あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

DV被害支援室poco a poco 庄司薫のコラム

夫からの暴力、DVをエスカレートさせないために..「脅し」を含んだ夫のことばには、まず「ノー」という

 
 夫から支配のための暴力に晒され続けたDV被害者の歪められた思考の認知。「わかってもらえない」苛立ち、夫から逃れた後も悩まされ、苦しい日々が続く..。 <奈良新聞>「中村氏のDVは事実」 損賠訴訟口頭弁論
 夫からの支配のための暴力・DVは、“何かのきっかけ”で突然、わけのわからない理不尽な暴力がはじまる。そして、少しずつエスカレートしていく。
 その何かのきっかけによる暴力の“最初”が殴る、蹴るの「身体的暴力」であるとはかぎらない。大きな音をたててドアを閉めたり、物を投げる、ゴミ箱や椅子を蹴ったり、「てめぇは何いっているんだ!」とドスをきかせ、威圧的ないい方で声を荒げるたり、「お前は・・」などと名前をよばなくなったり、相手をあからさまに無視するようになったり、あなたの人格を尊重していれば、できないようなことを平気でするというのもひとつの兆候の表れである。夫が妻のことを、「家の嫁が・・」というのも、家意識、男が、女がといったジェンダー観(性差)の表れであり、注意しなければならない。

 思わずビクッとしてしまうような、そういう態度を夫にとられたとする。そういうとき、“わたしに何か落ち度があったのだろうか”“仕事でなにか嫌なことがあったのだろうか”と考えてしまうことがある。しかし、妻に対し、夫がそういう態度をとることを“肯定してしまう”ことは、いいことではない。間違いは間違いであって誤りに気づき、反省すればいいが、恫喝というか、脅しのようないい方をされるのは誰だって不愉快である。そもそもそんなやり方は、対等な夫婦間ではありえないことなのである。
 もし、夫の暴力がエスカレートしていない状況にあるなら、夫がそういう態度をとったら、「嫌だから止めて」とはっきりいわなければならない。
 あなたが“自分がいけなかったから”と口をつぐみ、“私は嫌だ”という気持ちをいうのを「いってもしょうがない」「いっても無駄だから」口にできずにいると、夫はそれでいいと思ってしまう。そして、どんどん横暴な態度、要求がエスカレートしていくことになるのである。
 世の中は、いまだに“夫に殴られるのは、妻にそれなりの理由があるから”“夫婦のことだから、殴られてもしょうがない”といった、夫からの暴力・DVへの“偏見”や“無理解”に満ちている。しかも、被害女性がそう思っていることも少なくない。そのため、「夫から暴力を受けているなんて、妻失格の烙印を押されているようで恥ずかしい、そんなこと誰にも話せない」と思ってしまっていることが多い。
 しかし、理不尽な“力による支配”は決して許してはいけないのである。“脅し”を含んだ夫の言動には、はっきりと「No」といわなければならない。
 「お前の家事のやり方が、ノロノロしていて気に入らない」「顔を見ていると腹が立つ」などの理由で、恫喝まがいの態度をとられたり、暴力に訴えたりする行為というのは、「後ろの車がクラクションを鳴らしてうるさかったから」という理由で、他人を殴ったりすることと同じだということを理解して欲しい。家の中のことだから、夫婦間のことだから、と自分自身にオトシマエをつけてしまってはいけないのである。そして、そのような言動や行動が“許容されてしまう”ことによって、次の暴力につながっていく。その結果、家庭が、暴力で支配させた無法遅滞と化してしまうことにもなるのである。
 かつてニューヨークでは、殺人事件を10分の1にさせるために、地下鉄構内、街中の落書き等の軽犯罪を徹底的にとり締まった。凶暴な犯罪を防ぐには、小さな小さな犯罪を防ぐこと最も有効でなる。“このぐらいなら許されるだろう!”と思わせないことが何より大切のことなのである。企業でのコンプライアンス、法的遵守の問題も同じである。組織として、社員ひとりひとりが切手1枚、ボールペン1本ぐらい私用で使ってもいいだろうという気の緩みが、不正な経理処理、そして、横領事件、商品の不正表示や偽装事件へと発展させてしまう。家庭内での子どものしつけ、学校での生徒への対応、そして、家庭内での夫との関係もまったく同じである。妻は手ごわい、一筋縄ではいかないと夫に思わせることも必要なのである。
 しかし、そうしたあなたの意思表示、つまり、あなたの考えや意見を口にしたことによって、激怒し「テメエ誰に口きいてやがるんだ!」「お前の考えなど聞いていねえんだ!」「いつからそんなに偉くなったんだ!」と大声で怒鳴りつける、暴力が酷くなっていくようなら、直ぐに家をでる、別れる(離婚する)必要のある危険な夫、DV加害者ということになる。ここで、「ずっといい続けたら、いつかきっとわかってくれる」とは決して思ってはいけない。躊躇せず直ぐに家をでることである。子どものいる方は、子どものコトを考えたら、そんなに簡単に決断できることではないと思うかも知れない。支配のための暴力・DVのある家庭環境で暮らす子どもは虐待を受けている、虐待を受けさせ続けているとの認識を持たなければならない。どれだけつらく、苦しくともこ、母親としてこの事実と真正面から向き合わなければならない。日本では、いまだに、近親者や友人・知人だけでなく、家庭内の暴力に気づく機会の多い子どもたちの通う幼稚園(保育園)や学校の教師、子どもたちを診察する医師、多くの人たちが「子どものコトを考えたら、あなたががまん(耐えて)して、父親といっしょの生活がいい。だから、もう一度、考え直した方がいい」と助言する。離婚調停では、調停委員が「子どもには父親と会う権利がある」と面会交渉は必要との立場をとりやすい。不登校やリストカット、摂食障害になど、親とのかかわりに問題がある子どもたちの行いを視る精神科医やカウンセラーによる治療も、その原因となる機能不全家庭からの通院があたり前になっている。
 子どものコトを考えたらのコトは、支配のための暴力・DVのある家庭で育った(育っている)子どもたちが、思春期・青年期以降にどのような心の問題を抱えることになるかにまで考えていない。もちろん、正しい知識など持ち合わせていない中で、自分の価値観(考え)を口にしているに過ぎない。そして、子どものコトを考えてということばの多くは、親や大人の都合、つまり、見栄や世間体を意識してのものでしかないことを認識して欲しい。

 以下のようなことが、交際中、結婚当初にみられる、支配のための暴力・DVを招く危険な兆候となる。
・少しでも意見が食い違うと、相手のいい分を否定し、徹底的に叩きのめそうとするか、逆に、押し黙り、無視しはじめる。敵か味方か、白か黒かと決めつける考え方をする
・いい争いになると、まるで脅すように大声をだし、汚いことばで罵倒する(否定し、批判・非難し、侮蔑し、卑下する)
・気に入らないことがあると、手元にある物を投げたり、外で食事中でも席をたっていってしまう
・音が響くほど、ドアを激しく開け閉めする
・喧嘩となった原因とはまったく関係ない、身体的欠陥をあげつらったりする。過去のことを持ちだし繰り返し非難したりする。人をからかったり、ひやかしたりして、嫌がる様子を見て楽しんでいると感じる
・あなたの友人や親兄弟の悪口をいいはじめる。自分のいうことだけが正しいと思っているように感じる。

 交際相手や夫に、ほんの少しでもこういった兆候があると感じたら、できるだけ早いうちに近親者や友人・知人でない専門知識のある第三者の“誰か”に相談し、助言を受けて欲しいと思う。
 こうした傾向のある夫との話し合いは成り立たないことが少なくない。コロコロいうことが変わり、約束は守られず、疲弊させられることになるので、“別れたい(離婚したい)”という考えが少しでもあるなら、二人での話し合いや、近親者や友人を交えた話し合いもしないで、家をでることが必要である。「ごめん。もう二度と暴力はふるわない」と許しを懇願する姿を見て、「こんなに謝っているのだから、きっと、変わってくれるだろう」と思い、許してはいけない。なぜなら、子どものころから人とのかかわり方について、“力”で支配する以外の方法を身につけていないからである。謝るのは、ただこのうっとうしい状況を打開し、思い通りにいうことをきかせられる、従わせられる、尽くさせることができる妻を奪還するための手段(術)でしかないことを知って欲しい。
 もし、夫が感情を抑えられず罵倒し、物を投げ壊す、殴ったり、髪をつかんでひきづったりするなど、手をつけられないほど暴れることがあるなら、躊躇せずに警察を呼ぶとか、警察に相談するなどして第三者の介入が必要不可欠である。
 パトカーが家の前に止まることが夫へのアピールになる。自分の暴力が、世間に知れる、人目のさらされることが、暴力の抑止になる。「警察にきてもらう」と携帯をもつことも、夫にはプレッシャーになる。家の外では愛想がよかったり、多くの場合、家の外でも暴力的であるというは少ない。社会や近所では人あたりがよくて感じのいい人、常識のある人として仮面を被って生きているのである。だから、警察を呼ばれて近所に知れたり、会社や同僚に知れたりしたら“俺の面子は丸つぶれ”になると思うのである。
 夫が社会的な立場を気にする、もしくは、医師や弁護士、公務員に教師、その土地では名の知れた企業に勤めている場合には、警察が、具体的に何らかの方法で解決してくれるというよりも、夫の世間体を気にする心理を逆手に取るということも効果がある。
 妻が自分より立場が弱くて、暴力をふるわれても黙って我慢するという考えがあるので、夫も暴力をふるうことができるからである。
 夫の横暴な態度や暴力が酷くなる前に、“私は、横暴な態度、暴力を許さない!”“私は黙ってはいないわよ!”という意志を示すことが、何よりも大切である。夫の自分勝手な解釈、考えは、世間では通じない、法の前では役に立たないということも示さなければならない。そのために、正確な知識、知恵をもつことがあなたの身を助けることにもなるのである。だからこそ、近親者でない第三者の“誰か”に相談し、アドバイスを受けることが大切になっていくる。
 もし、こうしたメッセージを伝えることによって、「警察を呼びやがって(他人に暴力をいうけていることを話しやがって)、俺の面子をつぶしやがって、許さねぇ!」と怒鳴り声をあげ、殴ったりするようなら、躊躇せずに警察に駆け込むか、行政に相談し、緊急一時保護施設(シェルター)に逃れることを考えなければならない。
 暴力をふるう夫とはいえ、子どものこともあるし、いまはまだ「離婚」までは考えられない。だから、コトを荒立てたくないし、近所に家庭の事情を知られるのも困る・・との思いが錯綜し、警察沙汰にするのは大変な勇気がいることである。
 しかし、“私ひとりが我慢すればいい”とあなたが口を閉ざすことが、そこからはじまっていく「暴力」の影響ははかり知れない。あなたは心を傷め、自分というものを認められなくなるといった暴力を受けたこと、暴力のある中で生活を続けるために順応するために身につけざるをえなかった考え方の癖(認知の歪み)、そして、その間違った考え方の癖にもとづく発言やふるまいに苦しむことになる。
 子どもは、暴力で人の心を操る父親の姿から、他人も自分も信じるということができなくなり、成人後もアダルトチルドレン(AC)を抱え、人とのかかわりに苦しむという十字架を背負わされることになる。夫からの暴力を容認してしまう代償の方がよほど怖ろしく、これからの人生の中で心の平穏を奪うものはないのである。


※ DVの本質は、本来対等であるはずの男女(夫婦間、交際者間)の関係に、上下の関係、支配と従属の関係を成り立たせるためにパワー(力)を行使することですから、”関係性”で理解する必要があるわけです。つまり、「上にたとう(支配しよう)とする者」と「下におかれる(支配され、従属させられる)者」という”関係性”であることから、①カテゴリー[Ⅲ-2]「Ⅰ-3.DVは、夫婦の関係、親子の関係になにをもたらすか(1)-(6)」、②「Ⅲ-2」「Ⅰ-4-(2)デートDVから結婚に至る経緯」に目を通していただければ、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(配偶者暴力防止法、いわゆるDV防止法)」第二条の三にもとづいて作成される「都道府県(市町含む)基本計画」の中で「対象とする暴力として、身体的暴力、性(的)暴力、精神的暴力、経済的暴力がある」との記載が意味するものについて理解を深めていただけると思います。
 そのうえで、本記事のテーマ、相反する拒絶と受容のことばやふるまいを繰り返されることにより思考混乱をおこし、暴力の恐怖により機嫌を損ねないように意に添うようにふるまうなど、暴力に順応することで生活を続けざるをえなくなった、つまり、暴力のある環境で生活を続けること=マインドコントロール下におかれてきたのかを理解していただくには、加害者特性の理解、つまり、DV加害者がどのようにふるまうのかを理解すること、その支配するための暴力により、被害者はどのような“負”の思考パターンに陥っていくことになるのかを理解することが大切です。
 したがって、③カテゴリー[Ⅲ-6」「Ⅳ-24.DV加害者に共通する行動特性」に目を通していただき、その中で説明している「感受性訓練に似通った言動パターン」を頭に入れて、④カテゴリー「Ⅲ-2」「Ⅰ-5.被害者心理。暴力で支配、マインドコントロールされるということ」に目を通していただくことによって、“人との関係性”のいう捉え方でDVを認識することがいかに重要なことなのかを理解していただけると思います。


2010.10/1.11:31
2013.2/20 文体修正、カテゴリー変更
2013.11/30
2016.6/10 ブログ再構成・再編集にともない「※」の記述に加筆



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