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[Ⅶ-20]<ことば>プレス。道徳・教養、思考。心の肥やしを「知識のひきだし」に

<ハフポスト日本版>「女なんかに負けるな」と怒声も。スポーツ指導者が、ジュニア世代に植え付ける女性蔑視や偏見

 
 <沖縄タイムス>社説[運動部主将自殺]とても指導とは呼べぬ 02/21のツイートまとめ
2/22(月) 9:53配信

女性蔑視発言で東京五輪・パラリンピック組織委員会会長を辞任した森喜朗氏(83)について、再発防止などを求めるオンライン署名を行った有志は2月16日、集めた15万筆超を提出した。(取材・文:島沢優子 / 編集・浜田理央)

それとともに、森氏の発言への認識や組織の透明化などについての考えを聞く公開質問状と、再発防止策の提案書を手渡した。
東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会に署名を提出するみたらし加奈さん、鶴田七瀬さん、櫻井彩乃さん、能條桃子さん。
提案書には再発防止策の具体例として「関係者に対する教育や研修の実施」が盛り込まれ、ジェンダーやセクシュアリティー、宗教や国籍など一人一人の違いを学ぶワークショップなどの実施を働きかけている。
組織委員会はぜひ実行に移してほしいと思うが、大人が自分の中に沁みついた差別意識を取り除くのは容易ではない。そういったものは本来、小さいころから施されるのが理想であり、スポーツこそ正しく取り扱えば人権教育に役立つコンテンツのはずだ。
ところが、ジュニアスポーツの指導現場の中には、そんな理想とは程遠い例もある。

「女なんかに負けるな」ベンチから怒声
首都圏で少年サッカーのコーチをしている40代の男性は以前、県大会のある一戦でこんな場面に遭遇した。
「片方のチームのサイドバックが、対面の選手を何度もドリブルで抜きまくっていました。へえ、上手だなあと思ってみていたら女の子。彼女のアタックが効果的に働き、チームは優勢でした。ただ、そういうことは珍しくありません。男子のチームに女子が所属するのは小学生カテゴリーでは少なくないし、技術で優れた女子選手はいっぱいいいます。ところが……」
ベンチから、怒鳴り声が響き渡った。
「女なんかに負けるな!」
声の主は劣勢に立たされていたチームのコーチだった。女子選手に抜かされていた対面の男子選手に対し、顔を真っ赤にして叫でいた。
「そんな女なんかに負けるな、と。完全に見下した言い方でした。それこそ、女性蔑視です」
そう振り返る男性は、その場で大会本部にこのことを報告に行った。問題の試合は偶然にも大会本部席の前のコートで行われていたため、本部役員も「あってはいけないこだ」と同意し、男性は県の技術部会へ報告書を提出した。
問題になったこのコーチ、実はそれ以前にも差別発言を繰り返していた。日本以外の国にもルーツを持つ子どもに対して、差別表現を使って呼んでいた。
「その際も注意を受けている。今回も四種(小学生)の委員会から厳重注意をしたそうですが、なかなか自分では矯正できません。そして、こういうことがあるたびに子どもが傷つくわけです。森さんの発言が問題視されたことで、差別は絶対ダメなんだという意識が広がればいいのですが」と男性は言う。

ジュニアスポーツ界のジェンダーバイアス
都内で女子サッカーチームの指導をしていた50代の男性会社員は、地区大会を突破して都大会に進んだ際の話をしてくれた。
「数年前の話ですが、都大会に進めなかった男子たちが、都大会を前にした女子の自主練習を妨害したことがありました。最初はふざけてコートに入ってくる、みたいなものでしたが、だんだんエスカレートして男女でけんかになってしまった」
女子選手たちが抗議すると、男子はこう言った。
「女子が都大会に出るのなんて大したことじゃない。もともとチーム数が少ないんだから」
どうやら、男子チームのコーチたちがしゃべっていたことを、そのまま女子に伝えていたようだ。
例えば、日本サッカー協会のホームページによると2019年度の協会登録選手数は、全体で87万8072人。女子は2万8598人で、小中学生やシニアなど男子チームに所属する選手は若干名存在するものの、全体の4%強とみられる。
「大したことじゃない」「チーム数が少ないんだから」は子どもの言葉ではあるが、元をたどれば大人の口から出たもの。ジュニアスポーツの現場にもジェンダーバイアスは存在するのだ。本来なら、人数が多かろうが少なかろうが、サッカーを頑張る仲間はリスペクトすべきだと教えるのが大人の役割だろう。

日本の女性スポーツの活躍
一方で、都内の大学でバスケットボールの女子チームを指導する女性は「女子の選手は、自分たちが差別を受けているとはあまり思っていないでしょう」と話す。
日本バスケットボール協会がホームページで公開している登録選手数は、男子が34万4337人、女子は25万3038人とサッカーほどの男女の開きはない。
そのうえ、バスケットは男女がある程度足並みをそろえるかたちで普及してきた歴史がある。女子はリオ五輪でベスト8。東京五輪で45年ぶりに出場する男子に比べると、近年の国際舞台での成績は上だ。
これはバレーボールも同様だろう。ロンドン五輪で銅メダル、リオは5位と、こちらもアジアの壁に阻まれている男子に水をあけている。そして、女子サッカーはすでにW杯女王に一度就いている。オリンピック競技においては、金メダルだけみると2004年アテネ大会で初めて男女の獲得数が逆転。リオまでの4大会連続で男子より女子のほうが多い。
つまり、日本の女子スポーツは全般的に成績も伸びている。

伸び悩む女性指導者の数
その一方で、伸び悩んでいるのが女性指導者の数だ。
日本スポーツ振興センターの調べによると、オリンピックにおける日本代表選手団の監督・コーチ全体に女性が占める割合は12年ロンドン大会12%、14年ソチ大会15%。直近の2016年リオデジャネイロ大会でさえ16%に留まる。
また、サッカーで日本の最高位となるS級コーチ資格の取得者に占める女性は、2020年8月時点で8人と全体のわずか1.6%に過ぎない。アーティスティックスイミングなど女子特有の種目を除くと、女性コーチはまだまだ少ない。
この状況を変えようと、日本サッカー協会(JFA)は2020年、女性指導者を対象とした「Associate-Pro(A-pro)ライセンス養成講習会」を開設した。女性の競技人口増加と次世代のリーダー育成の推進を図るとともに、今年9月開幕の女子プロリーグ「WEリーグ」の進化につなげるためだ。
これと同様に、日本バスケットボール協会も昨年、「女性コーチカンファレンス2020」を初めて開催した。これらいくつかの競技団体では、女性コーチが少ない現状を打破しようとする姿勢がうかがえる。
このようにして女性の指導者の数を増やせば、ひいてはスポーツ庁が掲げる「女性理事の割合を40%以上」という目標に近づくことになる。なぜならば、各競技団体の運営や決定にかかわる男性理事たちには、指導経験者が非常に多い。
アスリートの育成、強化にかかわったうえで協会連盟のトップに駆け上がる。
女性指導者の育成は、スポーツ界の外からの人材登用と並行して、決定ポジションである理事に女性を増やす手段といえる。
そんなキャリア設計を描いてもらうには、サッカーにしろ、バスケットボールにしろ、女性アスリートの収入が保証される環境整備が大きな課題だろう。

海外で広がる男女同一賃金
この部分では海外で近年、サッカーが大きな変化を見せた。2019年に豪州サッカー協会が男子代表と女子代表の受け取る報酬を同一にすることを発表。2020年9月には、イングランドサッカー協会が代表戦における出場給をその年の1月分から男子選手と女子選手に同一額を支払っていることを明かした。
これに呼応するように、ノルウェー、ニュージーランド、ブラジルが代表戦の出場給の同一化を決めている。
スウェーデンでは、男子代表チームは期限付きとはいえ、男女平等賃金を要求している女子代表チームを支援するため無償でプレーすることを表明している。
オーストラリアで男女平等報酬を勝ち取ることに尽力した同国の元女子代表ケイト・ギルさんは2月11日、一般社団法人ユニサカ主催オンライン勉強会「スポーツ界における男女平等」に登壇した際「日本の問題はよく理解している。スポーツから社会のジェンダーバイアスを解消してほしい」とエールを送った。
以前男子の元スター選手が、サッカーの男女では観客数が大きく異なることを挙げ「男子と同じだけ人気なら(同等賃金が)得られるだろうがそうじゃないだろう」と同一賃金に反対したことに対し、ギルさんは「何も見えていないようなので眼鏡を変えたほうがいい」とバッサリ。
「男子のスポーツは先に普及してきた。スポーツが偏ったものにならず、多様性を加えるためにも、女子の普及をともに実現していく必要性を考えるべきだ」と、賃金の同一化が広がることに期待を込めた。
スポーツから社会のジェンダーバイアスの解消を。ギルさんの言葉をかみしめたい。
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