あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅵ-A] 臨床現場からのレポート(1) DV・児童虐待。暴力と精神疾患

ドメスティック・バイオレンス(DV)と心身の健康障害 加茂登志子(東京女子医科大学附属女性生涯健康センター)

 
 <産経新聞>非出会い系サイトの児童被害増加 大手携帯ゲームサイトが突出 <朝日新聞>施設入所の子、5割が父母からの虐待経験 厚労省調査
 DV被害によって被害者とその子どもには様々な心身の健康障害が引き起こされることがわかっています。例えば、被害者には直接的な暴力による怪我の他にも慢性身体疾患への罹患や、うつ病やPTSD、アルコール乱用、薬物乱用などが起こり得ます。周囲の人たちには被害者とその子どもの状態を理解し、長い目で援助していく視点が重要です。 本来DVという言葉は家庭内の暴力全般についてあらわすものですが、日本では長く子どもから親への暴力に限定して「家庭内暴力」と表現してきた歴史があったために、これと区別する目的で親しい関係にある男女間における暴力をDVと呼ぶようになりました。
 平成14年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」、が施行されて以来、DVは急速に社会に知られるようになりました。この法律では、行政での配偶者間暴力相談支援センターの設置義務や、被害者の保護命令などが定められています。

 DVの問題は日本だけのものではありません。世界保健機構の調査では、配偶者やパートナーから身体的暴力を受けたことのある女性の割合は、多数の国で20~40%にのぼっています。わが国でも、配偶者から身体的な暴力を受けたことがある人は女性26.7%、男性13.8%であり、また“身体的暴行”“心理的攻撃”“性的強要”のいずれかを1つでも受けたことが『何度もあった』という人は、女性10.6%、男性2.6%となっています(内閣府男女共同参画室平成17年度「男女間における暴力に関する調査」)。このように、DVは世界共通の社会問題であり、とりわけ女性にとっては最も身近で遭遇する可能性が高いトラウマエピソードのひとつになっています。
 DVは心身の健康に大きな影響を及ぼします。DVによる身体的な健康障害としては身体的暴行や性的強要による受傷はもとより、頭痛、背部痛などの慢性疼痛や、食欲不振や体重減少、機能性消化器疾患、高血圧、免疫状態の低下などが報告されています。妊娠中のDV被害は特に注目されており、母体の被害だけでなく、早産や胎児仮死、児の出産時低体重も報告されています。わが国でもDV 被害のリスクを有する妊産婦は全体の14%以上存在し、特に、10代の妊産婦のDV被害が際立って高い頻度になっています(日本産婦人科医会による調査)。

 DV被害者に最も多い精神健康障害はうつ病と外傷後ストレス障害(PTSD)であり、シェルターに逃げてきた被害者に対する調査では、うつ病は4割から6割、PTSDは3割から8割の被害者に診断されます。うつ病やPTSD以外にも自殺傾向、不安障害、身体化障害、アルコールや薬物乱用がしばしば認められます。また、長年の暴力被害により、話がまとまらなくなっていたり、極端に自信を喪失していたり、過度に自責的になったり、人を信用できなくなっている被害者も少なくありません。これらの症状に経済的な不安等が加わって、被害者はしばしば加害者の元から逃げてはまた戻ることを繰り返します。被害者の中には自分の被害を医療者にも相談できなかったり、あるいはDV被害と現在の心身の不調を結び付けられなかったりする人もいます。加害者の更正プログラムや家族の再統合などの試みはありますが、現在のところ具体的な良い結果は得られていません。被害者とその子どもにとっては安全な居場所の確保がケアに先立つ最優先事項となります。

 加害行為からのがれたあとも、うつ病やPTSDの症状は長引くことがあり、長期的な視点に立った息の長いケアが必要です。失われた自信や主体性を取り戻すことが回復の大きなポイントになります。また、親族のもとに被害者が逃げた場合、具合の悪さが長引くことから親族間の関係がギクシャクしてしまうことがあります。被害者とその子どもの状態を理解し、長い目で援助していくことが重要です。

 近年ではDVにさらされた子どもたちの心身の問題も徐々に知られるようになって来ました。身体的に直接的な虐待被害を受ける子どもも少なくありませんが、DV状況の目撃そのものも虐待の一つです。シェルター滞在中の調査では心理的ケアを要する臨床域にあるとされる子どもは8割に達するとの報告もあり、今後の重大な課題となっています。また、被害親子の精神健康は相互に影響しており、両者のケアがリンクして行われるのが理想的です。

 DV被害にあっている方は、一度は必ず専門の相談機関に相談なさってみてください。また、直接的な怪我のほかにも身体症状、精神的な症状で医療機関を受診する場合には、被害について医療者に伝えることをお勧めします。





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