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[Ⅵ-A] 臨床現場からのレポート(1) DV・児童虐待。暴力と精神疾患

<MyMed(マイメド)>被虐待症候群

 
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 被虐待症候群は、子どもが虐待を受けた結果に様々な症状が現れた状態である。児童虐待は、近年増加傾向にあり、大きな社会問題になっている。1962年にKempeがbatterd child syndrome (殴打される子どもの症候群)として、身体的虐待について報告して以来、臨床現場で注目されるようになった。身体的虐待、ネグレクト、性的虐待および心理的虐待に分類されている。医療機関においては乳幼児の身体的虐待およびネグレクトが多くみられ、重症例が少なくない。初診時の症状が軽度であっても、帰宅後に悪化し、死亡してから来院するようなこともあるので、虐待を見逃さずに、子どもを危険から保護することが重要である。

1.病因
 児童虐待は、親または親に代わる保護者による暴力や養育の怠慢により起こる。これらが起こりやすい背景としては、保護者の社会的未成熟、衝動性、攻撃性、精神疾患など親の状況や貧困状態、家庭不和、ドメスティックバイオレンスの存在、片親であるなどが挙げられる。虐待者自身が過去に虐待を受けた既往があることもある。一方、親の社会的地位が高いことや裕福であることなどから虐待を否定することは出来ない。また、子どもが障害や慢性疾患を持っているなど、養育が困難である場合も注意が必要である。

2.病態生理
 被虐待症候群は、子どもが虐待を受けた結果に様々な症状が現れた状態である。児童虐待は親または親に代わる保護者により加えられた虐待行為であり、非偶発的で、長期にわたり、反復的、継続的行為である。児童虐待防止法でも身体的虐待、ネグレクト、性的虐待、心理的虐待に分類され、定義されている。
 医療現場においては乳幼児の身体的虐待およびネグレクトが多く、重症な症例が少なくない。乳幼児は体重が少なく、暴力により外傷が大きくなりやすいことや、危険から逃れることが出来ないこと、保護者への依存度が高いことなどから症状が悪化しやすく、また保護者は症状が悪化してから医療機関に受診するためである。

3.臨床症状
 身体的虐待では、来院時に外傷のみられる症例が最も多いが、意識障害や呼吸障害を主訴とし、外傷を訴えないこともある。外傷は全身にみられ、骨折は多発性のことが多く、訴え以外の部位にもみられる。新旧の骨折やあざなどが混在するのが特徴的である。注意深く全身を観察し、タバコによる火傷やあざなどの有無を確認する必要がある。熱湯に手を浸されたための手袋状、靴下状の熱傷や、器具による外傷、熱傷などがみられることもある。頭部外傷が多くみられるが、生後3か月以降の硬膜下血腫の約半数が、身体的虐待によるものであるといわれており、硬膜下血腫をみたら身体的虐待を強く疑うべきである。体表には外傷が認められず、頭部CT写真で硬膜下血腫を認めるような症例もあるので、注意が必要である。
 ネグレクトでは、栄養障害または呼吸障害を主訴として来院することが多く、栄養不良、体重増加不良、低身長、発達障害、不潔な外見などの症状がみられる。栄養障害のなかには、ビタミンB1欠乏の結果に衝心脚気をきたし、心不全を認めた報告もある。また、必要な医療をうけていない医療ネグレクトのために基礎疾患の症状が悪化している場合もある。
 病歴の記録のために外傷の状態や不潔な外見、栄養障害の状態などを写真撮影しておくとよいが、保護者の許可が得られない場合には、これらの様子をスケッチや文章で記録しておく。

4.検査成績
 身体的虐待では、頭部、胸腹部、四肢骨など全身の単純X線写真を撮影する必要がある。頭部外傷の可能性がある場合には、頭部CT撮影を施行し、治療の決定および生命予後の判断をすることが重要である。X線写真では、多発性の骨折や、新旧入り交じった骨折がみられるのが特徴的である。
 さらに、心電図、腹部エコー、血液・生化学・尿一般検査、血液ガス、血糖、眼底検査、脳波、聴性脳幹反応などの検査を必要に応じて至急に施行する。ネグレクトでは栄養障害により、貧血や感染症、呼吸困難を伴う場合もあるので、血液・生化学・尿一般、血液ガス、血糖などの検査が重要である。

5.診断・鑑別診断
 児童虐待では、外傷や栄養障害などの症状が、保護者の訴えからは説明がつかないことが多い。自分で転倒したと訴えたにもかかわらず、強い外力によると考えられる外傷がみられるような場合や、軽く押しただけと訴え、脳挫傷を認めるようなこともある。
 虐待の診断は、疑うかにかかっている。診断のきっかけとして、保護者では、症状・所見と問診の不一致、子供に対する態度が冷たい、心配した様子が見られない、症状経過をあまり話さないなどがあり、子どもでは、外傷など不自然な症状・所見が大部分である。無表情である、発育不全がみられる、皮膚が不潔であるなどについて注意を向ける必要がある。
 これらから虐待を疑うことは難しくないが、児童虐待の確定診断は虐待の事実を証明することである。特に警察などが事件として扱う場合には、具体的な事実が重要である。このためには可能な限り、いつ、どこで、誰が、何をしたかを病歴に記録することが大切である。
 鑑別を要する疾患としては、事故による外傷、乳幼児症候群(SIDS)などが挙げられる。外傷の場合には、保護者への問診から、症状・所見が説明がつくのか、外傷は多発性ではないかなどが重要である。SIDS では、それまでに児童虐待を疑わせるエピソードがないかを検討する必要がある。

6.治療
 来院時に重症例が多いので、まず傷害の程度に応じて、緊急処置が必要である。症状がある程度安定したら、先にあげた検査などを施行し、身体状況を把握し、児童虐待の結果であることの判断をする。児童虐待を疑った場合には、看護師、ソーシャルワーカーなどの院内スタッフおよび子ども家庭支援センター、児童相談所、保健所、警察などとの連携が必要である。これは、診断時から救急治療、その後の対応、退院後の経過観察までを通じて重要である。
 児童虐待を疑った場合には、児童相談所等への通告の義務がある。死亡している場合はもちろんのこと、生命の危険がある場合には警察に連絡する方がよい。児童虐待防止法で、通告の義務が医師の守秘義務に優先されることが定められている。市町村、児童相談所、福祉事務所が通告機関である。東京では子ども家庭支援センターが市町村の窓口にあたる。子ども家庭支援センターが児童虐待相談も含めた児童相談における地域の窓口として初期対応にあたる機関であり、児童相談所は要保護性の高い困難な事例に対応する後方機関であると位置づけられている。医療機関では、重症例が多いので、状況に応じて、児童相談所に通告するのが現実的である。
 医療機関を受診する被虐待児は重症例が多く、生命の危険がある。来院時に重症でなくても、帰宅させると危険なことが多いので、児童虐待を疑がった場合には入院させ、子どもを危険から保護することが原則である。入院を拒否することが多いが、公的機関の介入により、保護者が入院に同意することもある。
 入院は、保護の目的や、親子分離での症状の軽快をみるために、付き添いなしの方がよい。身体症状の治療とともに、心理的な治療が必要になる。急性期を過ぎて、子どもが心理的に落ちついており、虐待者が事実を認め後悔している時期に、面会を開始するのが望ましい。
 児童虐待は、被虐待児ではなく、虐待者の疾患といえる。従って治療は、被虐待児だけの治療では解決されないので、心理的なケア、家庭状況など虐待に至った背景の把握により、原因の除去、虐待者へのケアが必要である。このような対応は、医療機関だけでは困難なので、子ども家庭支援センター、児童相談所、保健所等の行政機関との連携が重要である。実際には、虐待者の治療について強制力はなく、これを行うのは非常に困難である。
 家庭状況から判断して生命の危険が予想される場合などには、施設などに収容し、親子分離を検討する。本来、親子分離は緊急避難的な一時的な処置であり、その後も親子の再結合ができるようにすることが前提である。治療の目標は、親が虐待を認め、要因を理解し、態度を変容しており、虐待を引き起こした要因が改善され、親子が再結合されることである。

7.予後
 児童虐待は虐待者が作り出しているものなので、虐待者への指導や治療が重要である。ところが、これを行うのは容易でなく、子どもを家庭に帰した後に、再発や死亡することがあるこのため、医療機関から直接退院する場合や、外来で経過を見る場合でも、子ども家庭支援センター、児童相談所、保健所などと連携し、十分な援助体制、監視体制が敷かれ、再発を防止することが重要である。また、これは長期にわたる必要がある。
 虐待者の中には、過去に自分自身が虐待を受けた過去を持つものが少なくない。虐待の世代間伝達がみられ、被虐待児は将来に虐待者になる可能性もあるので、これを防ぐために、身体的治療とともに十分な心理治療が必要である。

8.最近の動向
 近年、増加傾向にあり、児童相談所における児童虐待処理件数は平成7年度に2722件であったのが、平成16年度に33408件と10倍以上に増加している。児童虐待に対する一般社会における認識の高まりによって通告が増加したとする見方もあるが、医療現場から見ても明らかに増加している。
 平成12年4月に児童虐待防止法が施行され、児童虐待の定義が明文化され、通告の義務が医師の守秘義務より優先することが明確になった。平成16年 月に改訂され、児童虐待と確定できず、疑いでも通告することが明文化された。また、心理的虐待には夫婦間などのドメスティックバイオレンスをみせることも加えられた。


参考文献1) Kempe CH, Silverman FN, Steel BF, et al: The battererd child syndrome. JAMA 181: 105-112, 1962
2) 小児科臨床、特集「どう関わるか子ども虐待」、2007.4
3) 市川光太郎(編著):児童虐待へのアプローチ、中外医学者、東京、2007.4
4) 泉 裕之:被虐待症候群.in 五十嵐隆編,小児科診療ガイドライン.総合医学社,東京,2007,pp458-461.
5) 泉 裕之:児童虐待、救急医学 29:1780-1783、2007



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