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[Ⅶ-12]<いじめ・差別・貧困>新聞事件簿。傷ついた子どもの悲鳴

<中日新聞>【いじめと生きる】第1部・ドラえもんのいない世界で 四層構造=みーんな消して、のび太は泣いた

 
 <中日新聞>【いじめと生きる】第1部・ドラえもんのいない世界で 流される=しずかちゃんもただ見てるだけ <ニューズウィーク日本版>いじめの加害者をどう罰するべきか(2/2)
2007年1月1日

 この春、定年を迎える富山大教授の横山泰行(64)には、研究者としての晩年をすべて捧(ささ)げてきたものがある。

 「ドラえもん」、だ。

 物語の分析にとどまらず社会論的に読み解こうとする「ドラえもん学」の提唱者。「ドラえもんを日本の古典にしたい」と大まじめである。

 確かに恐るべき作品だ。故藤子・F・不二雄(藤本弘)が1969年に描き始めてから40年近く、人気は衰えない。世界中で約1億5千万部のマンガ本が発行され、アニメは三十数カ国に輸出された。大晦日(おおみそか)のテレビスペシャルや春の新作映画はもはや風物詩だ。一昨年の声優交代は“事件”でさえあった。

 何が、こうまで人を惹(ひ)きつけるのか。大きな魅力は「タケコプター」のようなドラえもんの「秘密道具」が象徴する愉快さ、痛快さだろう。だが、それだけだろうか。

      *

 ドラえもん作品には、長編シリーズや、アニメ映画、テレビアニメもあるが、てんとう虫コミックス(小学館)で45巻に及ぶ短編が、その中核であり、原型である。その1巻4話で、スネ夫は早くも、愉快でも痛快でもないことを口にする。「のび太をいじめてすっきりしよう」

 横山が構築したデータベースによると「いじめ」の言葉は、全巻中で実に115回登場する。秘密道具も、ジャイアンによるのび太へのいじめの対抗策で出される構図が多く、横山は「いじめが筋立ての中心」とさえみる。

 いじめ研究の第一人者で大阪樟蔭女子大学長の森田洋司(65)は、いじめが進行する基本構造として「加害者」「被害者」のほか、はやしたてる「観客」と、知らぬふりを決め込む「傍観者」による四層構造を指摘している。

 思い当たらないだろうか。加害者=ジャイアン、被害者=のび太、観客=スネ夫、傍観者=しずかちゃん…。時にスネ夫が加害者になるといった例外を除けば、「四層」がピタリと当てはまるのだ。

 作者の藤子自身、4人の設定上の構造を「一つのシンプルな社会の形」と語ったことがある。そして度々、こう明かしているのだ。「僕は弱虫でいじめられっ子でした」

 藤子の郷里、富山・高岡の小学校で同級生だった加藤昌造(72)は思い返す。「(藤子が)殴られたのは見たことないが、言葉で何かというのはあったがかもしれん」。“加害者”として思い当たる同級生がいるそうだ。「まあ、ジャイアンに似ていると言えば似てるがです」

 藤子は「自分は、のび太だ」と言っている。そして「“のび太的”要素は、誰の中にもある」と。

 無論、物語の中には、ドラえもんがいる。だが、藤子が描きたかったのは「ありふれた町のありふれた日常」。つまり、ふつうの現実。そこには実際に、避けがたく、いじめが存在しているからこそ、人はこの物語に惹きつけられるのではないか。そして、それを等身大の主人公が生き抜いていくからこそ。

      *

 いじめは、日本のじめっとした風土固有の現象、なんかでは決してない。例えば、米国では12-18歳の調査で3割近くが、いじめ被害を訴えていて、同じような日本での調査結果のざっと倍だ。

 現代の病理かと言えば、これも否。1300年近く前に編まれた日本最古の書「古事記」にさえ、旅の荷運びを一人に押しつけるなど、いじめは盛り沢山(だくさん)である。文学作品といじめの関係を調べた北海道教育大副学長の杉浦清志(53)が言う。「極論すれば、いじめなくして文学はなりたたない」

 いじめは、どこにでもある。しかし、教育界のスローガンは叫ぶ。「いじめ根絶」。教師経験が長く、愛知県田原市でフリースクールを主宰する沓名和子(58)は言う。「人のつきあいに軋轢(あつれき)はつきもの。犯罪行為は別だが、すべてのいじめをなくせ、となれば、子どもを触れ合わせるなってことになっちゃう」

 「ドラえもん」に「どくさいスイッチ」という話がある。名前を呼んでボタンを押すと誰でも消せる秘密道具。のび太はジャイアン、スネ夫と次々消すが、いじめはやまない。やがて「だれもかれも…」と叫んで、ポチッ。残ったのは、のび太一人。そこは望んだはずの「いじめのない」世界。だが、のび太は、やがて泣き叫ぶのだ。「ジャイアンでもいいから、でてきてくれえ!」 (敬称略)

      *

 なくせないものを「あってはならない」の建前で覆えば本質は逆に見えにくくならないか。本連載では「いじめと生きる」の視点で、いじめ問題を考えてみたい。まずは「ドラえもん」を通して-。

 (取材班・島田佳幸、酒井和人、森川清志、辻渕智之、伊藤章子)




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