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[Ⅶ-11]<家族問題。親殺傷・ひきこもり。性同一性障害>新聞事件簿。どう向合う

<毎日新聞>境界を生きる:続・性分化疾患/4 職場の無理解「心壊れそう」

 
 <毎日新聞>境界を生きる:続・性分化疾患/5止 「独りじゃないよ」呼び掛け <毎日新聞>境界を生きる:続・性分化疾患/3 成人後、女性化「パパは女?」
 ◇治療認められず退社/環境改善へ続く闘い
 出勤前、鏡の前でネクタイを締める。映っているのは自分であって、自分でない。思わず目を背ける。

 東京都に住むフリーターの圭さん(31)=仮名=はIT系専門学校で学んだ知識を生かし、8年前に都内のコンピューター会社に就職した。男性サラリーマンとして日々を送るうちに「本当の自分に近づきたい」との思いを抑えきれなくなり、入社3年目ごろから女性ホルモン剤を個人輸入して服用するようになった。

 振り返れば「なぜ女でないのか」との疑問は小学校のころから続いていた。体の成長とともに男女両方の特徴が表れ、同級生からひどい言葉のいじめを受けた。以来、人とあまり話さず、集団の中ではなるべく目立たぬようにしてきた。

 そんな気持ちを理解してくれる友人ができ、勧められたメンタルクリニックを受診すると、染色体検査で典型的な男性ではないことが分かった。「やはり完全な男ではなかったんだ」と安堵(あんど)し、医師に女性として生きたいと伝えた。

 9カ月後、病院での女性ホルモン補充治療が始まった。主治医からは「戸籍も変えるなら、女性としての生活実績を積まなければならない」と言われた。しかし職場では男性のまま。治療により「体の中を流れるものが男から女に変わった感覚」が生まれ、現実とのはざまで自分が壊れそうだった。苦しみが少しでも和らげばと、髪を肩まで伸ばした。

 ある日、本社の人事担当者から呼び出され「短髪にして膨らんだ胸もつぶさないと、仕事は与えられない」と注意を受けた。圭さんは診断名も治療内容もすべて明かし、ありのままの自分で働き続けたいと理解を求めた。会社の上層部で対応が協議され、数日後に告げられた結論は「女性の姿で働くことは、戸籍が女性になった時点で認める。それまでは一切、女性的なそぶりを見せず、常識ある一般的な男性でいること」というものだった。

 会社の方針に従えば主治医が求める「女性としての生活実績」は積めない。戸籍変更への道が断たれると、職場にはいられなくなる。相矛盾する要求に答えが見つからない。「辞めろと言っているのと同じじゃないか。我慢して男として働くしかないのか……」。眠れぬ夜を重ねたすえ、自主退職を申し出た。

 それから2年半。「もう一度定職に就きたい。でも、自分のような人間を認めてくれる会社があるとは思えない」。求職活動への一歩が踏み出せずにいる。

   *

 職場の廊下で、女性職員たちが自分のほうを見てうわさ話をしている。「あれが例の人でしょ?」。公務員として働く東京都の純さん(27)=仮名=は、そんな場面に出くわすたびに、いたたまれなくなる。

 純さんは染色体異常による性分化疾患。子宮も卵巣もあるため女性として育てられたが、スカートは一度もはいたことがない。大学生のころ、メンタルクリニックで「心の性別は男性」と診断され、男性ホルモンの補充を続けている。戸籍はまだ変えておらず、仕事上は女性だ。

 疾患のことは研修中に上司に説明したが、支給された制服は女性用。トイレは「制服時は女性用を」と指示され、人のいない時を見計らって使う。それでも外見が男性っぽくなっているので、守衛に通報されることがある。男女別の独身寮はあきらめ、自費でマンションを借りている。

 今春、同じ職場に性同一性障害と診断された同僚が配属された。それまで純さんは資材室の隅で着替えていたが、連名で改善を要望した結果、カーテンが付けられた。

 「職場も社会も、理解するどころか知ってさえくれない。今はまだ、自分の力で生きやすい環境を獲得していくしかない」。悔しさをこらえながらの闘いが続く。【丹野恒一】=つづく




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