*:平成29年7月15日
DV被害者支援室poco a poco 代表 庄司薫


* 「新版3訂」では、第1に、『はじめに』を、5つのカテゴリー25テーマからなる「はじめに」と4節からなる「プロローグ」にまとめ直すなど、「手引き」冒頭の構成を再改編しました。
 「はじめに」は、DV問題を理解するうえで基礎となるテーマを「5つのカテゴリー25テーマ」にまとめたもので、プロローグ(1-4)、第1部(第1章(Ⅰ.5-7)-第2章(Ⅱ.8-15))、第2部(第3章(Ⅲ.16-26)、第3部(第4章(Ⅳ.27-32)-第5章(Ⅴ.33-38))の全体にわたるエッセンスという位置づけとなるものです。
  次に、『はじめに』から「プロローグ」として再改編したのは、「1.人の脳の機能は、生まれ育った環境に合うようにつくられる」、「2.「人が人を殺す」という行為は、本当に異常なのか?」、「3.東日本大震災の児童虐待とDVの増加。-戦争体験によるPTSDの発症から学べるものはなにか-」の3節です。加えて、プロローグでは、『Ⅰ-2.差別と女性の貧困、そして、児童虐待とDV』を加筆し、4節として再改編しました。
これらの4節は、この「手引き」で“問題提起”している「子どもの脳の発達に大きなダメージを与え、将来にわたり心身の健康を損なわせる」ことになるDV・虐待のある家庭環境で育つリスクを理解するうえで、その根幹となるものです。
第2に、上記4節に加え、第3章(学校現場で、児童虐待・面前DVとどうかかわるか)に、⑤「子どもや家庭に対する主な関係機関(Ⅲ-21)」、⑥「母子生活支援施設の機能と役割(Ⅲ-23)」、⑦「児童相談所における児童青年期のメンタルヘルスの問題(Ⅲ-25)」、第4章(DVのある家庭環境で育った子どもと母親のケア)に、⑧「慢性反復的なトラウマ体験からの回復(Ⅴ-33)」の4節を書き加え、「3部6章31節」から「3部6章38節」とし、第3に、112の事例を加え「181の事例」から「293の事例」とするなど大幅に加筆しました。
 これらの加筆は、DVのある家庭環境で、虐待を受けた子どもたちが、DV事件としてではなく、虐待事件として、児童相談所に一時保護され、児童養護施設に入所した児童、あるいは、被虐待体験をしてきた母親に育児能力が備わっていないとして、児童相談所が介入し、母子生活支援施設に入所した母子が、それらの「施設」で、どのような心理治療などを受けているのかについて、事例を中心にまとめたものです。
そして、「DV・虐待のある家庭環境下で育つことが、子どもの脳の発達に大きなダメージを与え、将来にわたり心身の健康を損なわせる」という現実の理解につながるという意味で、第2章(Ⅱ.児童虐待と面前DVの影響。-暴力のある家庭環境で暮らす、育つということ-)と補完関係のある記述となっています。
 なお、「新版3訂」では、「手引き」の記述が長く、一部専門的であることから、「読み進めていると、なにが重要なのかわからなくなってしまう」という声を受けて、各「項(一部、節)」の終わりに、キーワード(重要用語)を掲載しました。



庄司薫:DV被害支援室poco a poco 代表
あいさつ、はじめに、第1部・プロローグ・第1章(Ⅰ.密接な関係。児童虐待とドメスティック・バイオレンス)、第2章(児童虐待・面前DV。暴力のある家庭環境で暮らす、育つということ)、第3部・第4章(Ⅳ.「婚姻破綻の原因はDVにある」ときの離婚)、第5章(Ⅴ.DVのある家庭環境で育った子どもと母親のケア)を担当

もりのやまね:小学校講師
第2部・第3章(Ⅲ.学校現場で、児童虐待・面前DVとどうかかわるか)を担当
DV環境で育ったことで、人との適度な距離感がわからない生き難さに悩み、葛藤し、人の視線(どう思われているかといった評価を含む)に苦しみ、消えたい願望と長く闘ってきました。35歳を機に、自身の心の問題と向き合い、虐待や性暴力支援機関が主催している専門教育を受講するなど勉強を積み重ねてきました。
勤務先の小学校では、一時保護され児童養護施設で生活していた児童の再統合に伴い、率先して転入してきた児童を受け持ち、校内連携、児童相談所など関係機関との連携のキーパーソンとして児童と再統合家庭とかかわっています。また、ネット上でさ迷う、親との関係に“苦悩”している子どもたちに対しても、トラウマ(心的外傷)体験者だからこそできる“ことば”をなげかけています。



2016.3/3 ブログ再編成(第3次改訂)に伴い、主記事として掲載
2016.9/9 「暴力の影響を「事例」で学ぶ。虐待とDVの早期発見・支援。母と子どもが暴力から脱するための手引き(目次)」を、「暴力の影響を「事例」で学ぶ。虐待とDVの早期発見・支援。母と子どもが暴力から脱するための手引き」と「目次」に分割し、掲載
2017.3/21 「手引き」の「はじめに」を「改訂3版」としての編集により、「暴力の影響を「事例」で学ぶ。虐待とDVの早期発見・支援。母と子どもが暴力から脱するための手引き」、「目次」、「はじめに」、「プロローグ」として掲載
* 「第1章」以降、つまり、カテゴリー「Ⅲ-3」-「Ⅲ-10」の「改訂2版」については、改訂作業を終えた「章」から差し替えていきます。




もくじ   3kaku_s_L.png   [Ⅲ-1]暴力の影響を「事例」で学ぶ。虐待とDVの早期発見・支援。母と子どもが暴力から脱するための手引き
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