あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅵ-A] 臨床現場からのレポート(1) DV・児童虐待。暴力と精神疾患

DVと児童虐待-その予防と介入-

 
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信田さよ子(原宿カウンセリングセンター所長)
須藤八千代(愛知県立大学助教授)
村田 一昭(愛知県立大学講師)
景山ゆみ子(つながれっとNAGOYA相談担当主査)

【基調講演】 信田さよ子(原宿カウンセリングセンター所長)

私はもともと、アルコール依存症の家族に関わっていました。そこには暴力がありふれていました。子どもに対す
る暴力もあれば、夫から妻への暴力もあり、高齢の親に対する暴力もありました。
今ではバラバラに、児童虐待、DV、高齢者虐待と呼ばれていますが、当時はそうした名前はありませんでした。
これらの暴力は、家族の中の暴力という点では共通しており、私は区別して考えておりません。皆さんも、出来れば家族の中の暴力という統一的な視点を持って、児童虐待もDVも扱っていただきたいと考えております。
ところで、かつては家庭内暴力といえば、子どもから親への暴力を指していました。児童虐待やDVなどもたくさんあったにも関わらず、子どもから親への暴力だけが家庭内暴力と名づけられたのは、他の暴力は当たり前と考えられていたからです。夫が妻を殴るのは当たり前であり、虐待はしつけであったのです。
そうした中、90 年代に入って、まず児童虐待が名づけられ、次いでDVが名づけられ、急速に人権侵害の問題として共有化されるようになりました。
しかしながら、児童虐待防止の取り組みとDV被害者救済の取り組みは、別立てで進んできました。
私は、現実には同じ家族の中でDVと虐待は同時多発的に発生しており、バラバラに取り組むことの一番の被害者は、当事者である妻や子どもだと思います。ですから、何とか一緒に仲良く取り組むことが出来ないかという思いから「DVと虐待-家族の中の暴力に援助者が出来ること-」という本を書きました。
例えばこんなことがありました。
私の相談室に、親から虐待を受けて付き合っている男性とうまくいかないという相談に来ている女性がいました。その女性は、子どもがいることは話していましたが、子どもをネグレクトしている自覚はありませんから、児童虐待の話はその女性からは出てきていませんでした。
ところがある日、児童相談所から、こういう女性が来ていないかという問い合わせが有りました。その時、児童相談所から、子どもが虐待されているので、ネットワークを組んで救済したいので情報が欲しいとはっきり言われれば、情報を開示することに同意できましたが、ちょっと情報を知りたいだけと言われるので、プライバシー保護があるので教えることに同意できませんでした。
こうした様々な経験の中から、介入や連携をどう進めるかを考えてきましたが、私は次の点を強調したいと思います。
本当は、行政職員の方で、職務命令を超えて泥をかぶってでも家族に積極的に介入しようとする人が欲しいと思っています。かつては、そういう姿勢で取り組む人たちがいて、そういう人を支える職場がありました。しかし、最近は、そういう人が職場で孤立して、燃え尽きて鬱になるという現実が起きてきました。
ですから、私がまず期待したいこととしては、とにかく発見する目を持って頂きたいということです。発見する目とは、DVや虐待に対するしっかりした知識を持ち、そして、家族は暴力に満ちているかもしれないと疑ってかかることです。
発見できなければ介入も出来ません。発見することからすべては始まります。
次に、チームが組める知り合いを増やすことです。家族に介入する権限を持った専門職の人、ケースワーカーや保健師さんなどはキーパーソンになりうる人です。また、大学の先生や医師、弁護士の方なども重要です。そのような人たちとチームを組んで、時々勉強会や事例検討会などをして欲しいと思います。
虐待やDVは必ず被害者が孤立した中で起こります。その時、支援者までが孤立していては、介入は出来ません。そして、将来的には、DV加害者を教育できる援助者になることを射程に入れてほしいと思います。
まだまだ法整備は不備な面を持っていますが、現場の援助者の方々が、すべてを疑ってかかるという姿勢の中で家族の中の暴力を的確に発見し、多くの人がつながって家族の中の暴力に効果的に介入するという現実を積み重ねることが、法律を前向きに改正する力になるのだと思います。

【パネルディスカッション】
◆コーディネーター 須藤八千代(愛知県立大学助教授、元横浜市ケースワーカー)
◆パネリスト 信田さよ子(原宿カウンセリングセンター所長)
村田 一昭(愛知県立大学講師、元川崎中央児童相談所児童福祉司)
景山ゆみ子(つながれっとNAGOYA相談担当主査)
〔須藤〕 私もほぼ信田さんと同時代を現場で過ごし、クロスしてきているので、大変興味深く話を聞きました。私も長年現場でたくさんの家族を見てきましたが、この中に様々な苦しみ、悲しみ、悲劇があり、もちろん喜び、楽しみもありますが、まさに暴力の中に家族は包まれていることを実感してきました。DVや虐待と名づけられ、共有化できるようになってきたわけですが、一方で、家族の中で一体に起きていることが、別々に切り取られているという、いら立ちも感じております。
今日は、家族の中で一体のものとして起こっているDVと虐待にどう介入していくのかという点から、DVと虐待に関わってきたお二人の方に、まずお話いただきたいと思います。
〔村田〕 川崎市の児童相談所で13年間児童福祉司をしていました。その経験から、少しお話しさせて頂きます。
振り返ってみると、児童相談所が、DVと児童虐待という二つの問題、この事例に関わる場合、三つのパターンがあったように思います。
一つは、児童相談所がDVの発見者となる場合。つまり、虐待問題に関わる中でDVを発見する場合。この場合には、DVに関して児童相談所は十分関与してこれませんでしたし、せいぜい婦人相談所・婦人相談員に情報提供する程度で、一緒になってこの家族に関わろうとするスタンスは乏しかったように思います。
二つ目は、児童相談所から見て他機関、例えば福祉事務所や保健所等が児童虐待の発見者となる場合。つまり、DVの問題に関わることによって虐待の問題が見えてくる場合。この場合も、児童虐待に関しては児童相談所が関わり、DVについては他の機関が関わるという形で、全く横のつながりがなかったように思います。
三つ目は、DVに対する支援が手詰まりになって、せめて子どもだけでも保護してもらおうと持ち込まれる場合。
今でこそDVを目撃することも児童虐待であるとされていますが、当時はそういうとらえ方はされておらず、虐待
的環境にあることは十分理解できるが、子どもへの直接的被害がない以上、児童相談所もなかなか手が出せないといった感じでした。そのため、押し付けあいになる状況も多々ありました。その中で、何とか児童相談所が子どもを保護すると、他機関が手を引いてしまい、それ以降は児童相談所が孤軍奮闘し、家族との関わりは児童相談所のみとなり、結局被害者であった女性も夫と一緒になって子どもを返してという動きになることも少なくありませんでした。
こうした経験からすると、連携の中味を問う必要があると思います。つまり、これまでの連携は、つないでいく連携でした。ある部分までやったらこれ以上は次の機関というように、直線的につないでいく連携です。悪く言えば、丸投げしてしまう連携です。しかし、これからは、協働する、コラボレイトする連携が非常に大事になるのではないでしょうか。一つの事例に協働しながら関わり、つないでいく連携、単につなぐだけではなく、協働しながらつないでいく連携が求められているというのが、私の微々たる経験の中から感じたことです。
〔景山〕 つながれっとNAGOYA相談室を担当しています。こちらの相談室では、相談に来た方が自分自身の力を発見し、回復することに力を入れています。相談者の主体性を大切にしながら、どのような方向で問題を解決していきたいかという整理を手伝い、女性の持つ力の回復を支援していくのです。
まず、女性に焦点を当て、女性たちの持っている力を引き出していくことが、DVに対するサポートにとっても、DVの中にいる子ども達のサポートにとっても重要であると考えています。相談を始めて3年目に入りましたが、相談件数は伸びており、16 年度は総件数3,260 件、その内DVが935 件、約29%となっています。
〔須藤〕 ありがとうございました。
今までの連携は単なるたらい回しであり、そのように仕事が行われてきたのではないでしょうか。これからは、明確なシステムを作る必要があります。
一通り講師から話をしましたので、ここで、質問や意見を受けたいと思います。
薬物依存の会の方から、メンバーの中にあるDVの問題に関わった経験が話されました。
婦人相談員の方からは、泥をかぶることを望みたいという意見に深く共感したが、同時に、泥をかぶって済ませるだけでは疲れきってしまうので、明確なシステムにしていくことがこれからは求められるのではという意見が出されました。
民生委員の方からは、地域の話があまり出なかったが、ずっと地域にいると、当事者に関する情報が連続して入ってくるが、小学校は先生が変わり、児童相談所の担当者も変わり、その情報を伝えていく場がなくなってしまい、私の心の中だけに残るという無力感を感じることもあるという経験が出されました。子育て支援のNPOの方からは、児童虐待とDVがバラバラに進んできたという話があったが、ある都市が行った児童虐待防止ネットワークづくりの先進事例の講演会に参加したところ、メンバーに男女平等参画の関係者はいないのですかと質問したら、ウーマンリブの人たちを入れるわけにはいかないという偏見に満ちた発言があり驚いたという経験が出されました。
大学の精神科のカウンセラーの方は、被害者の立場に共感してしまうが、精神科医と対応に温度差があるとの発言がありました。
子育て支援の別のNPOの方は、障害を持つ子どもの療育の中で、虐待と思われるケースに関わることがあるが、お母さんが子育てに一所懸命なことも分かるので、どこまで親に確認し、接すればいいかという悩みが語られました。
民間シェルターからは、DV被害者と接していて、子どもに問題が出てきたとき、自分を責めがちであり、親と子を別々のスタッフが話を聴くようにしている。地域の関係機関を巻き込んだ取り組みを進めたいとの発言がありました。
<会場からの意見を踏まえた発言>
〔信田〕 暴力は家族全員がバラバラでそれぞれ担当者を持たなければ、家の人が家族の中で日常的に率直に感じていることを言えません。同時に、DVを目撃することも児童虐待であり、連携すべきことは言うまでもありません。虐待対応の中に男女平等参画の視点を入れることは当然です。また、療育の場での虐待の話が出ましたが、私も多く虐待が起こっていると思います。その場合、私は何故そのようなことが起きたかの原因論を考えても、母親である自分を責めることになるだけなので、対応を考える方向で議論します。相談は中立でなければという意見がありますが、時には私はこうすべきと思うとはっきり言うことが、本人の自己決定を促すきっかけになることも多く、本人の自己決定の内容が私の意見と異なる場合も、本人の決定を支持しています。信頼関係があれば、そのことは可能です。
〔村田〕 虐待にかかわる子どもから情報を得た場合、その言葉をストレートに親に伝えることは、かえって危険な場合もあります。そうした場合は、周辺から入るしかないと思います。
〔景山〕 女性問題というのは、多種多様なものを抱えています。その一つがDVであり、また児童虐待である。私はそのように認識しています。決して別々のものではありません。
〔須藤〕 私は行政にいた時は、一つの区に10 年いるようにしていました。それぐらいいて初めて地域の人に責任が持てるようになります。名古屋市の場合、各区が一つの地方都市より規模が大きいのですから、どこか一箇所のセンターを作って問題が解決するということはありません。区役所の相談機能をもっと充実させて、その地域の人とつながり、日常的に情報交換できるシステムを作る必要があります。また、連携は、けんかを伴います。けんかするほどの怒りとエネルギーを持って自分の立場から発言すること、それが当事者の立場に立つということです。
名古屋市は民間とのつながり、信頼関係も不十分です。そのあたりが、今後の課題だと思います。

【まとめ】須藤八千代
中立という相談の立場はありません。当事者の立場に徹底して立つことが求められます。しかし、だからこそ、関係機関の協働が求められます。自分の欠けた視点、考察を総合化し、集め、お互い率直に議論し、他者の意見・情報を組み込んで、総合化する作業が求められるのです。
単に悩みを傾聴するだけの相談ではなく、問題解決に結びつく相談とは、そういうものだと思います。ありがとうございました。



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