あなたは、夫の暴力・DVを容認していませんか? 暴力のある家庭環境で暮らす子どもの心を守ることを忘れていませんか?

[Ⅲ-6]Ⅲ.学校現場で、児童虐待・DV事案とどうかかわるか

23.援助者(支援者)・教職員のメンタルケア

 
 第2部の結びとして 22.児童虐待・DV事件、保護者からの苦情の捉え方
* 現在、この「手引き」は、第3次改訂の編集をおこなっています。編集終了後、差し替えていきます。

第2部
Ⅲ.学校現場で、児童虐待・面前DVとどうかかわるか
・事例208-209

エピローグ
・事例210(事件研究1:厚木男児監禁遺棄致死事件(平成26年5月))
・事例211(事件研究2:江戸川区岡本海渡くん事件(平成22年1月))
・事例212(事件研究3:狭山市羽月ちゃん事件(平成28年1月))
・事例213

16.児童虐待の定義
(1) 児童虐待の定義
(2) 虐待を疑うということ
  ・事例214-219
・代理ミュンヒハウゼン症候群
(事例220-221)
(3) 児童虐待への対応に関する法律
(4) 教育現場で、児童虐待の早期発見を妨げる心のブレーキ
(5) 児童虐待を見逃さないために
(6) 早期発見のためのチェックリスト
 ・保育園用
  ・学校用
(7) 虐待している保護者の特徴
 <虐待が推察される親の行動>
  <その他の虐待や放置をする親にしばしば見られる行動様式や問題点>
 <虐待を疑ったときの保護者に対する接し方>
・保護者が被虐者であるとき、境界性人格障害の特性を理解しておくことが役立つ

17.初期対応としての緊急性の判断
(1) 学校検診(保健室)における虐待への気づき
 <学校健診(保健室)における虐待対応フローチャート>
(2) 身体的虐待を疑う
 <身体的虐待を疑ったときの対応>
 <放射線診断の方法>
  <受傷機転による骨折の形態>
  <部位別特徴>
(3) 虐待による熱傷の所見
  <虐待による熱傷の特徴>
 <熱源別特徴>
(4) ネグレクト(neglect)
 <ネグレクトに気づくために>
(5) 性的虐待が気になるとき
  <児童期性的虐待の基準(ハーマン著「父-娘 近親姦」抜粋)>

18.性的虐待への初期対応
(1) 発見の難しさ
(2) 適切な気づきのための留意点
 <子どもの性暴力被害の兆候:共通して示す症状や行動>
(3) 児童の訴えを聴くとき
(4) 児童の訴えを聴くときの留意点
(5) 通告したら
(6) 性的虐待・家庭内性暴力の通告にあたる児童の告白内容
(7) より本質的なこと:性的虐待、家庭内性暴力の予防について

19.子どもの心理的援助-トラウマ反応について学ぶ-
(1) トラウマ(心的外傷)の3つの反応(制御反応)
(2) 虐待によるトラウマの接近
(3) トラウマからの回復

20.児童相談所への「通告」と連携
(1) 児童虐待防止法第6条にもとづく「通告」がはじまり
  <児童相談所等への通告についての留意点>
 <通告の内容>
  <通報後、保護者の抗議>
(2) 身体的暴力のあるDV環境下では、6割の子どもが身体的暴力を受けている
 <できることからはじめよう>
(3) 学校でできること
 <児童が一時保護されたら>
  <児童が家庭復帰するとき援助>
(4) 校内連携
(5) 関係機関との連携
 <児童相談所での相談の流れ>

21.通告後の児童への対応。子どものケア、回復のプロセス
(1) 児童への対応
 <児童への日々のかかわり方>
 <児童への質問法>
(2) 混乱した行動への対応
(3) 子どもの心理的なケア
(4) ASDとPTSDの回復への支援の原則
(5) 心の回復プログラム
(6) ケアする人に求められること
(7) 虐待を受けてきた子どもへの対応
  ・最低限の規範としてのルールの明示は、子どもの生活の見通しを助ける
(8) 学校園での周囲の子どもへの対応
  ・正確な記録を残すポイント

22.児童虐待・DV事件、保護者の苦情の捉え方
(1) 大切な初期対応
  ・記入例
 <子どもからの聴きとりの留意点>
  ・謝罪例
(2) その後の組織的な対応 -学校として保護者等の声と正対するために-
  <かかわり方の難しい事例のパターン>
  ・対応例1-2
 <学校内でおきた事故に対する補償>
  ・対応例3-5
(3) 保護者とのかかわり方
 <基本的対応>
  <家庭との対応の目標>
 <保護者の虐待への反応類型>
  <保護者との面談、家庭訪問のポイント>
(4) 一時保護の決定、保護命令の発令事案への学校の対応-基本的心得-
(5) 学校でのDV加害者からの追及と対応のあり方
 ・対応例6-11
 <回答を拒否する法的根拠>
 <最高裁判決>
 <教職員・援助者に対する妨害行為>

23.援助者(支援者)・教職員のメンタルケア
(1) 援助者(支援者)・教職員の傷つき
(2) 援助者(支援者)・教職員が傷ついたとき、心の手当てのあり方
  ・子どものへの応用

第2部の結びとして
  ・感情耐性
  ・援助者・支援者の感情耐性



児童虐待・DVの支援にかかわることは、過剰なストレスにさらされることが多くなります。
心の不調は誰にでもおこり得るもので、決して恥ずかしいことではありません。
なにか変だと思ったら、こじれないうちに早めの治療や相談を心がることが大切です。


(1) 援助者(支援者)・教職員の傷つき
① 援助者(支援者)の側が傷つくこともある
虐待やDV対応の現場では、援助者(支援者)の側が傷ついてしまうことが少なくもあります。なぜなら、権力構造の中で暴力がふるわれている話を聞いたり、解離している人の話を聞いたりするわけですから傷つくのはあたり前です。
専門職だから、この分野に精通している援助者から傷つかないということはありません。
専門職であったり、この分野に精通している援助者であったりすると、よりシビアな問題を聞いていますから、より傷つく危険性があります。
そして、援助者は、自分が傷ついているということをしっかり理解することがとても大切です。
なぜなら、この傷つきを、被害を受けた人に向けてしまうことがあるからです。
なんとしても避けていくことが大切です。
DV家庭に育っている子どもで、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、アスペルガー症候群などの発達障害と診断されている子どもたちが、幼稚園で「困った子どもだ」というレッテルを貼られていることがあります。
そういう子どもが痣をつくってきたり、口のなかを切ってきたりするのを見て、「こんなにいうこときかないんだからあたり前だわ」といい、つい叩いてしまうという幼稚園や保育園の先生がいます。
また、DV被害を受けた女性に対して、「どうして離婚できないのよ」といった暴言を吐く援助者もいます。
「直ぐに離婚ができるくらいなら、そもそもDVなんて起こらない」という前提に立って対応しなければならないのです。
1-2万組のDVのある家庭があっても、そのうち離婚できているのはほんのごくわずかです。
中には、離婚しても、またすぐ戻ってしまうことも少なくありません。
そのことを非難し、責めてしまうと、子どもに被害が及ぶことになるところまで、考えていく必要があります。
なぜ、援助職が当事者に怒りをぶつけてしまうのかというと、それは援助職自身も傷ついているからです。
援助者は、場合によってはなにもできず無力であることから逃げず、向き合うことが必要なのです。
場合によってはなにもできず無力であることを認められないと、被害者の無力さを理解し、寄り添うことができないのです。
責任感や使命感、そして、正義感が強すぎると、無力であることを受け入れられず、そのなにもできず無力であることの反動を被害者にぶつけてしまうモチベーションになってしまうのです。
ですから、いかに自分が傷ついているのかということをしっかり理解する必要があるのです。

② 援助者(支援者)の最も陥りやすいいくつかの問題
援助者の陥りやすい問題が3つあります。
ひとつは、とにかくケースのことが頭から離れないというのがあります。
「Kさんはどうしているだろう」、「いまごろなにしてるかな」と、次に会う(次の連絡がある)日まで四六時中考えて、不安な思いを強めていってしまうことです。
相談を受けた被害者の境遇に共感し、思いを同質化させてしまうことは、ともに傷ついていくことになります。
境遇に共感し、思いを同質化させてしまうときには、援助者自身が同じ体験(特に幼児期の体験)をしている可能性が高く、過去のトラウマに対するケアが必要になります。
もうひとつは、合理的に考えをまとめてしまうことです。
「あのケースは、Yさんにいったからもうお終い」、「いつかなんとかなるわ」、「もう十分私はやった。だから、あのケースにはかかわる必要はない」と考えたり、仲間や同僚に口にしたりするとき、実は、深く傷ついているのです。なぜなら、もう見たくないと拒否をしている、これ以上かかわって傷つくことを回避している行動だからです。
最後は、援助者が病気になるということです。
援助者のリーダーが傷つくことを前提にしていないと、「さあ頑張れ」、「とにかく頑張れ、子どもが死んだらどうする」と、スタッフに非常に厳しく応じていたりします。
そして、スタッフが病気になってしまったり、長く続かず辞めていったりすることになります。
病気になるというのはシグナルです。胃かいよう、十二指腸かいよう、不整脈、ぜんそく、頭痛、不妊症、ありとあらゆる疾患になります。
それだけでなく、そういった事態になると、ナレッジマネジメントとして知となる経験の蓄積が滞ってしまいうことになります。
それは、援助のあり方を後退させかねない深刻な問題です。


(2) 援助者・教職員が傷ついたとき、心の手当てのあり方
カナダのバンクーバーでは、日本とは違い、すべての援助職、カウンセラーやスーパーバイザーが心の手当を受けられるように、政府の予算がつけられています。
そこで、バンクーバーでおこなわれている心の手当について紹介したいと思います。

① 援助者(支援者)は傷ついたらまず泣き、仕事を休む
まず泣くことです。
つらい出来事があったとき、泣くことによってかなり浄化されます。
バンクーバーでは、「2年間泣けなかった援助職はもう辞めろ」といわれるということです。
人は、ストレスを感じると体の中で抗ストレスホルモンである副腎刺激皮質ホルモン(ACTH)を合成します。
副腎皮質ホルモンを合成するとき、ビタミンCやビタミンEを消費します。
ビタミンCやビタミンEは抗酸化物質で、活性酸素によっておこる酸化から体を守ってくれますが、それをストレスで失うと活性酸素の影響で体は酸化し、老化していくことになります。
また、老化の原因となる活性酸素は、体が副腎皮質刺激ホルモンを合成、分解するときにも発生します。
活性酸素は自律神経のバランスを崩し、免疫力を大きく低下させ、皮膚の炎症反応の原因となります。
ストレスを感じると体は酸化の悪循環に陥ります。
しかし、その怖ろしい現象を止めてくれるのが涙です。
なぜなら、涙を流すことによってストレスを体の外に排出することができるからです。
また、涙を流すことで、緊張やストレスに関係する交感神経から、脳がリラックスした状態の副交感神経へとスイッチが切り替わります。
たくさん泣けば泣くほど、ストレスが解消し、心はリラックスできます。
次は、できるだけ仕事を休むことです。これはとても有効です。
しかし、日本では仕事をやればやるほど賞賛されます。病気になっても、「周りの人に迷惑をかけてしまう」と無理して仕事をしてしまいますが、そうした文化に巻き込まれず、積極的に休みをとることが大切なのです。
いかに傷ついてしまったのかだけを訴えることは問題ですが、正常に傷ついているからこそ泣けるのです。
援助者でありませんが、DV被害を受け、乳児を連れ実家に帰ると、親に「子ども(乳児)の前で親にめそめそ泣くな!」と怒鳴りつけられるからと、泣くことが許されず、トイレで太腿を叩いて泣くのをがまんさせられていた被害者の方がいました。
そして、親からの暴言がひどくなり、役所の子育て支援に相談し、緊急一時保護に入居することになり、やっとツラかった、苦しかったと泣くことができるようになりました。
泣くことは弱い、泣くことは恥ずかしいなど、泣くことを拒む考え方は、耐え忍ぶことを美徳とする日本独特のものです。
この耐え忍ぶことを美徳と考えることが被害者を苦しめ、同時に、支援する者をも苦しめることになります。

② アートセラピー
最初に、好きな色の紙をとります。クレヨンもしくはペンも好きな色を1本とります。
次に、紙を2つに折ります。2つに折った紙は縦に使います。
紙のまず上半分に、「権力」ということばからイメージされる絵をクレヨン、ペンで描きます。
絵はなんでもよく、マークでも、フッと思い浮かんだものでも、塗りたくってもOKです。
そして、下半分の空いているスペースに、1番から5番まで、「権力」からイメージすることばを同じクレヨンもしくはペンで5つ書きます。
ことばは名詞でも、形容詞でも、あるいはなんかのフレーズでも、どんな内容でもOKです。
思い浮かんだまま書きます。
描き終わったら、同じテーブルにいる人たちと見比べます。
このアートセラピーで、主とするテーマは、「人それぞれ」ということです。
「権力」というものに対して、人それぞれによって違う枠組みをもっているということに気づくことが大切なのです。

-子どもたちへの応用-
このアートセラピーを、小学生、中学生、高校生の子どもたちにも、同じ「権力」というテーマでやってもらうことができます。
絵とことばを組み合わせると、右脳と左脳の両方を使うことができることから、非常にナチュラルな状態に脳を戻すことができます。
このとき、「完璧に描かなくては」と思ったり、非常に強迫的になってしまったりして、なにも描けずに終わってしまう人がいます。
そういう場合には、暴力のある家庭環境で暮らしている可能性が高くなります。
中学生の中には、すべてを塗りたり、「なにか悪いことがある」とか、「悪魔が襲ってくる」などということがあります。
人格障害や統合失調症(精神分裂症)の発症に近いものが疑われることになります。
中学生の統合失調症(精神分裂症)は非常に発見が難しいといわれていますが、絵を描いてもらうことで、その兆候に気づくことがあります。
しかし、DVを発見するためのアートセラピーではありません。ただ、DVの問題を抱えている子どもたちは、「権力」をテーマにすると、父親や警察官やパトカーを描いたりすることがあります。
非常に過酷なDVがあるとき、火事の絵を描いたり、あるいは仮面ライダーが父親を殴っている図を描いたり、暴力をモチーフとして描くことが少なくありません。
また、ことばについては、父親とか塾の先生、スポーツクラブの指導者など個人名がでてきたときには、具体的にしっかり調査をする必要がでてきます。
また、解離をおこしていたり、PTSD状態のひどかったりする母親が、クレヨンを持つと5歳くらいの子どもに戻ってしまい、子どものときのことを描くことがあります。
それは、必ずしもそれは悪いことではなく、むしろだせるならだしてもらうほうがいいと思います。
裏には必ず名前と日付を書きます。
ユング派では、裏側の名前と日付を書いた筆圧と、表の絵と字の筆圧を必ず分析し、その筆圧がぜんぜん違うときには、なにか問題があるといわれています。
いちおう落ち着いて情緒が安定している人は、表の文字の筆圧と裏の筆圧がほぼ同じ状態に書かれます。
絵の方は内容が重要です。
虐待を受けている子どもたちやDV環境にある子どもたちの中には、どこか1ヶ所に絵の内容が集中していることがあります。
ユング派では、絵をx軸とy軸で4分割し、そのそれぞれの部分にいろんな意味があるといわれています。
ここでは、4分割について詳しく説明できませんが、絵を見て向かって左下の部分は、心の奥底を意味しているといわれています。
この部分に火事や暴力が描かれている場合は、心がかなり傷ついているのではないかと分析できます。
次に、右上の部分ですが、ここは社会にでようと努力している部分であるといわれています。
そして、左上の部分。この部分では、傷つきながらも「だれか助けて」と訴えているのではないかと考えられています。
右下の部分、これは「ファミリーの場」、家族の状態をあらわすといわれており、この部分が非常に荒れている場合には、家族のなかに何か問題が起きていると考えられます。
絵の左側が心の悩み、右側が社会的な面だということは幅広くいわれていることです。
どちらに比重がおかれているのか見るだけでも、心の状態を見るうえで参考になるものです。
幼稚園、小学校ときに描く絵の特に右下の部分、つまり、ファミリー場を注意して見ると、DVや虐待の発見をしやすいと思います。
このアートセラピーのねらいは、人それぞれ違う見方をもっていることを確認しあうということです。
同じ「権力」に対してこんなにも認識が違うのかと確認させられることで、虐待環境にある子どもたちが、自分の価値観を踏みだすきっかけになるかもしれません。
「そうか、F君はこんなだけど、P君はこんなに違っている」、「それでいいんだ。選択肢がこんなにあるんだ」ということに気づいてもらうことが重要ですから、飾っておくことも大きな意味を持ちます。


2014.1/9 小学校教職員のための「児童虐待・DV対応の手引き」..学校として虐待の早期発見と対応手順
2015.4/18 改訂新版
2016.3/11 ブログ再編成(第3次改訂)に伴い、『暴力の影響を「事例」で学ぶ。DVの早期発見・支援。母と子どもが暴力から脱するための手引き』の「第3章(Ⅲ(13-20))」として再編集、掲載
2017.4/25 「第3章(Ⅲ(エピローグ、16-23))」の「改訂2版」を差し替え掲載




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