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[Ⅶ-12]<いじめ・差別・貧困>新聞事件簿。傷ついた子どもの悲鳴

<中日新聞>【いじめと生きる】第4部・「科学的」に考える (8)時間 とりあえず「明日」 脳は「気が変わる」

 
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2007年3月24日

「明日を生きる」を積み重ねて…(イメージ)


 「ここで死んではだめだ、とりあえず、明日だけは生きよう」。毎日続く、いじめの恐怖。本紙へのメールに、つらい体験をつづった岐阜県の学生(19)は、中学時代、カレンダーの日付に×印をつけながら「死にたい」という気持ちを必死で抑え続けたのだという。

 やがて、いじめはなくなり、カレンダーの×印も必要なくなった。彼はメールで、かつての自分を振り返りながら、こう書いている。

 「いじめを受けて自殺する人は『明日』が来るのが怖いから死んでしまうんだと思います。(いじめの)恐怖がずっと続くんじゃないかと思えて、もう『今日』から一歩も動けなくなってしまうのではないでしょうか」

 だが彼は、とりあえず二十四時間待つことで、「今日」から一歩を踏み出した。それを積み重ねて、生き残ったのだ。

 二十四時間と言わず、数時間でも、いい。山口大の時間学研究所で生物と時の関係を研究する教授、井上慎一(61)が言う。「夜に苦しい気分だとしても、朝になれば耐えられる、自信が高まる、といった気分の変化は起こり得る」

 井上によると、脳の中、目の奥にある「視交叉(さ)上核」という部位が、人間の「生物時計」。その時計が働いて、脳内で神経伝達物質が分泌されたり、脳脊髄(せきずい)液に化学物質が放出されたりして、脳全体に影響を与えていると考えられている。それが、一日周期のリズムで身体の中の働きを整えているのだという。

 生理状態にも一日の中でリズムがあり、気分や思考もそのリズム次第といったところがあるのだ。「筋肉の力が出やすいのは夕方だし、集中力が高まるのは昼すぎ。免疫機能は朝弱まり、夕方強くなる。そうした能力の上下で気分も左右される」と井上は言う。

 「時間」が、考えや気分を変えるメカニズムかもしれない、と思わせる知見は、脳科学にもある。

 東京大助教授(先端生命科学)の久恒辰博(42)によると、ずっと「新生しない」と考えられていたニューロン(神経細胞)が、脳の中の記憶に関係する領域である「海馬」で、新生を続けていることが、ここ十年ほどの間に分かったという。

 脳内の情報は、ニューロンが末端(シナプス)で神経伝達物質を放出することで他のニューロンに伝わっていくが、このニューロンには、その際に伝達量を増やしたり、減らしたりする「可塑性」という特質がある。

 最も高い可塑性を持つのが生まれたばかりの新生ニューロン。つまり、それが多いほど「プラス」の記憶を増幅し、「マイナス」の記憶は減らして伝達できる可能性がある。それが「後ろ向き」の気分や考えを「前向き」に変えてくれるかもしれないのだ。

 久恒によると、新生ニューロンが機能を発揮できるまでに育つには「二週間から一カ月ほどかかる」。だから「落ち込んだときも、脳が立ち直るにはそれぐらいかかると考えて、あせったり、いらいらしたりしない方がいい」。

 数時間、一日、一カ月。例えば、それだけの時間を置いてみれば、考えは変化し得るのだ。

 いや、もっと短い時間でも。

 どうしても思い出せなかったことが、しばらくして、ふっと出てくるということは誰にも経験があるだろう。ちょっと前には分からなかったことが、今は分かる。これだって脳の中で何かが起きて、考えが変わったということにならないか。

 今、その瞬間は、「死のう」と思う。解決方法はそれしかないように思える。だが、待つべきだ。「時間」はきっと、別の答えをみつけてくれる。 (敬称略)

 =第4部おわり

 (取材班・島田佳幸、酒井和人、辻渕智之)




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