あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅵ-A] 臨床現場からのレポート(1) DV・児童虐待。暴力と精神疾患

「愛という名の管理・支配」 竹下小夜子(さよウィメンズ・メンタルクリニック)

 
 「家族関係の中で起きるDV・虐待を考える ~被害者・加害者を生まないために~」竹下小夜子さん(精神科医 さよウイメンズ・メンタルクリニック院長 「レジリエンス~苦境とサバイバル」 女性ライフサイクル研究所 村本邦子
平成22年7月21日 香川県DV予防啓発講演会

Ⅰ.DVと虐待
・ DV殺人07/3日に1人の女性が男性により殺害、5日に1人の男性が女性により殺害
・ WHO日本調査02/日本人女性の5人に1人が50歳までに夫から身体暴力
・ 法務省03/刑事処分を受けたDV加害者の43%は子どもの目の前で暴力
・ 東京都04/DV加害男性の51%は、子どもにも手をあげていた(米国データ63%)
・ 夫から殴られる妻の37%が自ら子どもに手をあげている(英国)


Ⅱ.「暴力をめぐる誤解」を是正するために
1.「欲求不満やイライラから暴力」の嘘
・ レノア・ウォーカー「DVのサイクル」図の与えた誤解、その弊害
・ DV加害者の大半は、実母や他人には手をあげない
・ 言語的に問題を解決できる、コミュニケーショントレーニングなど不要な加害者が大半を占める
・ 「家庭一つ管理できないようでは、一人前の男とはいえない」のジェンダーのすり込み
・ 「妻子は自分に従うべき」「自分の要求が家族内で最優先されるのは当然」の特権意識

2. 飲酒はDVの原因ではない
・ アルコール依存症の男性の8割は、パートナーに暴力をふるっていない
(Kaufman 他、1990 )
・ アルコールがもっとも暴力につながりやすいのは、本人がそう思い込んでいる場合である(Zubretsky 他、1996 )

3.DV加害者には、精神疾患や人格障害は少ない
・ DV加害者の大半は、妻子に対してのみ威圧的支配を行う
・ ①管理支配・所有意識が強い、②他者操作が巧み、③魅惑的、④一般的には子どもに無関心、いざとなれば子どもを味方につけてパートナーを攻撃させる程度の魅惑性と他者操作性を持つ、⑤パートナーおよびその家族、友人を軽蔑している
・ 加害者の上記5つの特徴のうち①②③は権威・権力・名誉・地位のパワーゲームで打ち勝つ能力と重なる

4.男性生理をめぐる嘘
・ 「男性は強い性的欲求にかられると自らをコントロールできなくなる」、「男性は女性以上に生理的にセックスを必要とする」など
・ 性暴力は「自動的」「衝動的」反応ではない/性的興奮から公衆の面前で押し倒す人はいない。加害者が暴力や脅しの利用できる状況を選択
・ 射精は生身の女性を必要としない→「生理的にセックスを必要とする」は嘘


Ⅲ.不平等な人間関係における支配の手口~「虐待」に気づく
1.加害者の目的は支配
・ 「コミュニケーションで相互理解が深まれば問題が解決できるのでは?」は幻想
・ 加害者は相互理解や問題解決を望んでいるわけではない → 「おれに従うか否か」
・ (03米国)加害者教育で、新たなパートナー関係では身体暴力を抑止できる可能性があるが、パートナーを力や威嚇で支配する傾向は変わらない

2.パワーとコントロールの場
・ 「正しい」「間違っている」、「善」か「悪」かの価値観が当然のごとく用いられやすい。
・ 相手が精一杯やっても認めない、相手の人格を認めず不当におとしめたり、責めたり非難するなど
・ 「教育・指導」や「愛情」の美名のもとで行われる場合もある
・ 攻撃の武器として、言葉が用いられることが多い

3.支配の手口
① あいまいさ、自分の考えを伝えない/
・ 「いったい何を言えというんだ」「どうせおまえは勝手に行動するのだから」
・ 相手が自分で解決すれば「たいしたことないのに大騒ぎして」⇒ うまくいかなければ「おまえのやり方が悪い」
・ 結果に責任を背負わずにすむ
② 相手の感情や考えに関心を持たない/
・ 加害者は相手より優位的スタンスをとることで自身の無力感への直面を回避
・ 「関心を持つ」は平等性の反映。それをしない
③ 二重拘束と一貫性のなさ/
・ 「自分のことは自分で責任持って判断しなさい」⇔「自分勝手に行動してはいけない」
・ 行動しないと「勇気がない」「覇気がない」⇔行動して失敗すると「考えが足りない」
・ 事情を説明しようとすると反論を許さず、沈黙には黙っていると責める
④ 反撃、相手の意見を認めない/
・ 自分の言動を問題にされると即座に相手に反撃し、自分が正しく相手が間違っていると主張
⑤ 虐待行為の過小評価、忘れる、否認する/
・ 加害者が理想的自己イメージを守る「必然的」な防衛機制
⑥ 非難による対話の拒否、すりかえ/
・ 「いい加減にしろ」 「つべこべ言うな」などと対話を拒否
・「きみの行動も逐一説明してみろ」など、すり替え
⑦ 投影による非難や批判、自己正当化/
・ 突然責めたり非難するのは、加害者の抑圧された無意識の否定的感情を相手に投影している重要な徴候
・ 非難、批判、自己正当化はそれぞれ組み合わされて用いられることが多い
⑧ 悪意に満ちたからかいやジョーク/
・ 加害者が優越感の満足を得る「必勝」の手
・ 相手がひるめば、一枚うわてをとった優越感。抗議してくれば「冗談も分からないのか」「頭が悪いやつはいやだ」など、さらなる侮辱や嘲笑で相手を排除
⑨ 見くだす、バカにする、脅す、罵倒する/
・ 抑圧された力量不足感や無力感などから加害者自身を守るための防御
⑩ モラル・マゾヒズム/
・ 相手が自分の望まぬ行動をとると、無意識に被害者を振る舞い相手に罪悪感を抱かせ、結果的に相手を支配する行動パターン
⑪ 「愛していないのか」の脅し/
・ 「それでは私の気持ちを受け入れてくれないあなたは、私のことを愛していると言える?」と反論できる場面が大半

4.虐待・DV・パワハラ等~加害者の特徴
被害者への二次加害を防ぐために、加害者の特徴を理解しよう
(1) 加害者の特徴
・ 自分の思い通りにことを運ぼうとする
・ 自分の強さや重要さを示すために、いばりくさった態度をとる
・ 他人の功績に脅威を感じる
・ 劣等感が強く、自分を立派に見せようとして他人をこきおろす
・ 自分の問題を人のせいにする
・ 自分の欲求のほうが常に相手の欲求より重要と感じる
・ 相手の考えを理解したり相手の気持ちを思いやることができない
・ 自分はいつも正しいと思い込んでいる
・ せっかちで気が短く、すぐいらいらする
・ 相手に不条理な期待を抱く
・ 完ぺき主義
・ 気に入らない相手を無視したり冷たくあしらう
・ 人のあやまちを許さず、うらみ続ける
・ 気分が変わりやすく、極端に機嫌が良いときと悪いときがある
・ 人を信じず、疑い深く、嫉妬心が強い
・ いつもぴりぴりしていて怒りっぽい
①「支配」~行動面の最大の特徴
・ 支配は、批判、言葉による虐待、孤立化など、様々な手口で行われる
・ 相手が支配に抵抗しようとすると、一般的に強制は激しさを増し、時間とともに、ますます激化する
・ 加害者は通常、自分の支配を正当なものとみなし、相手のほうが情緒不安定だと決めつける
②「特権意識」~態度面の最大の特徴
・ 自分が特別な権利や特典を享受できるという「特権意識」
・ 自分の要求がただちに満たされることを強く求め、理不尽かつ過大な期待を抱く
・ 相手のために自分がどれだけしているかは省みず、相手からサービスを受け大事に扱われて当然と思っている
③「自分勝手と自己中心」
・ 自分の要求が最優先されるべきと思っている
・ 通常は自分のことで頭がいっぱいで、相手の要求には応えない
・ 一方で、相手にはいつでも自分の要求に応えることを期待し、それにより相手の行動が阻害されても、意に介さない
・ 反面、自分を寛大でやさしく、責任感がある、誠実な人間と思い、周囲からもそうみなされることを当然と思っている
・ したがって、自分勝手・自己中心な人間とみなされると、不当に扱われたと感じて傷つく
④「優越感」
・ 自分を被害者よりも優れた人間と思っている。相手を人間として見ず、「モノ」として扱う
・ 相手の知性、能力、論理的思考、感受性も、自分より劣っているとみなし、相手の意見を軽視したり、あっさり退けるなど
・ 嫌悪感たっぷり恩着せがましい口調で話したり、容赦ない非難や侮辱、屈辱的な処罰など
⑤「心理操作」
・ 言葉による暴力だけで相手を支配する加害者はほとんどいない。多様な策略を用いるが、最も多いの
が心理操作
・ 虐待の直後、相手がどうとらえるかを操作しようとしたり、原因や意味を混乱させようとする
・ 大半は、外ではかけ離れたイメージを作り上げることに成功しており、「とてもいい人」「魅力的な人」との高い評価を得ている加害者も多い
・ そのため周囲が被害の申し立てを信じず、被害者が支援を受けにくい、二次被害にあうなど


Ⅳ.DV家庭/子どもへの影響
・ (直接/間接)身体的暴力被害にあう危険性
・ 暴力場面の目撃
・ 情緒面、行動面、発達面への影響
・ 食事、睡眠など日常生活リズムを乱される
・ 家にいるのをいやがる、一方で母親を守ろうとする過度の責任感
・ 自分のせいで母親が殴られるという罪悪感や不安
・ 問題行動、多動(※じつは破壊的行動障害)、不安、自分の殻に閉じこもる、学習困難の比率が高い
(1) 情緒面・行動面・発達面への影響
・ 子どもの最大の気がかりは、父親から母親への暴力(Cumminngs他)
・ 仲間に対するいじめや悪口など攻撃的態度
・ とくに男児に、家族以外の人への攻撃が顕著
・ 友だちと過ごす時間が短く、親友がいないことが多い、友だちの安全を過度に心配する
(2) 子どもの価値観への影響(バンクロフト他)
① 暴力をふるわれるのは、被害者が悪いからだ
② 自分の意思を通し対立を解消するために、暴力をふるってもかまわない
③ 男が支配権を握り、女は服従すべきだ
④ 虐待者は自分の行為に責任を背負わなくていい
⑤ 女は弱く、愚かで、無力である
⑥ 男の子が母親の影響を受けることは好ましくない
⑦ 暴力の原因は怒りである
(3) 一方で、子どもには選択能力がある(次項)


Ⅴ.葛藤につながりやすい誤解の是正のために
①「虐待の連鎖」への批判
・ 親から虐待されたことのない人が、子どもを虐待する加害者になることもある
・ 「虐待の連鎖」の割合 /9.1%~39.6%と報告により様々
・ 虐待されるつらさを知るだけに、「ああだけはなるまい」「手だけはあげまい」と、ましな親を選びとる人は多い
② Conte(1985) 「21%には後遺症なし」
・ 性的虐待を受けた 369人 対象( 76%が少女、 24%が少年)
・ 性的虐待に伴う症状を示すのは 79%と多い
・ 残りの21%は、後遺症などの問題が生じていない
・ どうして問題が起こらなかったか:その重要な因子は 、虐待の事実を認め支えた大人が一人でも存在していたこと
③ 子どもをめぐる研究
・ 幼児期の親子関係より、成長期の良き友人、良き教師、良き本との出あいが大きな影響を及ぼすとの指摘
・ 子ども時代にもっとも重要な支えになった愛情関係が「母親との関係」と回答したのは4割以下
④ 臨床家アリス・ミラーの指摘
・ 個人の選択能力の違いについて、「誰か一人でもいい、その人のほんとうの気持ちを理解してくれる人がいてくれたかどうかが、決定的な違いを生む」
⑤ 全ての感情はOK
・ 「怒り」~心理的回復を最も促進させる。人間の創造性と密接に関連。「どんなに怒っても当然です。ただし行動を選ぶ際には、ご自分を守れるように気をつけてください」
・ 「恐怖」~自分を守るために用心深くなれる
・ 「不安」や「緊張」~周囲に注意深くなれる
・ 「退屈」~新たな取り組みの時を気づかせる
・ 「空虚感」~過去の人生と決別し、新たな歩みを始める前の必然的プロセス
⑥ 自己分析は役立たない
・ 困難な時期に、原因がわかれば問題も解決できるのではと、自己分析する人は多い
・ 困難に陥る自分を上手に説明できる分析的物語ほど、「自分がこうなるのも必然的」という宿命論的無力感に縛られることに
・ 過去は大きな影響を及ぼすが、現在や未来を縛りはしない


Ⅵ.被害をうちあけられたとき
(1)「あなたは悪くない」
(2) 情報提供
・ 連絡先リスト(DV相談支援センター、警察、民間支援団体、法テラスその他)
・ DV保護命令制度(2ヶ月間の退去命令または6ヶ月間の接近禁止命令。申請に、DV相談センターや警察が協力)
・ DV証明書や支援依頼書(DV相談支援センターや警察が発行)
・ 住民票非開示手続き/住民票開示に身分証明書を確認
・ 被害者登録制度/警察に番号登録された携帯電話や自宅電話からの110番通報は、氏名住所その他の説明が不要(県により差異。全国的標準化を)
・ 身近な周囲の人や支援者にも保護命令が適用できる
・ DV被害者の公営住宅への優先入居
・ 加害者が扶養家族からはずさなくても、被害者と子の医療保険を自ら作成できる
・ 住民票を移さなくても、逃げた先で児の就学可能
・ 学籍簿は戸籍名が必要だが、出席簿(クラス名簿)は通称名もOK
・・・・ありがとうございました!



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