あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?
[Ⅶ-21]<脳とからだ・人類の発達。医療の最新治療>プレス。
<ダイヤモンド・オンライン>長引く口内炎に油断していた33歳妻を襲った、恐ろしい病魔とは
11/22(金) 6:01配信
●「たかが口内炎」 努めて気にしないようにした
「このごろ憂鬱(ゆううつ)なの、口内炎が長引いて、治らないのよ」
ある夜、単身赴任中の夫・健太さん(仮名・35歳)に、さやかさん(仮名・33歳)は電話で愚痴った。
夫婦には、小学校低学年と高学年の子どもが2人いる。健太さんは単身赴任歴3年で、帰宅するのは月に2~3回。さやかさんは、近所のスーパーにパートとして勤めながら、PTA役員も引き受けて、かなり多忙な毎日を送っている。
連絡は主にLINEでのメールのやりとりだったが、やはり、声が聴きたいので、週末はがっつり1時間は通話してしまう。
「大丈夫なの?早く病院行けよ」
健太さんが気遣うと、さやかさんは軽く笑って答えた。
「大丈夫、たかが口内炎で病院なんて行ってられないわ。時間ないもの。それにあんまり痛くないのよ。口内炎は慣れっこだからね」
本当に、「たかが口内炎」と思っていたのだ。
というのもさやかさんは、“口内炎のプロ”を自認していた。たぶん10代のころから100回以上はなっている。
発症率が高いのは、疲労やストレスがたまっているとき、生理の前、風邪や膀胱(ぼうこう)炎の治療で抗生剤を飲んだとき、熱いみそ汁などで口の中を火傷(やけど)したとき、頬の内側を血が出るくらい噛んでしまったとき、虫歯の治療をしたとき(要するに、日常生活はリスクだらけ!)。データを記録しているわけではないが、ほぼ100%なっている気がする。
以前、ある病気で10日間入院し、ステロイドの点滴を受けて退院したときはすごかった。鏡で口の中を見てみると、頬の内側、舌の上下、歯茎……すべてに大小の白い「クレーター」ができており、その数は100個以上もあった。口の中が熱いので、試しに温度を測ってみると38.6度。わきの下は平熱だったので、びっくりした。
(これはもしかしてステロイドの後遺症なのかしら)
主治医に相談すると、「ステロイドのせいではないですよ。病気で免疫力が下がったせいですよ」と言われた。
そんな過激な口内炎も、じっと耐えることでやり過ごしてきた。
対処法としては、数えられるくらいの2~3個の口内炎なら、洗口液などで口の中を清潔にした後、市販の軟膏を塗り、できるだけ飲食しないで過ごす。すっぱいものや辛いものなど、刺激系の食べ物・飲み物は避ける。予防法は、口の中を火傷しないよう気を付けることと、噛まないようにするくらい。
とにかく、いずれは治ると自分に言い聞かせ、できるだけ気にしないで過ごしてきたのだった。しかし、「その口内炎」は、過去に経験してきたどの口内炎とも違っていた。
●歯科(口腔外科)と耳鼻咽喉科 どちらを受診するべきか
さやかさんが、ただならぬ異変に気が付いたのは、口内炎を自覚してから2ヵ月も経過した頃だった。
PTAの定例会の後、商店街のタイ料理屋ですっぱ辛いスープを一口飲んだ瞬間、舌の縁の部分に、やけにスープがしみた。
(あれ?これ、前から口内炎ができていた場所だわ。でも、なんか大きくなったみたい。口内炎じゃなかったのかも)
それからは、心臓がドキドキして、食事どころではなくなった。頭に浮かんだ病名はただ1つ「舌がん」だ。
店を出たその足で、いつも通っている歯科に直行。口腔(こうくう)外科医でもある医師は、さやかさんの舌を診るなり表情を曇らせ、「舌がんの疑いがありますね」と言った。
その場で、歯科医の出身大学の口腔腫瘍外科を紹介され、予約をいれてもらう。舌がんは一般的には「耳鼻咽喉科」の領域で、歯科の分野である口腔外科が治すものではないと耳鼻咽喉科の団体は主張しているが、口腔腫瘍外科は、主に口腔がん(舌がん、歯肉がん、頬粘膜がん、口底がん、口唇がん、各種唾液腺がん)を扱う診療科。選択して間違いはない。(※「舌がんは歯科へ」と勧める書籍もあり、そのあたりは、耳鼻咽喉科と歯科との間で意見が割れている。「舌がんといえども治療の副作用は全身に及ぶし、消化器に転移する可能性も高い病気なので、他科との綿密な連携が望める、がん専門病院を受診するべき」と言う意見もある)。
「私、舌がんみたい」
家に帰り、健太さんにLINEを入れると、すぐに電話がきた。
「どういうことなの!?」
慌てた声で尋ねられ、説明するうちに涙がこぼれ、うまく話せなくなった。
「とにかく俺、帰るから。相談しよう。大学病院へも一緒に行くよ。大丈夫、大丈夫だよ」
●口内炎なら2週間で治る 治らないときは病院へ
舌がんと口内炎を見分けるポイントは4つある。
【その1】口内炎は小さくても痛いが、初期の舌がんはほとんど痛まない。
【その2】舌がんは、舌の縁の裏側にできやすいが、口内炎はどこにでもできる。
【その3】舌がんになる前には、舌の一部に白色や赤色が点在したり、薄い白色の剥がれない膜(白板症)が張っていたりする。
【その4】口内炎は1~2週間で治るが、舌がんは治らないばかりか、悪化する。
さやかさんは、その3以外のすべてを自覚していたのに、見逃してしまった。事実を直視するのが怖かったからだ。
健太さんに連絡した後、ネットで舌がんについて画像検索し、自分の舌と舌がんの舌を見比べてみた。
(あぁ、同じだ。私、舌がんなんだわ)
目の前が真っ暗になる感覚を味わいながら、大学病院を紹介してくれた歯科医師との会話を思い出した。
「舌がんはね、口腔がんの一種で、口の中にできるがんの約6割を占めています。この30年で、口腔がんは約4倍に増えていますからね、注目のがんなんです。
特に女性は気を付けていただきたい。全体的には60歳以上の男性に多い病気なんですが、このごろは、女性や若い方にも増えています」
「治せるんですか?」
「ステージ1」という、かなり早い段階で発見して、治療した場合の5年相対生存率は94.7%です。ですが、まだがんかどうかもわかりませんからね。念のためを考えて、受診をお勧めしただけですから」
●治療法探しには 要注意ワードがある
1週間後、健太さんに付き添われ、大学病院を受診した。診断はやはり「ステージ1の舌がん。転移なし」。
舌がんであることは覚悟していたので、冷静に受け止めた。94.7%という高い確率で治せる(といっても5年相対生存率だが)ステージ1だったことにも安堵した。だが、確率は確率に過ぎない。自分が生存できなかった5.3%に入らないとは言い切れない。
何を言ったらいいのか、言葉を発せられずにいると、健太さんが青い顔をしながらも、手術の日取りや入院に必要な準備等一切を済ませてくれた。
帰宅すると、健太さんが口を開いた。
「俺、本社に戻してくれるよう会社に申請してみるよ。手術が終わった後も、放射線療法とか続くだろうし。何かあったときにすぐ対処したいから。子供たちまだ小さくて、学費もかかるから、今まで以上にバリバリ働かないといけないけど。一緒にいるから。頑張って治そう」
優しい言葉に涙があふれ、2人は抱き合って号泣した。そして、さやかさんは決意した。
「家族のために、絶対生き抜いてみせる。このごろは、よく効く治療法もあるみたいだから、しっかり調べてみる」
その決意は立派。確かに、自分で情報収集に励むことは、がんと闘う上で重要だ。ただし、その際には、要注意ワードがいくつかあることを付け加えておきたい。
「100%完治」「末期からの生還」「副作用がない」「セレブがこっそり使う」「あの有名人も治療した」「(自由診療の治療法を紹介する)無料セミナーへご招待」「(クリニックのサイトに掲載された)患者様の体験談」「テレビ(雑誌)で紹介された話題の○○」などだ。
心が弱っているときには、邪心を持った輩(やから)を引き寄せやすい。健太さんにはどうか、冷静な判断力と強さを持って、さやかさんを支えくれるようお願いしたい。
(医療ジャーナリスト 木原洋美)
●「たかが口内炎」 努めて気にしないようにした
「このごろ憂鬱(ゆううつ)なの、口内炎が長引いて、治らないのよ」
ある夜、単身赴任中の夫・健太さん(仮名・35歳)に、さやかさん(仮名・33歳)は電話で愚痴った。
夫婦には、小学校低学年と高学年の子どもが2人いる。健太さんは単身赴任歴3年で、帰宅するのは月に2~3回。さやかさんは、近所のスーパーにパートとして勤めながら、PTA役員も引き受けて、かなり多忙な毎日を送っている。
連絡は主にLINEでのメールのやりとりだったが、やはり、声が聴きたいので、週末はがっつり1時間は通話してしまう。
「大丈夫なの?早く病院行けよ」
健太さんが気遣うと、さやかさんは軽く笑って答えた。
「大丈夫、たかが口内炎で病院なんて行ってられないわ。時間ないもの。それにあんまり痛くないのよ。口内炎は慣れっこだからね」
本当に、「たかが口内炎」と思っていたのだ。
というのもさやかさんは、“口内炎のプロ”を自認していた。たぶん10代のころから100回以上はなっている。
発症率が高いのは、疲労やストレスがたまっているとき、生理の前、風邪や膀胱(ぼうこう)炎の治療で抗生剤を飲んだとき、熱いみそ汁などで口の中を火傷(やけど)したとき、頬の内側を血が出るくらい噛んでしまったとき、虫歯の治療をしたとき(要するに、日常生活はリスクだらけ!)。データを記録しているわけではないが、ほぼ100%なっている気がする。
以前、ある病気で10日間入院し、ステロイドの点滴を受けて退院したときはすごかった。鏡で口の中を見てみると、頬の内側、舌の上下、歯茎……すべてに大小の白い「クレーター」ができており、その数は100個以上もあった。口の中が熱いので、試しに温度を測ってみると38.6度。わきの下は平熱だったので、びっくりした。
(これはもしかしてステロイドの後遺症なのかしら)
主治医に相談すると、「ステロイドのせいではないですよ。病気で免疫力が下がったせいですよ」と言われた。
そんな過激な口内炎も、じっと耐えることでやり過ごしてきた。
対処法としては、数えられるくらいの2~3個の口内炎なら、洗口液などで口の中を清潔にした後、市販の軟膏を塗り、できるだけ飲食しないで過ごす。すっぱいものや辛いものなど、刺激系の食べ物・飲み物は避ける。予防法は、口の中を火傷しないよう気を付けることと、噛まないようにするくらい。
とにかく、いずれは治ると自分に言い聞かせ、できるだけ気にしないで過ごしてきたのだった。しかし、「その口内炎」は、過去に経験してきたどの口内炎とも違っていた。
●歯科(口腔外科)と耳鼻咽喉科 どちらを受診するべきか
さやかさんが、ただならぬ異変に気が付いたのは、口内炎を自覚してから2ヵ月も経過した頃だった。
PTAの定例会の後、商店街のタイ料理屋ですっぱ辛いスープを一口飲んだ瞬間、舌の縁の部分に、やけにスープがしみた。
(あれ?これ、前から口内炎ができていた場所だわ。でも、なんか大きくなったみたい。口内炎じゃなかったのかも)
それからは、心臓がドキドキして、食事どころではなくなった。頭に浮かんだ病名はただ1つ「舌がん」だ。
店を出たその足で、いつも通っている歯科に直行。口腔(こうくう)外科医でもある医師は、さやかさんの舌を診るなり表情を曇らせ、「舌がんの疑いがありますね」と言った。
その場で、歯科医の出身大学の口腔腫瘍外科を紹介され、予約をいれてもらう。舌がんは一般的には「耳鼻咽喉科」の領域で、歯科の分野である口腔外科が治すものではないと耳鼻咽喉科の団体は主張しているが、口腔腫瘍外科は、主に口腔がん(舌がん、歯肉がん、頬粘膜がん、口底がん、口唇がん、各種唾液腺がん)を扱う診療科。選択して間違いはない。(※「舌がんは歯科へ」と勧める書籍もあり、そのあたりは、耳鼻咽喉科と歯科との間で意見が割れている。「舌がんといえども治療の副作用は全身に及ぶし、消化器に転移する可能性も高い病気なので、他科との綿密な連携が望める、がん専門病院を受診するべき」と言う意見もある)。
「私、舌がんみたい」
家に帰り、健太さんにLINEを入れると、すぐに電話がきた。
「どういうことなの!?」
慌てた声で尋ねられ、説明するうちに涙がこぼれ、うまく話せなくなった。
「とにかく俺、帰るから。相談しよう。大学病院へも一緒に行くよ。大丈夫、大丈夫だよ」
●口内炎なら2週間で治る 治らないときは病院へ
舌がんと口内炎を見分けるポイントは4つある。
【その1】口内炎は小さくても痛いが、初期の舌がんはほとんど痛まない。
【その2】舌がんは、舌の縁の裏側にできやすいが、口内炎はどこにでもできる。
【その3】舌がんになる前には、舌の一部に白色や赤色が点在したり、薄い白色の剥がれない膜(白板症)が張っていたりする。
【その4】口内炎は1~2週間で治るが、舌がんは治らないばかりか、悪化する。
さやかさんは、その3以外のすべてを自覚していたのに、見逃してしまった。事実を直視するのが怖かったからだ。
健太さんに連絡した後、ネットで舌がんについて画像検索し、自分の舌と舌がんの舌を見比べてみた。
(あぁ、同じだ。私、舌がんなんだわ)
目の前が真っ暗になる感覚を味わいながら、大学病院を紹介してくれた歯科医師との会話を思い出した。
「舌がんはね、口腔がんの一種で、口の中にできるがんの約6割を占めています。この30年で、口腔がんは約4倍に増えていますからね、注目のがんなんです。
特に女性は気を付けていただきたい。全体的には60歳以上の男性に多い病気なんですが、このごろは、女性や若い方にも増えています」
「治せるんですか?」
「ステージ1」という、かなり早い段階で発見して、治療した場合の5年相対生存率は94.7%です。ですが、まだがんかどうかもわかりませんからね。念のためを考えて、受診をお勧めしただけですから」
●治療法探しには 要注意ワードがある
1週間後、健太さんに付き添われ、大学病院を受診した。診断はやはり「ステージ1の舌がん。転移なし」。
舌がんであることは覚悟していたので、冷静に受け止めた。94.7%という高い確率で治せる(といっても5年相対生存率だが)ステージ1だったことにも安堵した。だが、確率は確率に過ぎない。自分が生存できなかった5.3%に入らないとは言い切れない。
何を言ったらいいのか、言葉を発せられずにいると、健太さんが青い顔をしながらも、手術の日取りや入院に必要な準備等一切を済ませてくれた。
帰宅すると、健太さんが口を開いた。
「俺、本社に戻してくれるよう会社に申請してみるよ。手術が終わった後も、放射線療法とか続くだろうし。何かあったときにすぐ対処したいから。子供たちまだ小さくて、学費もかかるから、今まで以上にバリバリ働かないといけないけど。一緒にいるから。頑張って治そう」
優しい言葉に涙があふれ、2人は抱き合って号泣した。そして、さやかさんは決意した。
「家族のために、絶対生き抜いてみせる。このごろは、よく効く治療法もあるみたいだから、しっかり調べてみる」
その決意は立派。確かに、自分で情報収集に励むことは、がんと闘う上で重要だ。ただし、その際には、要注意ワードがいくつかあることを付け加えておきたい。
「100%完治」「末期からの生還」「副作用がない」「セレブがこっそり使う」「あの有名人も治療した」「(自由診療の治療法を紹介する)無料セミナーへご招待」「(クリニックのサイトに掲載された)患者様の体験談」「テレビ(雑誌)で紹介された話題の○○」などだ。
心が弱っているときには、邪心を持った輩(やから)を引き寄せやすい。健太さんにはどうか、冷静な判断力と強さを持って、さやかさんを支えくれるようお願いしたい。
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