あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅲ-7]Ⅳ.「婚姻破綻の原因はDVにある」ときの離婚

23.DV離婚を考えたとき、事前に確認しておくこと

 
 24.DV加害者に共通する言動・行動特性 (7) 離婚裁判の進行と判決文(判例12-24)
* 現在、この「手引き」は、第3次改訂の編集をおこなっています。編集終了後、差し替えていきます。

※ 『暴力の影響を「事例」で学ぶ。虐待とDVの早期発見・支援。母と子どもが暴力から脱するための手引き(マニュアル)』は、「DVを目撃して暮らしている子どもが、DVの最大の被害者である」との立ち位置で、「密接な関係にある児童虐待とDVの本質的な理解」に加え、「児童虐待とDVが、被害者である母親だけでなく、子どもの心までも破壊する可能性がある、つまり、胎児期を含めて脳の発達に大きなダメージを与える」ことを理解していただくために、一般的な抽象論ではなく、行動分析や脳科学、人類学、発達心理学などをベースに、前半の『はじめに』、『第1章(Ⅰ.密接な関係。児童虐待とドメスティック・バイオレンス)』、『第2章(Ⅱ.児童虐待と面前DV。暴力のある家庭環境で暮らす、育つということ)』は作成しています。
 マニュアル冒頭の『はじめに』では、「社会の女性や子どもへの暴力に対する理解」、「危機的状況がもたらす脳のトラブル」、「「事例で学ぶ」ということ-人類とは何者か、脳の発達論の見地でという考え方-」、「暴力描写や性的表現による「トラウマ反応」表出のリスク」、「第三者の支援を受け、暴力で傷ついた心のケアにとり組む意味」、「被害女性の家族や友人たちのアンカーとしての役割」、「被害者支援に携わる人たちに向けて」、「-付記- 「二重の被災」..東日本大震災とその後の虐待・DVの増加の影響は“これから”の問題-阪神淡路大震災、戦争体験によるPTSD発症、その後の人生に学ぶ-」というテーマで、このマニュアル全般に及ぶ着眼点や論点、問題提起をしています。この行動分析や脳科学、人類学、発達心理学などをベースにした着眼点や論点、問題提起は、その後に続く、『第1章(1-5節)』、『第2章(6-12節)』、『第3章(13-20節)』、『第4章(21-26)』、『第5章(27-31)』とそれぞれと相互する関連性がある、あるいは、説明の前提となっていることから、『第1章(1-5節)』、『第2章(6-12節)』、『第3章(13-20節)』、『第4章(21-26)』、『第5章(27-31)』をお読みになる前に、『はじめに』に目を通していただきたいと思います。
* マニュアル「改訂新版」の上程後6ヶ月が経過したことを踏まえ、アニュアルの一部見直し、加筆修正にとりかかっています。平成28年9月29日、『はじめに』の“加筆改訂”を終えました。「第1章」以降については、スケジュールを調整しながら、随時、“加筆改訂”にとりかかり、加筆改訂を終えた「章」から差し替えていきますが、『原本』では、追加した事例を踏まえて、本文ならびに目次の“事例番号”は修正したことを踏まえ、『ブログ』の“目次”ならびに“小目次”での「事例番号」は修正していますが、『ブログ本文』の加筆修正は、『はじめに』は終えたものの、第1章以降はまだ手つかずであることから、第1章以降の「事例番号」は修正されていません。そのため、目次ならびに小目次に記載されている「事例番号」と異なっています。


23.DV離婚を考えたとき、事前に確認しておくこと
(1) 別居後、離婚後の生活を(経済的に)破綻させない
 ・判例25-28(婚姻費用の分担)
 ・判例29-31(養育費)
 ・判例32-37(慰謝料)
  ・慰謝料
(2) 財産の保全
 ・判例38-39(財産分与)
  ・財産分与
  ・住宅ローンと財産分与
  ・財産分与と税金
(3) 家財(私有物)の搬出
(4) 暴力の事実を証拠として残す
(5) 証拠の保全と履歴の削除
(6) 管轄警察署での相談記録(警察安全相談記録表)
(7) 役場(市役所や区役所など)での手続き
(8) 学校園への連絡
(9) 弁護士への依頼(委任契約)について
  ・「弁護士費用がない」といって諦めず、法的扶助を利用する
(10) 内容証明郵便
  ・ 内容証明郵便の書き方


 DV環境にある場合、妻が夫のもとから逃げようとしたり、別れようとしたりするときに、支配のための暴力がひどくなることが少なくありません。特に、一度であっても、例え、笑みを浮かべながらであったとしても、あなたの首に手をかけることがあったなら、あなたの夫は「人を殺すかも知れない行為の“人の首に手をかける”ことを躊躇せずにできる人である」ことを認識しなければならないのです。つまり、「もうあんなことは、二度としないだろう」ではなく、「私の首に手をかけるのが平気な人だから、また、されるかもしれない」と認識する必要があるということです。異常的なナルシストであり、支配のための暴力に興奮し、楽しんでいる(逆に、能面のように無表情な場合も)ようなら、そのサディスティック性は、自分から逃げようとする(自分のことを裏切る)人間には、冷酷になれる人たちだということです。
 また、化粧して外出しようとすると、「どこにいくんだ。男に会いに行くのか」と詮索し、別れ話を持ちだすと、「やっぱり男ができたんだろう」と妄想的な嫉妬心にかられるようなら、あなたが外出しているときに家探しをし、日記を読んだり、手紙を読んだり、住所録をコピーしたりと“ストーカー行為”に及んでいる可能性が髙いと認識する必要があります。病的な詮索・干渉行為に及ぶ場合、殺害をすることによって、永遠に自分のものにするといった猟奇性を秘めている場合もあります。
 あなたが「私の夫は、そこまでひどくはない」と思っていても、支配のための暴力で怯えさせ、屈服させ、いうことをきかせられるように懐けてきた(調教してきた)妻や子が、俺のもとからいなくなるのを許さない、認められないのが、DV加害者であることを理解する必要があるのです。
 散々「いうことがきけないなら、でて行け!」「嫌なら(文句があるなら)、いつでも離婚してやる!」といっているのだから、私が「離婚したい」といえば、あっさり“応じてくれる”とは思ってはいけないのです。なぜなら、「俺の所からでて行くわけがない(離れられるわけがない)」と“タカを踏んで”、“安心しきっている”だけなのです。啖呵を切るように怒鳴っているだけですから、その“ことば”には、あなたの理解している意味はまったく存在しないことを理解しなければならないのです。ただ、声を荒げ、威嚇し、自分の力を誇示するためでしかないのです。そして、「でて行けないなら俺に従うということをお前が選んだ」と思い込ませる(マインドコントロール)ためなのです。
 あなたが逃げる、別れるといった行動を見せたとき、それは、支配と従属という関係では、「俺を裏切る」ことを意味します。そのとき、俺に対し、主人に対し刃向かう者には「制裁(罰)を下さなければならない」との思いにかられ、それができる唯一の存在だと誇示しようとする人たちであることを理解する必要があります。DV加害者から逃れるために家をでるとき、常識的で一般的な考えを持ち込んではいけないのです。
 ここでは、「婚姻破綻の原因は夫のDVにある」として離婚(夫婦関係調整)調停を申立てる意志を持って家をでるときに、しておかなければならないこと、または、配慮しておかなければならないことを以下のとおり整理しておきたいと思います。


(1) 別居後、離婚後の生活を(経済的に)破綻させない
① 児童扶養手当
 児童扶養手当とは、両親の離婚や父親の死亡などによる、ひとり親世帯の生活を支援するための制度ですで。平成22年8月に父子家庭も支給の対象となり、平成24年8月には、「父または母が裁判所からの保護命令の発令を受けた子ども」が支給の対象になりました。
 したがって、DV事件では、離婚していない状況であっても地方裁判所が「保護命令の発令(6ヶ月)」したケースに限り、児童扶養手当の支給を受けることができます。支給金額は、受給資格者(ひとり親家庭の母や父など)が監護・養育する子どもの数や受給資格者の所得等により決められます(個々の支給額については市町村の確認が必要です)。子ども1人の場合には、最大で月額41,430円(一部支給:41,420円-9,780円)、子ども2人以上の加算額は、2人目が月額5,000円、3人目以降1人につき月額3,000円です。手続きは市区町村の窓口ですが、所得制限があることから、一定以上の所得がある場合ときには支給を受けることはできません。

② 児童手当
 児童手当は、児童扶養手当と併給することができます。児童手当(所得制限額以内)の支給額は、0-3歳未満、児童1人につき一律15,000円、3歳-小学生、第1子・第2子10,000円、第3子以降15,000円、中学生一律10,000円です。
 なお、生活保護の受給者は、児童扶養手当、児童手当は、併給することはできません。

③ 生活保護費の受給
 DV離婚では、被害者が暴力によりPTSDなどの症状を抱え、最初から日常生活に支障をきたしてしまっていたりするのではなく、就職先で男性社員や上司に怒鳴りつけられたりするわけでなく、大きな声で指示をだされたり、同僚が上司や取引先(顧客)の悪口や噂話をしていたりすることに、トラウマ(心的外傷)が反応してしまい仕事を続けられなくなり、予定していた収入が閉ざされてしまったりすることもあります。したがって、実家の経済的な援助は長期間可能かどうか、そして、実家の経済的な援助が見込まれないときには生活保護の受給に頼らなければならないことも想定しておく必要があります。
 「生活保護制度」とは、病気や障害のために収入を得られない人のために、国が最低限度の生活を保障する制度で、「生活保護法」にもとづいています。生活保護の受給条件には、独力で自立した生活ができない要保護状態であることが必要です(他に精神疾患による受給申請があります)。要保護状態であることは、a)就労状況(就労をしているときには、一定以上の収入がないことの確認がされます)、b)預貯金等の状況(預貯金があるときには、それを使ってなくなってからの申請になります。また、生命保険等は解約することになります)、c)本人名義の固定資産他の資産の調査(本人名義の家、土地、有価証券を所有しているとき、基本的に保護の適用外になります)、d)援助者の確認(生活保護は「実世帯単位」となることから、同居人(家族他)がいるときには、同居人の収入が収入となります。また、親やきょうだいがいるときには、「援助が可能か?」かを封書か電話で確認します)といった資力調査がおこなわれます。他に、基本的には自転車以外の、自家用車、(原付であっても)バイクはの所有は認められず、お金を借りていたり(クレジット支払いの残金を含む)、家のローン、車のローンが残っていたりするなど借金(負の資産)があるときには、生活保護 費で借金を返済することは認められないことから、自己破産宣告などをして、借金を0円にする必要があります。
 扶助されるものとして、a)生活扶助(食費、被服費、光熱費、家具什器、冬期加算(地区により差)、障害者加算等)、b)住宅扶助(家賃、家屋の補修等)、c)教育扶助(修学する者を扶養している場合)、d)医療扶助(病院代)、e)出産扶助(居宅分娩、施設分娩)、f)生業扶助(生計維持のための小規模事業を営む為の資金)、g)葬祭扶助(葬式の費用)があります。それぞれ状況によって、a)生活扶助+b)住宅扶助+c)医療扶助のように加算されます。受給後は、保護条件が定期的に見直されます。

④ 婚姻費用の分担
 離婚が成立するまで実家で過ごしたり、緊急一時保護され施設で過ごしたりしているとき、生活費が支払われなかったり、受けとることができなかったりするときがあります。しかし、婚姻関係にあるときには、同居、別居の如何にかかわらず、収入・所得に応じた生活費を双方が負担しなければならないことになっています。したがって、DV離婚事件のように、別居期間中の生活費を直接求めることができないときには、家庭裁判所に「婚姻費用(生活費)の分担請求」を申立てることができます。「婚姻費用の分担請求」を家庭裁判所に申立てて決められる婚姻費用の分担額は、「婚姻費用算定表」によって決まることになります。例えば、平成25年度の「民間給与実態統計調査(国税庁)」では、男性の30歳代前半(30-34歳)の平均年収は438万円、同30歳代後半(35-39歳)は499万円です。夫が33歳で給与取得者(平均年収)、妻が専業主婦で1歳半と4歳の2人の子どもがいるケ-スを、「婚姻費用算定表」で算出すると、婚姻費用は配偶者と子ども2人で月額6-8万円(給与取得者・年収350-450万円/年収0-150万円)となります。子どもがいないケースでは、離婚確定後、婚姻費用の支払いは終了します。
 なお、一時保護されたのち生活保護を受給し、身を隠して知らない土地で生活の再建をはかっている(別居)中で、家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求」を申立て、支払われることになったときには、生活保護の受給を止めるか、支払われた婚姻費用(生活費)は収入とみなされることから福祉事務所に返還するかを決めることになります。ただし、離婚確定後は、婚姻費用の支払いを受けることはできないことから、例え、新しい土地でパートタイムの仕事を見つけることができたとしても、後発性のPTSDの症状が表れ仕事を続けられなくなる可能性もあることから、生活を破綻させないことを最優先し、1年程度は生活保護の受給を続けながら生活の再建をはかっていくことが大切です。

-判例25- 東京高等裁判所 平成21年9月28日決定
 前年より年収が減少するかどうか、減少するとしていくら減少するのかは予測が困難であるとして、前年分の年収にもとづいて婚姻費用分担額を算定しました。
(事件の概要)
 相手方(妻)が抗告人(夫)に対し婚姻費用分額の支払いを求めた事案です。原審判は、夫の前年分の年収にもとづき「婚姻費用算定表」にあてはめて婚姻費用分担額を算定しました。これに対し、夫が、本年は前年分より減収になることは明らかであるとして、抗告を申立てました。
(判決の概要)
 抗告人について、超過勤務手当が支給対象外となったこと及び賞与が減少したことは認められますが、ベース給月額が増加していること及び課長職に昇格していることからすれば、抗告人の年収が減少するのかどうか、減少するとしていくら減少するのかは予測が困難であり、本年分の年収を推計することができないことから、婚姻費用分担額は前年分の年収にもとづいて算定するほかないとされました。

-判例26- 大阪高等裁判所 平成22年3月3日決定
 勤務先を退職して収入が減少したことを理由とする婚姻費用分担額減額の申立ては認められませんでした。
(事件の概要)
 抗告人妻甲と相手方夫乙は、平成18年に婚姻し、翌年には長女をもうけましたが、その後、夫婦関係が悪化し、甲乙は別居し、長女は甲が監護するようになりました。平成20年、甲より離婚調停及び婚姻費用分担調停が申立てられ、婚姻費用については、乙が甲に対して毎月6万円を支払うとの調停が成立しました。一方の離婚調停は平成21年に不成立となり、平成22年、離婚を認容する判決が確定しました。その後、平成21年、乙は婚姻費用分担金を月額1万円に減額することを求める調停を申立てましたが、調停不成立となり、原審判は、乙の給与が減ったことなどを理由に婚姻費用を月額1万円に減額することを認めたため、甲が抗告しました。
 なお、乙は歯科医であり、最初の婚姻費用調停成立時は病院に勤務していましたが、平成21年に病院を退職し、大学の研究生として勤務しながら病院でもアルバイトをするという生活をしていました。「婚姻費用算定表」に、病院退職後の乙と甲の年収を判明している限りであてはめると、婚姻費用は毎月1万円程度となる事案でした。
(判決の概要)
 調停において合意した婚姻費用の分担額について、その変更を求めるには、それが当事者の自由な意思にもとづいてされた合意であることからすると、合意当時予測できなかった重大な事情変更が生じた場合など、分担額の変更をやむを得ないものとする事情の変更が必要です。本件についてみると、乙の収入は、本件調停成立時に比して約3割減少していますが、乙が病院を退職したことが仮にやむを得なかったとしても、その年齢、資格、経験等からみて、乙には病院での勤務時代と同程度の収入を得る稼働能力はあるものと認めることができます。したがって、乙が大学の研究生として勤務しているのは、自らの意思で低い収入に甘んじていることとなり、その収入を生活保持義務である婚姻費用分担額算定のための収入とすることはできません。以上のことから、乙の転職による収入減少は、婚姻費用分担額を変更する事情の変更とは認められないとしました。

-判例27- 横浜家庭裁判所川崎支部 平成19年1月10日決定
 婚婚姻費用分担事件の執行力ある調停調書正本にもとづき、一時金及び1日につき2,000円の間接強制金の支払いを命じました。
(事件の概要)
 債権者は、平成2年に債権者と婚姻、同年に長女、平成7年に長男をもうけ、その後2人の子を連れて別居し、平成8年に婚姻費用分担の調停を申立てました。平成10年、1ヶ月20万円、債務者の収入が50万円未満に減少したときは収入の40パーセントを、上記金額が12万円に満たない場合は12万円を支払うことを骨子とする調停が成立しました。平成14年暮れころ、債務者から支払額を12万円とすることが伝えられ、平成18年4月以降、支払がなされなくなったため、債権者の申出により履行勧告がなされましたが、履行はなされませんでした。
(決定の概要)
 婚姻費用(生活費)の支払がなされないと債権者は生活が困窮するなど大きな不利益をこうむることは明らかであり、債務者が支払いを停止したのは、債権者と債務者とが離婚問題を巡って喧嘩したことが直接の契機で、債務者の支払能力等に変化があったことではないとして、債務者に対し、決定の送達を受けた日から30日以内に決定日までの未払い婚姻費用120万円の支払を命じるとともに、期限までに支払がないときは、24万円と支払期限の日の翌日から4ヶ月間、遅滞1日について2,000円を支払うことを命じました。

-判例28- 旭川家庭裁判所 平成17年9月27日決定
 間接強制申立事件において、婚姻費用分担申立事件の執行力ある審判正本にもとづき、婚姻費用分担金の未払分及び弁済期の到来していない6ヶ月分の各金員の支払を命じるとともに、一定の期間内に各金員の全額を支払わないときは、支払済みまで各一定の日数を限度として、1日につき3,000円の間接強制金の支払いを命じました。
(事件の概要)
 債権者Xと債務者Yは、昭和51年12月に婚姻し、平成15年7月より別居しています。平成16年2月、1ヶ月9万5,000円の婚姻費用の支払いが審判で命じられました。Yは会社代表者で、子3人は成人しています。Yは任意の支払いをまったくしないことから、Xは、役員報酬差押えや取立て訴訟などにより、回収することができました。
(判決の概要)
 1日あたり3,000円の間接強制金を命じ、「間接強制金の累積によって債務者に過酷な状況が生じる怖れのあることを考え、平成17年2月から同年6月までの婚姻費用分担金については150日間を、同年7月以降の婚姻費用分担金については、各月分ごとに30日間をそれぞれ限度とすべきである。」としました。

⑤ 養育費
養育費とは、離婚成立後、未成熟子が社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用のことで、配偶者の生活費が含まれる婚姻費用とは違います。したがって、別居時に受けとることができた婚姻費用よりも少なくなります。養育費については、「養育費算定表」をもとに決められます。例えば、婚姻費用算定と同じ条件で「養育費算定表」で算出すると、養育費は2人で月額6-8万円(給与取得者・年収375-475万円/年収0-125万円)となります。このケースの月額は、養育費エ)8-6万円、児童扶養手当イ)46,430円(最大)-14,780円(一部支給)、児童手当ウ)25,000円となり、合計額は最大151,430円-最小(一部支給)99,780円となります。
 ただし、離婚調停(DV離婚事件に限定せずにすべての離婚事案)において養育費の支払いが決まったとしても、3年後に支払い続けているケースは30%に満たないといわれ、貧困家庭での離婚ではほとんど養育費は支払われていないのが実情です。したがって、突然、養育費の支払いが滞る事態になると、上記額が、最大71,430円-最小(一部支給)39,780円となり、直ちに経済的に破綻してしまいます。DV離婚では、支配できなくなった妻や妻子に対して、「俺が、なぜ生活の面倒をみなければならないんだ!」と思いが強く、1年も経たず養育費が支払われなくなることも少なくないことから、支払われなくなる前提で、生活が破綻しないようにしておく必要があります。逆に、「養育費の支払い」を盾にとられ(脅しの材料とされ)、離婚後も子どもに会うという名目で家にきて、食事の用意をさせられ泊まっていかれる(性行為を強いられる)というように、夫婦の関係ではなくなったもののまるで妾の関係が続いてしまうこともあります。つまり、「養育費の支払い」は脅しの材料となりかねない“もろ刃の剣”となり、離婚後も「今月も、養育費の支払いがおこなわれるか」ひやひやさせられたり、「いつ、支払いが滞ることになるのか」常に不安感を抱えたりしなければらない状態といえます。DV離婚事件では、権利としての「養育費の支払い」を求め、経済的に「養育費の支払い」に頼る生活は、経済的な暴力が継続されているような状態ともいえ、精神的に大きな負担となります。
 なお、一時保護されたのち生活保護を受給して生活の再建をはかりながら、離婚調停(もしくは離婚裁判)で離婚が確定し、養育費の支払いを受けることになったときは、支払われる養育費は収入とみなされることから福祉事務所に返還することになります*。

-判例29- 広島家庭裁判所 平成19年11月22日決定
 養育費請求事件の執行力ある審判正本にもとづき、1日につき各1,000円の間接強制金の支払いを命じました。
(事案の概要)
 債権者は、平成11年、親権者を債権者と定めて債務者と協議離婚しました。その後、養育費の支払いを求める調停を申立てましたが、調停は不成立となり審判に移行し、債務者の平成15年の給与収入が約724万円であること等が認定され、直ちに未払い分35万円と毎月5万円の支払いを命じる審判がなされ、平成16年4月に確定しました。債務者は、平成19年1月以降養育費の支払いをしなかったため、債権者は履行勧告を申立てましたが、債務者はまったく回答しませんでした。
(決定の概要)
 債務者は、裁判所の審尋に対して何ら主張立証をしていません。債務の性質が養育費であること、債務者が上記給与収入を得ていたこと、債務者は平成18年12月まで支払っていたがその後10ヶ月間不履行を続けていることを考慮し、間接強制金の累積により過酷な状況が生じる怖れがあることを考え、次のとおり命じました。
① 決定の送達を受けた日から10日以内に(ただし、②の金員のうち、この期間内に弁済期が到来しないものについては、それぞれ弁済期が経過するまでに)、下記a)ないしc)の金員を支払え。
 a)50万円(平成19年1月分から同年10月分の合計)。
 b)平成19年11月から平成20年4月まで毎月末日限り5万円。
 c)執行費用6,020円。
② a)の支払がないときは、上記期間の翌日から支払済みまで(ただし、180日間を限度とする。)、1日につき1,000円を支払え。
③ b)支払がないときは、毎月分全額の支払がなされないごとに、各月分の期限の翌日から支払済みまで(但し、30日間を限度とする。)、1日につき1,000円を支払え。

-判例30- 福島家庭裁判所会津若松支部 平成19年11月9日審判
 再婚し、子をもうけたという事情は、再婚相手に収入がない現時点では、養育費条項を変更すべき事情にあたるが、再婚相手の育児休業期間経過後は、再婚相手も出生した子の養育費を負担できるようになることが予想されるとして、再婚相手の育児休業期間が終了する月までに限り、養育費を減額しました。
(事案の概要)
 夫婦は、平成16年、夫が妻に対し、平成17年10月から平成28年7月まで毎月6万円の養育費を支払うこと等を定めた公正証書を作成して離婚しました。元夫は平成19年に再婚し、同年再婚相手との間に子をもうけました。夫の平成18年分の給与収入は322万3665円(支給総額)でした。再婚相手は、平成19年6月から平成20年4月まで育児休暇を取得しており、当該期間、収入がありません。
(審判の概要)
 申立人(元夫)が再婚し、子をもうけたという事情は、本件養育費条項を変更すべき事情にあたるとするのが相当です。現時点において、元夫と事件本人が同居していると仮定した場合の事件本人の生活費の割合は、再婚相手と出生した子の存在を考慮した場合、考慮しない場合の2分の1となることから、養育費の金額を2分の1(月額3万円)に変更するのが相当です。以上は、再婚相手に収入がないことを前提としたものであり,育児休業期間終了後は,再婚相手も子の養育費を負担できるようになることが予想されるから、養育費条項の減額を求める期間は、育児休業期間の終了する月までとし、その後必要があれば再度減額等の申立てをするのが相当であるとして、養育費の減額の期間を、調停申立てのあった日の属する月の翌月である平成19年7月から平成20年4月までの間に限定しました。

-判例31- 横浜家庭裁判所 平成19年9月3日決定
 養育費請求事件の執行力ある審判正本にもとづき、1日につき5,000円の間接強制金の支払を命じました。
(事案の概要)
 債権者は2人の子の養育費の支払いを、債務者は親権者の変更を申立て、債務者に対して24万円と養育費1人につき1万5,000円の支払いを命じ、親権者変更の申立てを却下する審判が平成18年3月に確定しました。債務者は、審判を不服として養育費の支払いを一切していません。債権者は、平成18年7月に履行勧告を申立てましたが、債務者が任意の履行を拒否したため、終了しました。
(決定の概要)
 債務者は、「養育費を支払っては、債権者の親権を認めることになるので支払いを拒絶する」と申述し、債務を弁済するとその生活が著しく窮迫すると認められる事情を主張していません。未払い債務の額その他諸般の事情を考慮し、間接強制金の累積により過酷な状況が生じる怖れがあることを考え、債務者に対し、決定の送達を受けた日の翌日から7日以内に、未払い養育費87万円の支払いを命じ、支払いがないときは、175日間を限度に1日につき5,000円の支払を命じました。

⑥ 慰謝料
 DV離婚事件における「慰謝料」は、DVにより精神的苦痛を被ったことに対しての損害賠償として求めるのが「慰謝料」で、婚姻期間(DV被害)の年月に準じて150-500万円で、ほとんどが150万円以下(婚姻期間10年未満であれば、300万円が上限)です*。
 DV離婚事件における慰謝料の支払いには、問題が2点あります。
 ひとつが、相手が「DVを認めるか」ということです。多くのDV離婚事件では、DVを認める、つまり、自分に非があることを認めることはありません。つまり、精神的な苦痛を被った原因となるDVを立証する必要がありますが、先に記しているとおり、調停ではDVの有無を下すことはできないので、調停を不調にし、裁判で「DVにより精神的苦痛を被った」ことを立証して損害賠償(慰謝料)の判決を受ける必要があるということです。「婚姻破綻の原因はDVにある」とする離婚裁判では、裁判官による和解勧告のときに、相手が「慰謝料」ということばを嫌がることが多いことから「解決金」として支払うことを認めることがあります。もうひとつは、「DVを認めた」としても、相手に慰謝料を支払う能力があるかです。相手に慰謝料を支払う財力がないときには、財産を差し押さえるなどの権限を伴うものではないので、理不尽であっても求めること自体がムダになります。
* 職場や学校で、パワーハラスメントやセクシャルハラスメント、体罰、いじめを受け(元)社員や児童(卒業生を含む)が、「PTSDやうつ病を発症して精神的な苦痛を被った」として、労災認定を受けたり、民事訴訟として高額な損害賠償金(慰謝料)が命じられたりする機会があります。暴力という範疇の被害を受け、精神的な苦痛を被ったという同じ条件下にあるにもかかわらず、「婚姻破綻の原因はDVにある」として離婚を求める民事事件と慰謝料の金額に大きな開きがあるのは、個人と組織の支払い能力の違いということではなく、「企業や学校といった組織におけるコンプライアンス体制のあり方が問われる」からです。つまり、その行為を組織体制の中で放置したという責任が問われる、つまり、コンプライアンス体制に不備があることを問題視しているのです。
 また、DVや児童虐待を、民事事件ではなく刑事事件として捉えるときには、夫婦間におけるDV、親子間における虐待によってPTSDを発症したときには、「健康状態を損なった(判例)」として傷害罪(刑法204条)が適用されると解釈できます。傷害罪は、PTSD(C-PTSD)やうつ病、パニック傷害の発症、病気の罹患、疲労倦怠などの外傷を伴わないものでも適用されるということになっています。しかし、傷害罪を「適用されると解釈できる」ことと、「因果関係を示し、認定を受ける」ことには大きな隔たりがあるのが現状です。
 そして、この「DVにより、PTSDを発症したとして健康状態を損なった」として慰謝料を求める問題を、「婚姻破綻の原因はDVにある」とするDV離婚事件でおこなうときには、離婚調停は、2人の調停委員が間に入り、合意にむけた話合いをしていく場であって、判決を下す場ではないことから、調停を不調にしたうえで、別途、提訴して(民事裁判をおこす)DVとPTSD発症の因果関係を立証しなければならないことになります。しかし、「加害者がDVを認めず、離婚に応じない」中で、DV行為を立証したうえで、さらに、発症したPTSDなどの症状との因果関係を立証しなければならないのです。不適切な表現ですが、被害者本人が証拠の保全に努めているという条件のもとで、被害者本人の因果関係を立証するための証拠の準備の労力、そして、代理人の弁護士にとっても、証拠にもとづいた書面の準備、専門家(医師)による証言の手配などの労力は相当なものです。つまり、不適切な表現ですが、DV離婚裁判で認定される慰謝料の150-500万円で、ほとんどが150万円以下(婚姻10年未満では上限300万円)と現状と照し合せると、労力に見合うものではないと判断せざるをえないのです。「Ⅱ-10-(5)性暴力被害と解離性障害」の中でとりあげた「事例125」のように、法改正の必要性を訴えるなど社会的意義があるとして志の高く、該当分野に精通している弁護士が集い弁護団を組んで臨むなどしなければ困難であるというのが現状です。仮に、離婚事件(民事事件)ではなく、警察に、「ことばの暴力でPTSDを発症した」と被害届を提出しようとしても受けつけられない可能性が髙いのです。なぜなら、警察は、「被害届」提出後に「告訴状」が提出されれば捜査しなければならず、しかも、捜査によって起訴し、有罪判決を得られる確信がなければ、被害届や告訴状を受けとりたくない心情が強く働くからです。したがって、相手が慰謝料を支払うと応じれば慰謝料が支払われ、相手が支払いに応じなければ支払いを受けることができない場合もあるということです。


-判例32- 大阪高等裁判所 平成12年3月8日判決
夫の度々の暴力により妻が右鎖骨骨折、腰椎椎間板ヘルニアの傷害を負い運動障害の後遺症が残ったケースで、離婚による慰謝料350万円のほかに入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益として合計1,714万円の損害賠償請金の支払が命じられました。

-判例33- 横浜地方裁判所 平成9年4月14日判決
夫が些細なことで殴る、蹴るの醜い暴力をふるったことにより婚姻が破綻したとして、夫に400万円の慰謝料の支払を命じました。

-判例34- 浦和地方裁判所 昭和59年9月19日判決
暴力・悪意の遺棄をした夫について慰謝料300万円を認めました。なお、財産分与は640万円となっています。

-判例35- 東京高等裁判所 昭和54年1月29日判決
婚姻期間8年、夫が妻の男性関係にあらぬ疑いをいだき、夫の母も嫌がらせ的な言動にでて、妻に家をでるよう強要し婚姻後6ヶ月で別居しましたが、妻が離婚に同意しないことから、妻方に執拗に嫌がらせの電話や手紙を繰り返し、妻の父母を相手どって言いがかりとしか見えない訴訟を提起したりした事案で、財産分与はなく、夫に慰謝料500万円の支払を命じましたた。

-判例36- 大阪家庭裁判所 昭和50年1月31日審判
夫が収入を酒食や女遊びに浪費し,妻に対しほとんど毎日のように暴力をふるい、頭髪をひっぱる、手拳で殴打する、足で蹴る、下駄で頭を殴ってかなりの裂傷を負わせる、出刃包丁で手指などを切りつける、薪割りやスコップをふりあげて追いかけまわす等した事案で、慰謝料500万円と認め、財産分与と合わせて時価約1,000万円の土地・建物の分与を認めました。

-判例37- 仙台地方裁判所判決 平成15年12月4日判決
 昭和42年に婚姻し、子2人は成人しています。夫は公務員でしたが、判決時は無職、妻は専業主婦でした。夫から妻に対し粗暴な言動が繰り返され、骨折や頚椎捻挫の傷害を負わせていました。子らに対しても暴力や精神的虐待がありました。平成14年、妻は仙台地方裁判所に「保護命令」を申立て、発令を受け、別居しました。その後の離婚調停は不調になり、審判に移行後、控訴され仙台地方裁判所は、慰藉料600万円、清算的分与として1,300万円、年金収入の中から原告被告いずれかが死亡するまで月6万円の支払いを被告に命じました。

(慰謝料)
 離婚すれば、必ず慰謝料をもらえると思っている人が少なくありませんが、これは間違いです。離婚裁判の判例では、「相手の有責な不法行為(不貞や暴力など)によって、離婚のやむなきにいたった場合に、その精神的苦痛を償うことを目的として支払われるのが離婚の慰謝料である。」としていることから、離婚による慰謝料は、婚姻破綻の責任がどちらにあるかが問題になります。つまり、結婚生活の破綻が夫婦双方の責任によって生じ、どちらが悪いとはいえないときには、慰謝料は発生しないことになります。
協議離婚、調停離婚、審判離婚、離婚裁判を通じて、慰謝料の額について、「相場」はありません。調停・裁判離婚で決められた平均額は150万円-300万円になりますが、婚姻年月や婚姻破綻の原因による精神的苦痛の程度の裁判所の解釈によって大きな差が生じます。裁判所は、①婚姻期間の長短、②離婚原因の背信性、③不貞行為の内容、④責任の度合い、⑤相手の不貞行為によって受けた精神的苦痛の程度、⑥子どもの有無、⑦当事者の年齢、⑧当事者の社会的地位や経済状況などの要素を検討するといわれています。また、慰謝料には時効があり、離婚成立から3年経過すると時効になります。そのため、離婚を先にして、財産調査をしてから慰謝料を請求するときには注意が必要です。
 また、「慰謝料の支払い=悪者」的な考え方が一般的に定着していることから、DV離婚事件などでは、離婚協議書、調停調書、公正証書の作成時に慰謝料の支払う立場の者の中には、「慰謝料として金○○を乙に支払う」という文言を入れることに抵抗する人がいます。このような場合には、慰謝料に代えて「和解金」とか「解決金」という文言を使用することがあります。
 そして、離婚協議書に、慰謝料支払いの条項を記載しても、不払いに対して強制力はないので、離婚協議書を公証役場に持参して、「強制執行認諾の文言の記載されている、離婚給付に係る公正証書の作成を依頼する」(離婚協議書を公正証書にする)か、または、調停離婚で慰謝料支払いの条項を入れてもらうことが必要です。持ち家に住んでいたり、会社勤めをしていたりしても、「ないものは払えない」と、支払いを拒むときには、先に作成した「公正証書(公証役場)」、または、「調停調書(家庭裁判所)」を持参して財産差押え、給料差押さえをすることです。調停調書や公正証書に記載されている慰謝料という債権は、10年で消滅時効になり、失効しますが、手続きをすれば時効を中断させることができます。
① 慰謝料請求が認められるケース
・配偶者の不貞行為
・配偶者の悪意の遺棄
・配偶者の暴行・虐待
・配偶者の性交渉拒否
② 慰謝料請求が認められないケース
・強度の精神疾患
・夫婦の性格の不一致
・信仰上の対立
・配偶者の親類との不和・あつれき
・その他、双方に離婚原因を生じた責任があるとき


(2) 財産の保全
 共有財産としての預貯金、権利書、子供保険、被保険者の生命保険などは共有財産として、財産分与の対象となります。離婚調停や裁判では、夫婦で財産を分けるときの割合は、原則2分の1とされています。ただし、特殊な才能等により高額の収入が得られた場合には、下記の判例のように修正されることがあります。平成8年の法務省の民法改正案は、「各当事者の寄与の程度は、その異なることが明らかでないときは等しいものとする」としています。
 「婚姻破たんの原因はDVである」とする離婚調停では、「財産を奪った」と主張されないことと、財産分与しないために預金などを移される(隠される)ことを防ぐこと、「源泉徴収票」「所得課税証明書」によって、所得を明らかしておくこと、つまり、「財産の保全」が重要です。
 そのためには、預金通帳、印鑑を管理することが大切です。また、共有財産を明らかにするときに、婚姻前の財産(特有財産)をきちんとわけておくことが大切です。万一、預貯金などの財産を保全することができず、加害者に預金通帳の提示を拒まれたときには、財産分与を主張することができなくなります。なぜなら、どこの銀行口座に残金が幾らあるのかなどの情報は、「財産分与を求める者が示さなければ(立証しなければ)ならない」からです。したがって、財産については、家をでる前に、正確に把握しておく必要があります。また、財産の保全として、手元(弁護士や銀行の貸金庫に保管するなどを含む)に管理すること、そして、預金通帳、権利書、保険証書などすべてを写真で撮り、コピーをとっておくことが重要です。現在、株券は電子化されていることから、株式譲渡益(株の売買による利益)にかかわる取引を示す郵便物を押えられるならコピーをとっておきます。一方で、負債額、ローン返済額、つまり、カードローン、サラリーマン金融等でに借入れの有無を確認します。借り入れがあるときには、その額を明らかにします。別居前後、カードローン、サラリーマン金融等の借入れは財産保全の観点から一切できないことになります。併せて、離婚後は返済が困難であることを知りつつ、しかも、「自己破産」で対処すればいいと考えで、家をでる費用として金品を借り入れてしまうと、「自己破産」を申請時には“詐欺行為”として申請が認められなくなることがあります。また、家をでて、家を借りるときに、預金から費用を工面するときには、財産分与を算定するときにはその事実を隠さず明らかにすることが必要です。
 なお、不正所得の申請によって脱税している可能性があるときには、その証拠を示すことによって、「預金口座等の照会を地方裁判所に申立てる」と代理人(弁護士)を通じて交渉の材料とするのか、または、不正所得(脱税)によってえられた財産は財産分与の対象にならないので、脱税として税務署を立ち入らせることを覚悟するのかを、考え(意志)を整理しておく必要があります。

-判例38- 広島高等裁判所 平成16年6月18日判決
 財産分与につき、同族会社資産も清算対象とし、寄与率を2分とし、詳細な認定がなされました。
(事件の概要)
 原告妻と被告夫は、昭和48年11月婚姻、平成9年11月に原告が被告方をでて別居しました。娘3人息子1人がいます。夫婦は協力して自動車修理業を営んできました。夫には不貞、妻への暴力があり、しつけとして息子の手に火のつい煙草をおしつけたり、子の希望しない高校へ無理に行かせたりするなどの行為もありました。
(判決の概要)
 夫に対し、慰謝料500万円、弁護士費用50万円の支払いを命じ、財産分与として同族会社資産も含めて清算対象として妻の寄与率5割を乗じ、妻の取得分を約3億2639万円と算出し、不動産の分配等具体的な取得方法を命じました。
 同族会社の財産については、「丙川社は、一審原・被告が営んできた自動車販売部門を独立するために設立され、丁原社は、一審原・被告が所有するマンションの管理会社として設立されたものであり、いずれも一審原・被告を中心とする同族会社であって」と記述し、寄与率については、「一審原・被告がその経営に従事していたことに徴すると、上記各会社名義の財産も財産分与の対象として考慮するのが相当である … 一審原告が家事や四名の子の育児に従事しながら、一審被告の事業に協力し続け、資産形成に大きく貢献したことに徴すると、一審原告の寄与率は五割と解され…」と述べました。

-判例39- 横浜家庭裁判所 平成13年12月26日審判
 退職金等について、妻がその維持形成に寄与したのは同居期間のみであるとしました。
(事案の概要)
 平成11年に協議離婚した元妻から元夫に対し財産分与請求がなされました。退職金1761万円は、勤務した12年2カ月を対象としたものですが、そのうち、夫婦が同居してその維持形成に寄与したのは5年8ヶ月でした。「その同居期間だけを寄与期間と計算すべきである。そうすると、1761万円に寄与期間率(0.4658)を乗じた820万円が計算の基礎となるところ、申立人の妻の寄与率について2分の1を下回るべき特段の事情は認められないから、それを乗ずると410万円になる。」としました。

(財産分与)
 民法768条で、「協議上の離婚をした者の一方は、相手に対して財産の分与を請求することができる。」と規定しています。この規定は、裁判上の離婚に準用することから、離婚にあたって必ず問題になります。離婚における財産分与の対象となるものは、結婚生活の中で夫婦の協力によって取得し、維持されたすべての「共有財産」です。一方の名義で取得したものでも、結婚後、夫婦が取得した財産は、実質的に夫婦の共有財産とみなされます。共有財産となるものは、①現金、②預貯金、③土地、建物、④有価証券(株券・国債など)、⑤ゴルフ会員権、⑥保険、⑦骨董品、美術品などです。退職金は、離婚のときまでに既に支払われているか、近い将来支払われることが確定していれば、財産分与の対象になります。共済年金や厚生年金も納付記録の2分の1を上限として婚姻期間に対応した額が対象になります。ただし、財産分与の割合については法的基準がないことから、財産形成についての夫婦双方の寄与度・貢献度に応じて、ケースバイケースで判断することになります。一般的なのは、死亡時の相続において、配偶者の法定相続分に準じて2分の1を基本する考え方に準じたうえで、婚姻生活上の一切の事情を加味して貢献度を算定するものです。
 また、財産分与請求権は、2年という時効期間があります。加えて、離婚時に、「金銭的あるいは財産的請求は今後一切致しません。」という趣旨の約束をしているときには、時効期間内でも請求ができなくなります。
・夫婦共稼ぎ 2分の1ずつの分与例が多いものの、ケースによって寄与度を考慮して、この比率を調整することになります。
・家業協力 等分に財産分与するケースが多く、中には、妻に50%以上の財産分与を認めたケースもあります。
・専業主婦 裁判例では、妻の分与の多くが3割-5割となっています。
 一方で、①結婚前からそれぞれが持っていた財産、②婚姻中に夫婦の一方が相続、贈与などで、他方とかかわりなく得た財産、③それぞれの専用品と考えられる財産は、「特有財産」として、分与の対象にはなりません。

(住宅ローンと財産分与)
 住宅ローン付不動産を分けるとき、離婚後どちらがその家に居住するか、残された住宅ローンをどうするかなど複雑な問題が残ります。例えば、妻が、夫から財産分与としてローン付住宅をもらったとしても、不動産の所有権移転(名義変更)とローン支払い義務者(夫)の移転は必ず一緒に伴うものではありません。所有権移転は、旧名義人(夫)と新名義人(妻)の間の問題となりますが、ローン支払い義務は銀行が「債務者を夫から妻に変更する」ことを承諾しない限り、夫が債務者ということになります。銀行が、ローン債務者を夫から妻に変更することはほとんど期待できないことから、離婚後、妻が夫名義のローン残を引き継いで支払うことになります。
 そこで、分割案として、
①売却してその代金を分ける(ローン残が残った場合、分割の割合でその債務を支払う)
②不動産を取得した配偶者が、残りのローンの返済をする
③一方が単独所有して、分与する割合の金銭を相手に支払う
④分割の割合に応じて共有にする
などが考えられます。

(財産分与と税金)
 原則的に、慰謝料や財産分与に税金はかかりません。慰謝料は、心身に加えられた損害に対する賠償金であるため金銭による支払いの場合は非課税です。一方の財産分与は、受け渡しの方法により、財産を譲渡する側、譲渡される側の両方に税金がかかってくる場合があります。財産分与は、夫婦の財産の清算をおこなうため、現金の他、不動産や株式などの金銭以外の資産で受け渡しをおこなうことがあります。このとき、財産分与は資産の譲渡にあたり、支払う側に譲渡所得税がかかります。不動産などの譲渡は、譲渡所得による収入金額とみなされることから、離婚に伴う財産分与であっても例外とはなりません。課税額は、譲渡するときの資産の時価をもとに計算されます。例えば、3,000万円で購入した自宅の土地建物の時価評価額が、4,500万円であったとき、差額の1,500万円が譲渡益として譲渡所得税の対象となり、土地を譲る側(財産を譲渡する側)が税金を支払います。譲渡する不動産が居住用のとき、譲渡所得3,000万円までの特別控除が受けられることから、非課税となります。この特別控除を受けるには、親族以外への譲渡が用件となっているので、離婚後に手続きをおこなう必要があります。また、婚姻期間が20年以上の夫婦で、離婚前に居住用不動産を譲渡される側が引き続き居住するときには、贈与税の基礎控除110万円と配偶者控除2,000万円が適用され、2,110万円まで非課税となります。また、不動産を譲渡される側にも税金は課せられます。不動産の取得による不動産取得税と登記の際に登録免許税が課せられますが、一定の条件を満たしていれば、軽減税率が適用される特例があります。また、不動産の取得後は、毎年固定資産税を納めることになります。あまりに過大な財産分与がなされたときには、過剰な部分について贈与があったとみなされ、贈与税がかかることがあります。受けとった財産を売却するときには譲渡益が生じ、譲渡所得税がかかることもあります。譲渡益に課せられる税金は、非常に高額になる場合もあるので、大きな資産を分配する場合は税理士など専門家への相談が必要です。


(3) 家財(私有物)の搬出
 暴行され、警察に通報して保護を受けている状況であれば、一定時間、家に立ち寄ることを禁止したうえで、女性の警察官に立ち合ってもらい、着替えや必要最低限の物を持ちだすことができます。また、暴行され、警察に保護を受けたのち、ホテルや実家に身を寄せている中で、「保護命令(接近禁止命令など)」を地方裁判所に申立て、発令後、転居先を決めて引っ越しをすませることもできます。
 家をでたあと、生活していた家に荷物(家財)をとりにいくことは、婚姻関係にある限り、住居侵入罪や窃盗罪に問われることはないので、法的には問題はありません。しかし、留守中に勝手に家に入り、家財を持ちださないように家の鍵を変えられていて、実家に身を寄せて、「夫が勤めにでている間に荷物をとりにいけばいい」との目論みが崩れ去ってしまうことがあります。「思い通りにことを運ばせてなるものか!」との思い(こらしめ・罰)であったり、「荷物をとりにいったけれど、家に入れない」と連絡(接触)があることを目論んだりしているからです。「連絡があることを目論んで」というのは、連絡があったとき、「俺も悪かった。もう一度、話し合おう。」と歩み寄り、甘く優しいことばでおびき寄せることができれば、あとは力で、もう一度立場を思い知らせることができるとタカを踏んでいるということです。「裏切った(逆らった)」ことへの罰・こらしめを与えれば、これまで通りに「許しを乞うてすり寄ってくる」ことの目論み、支配と従属の関係性で成り立ってきた夫婦関係をもう一度手に入れるためのふるまいということになります。つまり、「俺が立ち合うことが、荷物を運びだす条件だ」と、家で二人きりになることを目論むわけです。家で二人きりになることは、力づくで関係修復をはかろうとするDV加害者と、家で二人きりになることは、殴る蹴るなどの身体的な暴行を受けたり、レイプされたりする危険があります。DV事件である限り、「まさかこんなときに、セックスを求めてくることはないだろう」とタカを括っては(常識的な考えを持ち込んでは)いけないということです。
 したがって、暴行を受けて一時保護されるなど、DV事案では、必要最低限な身の回りのものだけを持って家をでていることが多く、婚姻前に使用していた家財、親が用意した家財などについては、離婚調停で「家財をひき取りたい」と主張することになります。
そこで、「暴力にもう耐えることはできない。離婚をするためにはどうしたらいいのだろう」との考えに至っているときには、緊急時、家をでるときに持ちだす家財と、あとになってひき取る家財とをわけた対応をしておくことが大切です。重要なことは、あとになってひき取る家財については、転居直前の家財の状態がわかるように、部屋全体、中味がわかる状態などできるだけ詳細に写真を撮っておき、「家財リスト」を作成しておくということです。写真を撮って、家財リストを用意しておく理由は、勝手に処分されてしまうことを防ぐため、つまり、財産の保全のためです。場合によっては、離婚調停を申立てる前に、「財産保全の仮処分審判」の申立てなどは、弁護士に相談しておきます。
 そして、離婚調停中、もしくは、離婚調停(離婚裁判)を経て離婚確定後に家財を搬出するときには、依頼している弁護士に立ち合ってもらい「家財リスト」に則り、搬出します。


(4) 暴力の事実を証拠として残す
 黙って家をでる前に、以下のような「事前に確認しておくこと」など準備期間があるときには、家をでる直前まで暴力の事実を証拠にできるように残すように努めます。
 殴らたり、叩かれたり、腕を捻られたり、強く押さえつけられたりする身体的な暴行を受けたときには、赤くなって(うっ血痕ができて)いなくとも痛みがあれば、写真を撮っておきます。次に、病院に行き「暴力を受けた」ことを必ず話して診察を受け「診断書」をもらいます。その診断書のコピーをとって警察に行き、「DVを受けていて相談にきました」といい、診断書発行のきっかけとなった暴行の状況に加えて、日常的なDV被害についても話をします。「配偶者暴力防止法」にもとづく保護命令を地方裁判所に申立てる条件として、女性センターか警察にDV相談をしているとなっているので、身体的な暴行被害を受けていなくとも、警察にDV相談に行き、そのことを記録として残してもらいます。この時点で「被害届」をだして、ださなくともいいですが、携帯電話番号と住所を登録してもらうようにします。これは、緊急時に着信があれば直ぐにかけつけてもらうことができるからです。
 次に、できるだけ多くの会話を録音しておくことです。大声で怒鳴りつけたり、激しく罵倒したり、殴っていたりする声や音が録音されていることは、DVを立証するうえで有効なことは間違いありませんが、「Ⅰ.児童虐待とドメスティック・バイオレンス」で説明しているとおり、DVの本質は、本来対等である夫婦の関係に、上下の関係、支配と従属の関係を成り立たせるためにパワー(力、暴力)を駆使することですから、この関係性を示す夫婦の会話が録音されていることが大切です。この会話の録音には、留守電機能に保存されている音源も含まれます。暴力のある家庭環境で育っていたり、長くDVのある家庭環境で暮らしていたりすると、当事者にとっては、あまりにも日常的なことばであることから気づくことができないので、DVを立証するための証拠とならないと判断してしまいやすいのですが、自分で判断せず、できるだけ多くの会話を録音するようにします。なお、家庭裁判所に、録音された音源データを証拠として提出するときには、音源データを文字おこしした書面2部を添えて、CD-ROMに2枚コピーします。1セットは家庭裁判所用で、もう1セットは相手方用です。
 そして最後は、交際時にわたされた手紙やこれまでのメールやLINEのやり取りです。メールやLINEのやり取りについても、会話の録音と同様に、個々だけ見ればなにも問題がないように感じても、会話のやり取りを流れ(文脈)や経緯で見ていくと、受信と送信の間隔(時間)が極端に短かったり、不都合なことには無視して長かったり、メールの冒頭が「ごめんなさい」と謝ることばではじまっていたりしていて、被害者が機嫌を損ねないように気を配っている様子、つまり、“怖れ”を読みとることができます。ひどいことばが書かれていたりすると残しておきたくないと決してしまう被害者も少なくありませんが、そのひとつひとつがDV被害を立証するものになります。過去に遡って時系列にまとめて、DV被害の状況を分析することができるように、機種変更した機器を含めて保存に努めるようにします。


(5) 証拠の保全と履歴の削除
 いうことをきかないことへのこらしめ・罰として生活費をわたさない(経済的な暴力)といったことをする人なら、暴力を受けたことを記した日記やメモ、メールや写真が残っている携帯電話、住所録などのとり扱い、保管には十分に注意する必要があります。

① 妄想的な嫉妬心を抱える人なら、外出している間に家探しをし、なにがどこに隠されているかを把握していると考えておく必要があります。「前に送ったメールが不利になるかもしれない」と、パソコンのメールをすべて削除してしまう可能性もあります。
 そこで、メールやLINEのやり取り(送受信)は、SDカードやUSBカードにコピーしたうえでプリントアウトし、特に裁判所に証拠として提出できる重要なメール文は送受信アドレス・日付が同じ画像として残るように写真を撮っておく必要があります。と同時に、家探しされ処分されてしまわないように、トランクルーム(レンタル倉庫)を借りて隠しておいたり、実家に預けておいたり、会社勤めのときはロッカーや机に隠しておいたり、弁護士と委任契約をしているときには弁護士に預けておいたりするなど、二重三重に証拠の保全に務めることが大切です。

② DV加害者の中には、ネット通販やオークションでなにを買っているのか、なにを落札しているのかを隠れて随時チェックしていたり(DVのある家庭環境では、「隠しごとなど後ろめたいことがなければ、パスワードを設定する必要はないよな」といわれ、自由にアクセスできる状況にあることがあります)、妻の入浴中に財布のレシートをチェックしたり、携帯電話の着信履歴やメールの送受信履歴をチェックしたりしていることが少なくありません。事例42のケースでは、被害女性のRが、夫Dの浮気調査の依頼を考え、探偵会社とのやり取りをしていた文面がそのまま、夫Dのパソコンのメモ機能にそのままコピーされていました(支援をしている中で判明しました)。
 したがって、DV被害を相談しようと思ってネットで調べたり、DV関連の書籍を買ってきたりしているときには、パソコンの閲覧履歴を残さずに削除し、また、相談先一覧などにポストイットをつけているときには剥がし、マーカーで印をつけているときにはそのページを破り破棄しておきます。なぜなら、こうしたデータは、居所を探しだす重要な手がかりになるからです。
 “夫婦の関係にDVがある”という前提がある限り、「そんなことまでしないんじゃないの?!」という考え方をしてはならないということです。DV事案は、「されたら、どうしようもなくなる」ことを理解し、万一のことを考えて細心の注意を払い、用意周到な準備を怠らないことが重要なのです。そして、結果論として、「されなくて助かった」と思うものなのです。

③ 性暴力として、望まない性具を使ったセックスを強要されていた被害女性にとって、性具など二度と見たくない、思いだしたくないものです。しかし、証拠としての行使をするかどうかの判断は、調停や裁判になってからすればいいと考え、性具等についても家をでる前(転居する前)に写真を撮っておく必要があります。あとになって、写真を撮っておけばよかったとならないようにすることが大切です。
 一方で、性行為中に撮られた写真、動画などは、脅しの道具とされたり、離婚後、腹いせにネットの掲示板に公開(リベンジポルノとして、ネットに流出)されたりする怖れもあることから、家をでる前(転居する前)に、可能な限り回収に努めて欲しいと思います。女性の恥部を逆手にとって、「ネットに流してもいいのか!」、「親兄弟、友人や会社に流してやる!」と脅してくることがあります。離婚を切りだしてから、離婚を諦めさせるために写真や動画を隠し撮ろうとすることもあります。したがって、ペン型、使い捨てライター型、腕時計型、目覚まし時計型の「盗撮機」がネットで簡単に手に入りますので、寝室、脱衣所などで隠し撮りされていないかのチェックも怠らないことが必要です。脅迫罪、強要罪で訴えることもできますが、リベンジポルノはデジタルタトーといわれるように一度ネットに流されてしまうと削除することは不可能です。家に留まさせられる脅しに使われたりしないように、隠し撮りを含めて撮られないことが重要です。


(6) 管轄警察署での相談記録(警察安全相談記録表)
① 警察で、DV相談記録(調書)を残す
 家をでる決意ができたときには、事前に、管轄警察署(生活安全課)に行きDV被害を受けてきたと相談し、相談記録(調書)を残してもらいます。この調書は「警察安全相談記録表」として、調停6や裁判において証拠として提出するために発行してもらうことができます。また、暴行を受けた(暴行を受ける怖れがでた)とき、直ぐに警察官が駆けつけてくれるように「電話番号の登録」をしておきます。

② 「捜索願の不受理届」をだす
 緊急一時保護施設に入居したり、知らない土地でアパートを借りて生活の再建をはかったりするときには、夫には転居を知らせずに、仕事にでかけたりしている間に(子どもを連れて)家をでます。そして、管轄警察署に行き、「捜索願の不受理届」をだしておくことを忘れないようにします。なぜなら、夫が帰宅後、「妻と子どもがいなくなった。捜しだして欲しい」と警察に出向き、『捜索願』をだす可能性があるからです。万一、夫から『捜索』の依頼があったとしても、「DVとお子さんへの暴力として何度か相談を受けていますし、転居のことも話を聞いています。事件ではなく、失踪したわけでもありません。ですから、捜索の依頼にはお応えできません。そして、弁護士を通じて連絡するといっていましたから、弁護士からの連絡を待ってみるしかないね」と応えて欲しいことと、「決して、受理しない」ように、管轄警察署に徹底して欲しいことをきちんと伝えます。

③ 暴行を受けたときは「被害届」をだす
 子どもが通う小学校や保育園で、待ち伏せをしていた夫に遭遇する可能性が考えられます。そのとき、夫が「話し合おう」などといい、肩や腕をつかんで、行く手を遮ったりする行為があり、その後、鬱血痕が(皮下出血)みられる場合は、患部の写真を撮り、病院に行き、「DVによる離婚の話し合いを進めている夫から暴力を受けた」と医師に伝え、<暴行を受けた>旨の診断書をだしてもらい、警察で「被害届」を提出します。警察署では、「提出した被害届をとり下げることはありません」といった意志、決意を伝えます。
 「被害届」とは、犯罪に巻き込まれた事実を捜査機関に申告する書類のことです。通報や現行犯逮捕でなければ、警察も犯罪の存在を知るのが困難です。警察に捜査を開始し、犯人を逮捕して欲しいとき、被害届を提出するのが一般的な方法です。しかし、被害届では捜査義務が発生しないことから、被害者本人か、法定代理人、親族が「告訴状」を提出(告訴)することも理解しておく必要があります。「告発」は、被害者本人などの告訴ができる人以外の第三者がおこなうことです。告訴・告発を受理した捜査機関には、捜査を開始し、求めに応じて、起訴するか否かの判断を申告者に伝える義務が生じます。ただし、起訴後の有罪判決を100%(実際は99%)にしたいと考える警察や検察に対し、告訴を受理してもらうことは簡単なことではありません。つまり、告訴を受理してもらうには、「現状揃っている証拠だけでも十分に有罪となる見込みがある」ことが必要になります。
 DV事件(別れ話を発端としたストーカー事件を含む)では、被害届を提出したものの、加害者に対しての事情聴取もおこなわれていないことに焦り、苛立つケースがおこりやすいわけですが、警察署の所定の「被害届」のみ提出に留まらず、告訴に通じる証拠を提出できる用意周到な準備が必要になります。

<被害届の出し方・書式>
 被害届は、警察署や交番に書類が常備されています。ただし、被害届の書式は犯罪の内容によって異なる場合がありますが、下記の項目は必要となります。提出時には、身分証明書と印鑑を持参します。
・被害者の住所、氏名、年齢、職業
・被害に遭った日時
・被害に遭った場所
・被害の模様(どのような犯罪で、どのような被害を被ったのか)※
 ※DV事件による被害の状況は、刑事事件としての身体的な暴行被害だけでなく、「日常的なことばの暴力(精神的暴力)などを踏まえたDV事件としての全体像を明らかにしておく」必要があります。DV被害支援室poco a pocoでは、“なにをされてきたのか”“どのような状況におかれてきたのか”をワークシートに書込み、それを、「現在に至る事実経過」としてまとめて、離婚調停における陳述書(「事実をまとめた報告書」としての証拠)として、または、警察への被害届、告訴状に添える証拠とすることを推奨しています。
・被害金額(品名、数量、時価、特徴、所有者)
・犯人の住所、氏名、人相、服装、特徴等(不明でも可)
・遺留品その他参考となるべき事項(所持している証拠)※
 ※録音や録画された音源・映像データ(音源・映像データと文字おこししたもの)、メール文(メールの文章をうち込んだものと、携帯電話やパソコンの画面にそのメールが表示されている状態で写真を撮ったもの)、暴行により被った痣などの写真、暴行がおこなわれた部屋などの写真、診断書など


(7) 役場(市役所や区役所など)での手続き
① 「DV被害証明書」の発行
 子どもを連れ、家をでたときには、役場(市役所や区役所など)や女性センターのDV相談窓口で、「DV被害証明書」を発行してもらい、「児童手当ての振込先変更手続き」をします。ただし、変更手続きを知らせる通知が転居前の住所に届くことになりますから、離婚調停時に弁護士を通じてその旨を伝えてから手続きをおこなうようにします。

② 「離婚届の不受理申出」の提出
 夫に勝手に「離婚届」をだされる怖れがあるときには、戸籍課で、「離婚届の不受理申出」を忘れずにしておきます。

③ 年金番号の変更手続き
 家をでて、年金の住所と年金番号の変更手続きが必要になったをおこなうときには、「DV被害証明書」を発行してもらい、社会保険事務所において変更手続きをおこないます。

④ 健康組合(健康保険証)からの脱退手続き
 家をでたあと、医療機関への受診によって居所が知れることがあるため、保険証は使用せず、福祉事務所が発行する「医療券」を利用する必要があります。福祉事務所で「DV被害から逃れるために家をでて、身を隠して生活をしているため保険証の使用ができない」ことを伝え、生活保護(生活扶助、住居扶助、医療扶助、教育扶助など)の受給など相談します。その後、生活保護の受給が決まったときには、福祉事務所が健康保険組合からの退会手続きをおこないます。ただし、退会手続きを知らせる通知が転居前の住所に届き、夫が「脱退理由」を記載せず手続きが停止したままになっていることがあります。そのときには、弁護士を介して、“深刻なDV事案”であるために、「生活保護の受給証明書(住所欄と福祉事務所名(住所含)を“黒塗り”したもの)」で退会手続きを進めてもらえるように交渉してもらいます。

⑤ 「住民基本台帳事務における支援措置」の申し出
 「住民基本台帳事務における支援措置」の申し出をおこない、転居の住民登録をしても、夫への住民基本台帳の閲覧や住民票の写しなどの交付を制限(DV・ストーカーなどの被害者の保護支援のため申し出により住民票の写しなどの交付を制限)できるようにします。
 ただし、各窓口で連絡が滞っていたり、事務手続きにおける確認ミスがあったりして、夫に住所が知れてしまうことがないわけではありません。そこで、支援措置の申出については慎重に考える必要があります。一時保護など、一連の福祉行政として被害者支援に携わっている福祉事務所では、「支援措置はとらず、結果として住所変更についてもおこなわないように」と助言しているケースもあります。公営住宅の応募のさいには、福祉事務所の担当者が住宅課の職員との間に入り、手続きが円滑にできるように調整してくれるケースもあります。
 支援措置の申出については、「Ⅳ-23- (1)「身を守る」ことを最優先にするという選択」で詳しく説明しています。


(8) 学校園への連絡
 家をでる前、転居前に出向き、以下のお願いをします。
 役場(市役所や区役所等)のDV相談窓口、児童相談所に対し、夫からの暴力・DV、子どもへの暴力・虐待について、相談をしていることを伝えます。例えば、転居先が、子どもの通う小学校学区内になると、接近禁止を含む保護命令の発令を地方裁判所から受けることができないけれども、管轄警察署に電話番号が登録されているので、なにかあった場合、通報によって駆けつけてくれることになっている、そして、児童相談所も通報によって“行政介入してもらえる”ことになっていることを伝えます。そのうえで、「転居後、夫が迎えにきても、(子どもが夫を見つけ、「パパがきた」「パパだ」と接触をはかる可能性もありますが)“決して引き渡さない”ようにお願いしたい」と伝えます。万一、夫が子どもを迎えにきて、強引に接触をしたり、徘徊したりしている姿を見つけたら、直ぐに連絡をして欲しいこと、そして、躊躇せずに警察に通報して欲しいことも伝えます。子どもは、夫から威嚇され、「こっちにこい。いうことをきかないとどうなるかわかってるのか!」とドスのきいた声で怒鳴られると、身が竦んで動けなくなったり、父親のもとに歩み寄ったりする怖れがあり、そのときには、「大丈夫だよ。先生がお父さんと話をするから」と声をかけて、児童相談所に連絡し、保護して欲しいことを伝えます。また、夫が子を連れて行こうと強行にでるようなら、躊躇することなく警察に通報して欲しいこと、決して子どもの父親だから穏便にすまそうとの判断はしないで欲しいことも必ず伝えます。加えて、夫から訪問や電話等による“転居先の照会”があった場合においても、決して伝えないように教職員に周知徹底して欲しいことを伝えます。子どもの下校時に待ち伏せし、あとをつけ、いずれ転居先が知れるかも知れませんが、調停離婚に向けて依頼する弁護士から「代理人になったこと、そして、今後の話し合いは直接しないで、弁護士を通じて欲しい旨の通達ができるまで、できれば転居先が知れないで通したいと思っていることを伝えておきます。


(9) 弁護士への依頼(委任契約)について
 事例31(Ⅰ-3.DVは、夫婦の関係、親子の関係になにをもたらすか)のケースのように、依頼した弁護士に遠慮したり、自身におきていたことを正しく理解することができていないために、なにを、どのように伝えたらいいのかわからずポイントがズレてしまったり、結果として、意思疎通に齟齬が生じ、調停が不調になり、提訴する(裁判をおこす)ときに弁護士を変更しなければならなくなったのは、依頼した弁護士が所属する弁護士事務所のDVそのものに対する認識が違い、DV被害者の心理状態や考え方の癖に対する無知が原因でした。弁護士選びは、DVそのものに対する理解度、DV被害者の心理状態や考え方の癖に対する理解度だけでなく、経歴などからどのような立ち位置(価値観)で、どのようなものの考え方をする人なのかを知ること、そして、相性はどうかを見極めなければならないなど大変な労力を要するものです。とはいっても、常に配偶者の顔色を伺い、意に反しないようにオドオドして生活を成り立たせてきた被害者にとって、弁護士を見極めるプロセスは酷です。
 とはいっても、配偶者がDVを認めず、離婚に応じようとしなかったり、親権や監護権をわたさないといいはったりする可能性の高く、しかも、こんなことを主張したら怒らせてしまうと“これまで”の関係性を持ち込んでしまい、いいたいことを口にすることを躊躇してしまう状況に陥ってしまいやすいDV離婚事件では、弁護士が果たす役割は大きいことになります。そして、弁護士の腕次第で、結果は大きく左右されます。
 DV被害者が「弁護士を誰に頼むか」という問題、つまり、この弁護士に頼んで大丈夫だろうかを見極めるポイントは、弁護士が、a)DV離婚事件をどのように捉えているか、b)子どもがいるときには、「面前DV」をどのように捉えているかを話してもらうことです。「私は、~と思っています。」、「私は、~したいと考えています。」と自分の考えを述べて、弁護士の回答を待つのではなく、懸案事項や疑問点について、どう考えるのか、どう判断するのかを確認するために、「~ますが、どう思われますか?」となげかけて、弁護士に聞きたいことを回答させることです。もし、a)b)をなげかけで大丈夫かな?と疑問を感じたり、不安に思ったりしたとき、そのまま依頼してしまうと、そのときに感じた疑問や不安は現実となります。したがって、「この人なら任せられる」との思うことができる弁護士と出会うまで、何人かの弁護士と直接会って、話をすることです。

(「弁護士費用がない」といって諦めず、法的扶助を利用する)
 「弁護士を知らない」、「裁判費用がない」などといった理由で、弁護士の援助を受けられない方のために、「法律扶助」という制度があります。法律扶助とは、裁判費用などを立て替え、弁護士を紹介する制度で、財団法人法律扶助協会(現在は、日本司法支援センター「法テラス」)が窓口となっています。
 法律扶助を受けるには 次の2つ条件をともに満たすことが必要です。
a)資力基準..自分で費用を負担するだけの資力がないこと。
 扶助申込者、および配偶者の手取り月収額(賞与も含む)が次の金額以下であることを目安にしています。なお、申込者と同居し、生計に貢献している家族の月収は、その貢献額の範囲で申込者に収入があるものとして加算されます。
 ・単身者  182,000円以下
 ・2人家族 251,000円以下
 ・3人家族 272,000円以下
 ・4人家族 299,000円以下
 以下、家族1名が増える毎の30,000円を加算します(平成9年4月1日現在の基準)。
 申込者、または、配偶者が家賃・住宅ローンを負担しているとき、その負担額を上記の基準額に加算することができますが、原則として次の額が限度となります。
 ・単身者  41,000円まで
 ・2人家族 53,000円まで
 ・3人家族 66,000円まで
 ・4人家族 71,000円まで
 なお、医療費、教育費などやむを得ない出費があって、生計が困難であると認められるときは、上記による基準額を超えても扶助を受けられる場合があります。
b)事件の内容、勝訴の見込みがあること
 訴訟のほか、和解、調停、示談交渉など、弁護士が援助することによって紛争解決の見込みがあるものを含みます(訴訟などをおこそうとする当事者に限らず、その相手方にされた当事者も法律扶助が受けられます)。
 「法テラス」の各支部の窓口に備えつけてある「法律扶助申込書」に必要事項を記入し、ア)住民票、イ)資力を証明する資料(所得証明書、給与明細書など)を添えて申し込みます。法律扶助の申し込みがあると、法律扶助審査会で上記a)b)の両基準を満たしているかどうか審査し、基準を満たしていれば扶助決定をします。扶助決定があると、弁護士のもとで訴訟などの手続を進めることになります。
 法律扶助で立替えがなされるのは、次の費用です。
・訴訟費用*
* 法的扶助が決定された事件については、訴訟救助(裁判所が原告などからの申立てにより、訴訟費用を免除する)が受けられることがあります。
・弁護士着手金
・弁護士報酬金(報酬金は事件終結後に立替え)
・その他(保全処分の保証金、鑑定費用など)
 立替え費用は、扶助決定の翌月から毎月割賦償還することになります。特別に困難な事情があるときは、償還を猶予し、あるいは免除する制度もあります。


(10) 内容証明郵便
 内容証明郵便とは、どのような内容の手紙を誰が、いつ相手にだしたかということを郵便局で証明してくれるものです。
 離婚問題での内容証明郵便の使われ方は、例えば、配偶者の不倫に対する慰謝料として、不倫の相手に対し、「200万円支払え」と主張するときには、ことばで直接伝えてもよいし、普通郵便で手紙を送るだけでも構わないことわけです。しかし、一般的には内容証明郵便を使って請求がされています。なぜなら、文書の末尾に、郵便局長が内容証明郵便として差しだされたことを証明するという記載と押印のある“公文書”であり、配達証明をつけると、「到着したこと」を証明することができるからです。つまり、あとで、「いった。いわない」という争いや「書類・手紙を受けとっている、いない」という争いを防止できます。一方で、内容証明郵便は、「遅滞している金銭を○○までに支払え。その期日が経過しても支払いのない場合は、法的手段を講じます」と、相手(元夫や夫の愛人)に宣戦布告をすることになります。例えば、滞納金を支払う準備をしているときに、「滞納金を支払え」、「支払いなき場合は、法的手段をとる」などと記載された内容証明郵便が届くと、支払いの意思を持っていた相手が、気分を害して、「じゃあ、法的手段をとれ!」と反発され、債権の回収をこじらせてしまう可能性があります。
 したがって、内容証明郵便は両刃の剣であることから、利用するタイミングを間違えないことが重要です。

<夫の浮気相手に対する内容証明の例>
請求書
 あなたは、私の夫Tと、昨年七月より、たびたび密会を繰り返し、不倫の関係を続けております。そのため、私とTとの円満な夫婦関係の維持が困難となり、離婚の話し合いに至ることとなりました。また、私はあなたと夫との不倫の事実を知り、心労のため診療内科に通院せざるを得なくなりました。
 よって、あなたからの不貞行為により精神的苦痛を受けたことに関して、慰謝料100万円を請求いたします。
 もし、上記請求に応じていただけない場合には、訴訟その他の法的手段を取る所存でございますので、念のため申し添えます。
平成○年○月○日
東京都・・区・・○丁目○番○号
              T H子 印
東京都・・区・・×丁目×番×号
   K Y子 様

<内容証明郵便の書き方>
 内容証明郵便には、いくつかの決まりがあります。普通の手紙のように好き勝手に慰謝料請求等を書いたのでは内容証明として認められません。また、海外へ慰謝料請求にもとづく内容証明郵便を発送することはできません。
 内容証明郵便に関する一定の決まりは、以下のとおりです。
①同文の手紙を3通作成する
 1通は相手方、1通は差出人、1通は郵便局が保管します。一通をWord文書で作成してコピーすれば簡単です。
②縦書きの場合、1行20字以内、1枚26行以内で書く
③横書きの場合、1行20字以内、1枚26行以内で書く
④句読点やカッコは一字として計算される
⑤封筒の宛名は、本文に書いたものとまったく同じく書く
 封筒の封はせずに、本文の3枚と封筒を郵便局の窓口に提出して点検を受けます。
⑥内容証明の枚数が数枚になるときには、1枚目、2枚目、3枚目の間に契印を押す
 時候のあいさつ文は省略し、「通知書」「通告書」「催告書」「損害賠償請求書」などのタイトルを使用し、「私はあなたに…」と書きはじめるのが一般的です。


2016.3/5 ブログ再編成(第3次改訂)に伴い、主記事として掲載



もくじ   3kaku_s_L.png   [Ⅲ-7]Ⅳ.「婚姻破綻の原因はDVにある」ときの離婚
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~ Comment ~

れもんさんへ。「警察の対応は 

芳しいものではなかった」と思います。「心療内科に6年通い」「電話で話すだけで具合が悪くなり、動けなくなり寝込む」「他の方の事例を読んでいると、心が痛くなり、しっかり読むことができない」というあなたの状態から、「1ヶ月前に暴力を受け、警察を呼んだ」とありますが、身体的暴力だけでなく、少なくとも酷いことばの暴力(否定する、非難・批判する、侮蔑する、卑下する)が慢性的に行われていたのではないかと推察します。
 ただし、あなたが夫から「なにをされてきたのか」「どういう状況におかれてきたのか」を正しく理解することは、あまりにもつらく、できていないのかも知れません。その結果、多くのDV被害者の方がそうであるように、第三者に正しく状況を伝えられていないのかも知れません(できていないことを批判しているのではありませんが、気分を害されてしまったら申し訳ありません)。
 どうしても共感し、苦しくなってしまいやすい「他の方の事例を読めない」ということですから、まず、「支配のための暴力・DVを婚姻の破綻の原因とする場合の離婚にむけてどう臨むのか」といった視点でまとめている幾つかの記事で知識の習得にあたってみたらいいと思います。
 「耐えがたいつらいできごとなんか思いだしたくない!」という思いは十分に察することができます。ただやはり、暴力で傷ついた心の回復ということを考えると、暴力に支配された“かかわりを断ち切るタイミング”で「なにをされてきたのか」「どういう状況におかれてきたのか」という事実を正しく認識する(繰り返し、ことばにして吐きだす)ことが必要だと思います。「ことばにして吐きだす」ことで直ぐに楽になるものではなく、支配のための暴力・DVを受けてきた年月に比例し、つらい思い、苦しい思い、そして、体の反応も強くでてしまったりします。「だから、そんな思いをしたくない!」と思われる被害者の方も少なくはないと思います。しかし、10年後、15年後の“これから”の人生を考えると、支配のための暴力・DVで傷ついた心のケアに取り組んでいただきたいというのが、切なる思いです。
 そして、「送りつけられてきた離婚届」にどう対応するかについても、支配のための暴力・DVのある夫婦生活を続けるためにいつの間にか身につけてしまった「夫にとって都合のいい考え方を選択してしまう習慣(考え方の癖)」、つまり、「なにをいっても変わらない」「もう、なにもしたくない(考えたくない)」といった思いを、いま、このときの判断に持ち込んでしまうことは避けられた方がいいと思います。あなたとお子さんの“これから”の人生に向けて、あとで後悔をしないように、できるだけ(考えられるだけ)のことをしたうえで決断を下すようにしていただきたいと思います。
 “これから”人生をどう生きるかという意味で、「きちんと別れる」、「一切のかかわりを断ち切る」といったひとつひとつのプロセスは、あなたとお子さんにとって、心の中に「残り火を燻り続けない」ためにもとても大切だと思います。
ps. 公開の場となってしまうコメントでの返信には、踏み込んだことをお訊きすることもできませんので、やはり無理があります。できれば、フリーメールアドレスを取得いただくなどしていただき、メールでお送りいただけると助かります。
DV被害支援室poco a poco 庄司薫
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