あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅲ-7]Ⅳ.「婚姻破綻の原因はDVにある」ときの離婚

21.一時保護の決定、保護命令の発令。「身を守る」という選択

 
 22.夫婦関係調整(離婚)調停 第2部の結びとして
* 現在、この「手引き」は、第3次改訂の編集をおこなっています。編集終了後、差し替えていきます。

※ 『暴力の影響を「事例」で学ぶ。虐待とDVの早期発見・支援。母と子どもが暴力から脱するための手引き(マニュアル)』は、「DVを目撃して暮らしている子どもが、DVの最大の被害者である」との立ち位置で、「密接な関係にある児童虐待とDVの本質的な理解」に加え、「児童虐待とDVが、被害者である母親だけでなく、子どもの心までも破壊する可能性がある、つまり、胎児期を含めて脳の発達に大きなダメージを与える」ことを理解していただくために、一般的な抽象論ではなく、行動分析や脳科学、人類学、発達心理学などをベースに、前半の『はじめに』、『第1章(Ⅰ.密接な関係。児童虐待とドメスティック・バイオレンス)』、『第2章(Ⅱ.児童虐待と面前DV。暴力のある家庭環境で暮らす、育つということ)』は作成しています。
 マニュアル冒頭の『はじめに』では、「社会の女性や子どもへの暴力に対する理解」、「危機的状況がもたらす脳のトラブル」、「「事例で学ぶ」ということ-人類とは何者か、脳の発達論の見地でという考え方-」、「暴力描写や性的表現による「トラウマ反応」表出のリスク」、「第三者の支援を受け、暴力で傷ついた心のケアにとり組む意味」、「被害女性の家族や友人たちのアンカーとしての役割」、「被害者支援に携わる人たちに向けて」、「-付記- 「二重の被災」..東日本大震災とその後の虐待・DVの増加の影響は“これから”の問題-阪神淡路大震災、戦争体験によるPTSD発症、その後の人生に学ぶ-」というテーマで、このマニュアル全般に及ぶ着眼点や論点、問題提起をしています。この行動分析や脳科学、人類学、発達心理学などをベースにした着眼点や論点、問題提起は、その後に続く、『第1章(1-5節)』、『第2章(6-12節)』、『第3章(13-20節)』、『第4章(21-26)』、『第5章(27-31)』とそれぞれと相互する関連性がある、あるいは、説明の前提となっていることから、『第1章(1-5節)』、『第2章(6-12節)』、『第3章(13-20節)』、『第4章(21-26)』、『第5章(27-31)』をお読みになる前に、『はじめに』に目を通していただきたいと思います。
* マニュアル「改訂新版」の上程後6ヶ月が経過したことを踏まえ、アニュアルの一部見直し、加筆修正にとりかかっています。平成28年9月29日、『はじめに』の“加筆改訂”を終えました。「第1章」以降については、スケジュールを調整しながら、随時、“加筆改訂”にとりかかり、加筆改訂を終えた「章」から差し替えていきますが、『原本』では、追加した事例を踏まえて、本文ならびに目次の“事例番号”は修正したことを踏まえ、『ブログ』の“目次”ならびに“小目次”での「事例番号」は修正していますが、『ブログ本文』の加筆修正は、『はじめに』は終えたものの、第1章以降はまだ手つかずであることから、第1章以降の「事例番号」は修正されていません。そのため、目次ならびに小目次に記載されている「事例番号」と異なっています。


第3部
Ⅳ.「婚姻破綻の原因はDVにある」ときの離婚
21.一時保護の決定、保護命令の発令。「身を守る」という選択
(1) 保護命令とは
(2) 保護命令の申立て
  <申立ての方法>
  <棄却されるリスク、棄却される要因>
  <保護命令の申立書、記載例>
(3) 一時保護
(4) 「身を守るということを最優先に考える」ということ
 <家をでるとき、持っていくもの(家をでる前に、用意しておくもの)>
 <「支援措置」の申し出の流れ>
 <「支援措置」の効果>
 <DV被害証明書の発行>


Ⅳ.「婚姻破綻の原因はDVにある」ときの離婚

 離婚の方法には、①夫婦が同意して署名し、協議離婚届書を戸籍係に提出する方法(協議離婚)、②家庭裁判所の調停の場で離婚の合意をする方法(調停離婚)、③調停でまとまらず、家庭裁判所が離婚の審判をする方法(審判離婚)、④家庭裁判所の判決で離婚が命じられる方法(判決離婚)*の4つがあります。
* 平成15年2月5日、法制審議会は「離婚訴訟を家庭裁判所の管轄にする」という法案要網が発表され、これにもとづいた法改正により、④地方裁判所でおこなわれていた離婚裁判も家庭裁判所でおこわれるようになりました。
 激しい身体的な暴行が繰り返されている夫婦関係(同棲関係を含む)では、離婚という戸籍法上の手続きの前に、同棲相手や配偶者の暴力から逃れる、つまり、自身の身(命)を守ることが考えなければならないことがあります。そこで、「婚姻破綻の原因はDVにある」とする離婚について考える最初のテーマとして、「身を守る」ということを扱っていきたいと思います。



21.一時保護の決定、保護命令の発令。「身を守る」という選択
 日本では、家庭での親密な関係における暴力を犯罪と認め、昭和22年「児童福祉法」の制定に伴い、昭和8年に制定された「(旧)児童虐待防止法」が統合、廃止されていましたが、平成12年に「児童虐待の防止等に関する法律(平成16年法改正。いわゆる児童虐待防止法)」が制定され、翌平成13年(2001年)に「配偶者からの暴力防止および被害者の保護に関する法律(いわゆるDV防止法。以下、配偶者暴力防止法)」が成立、平成16年(2004年)には改正され、被害者の子どもの保護も加わりました。さらに、平成26年(2014年)、改正新法として、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」となり、婚姻関係になくとも同じ居住地で生活を営んでいる者に対しての保護が加わりました。また、平成12年11月、「ストーカー行為等の規制に関する法律(いわゆるストーカー行為規制法)」が制定されています。
 家庭や親密な関係での暴力に関する法律が制定され、法律が入りにくかったプライバシーの問題に社会が介入しはじめ、社会全体で、虐待を受けた児童とその家庭、DV被害者に対しての支援や暴力防止にとり組む方向になってきています。しかし一方では、警察の介入が市民権を揺るがしかねない問題を含んでいると指摘されることもあり、課題が残っています。


(1) 保護命令とは
 「配偶者暴力防止法」第10条に規定された「配偶者からの更なる身体に対する暴力によりその生命身体に重大な危害を受けるおそれが大きい」ときに、被害者を保護するため、地方裁判所が出す命令(制度)です。違反した場合の罰則は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。つまり、被害者が、加害者である配偶者からのさらなる身体への暴力により、その生命または身体に重要な危害を受けるおそれが大きいときに、地方裁判所が被害者からの申立てにより、加害者(事実婚の配偶者及び元配偶者、内縁関係にある者)に対して命令を発することができます。これが「保護命令」です。保護命令の中には、加害者が被害者につきまとうことを禁じた「接近禁止命令」 と被害者とともに生活していた住居からの退去を命じる「退去命令」があります。
 加害者が、被害者(被害者と同居している未成年の子についても可能)の身辺につきまとったり、被害者の住居や勤務先(子どもの学校)などの近くを徘徊したりすることを6ヶ月間禁止しています(配偶者暴力防止法第四章 第十条)。
 被害者がその未成年の子どもと同居しており、加害者がその子どもを連れ戻すなど、子どものために被害者と加害者が会うことを余儀なくされる事態を防止するため必要な場合は、裁判所は被害者の申し立てにより、子どもについても、接近禁止命令をだすことができます。期間は、被害者の接近禁止命令の有効期間(6ヶ月間)となります。なお、15歳以上の場合は、子ども本人の同意書が必要で、同意書の署名が子ども本人のものであることが確認できるもの(学校のテストや手紙等)を同時に提出する必要がります。改正により、6ヶ月間、加害者が子どもに近づくことが禁じられることになりましたが、それ以降については明記されていないので、「接近禁止命令」の失効後は、再度手続きをし直さなければ、加害者が子どもに会うことを制限することができないということになります。子どもへの面会(面接交渉権)や接近については、あくまでも、子どもの利益や福祉を守ることを第一に考える必要があります。また、親族に対する接近禁止命令にあたっては、親族本人の同意書と対象者への接近禁止命令が必要である事情を明らかにする対象者作成の陳述書(証拠書類)が必要です。


(2) 保護命令の申立て
 保護命令は、配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた被害者が、配偶者からの身体に対する暴力により、その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに、地方裁判所が被害者からの申立てにより、配偶者に対して発する命令です。つまり、保護命令を申立てられた者(相手方)からの申立てた者(申立人)に対する身体への暴力を防ぐため、地方裁判所が相手方に対し、申立人に近寄らないように命じる決定です。
 女性センターもしくは警察にDV被害の状況を相談し、申立て(申立書を地方裁判所に提出)後、申立人への面接がおこなわれます。申立人への面接終了後、1週間ほどで、相手方の意見聴取のための審尋期日が設けられます。裁判所は、相手方のいい分を確認し、証拠に照らして保護命令を発令するかどうかを決します。ただし、場合によっては、相手方の出頭した審尋期日に保護命令が発令されることもあります。
 保護命令には、①被害者への接近禁止命令、②被害者と共に生活の本拠としている住居からの退去命令、③被害者と同居する子への接近禁止命令、④被害者の親族等への接近禁止命令、⑤被害者への電話等禁止命令の5つの類型があります。ただし、③の同居する子への接近禁止命令、④親族等への接近禁止命令、⑤の電話等禁止命令はについては、保護命令の発令が必要とされるときに、被害者本人への接近禁止命令の実効性を確保する付随的な制度です。そのため、単独で発令することはできません。申立人に対する接近禁止命令が同時にでるときか、既にでている場合のみ発令されることになります。
* 夫婦関係の継続中に身体への暴力(性的暴力・精神的暴力はこれに含まれません)、または、生命・身体に対する脅迫を受けた申立人が、今後、身体的暴力をふるわれて生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに申立てることができます。暴力等を受けた後に夫婦関係を解消した場合は、以前に受けた暴力等をもとに申立てることができますが、夫婦関係を解消したあとに受けた暴力等をもとに保護命令を申立てることはできません。なお、夫婦関係には、事実婚も含まれます。また、生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く)をする関係にある相手方からの暴力(当該関係にある相手方からの身体に対する暴力等を受けたあとに、その者が当該関係を解消した場合にあっては、当該関係にあった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含む)、および当該暴力を受けた者についても、上記と同様に申し立てることができます。

① 被害者への接近禁止命令
 申立人への接近禁止命令被害者へのつきまといや申立人の住居(同居する住居は除く)、勤務先等の近くを徘徊することを禁止する命令で、期間は“6ヶ月”です。

② 被害者と共に生活の本拠としている住居からの退去命令
 相手方が申立人と同居している場合で、申立人が同居する住居から引越しをする準備等のために、“2ヶ月間”家からでていくこと(住居からの退去)を命じ、同期間その家の付近をうろつく(徘徊する)ことを禁止する命令です。

③ 被害者の同居する子への接近禁止命令
 子どもを幼稚園や保育園から連れ去られるなど、子どもに関して申立人が相手方に会わざるを得なくなる状態を防ぐため必要があると認められるとき、“6ヶ月間”、申立人と同居している子どもの身辺につきまとったり、住居や学校等その通常いる場所の付近をうろついたりすることを禁止する命令です。ここでいう「子」とは、被害者である申立人と同居中の成年に達しない子どもを指し、別居中、または成年の子どもは、④(d))の親族に該当します。

④ 被害者の親族等への接近禁止命令
 相手方が申立人の実家など密接な関係にある親族等の住居に押しかけて暴れるなどその親族等に関して申立人が相手方に会わざるを得なくなる状態を防ぐため必要があると認められるときに、“6ヶ月間”、その親族等の身辺につきまとったり、住居(その親族等が相手方と同居する住居は除く)や勤務先等の付近をうろついたりすることを禁止する命令です。被害者からの申立てにより、被害者がその親族等に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認める場合に、被害者への接近禁止命令と同時にまたはその発令後に発令されます。

⑤ 被害者への電話等禁止命令
 申立人への電話等禁止命令被害者に対し、次に掲げるいずれの行為もしてはならないことを命ずるものです。被害者からの申立てにより、申立人への接近禁止命令と同時に、またはその発令後に発令されます。
ア) 面会を要求すること
イ) その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、またはその知り得る状態に置くこと
ウ) 著しく粗野、または乱暴な言動をすること
エ) 電話をかけて何も告げず、または緊急やむを得ない場合を除き、連続して電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、もしくは電子メールを送信すること
オ) 緊急やむを得ない場合を除き、午後十時から午前六時までの間に電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、または電子メールを送信すること
カ) 汚物、動物の死体その他の著しく不快、または嫌悪の情を催させるような物を送付し、またはその知り得る状態に置くこと
キ) その名誉を害する事項を告げ、またはその知り得る状態に置くこと
ク) その性的羞恥心を害する事項を告げ、もしくはその知り得る状態に置き、またはその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し、もしくはその知り得る状態に置くこと

<申立ての方法>
 申立書に以下の項目を記入し、管轄のある地方裁判所に提出します。
a) 配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた状況
b) 配偶者からの更なる身体に対する暴力又は配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた後の配偶者から受ける身体に対する暴力により、生命、または身体に重大な危害を受ける怖れが大きいと認めるに足りる申立時における事情
c) 被害者の同居の子への接近禁止命令の申立てをする場合にあっては、被害者が同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため、被害者の同居の子への接近禁止命令を発令する必要があると認めるに足りる申立時における事情
d) 加害者の親族等への接近禁止命令の申立てをする場合にあっては、被害者が親族等に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため被害者の親族等への接近禁止命令を発令する必要があると認めるに足りる申立時における事情
e) 配偶者暴力相談支援センターの職員、または警察職員に対して ①から④までの事項について相談し、または援助、もしくは保護を求めたことの有無、およびその事実があれば、
 ア) 相談、または援助、もしくは保護を求めた配偶者暴力相談支援センター、または警察職員の所属官署の名称
 イ) 相談、または援助、もしくは保護を求めた日時・場所
 ウ) 相談、または求めた援助、もしくは保護の内容
 エ) 相談、または申立人の求めに対して執られた措置の内容
を記載し、地方裁判所に申立てます。
 なお、配偶者暴力相談支援センターや警察の職員に相談等をしていない場合は、①、②)の事項についての申立人の供述を記載した書面を作成し、公証人の面前で宣誓 した上で認証を受け、その書面を申立書に添付することが必要です(認証を受けるには11,000円が必要となりますが、申立てに必要な費用や書類の詳細は、最寄りの地方裁判所に問い合わます)。

<棄却されるリスク、棄却される要因>
 平成21年の配偶者暴力相談支援センターへのDV相談件数72,792件、警察へのDV相談等の対応件数28,158件の中で、保護命令の申立て数は3,097件で、2,411件が発令(発令率78.1%)、676件は棄却されています(棄却率21.9%)。身の危険を感じる暴力被害を受けて相談したものの、保護命令の申立て数は低いのがわかります。申立てをしなかった理由は、相手の反応が怖かった(34.8%)、保護命令の制度を知らなかった(28.1%。60歳以上の被害者の比率が高くなっています)、精神的な余裕がなかった(25.1%)、この程度の暴力で申立てができるのか自信がなかった(18.8%)などとなっています。DV相談後、加害者に対する恐怖心などで保護命令の申立てる決意ができない被害者が多い中で、覚悟を持って保護命令を申立てたにもかかわらず、2割以上が棄却され、棄却数(棄却率)は年々高くなる傾向があります。
 地方裁判所への「保護命令」の申立ては、申立てられた者(相手方)に対しても意見(事実確認)を求めます。DV加害者が暴力を認めないことはよくあることなので問題ではありませんが、重要なことは、申立人の申立書の内容や面談、相手方の意見聴取により、暴力による危険性が切迫していると判断されないと、その後の離婚調停において、相手方は「DVはなかった」との“お墨つき”を前面にだして、民法770条第1項5号の「その他、婚姻を継続し難い重大な理由がある」の「配偶者からの暴力・暴言、そのほかの虐待行為を受けた」とする離婚に応じる根拠はないという立場を貫く怖れがでてきます。そして、離婚調停においても、「夫婦にはDVはなかった」という前提(認識)で審議されることになります。
 地方裁判所が保護命令の申立てを棄却するのは、「DVそのものがない」と解釈されてしまったのか、「その暴力が重篤で、命が脅かされる危険と考えられるとは考えられない」と解釈されてしまったということです。問題は、命が脅かされる危険性、つまり、命の危険を感じる暴力がどのようなもので、その暴力の背景に、病的な嫉妬心、激しい詮索干渉、束縛の状況がどれだけ深刻なものかを、「事実にもとづいたことば(文字・書面)として明確に示すことができていない」ことができていないことが原因になっていることがあるということです。棄却されてしまいやすい主張は、「とにかく危険で、怖い。だから、保護命令を発令して欲しい」との訴えに終始してしまっていたり、「私のツラく、苦しい気持ちをわかって欲しい」との感情を吐きだすだけの訴えになってしまっていたり、「こんなことを書いたら(主張したら)、夫を怒らしてしまってなにをされるかわからない」との絶対君主に対する恐怖心に支配され、書かなければならないことを敢えて書くことを避けてしまっていたりしています。この状況は、“なにをされてきたのか”“どのような状況におかれてきたのか”を正しく認識できていないことを意味します。つまり、この状況下で作成する「申立書」や「陳述書」は、“思い(気持ち)”に重きが置かれしまったり、“事実経過”をきちん文章にできていなかったりする可能性が髙いということです。そして、このことが、保護命令の申立てが棄却されるひとつの要因となっているということです。
 したがって、申立てをするときに、自分の立ち位置を理解したうえで、なにを、どのように表現して書きあげるかということが大切なのです。

<保護命令の申立書、記載例>
第1 申立ての趣旨
(略)
第2 申立ての理由
1.当事者
(略)
2.相手方から暴力を受けた状況
(1) 平成○年○月○日、申立人は相手方と結婚し、同居生活をはじめた。すると、申立人が残業で帰りが遅くなると、相手方は不機嫌になり、「家事をしない!」と怒鳴りつけ、申立人に物を投げつけたり、顔面を平手で殴ったりする暴行を頻繁に加えるようになった。
(2) 同年▽月△日、申立人は体調がすぐれなかったことから、仕事を休み、自宅(別紙住居目録記載の住居)で寝ていた。相手方が帰宅すると、「俺は仕事で疲れているのに、お前はなに寝ているんだ!」と大声で罵倒し、「腹が減っているんだ! 食事を用意しろ!」と怒鳴りつけた。申立人が直ぐにおきあがることでできないでいると、相手方は、申立人の頭部や腰部を足蹴りし、電気スタンドを申立人に向けて投げつけた。
(3) 翌▽月▽日、前夜の相手方による暴行による外傷を治療しに、○○医院を受診(甲第3号証 診断書)した。申立人が○時ころに帰宅すると、相手方がすでに在宅していた。相手方は、申立人に「どこへ行っていた。実家に俺の悪口でもいいに行っていたのか!」と声を荒げで問い詰め、申立人が応えることができずうつむいていると、相手方は、申立人の髪をつかんで寝室にひきずり込み、腹部を足蹴りし、顔面を拳で2、3回殴打し、首を4、5秒間絞めたあと、とどめをさすように頭部を寝室の壁に強くぶつけた。申立人は、フッと意識が遠のいた。申立人は意識が戻ったあと、3歳の長女を伴い友人のところに逃げ、相手方から受けた暴行痕の写真を撮ってもらった(甲第4号証 写真)。そして、申立人は、その写真と▽月△日の暴行痕による診断書を持参して警察署に行き、生活安全課で、相手方からDVを受け、友人宅に避難していることを告げ、今後のことを相談した。
3.更なる相手方からの暴力により生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいこと
(1) 相手方は、申立人と結婚して以来、些細なことに立腹し、申立人を平手打ちするなど身体的な暴行を加えていたが、平成○年○月以降、身体的な暴行はエスカレートしていき、同年▽月▽日には、申立人の顔面を拳で殴打するなどしたうえ、命の危険が及ぶ申立人の首を絞めつける暴行にまで及んだ。
→「いつ」「どこで」「どのような暴力」があったのか、具体的に記載します。日時がはっきりしないときには、「昭和○年○月はじめころ」「平成○年夏ころ」など、特定できる範囲で特定して記載します。
→暴力については、具体的に記載する(どこを、なにで(平手、拳等)、何回)。証明する証拠番号(後記証拠方法として記載したもの)を記載します。
(2) 申立人は、同年▽月▽日、相手方に身体的な暴行を加えられたことで、生命の不安を感じ、長女を伴い友人のところに身を寄せている。そうした中で、相手方は、申立人の両親宅に電話し、電話にでた母親に、「覚えていろよ。」、「絶対に許さないからな!」と暴言を吐き、「○○はどこにいる。居所をつきとめてぶっ殺してやる!」などと大声で恫喝したり、申立人の友人宅に片っ端から電話し、申立人の行方を捜したりしている。
(3) 同年×月×日×時×分ころ、申立人の母親が買い物から帰宅したとき、相手方の車が近くの路地に停車しているのを目撃した。さらに、同年○月○日○時○分ころ、同月△日△時△分ころの2回、相手方が、長女が通っていた××保育園の出入り口辺りを徘徊しているのを、長女と同じクラスに通う知人の母親が目撃したことを、申立人は、××保育園の園長からの連絡を受けて知った。
→子ども連れ去り、そして、ストーカー行為により暴行を受けたり、レイプされたりするリスクの高さを訴えるときには、「Ⅳ-24-(7)被害者宛のメールの文面からストーカーリスクを把握する」、続く、「-(8)「自殺」を匂わせ心を支配し、別れる意志を把握する」の記載内容を参考にし、根拠のある訴えであることを明確に示すようにします。
4.子への接近禁止について(申立人が同居している子への接近禁止をあわせて求める場合のみ)
(1)子の氏名 ○○ ○○(・・・・・・)
生年月日 平成△年△月△日生(満○歳○か月)
(2)申立人が同居している子への接近禁止を求める理由
長女○○は、××保育園の年少である。相手方は、同年○月○日○時○分ころ、同月△日△時△分ころの2回、××保育園の出入り口辺りで申立人と長女を待ち伏せしていた。▽月▽日以降、申立人の友人宅に、申立人と一緒に身を寄せていることから保育園を休んでいるため、ことなきを得たが、もし、保育園に預けていたら、申立人と長女は相手方と接触することになり、連れ戻されたり、長女を力づくで連れ去られたりした可能性があった。
5.配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察官に対し、相談等を求めたこと
(1)相談先:○○警察署生活安全課
(2)日 時:平成▽年▽月▽日 午後6時30分頃
(3)内 容:配偶者からの暴力への対処方法、その他、今後の生活全般についての相談をした。
(4)措 置:一時保護と保護命令の制度について情報提供があった。
6.まとめ
以上のことから、申立人は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律にもとづき、本件保護命令の申立てに及ぶ次第である。
(記載にあたっての注意点)
・申立人の住所は、住民票上の住所や相手方とともに生活の本拠としていた住居の記載で大丈夫です。「送達場所」は、裁判所から決定書等を郵送で受けとる場所、および、その場所との関係を記載します。ただし、保護命令の相手方は、記録の閲覧を請求することができることから、送達場所は、避難している友人宅や一時保護所(シェルター、母子棟)ではなく、申立人の実家など、相手方に知られても不都合のない場所を指定します。なお、申立人が送達場所で受けとることができない場合には、送達受取人も記載します。
・配偶者暴力相談支援センター、警察署において、対応した職員の名前等は記載しません。
・相手方の発言については、括弧書きにして具体的に記載します。なお、暴力の詳細については、別途、事実の報告書(証拠)としての「陳述書(現在に至る事実経過)*-1」を作成し、提出する。
*-1 事実の報告書(証拠)としての「陳述書(現在に至る事実経過)」の作成については、「Ⅳ-22-(5)DV立証に欠かせない「陳述書(証拠としての事実経過をまとめた報告書)」、「Ⅳ-25-(6)トラウマの再体験のよる事実経過の把握」において、趣旨を中心に詳しく説明しています。
・暴行痕に対する診断書*-2や写真があれば証拠として提出します。写真は用紙に貼りつけ、撮影者や撮影日を記入します。また、脅すことばが書かれたメールを証拠として提出するときには、メール文だけでなく、送信者アドレス、送信日時が入った状態で写真を撮り、その前後のメールと合わせて、すべての文面をまとめたものをプリントアウトして添付します。
*-2 地方裁判所に「保護命令」を申立て、発令を目指すときの「診断書」の記載内容と、「婚姻破綻の原因はDVにある」とする離婚調停(不調で裁判移行を含む)において、DVを立証するための「診断書」の記載内容、さらに、同調停において、面会交流の実施が子どもに危険を及ぼすものであることを立証するための「診断書(診断をもとにした意見書)」の記載内容は、それぞれ違うことになります。しかも、診断書の記載内容によっては、相手方に反撃されたり、相手方の主張を裏づけるものになったりすることもあります。したがって、証拠とする診断書のあり方について、「Ⅳ-22-(6)DV離婚事件、証拠としての「診断書」をどう捉えるか」で詳しく説明していますので、確認し、理解しておくことを勧めます。
・親族や友人、職場の上司、学校園の園長や校長の陳述書があれば証拠に加えます。


(3) 一時保護
 DV被害その他やむを得ない理由により、「加害者から逃れたい」、「家にいることができない」、「家に戻れない」など、その日の宿泊先がないときには、短期的(原則14日間)にシェルターや母子生活支援施設に避難することができます。短期的な避難を受け入れることを「一時保護」といい、「一時保護」は、被害女性が夫やパートナーの暴力から逃げるために、被害女性を一時保護する施設として、女性センター(婦人相談所)が位置づけられています。女性センターは、自ら一時保護をおこなうことも、厚生労働大臣が定める基準を満たす者(民間シェルターなど)に委託しておこなうことができます(配偶者暴力防止法第3条4項)。また、都道府県は、婦人保護施設でも被害者の保護を行うことができます(同法第5条)。そして、これらの保護は、身体的な暴行に限られたものではなく、精神的暴力などあらゆる暴力の被害者と、その被害者の家族が対象になります(同法第3条3項3号)。
 ただし、一時保護施設に入居中は、加害者に連絡をとることができないと指導されます。なぜなら、被害者のさまざまな思いから加害者に連絡し、いまいる場所(避難先)を教えてしまうと、加害者が施設にくることが予想され、他の利用者の安全を脅かすことにもなりかねないからです。同様に、避難先を特定されることを防ぐために、「一時保護施設等の近くの銀行や郵便局からお金をひきださないこと(取引記録から取引銀行の支店が特定される)」、「手紙の投函をしないこと(消印から地域が特定される)」ことを指導されます。一方で、加害者が被害者の居場所を知ろうと、被害者の親や友人、職場の同僚などから巧みに聞きだそうと試みることが考えられます。
 したがって、原則は、実家や友人など信頼している人であっても居場所を知らせてはならないことになります。「どうしても親やきょうだい、友人に連絡したい」というときには、「居場所を明らかにせず、元気でいること」だけを知らせるように指導されます。
 また、被害者の親が加害者の連絡を受け、心配のあまり警察に「捜索願」を提出する可能性があることから、醸成の担当者につき添われて施設に入居する前に警察に立ち寄り、「捜索願の不受理届」を提出しておくことが大切です。そして、「婚姻破綻の原因はDVにある」として家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停を申立て、離婚する意志が固まっているときには、弁護士に依頼後に、弁護士を通じて、加害者宛に「調停を申立てたこと」「直接の連絡はせずに代理人を通じてもらうこと」を通知してもらいます。DV事案では、「元気でいる」ことを親や友人に知らせるときにも、弁護士を介しておこなうようにするのがベストです。
 一時保護施設等の利用は緊急一時的なものであるので、原則として、学齢期の子どもが一時保護施設等から通学することは想定されていません。したがって、居住地が定まり、子どもが地域の学校に通学するときには、住民票の異動登録がなくても、居住の事実があれば転入は可能です。

<実家や友人へ連絡するとき、伝えること>
* 連絡をしないことが原則ですが、例外として連絡するときです。
・家をでたこと
・安全であること
・現在の居場所は明かせないこと
・夫からの問い合わせには「なにも聞いていない」と応じてほしいこと
・今後についてはいずれ連絡し、相談すること

<学校等へ連絡する場合(担任または校長宛に)>
・DVの事情でしばらく休むこと
・現在の居場所は明かせないこと
・夫からの問い合わせには「なにも聞いていない」と応じてほしいこと
・今後についてはいずれ連絡すること


(4) 「身を守ることを最優先に考える」ということ
① 身を守るということ
 DV事件において、最も重要な考え方は、「まさか、こんなことはしないだろう」との考えは捨て去り、身(命)の安全を第一に考えなければならないということです。「身(命)の安全を第一に考える対等」とは、「配偶者暴力防止法」にもとづいて、女性センターなどのDV相談機関や警察署を通じてa)「一時保護」を求めたり、b)地方裁判所に「保護命令」の発令を求めたり、c)「一時保護」を経由するかは別として、身を隠すために知らない土地で家屋を借り、生活の再建をはかったりすることを考えるということです。
 特に、c)の選択は、これまでの価値観や人生観、歩んできた人生であたり前と思ってきたきたことが、あたり前ではなくなることを意味します。つまり、いまの平和な日本では考えることはほとんどありませんが、それは、国を捨てて他国へ救いを求める選択(難民)と変わりなく、家族や親族、友人や知人とつくりあげてきたかかわり、築いてきた仕事のキャリアなどよりも、自分の身(命)や子どもの命が大切であると考えられるかという同じレベルの問題です。
 当然、DV被害者支援に携わる現場では、自分の命、子どもの命よりも、これまでのかかわり、しがらみを捨て去ることができない多くの被害者と対峙することになります。確かに、制度的には、女性センター、福祉事務所(生活保護受給など、福祉全般のサポート)や保健センター(被害者の母と子どもの精神衛生にサポート)など、行政各機関のサポートを受けることができるなど、「配偶者暴力防止法」は、DV被害者の命を守ることを最優先に考えるために設けられた法律です。そして、被害者の安全(命を守る)ために、一時保護として、母子棟といった緊急一時保護施設(いわゆるシェルター)に入居させてくれます*。
* 行政が運営するシェルターと、民間が運営するシェルターがありますが、いずれも加害者に居所を知られないために所在地を明らかにしていないので、当事者が居場所を伝えたりしない限り、場所を特定されるリスクは低いものです。
 そして、「一時保護」される前に、行政の職員により、預金口座(本人名義)の残高、所持している現金の確認がおこなわれ、現金、本人名義の預金残高があるときには、施設での食事代や衣服代、入居期間後に施設をでてアパートを借りる(転宅)ときの敷金礼金・家賃、家財購入費などの生活費は自身で賄うことになります。一方で、所持している現金や本人名義の預金残高がないときには、福祉事務所が生活保護の手続きに入り、支給される生活扶助で生活することになり、入居期間後の転宅にかかわる費用については支給される「一時金(上限が設定されています)」で転居を進めていきます。なお、入居後、相手名義、本人名義にかかわらず、保護施設界隈の金融機関を利用すると、利用状況が住所に郵送されてしまうことから、その出金記録から避難地区が特定される怖れがあり、入居中は預金口座から出金することができません。したがって、家をでるときに預金口座、住居していた近隣の金融機関で預金をひきだしておくことを勧められます。また、相手名義の預金口座については、離婚時の財産分与範囲内、つまり、共有財産の1/2を超える額を出金することのないような注意が必要です。なぜなら、1/2を超えた分の返還を求められる怖れがあるからです。
 「命を守ることを最優先に考える」という選択(決意・覚悟)は、家族(親族)や友人との安易な接触はできなくなったり、仕事を続けられなくなったりします。どれだけ理不尽で、不合理なことであっても、命を守るということは、“これまで”大切にしてきたものを捨て去って、生活(生き方)の再建をはかっていかなければならないのです。知らない土地で、住民票を移すことができなかったり、新たに銀行口座を開設でき難かったり多くの制約条件のある中で、新しい仕事を探し、生活そのものを一から再構築していくのは並大抵のことどはありません。
 そのうえで、「一時保護」を経て身を隠して知らない土地で新たな生活を再構築していくか、いま住んでいる家に接近することを禁止(6ヶ月)してもらう「保護命令」を地方裁判所に申立てるか、あるいは、「実家」に身を寄せて、生活を含めて頼るか、いずれにせよ大きな負担を強いられる選択をしなければならないことになります。

② 身の安全、命の保全
 命を守るために配偶者のもとから逃げるときには、「配偶者暴力防止法」の適用を受け、「緊急一時保護施設(母子棟など)」や民間のシェルターに“一時保護”してもらいます。そして、転居先を必死に見つけだそうとする怖れが考えられることから、転居後も住民票の登録をせずに*、配偶者から身を隠す必要があります。重要なことは、「居所は、親やきょうだい、親族、友人、同僚であっても知らせてはならない」など、DV被害者支援に携わる人たちのアドバイスを守ることが不可欠です。なぜなら、被害者だけでなく、被害者の親やきょうだい、親族、友人、同僚の身の安全のためでもあるのです。
 住民票の閲覧から探しだそうとする可能性もあります。親兄弟や友人との接触をはかり、「教えないとどうなるかわかっているのか!」と凄んだり、怒鳴り声をあげて威嚇してきたり、脅したりしてくることも考えられます。中には、「もう二度と暴力はふるいません。あいつがいないと俺はダメなんです。心底愛しているんです。」などと同情をかうように、泣き喚いたりするかも知れません。人は「ごめんなさい」を繰り返されると、「わたしはそんなに悪人ではない(非常な人と思われたくない)との心情が働き、許そうとしやすい」ことを知っているので、巧みに演出します。「ごめんなさい」を繰り返されると罪悪感を抱かせることができ、罪悪感は人の心を縛り続ける(善意の心を操る)ことができる力を持っています。人は情につけ込まれ、罪悪感を回避するために話してはいけないことを白状してしまう(口を割ってしまう)のです。
 したがって、親やきょうだい、親戚、友人、同僚が、前もって転居先を聞かされていると、相手が血相を変えた眼差しで凄まれ、大声で怒鳴られ、罵倒されたり、涙ながらに懇願されたりすると、“思わず教えてしまう”可能性があるのです。そのため、“一時保護”が適用され「緊急一時保護施設」に入居するとき、「親やきょうだいを含め外部との連絡を一切してはいけない。」と説明することになっているのです。当事者だけでなく、親やきょうだい、親戚、友人、同僚など“些細なこと”であってもなんらかの接触することで、居所が知れ、他の入居者も危険に晒されることになりかねないのです。最近は、近況を知らせるツールとして、フェイスブックなどSNSに写真を載せることがあたり前のようになっていますが、添付された写真情報で撮影地区が特定され、写っている背景などの情報から居所が特定されてしまうことがあります。実際に、フェイスブックに載せた写真と、友人に転居先を知らせていたことが仇になり、県外の転居先を知られ殺害された事件がおきています。
 夫からの暴力、DVから逃れるという中には、こうしたことも考えなければならないのです。家をでた、転居したあと、夫がどういう反応を示すか状況を把握し、どのように対応していくか方向性を決めるまでは、親きょうだいや友人等の近親者にさえ「転居先を知らせてはならない」のです。
 なお、「住民基本台帳事務における支援措置」についての考え方は、各行政機関によって違いますので、医療のセカンドオピニオンのように複数の専門機関からアドバイスを受けることをお勧めします。

<家をでるとき、持っていくもの(家をでる前に、用意しておくもの)>
・現金(できるだけ多く)
・健康保険証(コピーもしておく)・診察券
「運転免許証」と同様に身分を証明するものとしての位置づけです。夫が被保険者のとき、持ちだした健康保険証を使用することは可能ですが、保険者から受診記録が夫に通知され、その受診記録(受信先)を手がかりに住所(避難先)を特定される怖れがあるので、保険証を使用することはできないと思っておく必要があります。速やかに、女性センターに相談し(「DV被害証明書」の発行を依頼)、福祉事務所から「医療券」を発行してもらうようにします。詳細は、「Ⅰ-1-(6)-⑤役場(市役所や区役所など)」に記しています。
・運転免許証・パスポート、年金手帳(国民年金)
「運転免許証」の住所変更の手続き、「国民年金」の第3号から第1号への変更や住所変更の手続きについては、変更したことを知らせる通知が元居住地に届く怖れがあります。上記「保険証」の取扱い同様に、女性センターに「DV被害証明書」の発行してもらい、福祉事務所の職員に社会保険事務所に同行してもらい“年金番号の変更手続き”をします。
・家や車の鍵
・預金通帳・カード(口座番号や残高はコピーしておく)
「財産分与」のとき、共有財産としての預金残高や契約保険などを自分で示さなければなりません。結婚前の預金などは特有財産として財産分与の対象にはならないので明確にしておきます。
・クレジットカード
・印鑑(実印と印鑑登録カード)
・母子健康手帳
・親やきょうだい、親戚、友人・知人の電話番号や住所が書かれた手紙、住所録。未使用になっている古い携帯電話。
友人からの年賀状に記載されている電話番号やメールアドレス、あるいは住所を頼りに、家をでて行った妻の居所を聞きだそうとすることがありますので、持ちだすことができないときには処分して家をでる必要があります。
・重要書類(子どもの保育園(幼稚園)や学校関係など)
・裁判所に提出する証拠資料(診断書・写真やマイクロレコーダー、USBカードなど)、暴力の状況をメモしてある日記や手帳
・夫の財産状況がわかる資料(給与振込銀行の預金通帳・口座番号・残高のコピー、生命保険証書なとのコピー、家の権利証などのコピー、株式譲渡益取引記録が記された郵便のコピーなど)
・ミルクやオムツ、当面の着替え、洗面道具などの日用品
・おもちゃなど、子どもが大切にしているもの
・教科書

③ 転居後、住民登録できないときの「支援措置」
 住民登録は、氏名・生年月日・性別・住所・世帯主との続き柄などが記載され、国民健康保険、児童手当など各種行政サービスの基礎となっています。さまざまな行政サービスを確実に受けられるように、引っ越しなどにより住所を移した人は、速やかに住民登録の届け出をおこなうことになっています。また、現住所で住民登録をしていない人や登録が抹消されたままの人は、正しい住民登録が必要となります。
 しかし、DV被害から逃れるために家をでたあと、夫に居所を知られることを怖れ、住民登録をしている所とは別の場所に住まなければならない場合があります。そのときの基本は、安全確保のため、住民票を元の住所地から移さないことです。なぜなら、住民票を移した場合、加害者が住民票の写しの交付請求をおこない、被害者の現在の住所地が知られてしまう可能性があるからです。そこで、こうした事態を防止するため、DVおよびストーカー行為等の被害者は、「住民基本台帳の閲覧等の制限」について支援措置を申し出ることができます。「住民基本台帳事務における支援措置」の申し出により、現在住んでいる所に住民登録しても、住民基本台帳の閲覧や住民票の写しなどの交付を制限(DV・ストーカーなどの被害者の保護支援のため申し出により住民票の写しなどの交付を制限)することができます。

<「支援措置」の申し出の流れ>
ア) 最寄りの警察署や配偶者暴力相談支援センター、福祉総合センターなどにDV・ストーカーなどの被害を相談する
イ) ア)の結果、住民登録の閲覧制限が必要と判断された場合は、相談先の意見を記録した「支援措置申出書」(申出書)などを受領する
ウ) 市民課に相談先の意見が記載された申出書などの資料(「保護命令決定書(写し)」や「ストーカー規制法に基づく警告等実施書面」などを添付)を提出し「支援措置」を申し出る
※すでに警察署などで相談をおこなっている場合は、直接市民課に連絡する
※申し出に不安がある場合や、警察署などに相談しづらい場合は、市民課に相談する

<「支援措置」の効果>
支援措置決定後、以下のとおりの取り扱いがされます。
・ 住民基本台帳の閲覧(支援対象者の記載の消除)
・ 住民票の写し等の交付の拒否(現住所地)
・ 住民票の写し等の交付の拒否(前住所地)
・ 戸籍の附票の写しの交付の拒否(現本籍地)
・ 戸籍の附票の写しの交付の拒否(前本籍地)

<注意事項>
・ 住民票、戸籍の附票に関する請求があった場合、申出者以外からの請求をすべて拒否する制度ではありません
・ 厳格な審査の結果、正当な理由による交付申請である場合は、請求を拒否することはできません
・ 正当な理由とは、利害関係のあることがわかる資料を持参した利害関係人や有資格者からの職務上の請求などが該当します

<DV被害証明書の発行>
 上記「注意事項」にあるように、住所が知られることを完全に防ぐことができるわけではありません。「配偶者暴力防止法」にもとづいて、緊急一時保護施設に入居し、転宅以降、生活保護を受給しながら生活の再建をはかっているとき、福祉事務所の担当者から「支援措置の手続きはできるが、万一のことを考えて、住民票を移すのは反対です」と助言を受けることもあります。
 そこで、女性センター・婦人相談所(配偶者暴力相談支援センター)から「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書(DV被害証明書)」を発行してもらうようにします。
 この証明書によって、次の手続きをすることができます。
a) 「児童手当て」の振込み先を親権者から、被害者指定の振込み先に移し、受給を受ける手続きができます。
b) 健康保険は、「生活保護受給証明書」を発行してもらい、本人の住所、所轄福祉事務所名ならびに住所を黒塗りしたもので、健康保険組合で脱退続きをおこなうことができます*。
* 生活保護受給者は、福祉事務所から「医療券」の発行を受け、受診することになります。
c) 国民年金の年金番号と住所変更は、社会保険事務所で、上記「DV被害証明書」によって手続きすることができます。


2016.3/4 ブログ再編成(第3次改訂)に伴い、主記事として掲載




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