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[Ⅵ-A] 臨床現場からのレポート(1) DV・児童虐待。暴力と精神疾患

被虐待体験を有する児童及び青年の精神医学的症状-長期反復的トラウマへの暴露の影響を中心に 肥田明日香(筑波大学人間総合科学研究科) 

 
 <読売新聞>施設児童らへ虐待59件、「養護」職員が最多 <時事通信>中学でも女子扱い=性同一性障害の小6男子=地元教委に対策チーム・兵庫
平成17年3月25日

博士論文の内容の要旨
<目的>
 虐待を受けた児童は不安,抑うつ,怒り,PTSD,解離など情動や刺激への反応に関連するとされる様々な精神症状を示すことが知られている。近年,より長期的な影響として将来の人格形成や価値観,道徳観などに関わる精神発達的側面への影響があることも危惧されている。他方,トラウマ研究の分野では,虐待をはじめとする長期反復的トラウマに特徴的とされる精神症状や人格的側面の異常を包括的に捉える疾患概念として「他に特定されない極度のストレス障害」(Disorders of Extreme Stress Not Otherwise Specified;DESNOS)が提唱された。現在までのところDESNOS の症状は過去に被虐待体験を持つ成人を対象に確認されているが,成人期に達する以前にすでに同様の症状が現れていることが考えられる。そこで本研究では,DESNOS 概念に注目することにより,被虐待体験を有する児童の精神症状を評価することを第一の目的とした。それとともに,日本においてまだ確立していない被虐待児童の精神症状の評価方法を検討することを第二の目的とした。すなわち,独自に試作した児童用のDESNOS 面接法に加えて,児童のトラウマ症状の評価法として信頼される「子どものトラウマ症状チェックリスト」(Trauma Symptom Checklist forChildren;TSCC)などいくつかの質問紙を併用し,被虐待児童の精神症状を捉えるうえでの面接法と質問紙法それぞれの利便性について検討した。
<対象と方法>
 児童福祉施設入所中の児童(児童自立支援施設23 名,児童養護施設33 名)と一般学校児童(9 歳以上の小学校児童66 名と高校児童145 名)の計267 名を対象とした。①児童福祉施設入所児童に対し,筑波大式DESNOS 半構造化面接を施行した。DESNOS 症状クラスターに含まれる症状,およびDESNOS 人格クラスターに含まれる人格的側面の異常について調べ,それらと虐待体験の関連を調べた。②児童福祉施設入所児童及び一般小学校,高校児童に対し,TSCC と身体化症状尺度,ミロン境界性スケールを用いて,「不安,抑うつ,怒り」の症状,外傷後ストレス症状,解離傾向,身体化症状,境界性人格傾向を評価し,虐待体験との関連を調べた。③「 感情に関する症状」「解離傾向」「身体化症状」「人格的側面の異常」については面接法と質問紙法の2 つの評価法を用いて評価した。この2 つの評価法で得られた得点の相関関係を調べた。
<結果>
 ①症状クラスターとして「感情覚醒の調節」と「注意や意識(解離傾向)」,および人格クラスターとして「自己認識」「加害者への認識」「他者との関係性」「意味体系」が虐待体験と関連した。②小学校,高校ではTSCC の不安,抑うつ,怒り,外傷後ストレス,解離の尺度の得点が虐待体験と有意,あるいは有意傾向を示した。児童養護施設ではTSCC の解離尺度の下位尺度である顕在性解離尺度が虐待体験と有意に関連し,児童自立支援施設ではTSCC の抑うつ,怒り,外傷後ストレス,解離尺度の下位尺度である顕在性解離尺度,および,ミロン境界性スケール得点で虐待との有意な関連を認めた。③面接法,質問紙法の2 つの評価法で調べた症状のうち,身体化症状や解離傾向は面接法と質問紙法で有意かつ強い相関を示した。感情に関する症状のうち,「怒り」は「不安」「抑うつ」より相関が弱かった。人格的側面の異常については,面接法の「自己認識」「意味体系」の得点と質問紙のミロン境界性スケール得点との有意な相関が認められたが,面接法の「他者との関係」「加害者への認識」の得点とミロン境界性スケール得点には有意な相関が認められなかった。
<考察>
 ①②の結果から,感情覚醒の調節の症状,注意や意識の症状(解離傾向)に加え,対人関係,自己認知,意味体系に関する障害や境界性人格傾向が虐待体験と関連を持つことが示された。先行研究には過去に虐待体験をもつ成人を対象として,人格障害と被虐待体験の関連を示したものが多いが,本研究は人格の形成期にある児童においても類似の傾向を見いだした点で意義がある。近年,欧米においては被虐待児童の長期的影響に関する縦断的調査が試みられ,児童期に被虐待体験を有する人では成人早期に人格障害が有意に多く認められるとする報告がある。本研究は児童の横断的調査という制約を持つが,虐待体験が境界性人格成立の一因となる可能性を示唆するものである。被虐待児童に対して自己認知や対人機能の問題について早期から治療的介入を行うことがその後の人格障害への進展を減じ得る可能性を示すものとして臨床的意義を有している。
 ③の結果から,怒りや他者との関係性が問題となるトラウマ症状では,質問紙法と面接法の結果が不一致をきたしやすいことが示唆された。この原因として,(1)歪んだ認知の結果として現れる行動パターンは児童自身には内省し難く,否定されやすいこと,(2)怒りなどの他責的感情は児童自身に受け入れがたく,過小評価されやすいこと,(3)被虐待児童は自身に関わる出来事についての感情を否認する傾向があること,が考えられる。従って,被虐待児童の症状評価において生じやすい偏りを最小限にするためにはいくつかの評価法を組み合わせる必要があるであろう。より確実で詳細な検討をおこなう方法としては包括的な構造化面接あるいは半構造化面接が有用と考えられる。すなわち,面接者が解釈,明確化,リフレクションなどの技術を用いることでより整合性の高い回答が得られることが期待され,また面接時に活動性の低下や感情的無関心あるいは歪んだ対人パターン,行動パターンなど被虐待児童には自覚されにくい症状の臨床評価を同時に行うことができる。一方,面接法の弱点として,児童がトラウマに関連する体験を言語化することに抵抗感を感じること,面接者との対話という場面から心理的影響を受けやすいこと,分析のさいに面接者の主観が入りやすいこと,があげられる。これらの難点は自記式質問紙を併用することである程度補正し得ると考えられる。



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