あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?
[Ⅶ-12]<いじめ・差別・貧困>新聞事件簿。傷ついた子どもの悲鳴
<中日新聞>【いじめと生きる】第2部・大人は分かってない ゼロの圧力=「ない」目指せば「見えなく」なる
2007年1月11日
最後の賭けだった。担任に見せる連絡帳に、一字一字、刻みつけるように書いた。
「いじめられています。助けてください」
三重県伊勢市の女性(26)にとっては忘れようがない、中学1年の11月。
小学校の時から続くいじめ。もう限界だった。
放課後、男性担任に呼び出された。どきどきする胸で、思った。これでやっと、出口が見えるかもしれない…。
*
いじめが社会問題化した1985年。当時文相の海部俊樹(76)は教育界に、こんなげきを飛ばしている。「『いじめ根絶』に向けて一丸となって取り組んでほしい」
これが号令になったのかどうか。「いじめをなくせ」はスローガン化し、いじめは「あってはならない」の空気となって、今なお教育現場を覆っているように見える。
和歌山大教育学部の教授、松浦善満(58)は実際、講演で「いじめはなくならない」と発言する度に「必ず後で『けしからん』という批判を受ける」と苦笑する。
そんな空気の中で、あの伊勢市の女性が発した必死のSOSも凍りつくのだ。職員室で向かい合った担任の口からは、思ってもみない言葉が出た。「ないしょにして。誰にも言わないでくれ」
次の日から、制服が着られなくなった。不登校。家を訪れた担任は母に、いじめの話は一切せず「児童相談所へ行ってくれ」の一点張り。玄関先から聞こえる声に耳をふさいだ。そして、思った。
いじめがあったら、先生は困るんだ…。
いじめの存在を認めるのをためらう気持ちは、教師の多くが抱えている。名古屋市の中学校教師(59)も明かす。「報告すると、自分の力量がないと思われるかもと構えてしまう」
「ゼロの圧力」が、むしろ、いじめを見えなくさせていくと、松浦は考える。「学校にいじめがあることは問題じゃないんです。見て見ぬふりをし、何も手を打たないことの方が、本当の問題」
福島県の小学校教師(52)は「上履き隠し」が起きた時は、むしろ「チャンスだ」と思うそうだ。大きないじめは、小さないじめから発展するのを体験で知っているから、授業もやめて、全員で探させる。隠された子がどんな気持ちか、みんなが一緒に探してくれることを隠された子が、どれほどうれしく思っているか全員に伝え…。
この教師は「いじめはなくならない」と言い切る。そして、いじめを「見よう」としている。
*
「いじめ根絶」の建前に縛られると、大事なことを教え損ねる、と考えるのは筑波大名誉教授の杉原一昭(69)だ。「好きな子もいるし、嫌いな子もいる。それが人間社会。好きな子をどうみつけるかと同時に、嫌いな子とどうつきあうかも教えるのが本当の教育です」
やがて子どもたちが出て行く世界にも「嫌いな上司」や「意地悪な同僚」はいる。人づきあいに関する本の出版も多いPHP研究所企画部の松本公一(45)によると「かなり売れている」そうだ。(敬称略)
最後の賭けだった。担任に見せる連絡帳に、一字一字、刻みつけるように書いた。
「いじめられています。助けてください」
三重県伊勢市の女性(26)にとっては忘れようがない、中学1年の11月。
小学校の時から続くいじめ。もう限界だった。
放課後、男性担任に呼び出された。どきどきする胸で、思った。これでやっと、出口が見えるかもしれない…。
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いじめが社会問題化した1985年。当時文相の海部俊樹(76)は教育界に、こんなげきを飛ばしている。「『いじめ根絶』に向けて一丸となって取り組んでほしい」
これが号令になったのかどうか。「いじめをなくせ」はスローガン化し、いじめは「あってはならない」の空気となって、今なお教育現場を覆っているように見える。
和歌山大教育学部の教授、松浦善満(58)は実際、講演で「いじめはなくならない」と発言する度に「必ず後で『けしからん』という批判を受ける」と苦笑する。
そんな空気の中で、あの伊勢市の女性が発した必死のSOSも凍りつくのだ。職員室で向かい合った担任の口からは、思ってもみない言葉が出た。「ないしょにして。誰にも言わないでくれ」
次の日から、制服が着られなくなった。不登校。家を訪れた担任は母に、いじめの話は一切せず「児童相談所へ行ってくれ」の一点張り。玄関先から聞こえる声に耳をふさいだ。そして、思った。
いじめがあったら、先生は困るんだ…。
いじめの存在を認めるのをためらう気持ちは、教師の多くが抱えている。名古屋市の中学校教師(59)も明かす。「報告すると、自分の力量がないと思われるかもと構えてしまう」
「ゼロの圧力」が、むしろ、いじめを見えなくさせていくと、松浦は考える。「学校にいじめがあることは問題じゃないんです。見て見ぬふりをし、何も手を打たないことの方が、本当の問題」
福島県の小学校教師(52)は「上履き隠し」が起きた時は、むしろ「チャンスだ」と思うそうだ。大きないじめは、小さないじめから発展するのを体験で知っているから、授業もやめて、全員で探させる。隠された子がどんな気持ちか、みんなが一緒に探してくれることを隠された子が、どれほどうれしく思っているか全員に伝え…。
この教師は「いじめはなくならない」と言い切る。そして、いじめを「見よう」としている。
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「いじめ根絶」の建前に縛られると、大事なことを教え損ねる、と考えるのは筑波大名誉教授の杉原一昭(69)だ。「好きな子もいるし、嫌いな子もいる。それが人間社会。好きな子をどうみつけるかと同時に、嫌いな子とどうつきあうかも教えるのが本当の教育です」
やがて子どもたちが出て行く世界にも「嫌いな上司」や「意地悪な同僚」はいる。人づきあいに関する本の出版も多いPHP研究所企画部の松本公一(45)によると「かなり売れている」そうだ。(敬称略)
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