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[Ⅶ-11]<家族問題。親殺傷・ひきこもり。性同一性障害>新聞事件簿。どう向合う

<毎日新聞>境界を生きる:子どもの性同一性障害/2 性別変更、戸惑う学校

 
 <毎日新聞>性同一性障害:川崎市が相談窓口 治療方法など電話で <毎日新聞>境界を生きる:子どもの性同一性障害/1(その2止) 悩む現場の専門医
 ◇国通知、具体策なく/「拒否」「支援」対応ばらばら
 1時間目の授業はもう始まっている。静まり返った校内に入り、他の生徒が誰もいない別室で席に着く。下校は午後の授業中。教師に付き添われ、人目につかぬよう通用門から出る。

 「まるで悪いことをしているような毎日でした。差別の心をなくす教育をすべき学校が、臭いものにふたをするようでいいのでしょうか」。兵庫県の公立中学校をこの春卒業した千春さん(15)=仮名=の母親(52)は今も学校の対応に怒りを禁じ得ない。

 千春さんは幼いころから女の子っぽい男の子で、小学校では同級生にからかわれた。中学に入学して5日目、隣の小学校を卒業した男子に「オカマのくせに偉そうにするな」とからまれた。「陰で言いふらされているんだ」。次の日から学校に行けなくなった。

 2年生の秋、性同一性障害(GID)の専門病院を受診し、カウンセリングを受けるようになった。翌春、母親は不登校生が通う校外の適応指導教室に女子生徒として通わせたいと申し出たが、学校側は「前例がない」と取り合わず、ようやく認められたのが人目を避けた別室登校だった。

 千春さんは言う。「私の記憶から中学の3年間を消したい。同級生たちの記憶からも私を消したい」。4月からは定時制高校に化粧をして通っている。GIDと診断されたことは誰にも打ち明けていない。同級生に「声が低いね」と言われることもあるが、平静を装うようにしている。

 「また差別されるのが怖いのでは」。母親は不安でならない。

     *

 埼玉県の公立小がGIDと診断された児童の訴えで学校生活上の性別変更を認めたことを受け、文部科学省は4月、都道府県教委などに通知を出した。性別への悩みを訴える子どもについて、学校側に「個別の事案に応じたきめ細やかな対応」を求めた。

 だが教委には「具体的にどうすればいいのか」との戸惑いも広がる。GIDの児童・生徒が安心して登校できるかどうかは、どの学校に在籍するかで左右される。そんな現実は通知一つでは変わりそうにない。

 一方で、対応には慎重さが必要との声もある。京都府立高教諭で当事者でもある土肥いつきさん(48)は「社会に出れば学校以上に厳しい現実がある。生徒が生きる力をつけるため、学校はいい意味での壁になるべきだ」と話す。生徒の希望を頭から拒むのでも、すべてあっさり受け入れるのでもなく、何度も話し合い折り合いをつけていくことが重要なのだという。

     *

 神奈川県に住む望さん(15)=仮名=は公立中2年の秋からGIDの専門クリニックに通い始めた。母親(49)は担任や養護教諭に「診断書が出たら男子生徒として通わせたい」と伝えた。

 養護教諭には以前から「もしかしたら」との思いがあった。他の女子生徒が制服のスカートを短くする中で、望さんは長くして足を隠し、自分を「オレ」と呼んでいた。母親からも「セーラー服を嫌がる」「ブラジャーを着けてと言っても聞かない」などの相談を受けていた。学校も休みがちだった。

 とはいえ学校には前例がない。校長や担任教諭はインターネットなどでGIDについて調べた。養護教諭は当事者の手記を何冊も読み、スクールカウンセラーに知識を求めた。制服やトイレ、更衣室を替えるべきか。授業や学校行事ではどう対応すべきか。話し合いを重ねる中、校長が言った。「男子の制服に替えて、何か困るかい? 生徒にとって最善の援助をしよう」

 診断書が出る見通しとなった12月下旬、望さんと母親、校長、担任教諭らが校長室で顔をそろえた。校長は「ひぼう中傷されるかもしれない」と念を押したが、母子の思いは揺らがない。

 職員会議では「思春期には自分の性を否定することがある。それとは違うのか」との疑問や抵抗感を示す教諭もいた。養護教諭は資料を配り、理解を求めた。

 冬休みが終わった初日、教諭らは生徒たちに望さんのことを説明した。校長は「地域の理解も必要」と、PTA役員や学区内の小学校に事実を伝えた。望さんは体育祭では他の男子と体が触れあう競技に参加しなかったが、合唱コンクールは男子のパートに。修学旅行中は寝る時だけ別室を使った。友達は養護教諭に「やっとあいつらしくなった」と笑った。

 やがて高校受験を迎え、校長は望さんの志望校に事情を伝えた。入学が決まった高校の教諭は中学を訪れ、どんな対応が必要かを引き継いだ。「楽しかった」。望さんは養護教諭にそう言って、卒業した。

 「僕は男ですが、性同一性障害で、体は女です」。高校に入って2日目。望さんはクラスの自己紹介で堂々と語った。真新しいブレザーとズボンで毎日元気に学校へ向かう。

 卒業した中学にはこの春、男子も女子も使えるトイレが新設された。【五味香織、丹野恒一】=つづく

 ◇希望の制服「OK」…中高教諭の3割
 GIDの子どもにとって、心の性別に合わせた制服で通学できるかどうかは極めて重要だ。岡山大が08~09年、県内の人権担当教諭508人に「希望する性の服装での登校を認めていいと思うか」と尋ねたところ、「構わない」と答えたのは小学校で5割弱。中学、高校は各3割にとどまった。中塚幹也・同大大学院教授は「当事者の立場に立つべき人権担当者がこれでは、現状は予想以上に厳しい」と、教職員への啓発の必要性を訴える。




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